Yersinia pseudotuberculosisによる敗血症は稀であるが, 最近1幼児例を経験したので報告する. 症例は2歳9か月, 男児. 入院4日前より発熱が続き, 入院2日前より下肢に紅斑が出現したため昭和57年4月11日に慶応義塾大学病院へ入院となった. 入院時, 下肢の紅斑は消失していたが, 眼球結膜の充血, 口唇及び咽頭の発赤, 苺舌, 指尖の落屑, リンパ節腫脹等の多彩な症状を呈し, 赤沈の亢進, CRP強陽性, α
2グロブリンの増加が認められた. 入院当初はMCLSが疑われたが, 血液及び便より
Y. pseudotuberculosisが検出されたため本菌による敗血症と診断し, Cefpiramideを3日間, 次いでLatamoxefを39日間投与して軽快した. 又, 経過中ビタミンK欠乏によると思われる出血傾向が出現したが, ビタミンK及び新鮮血の投与により軽快した. 分離された菌株は
Y. pseudotuberculosis Type IBで, 感染経路は不明であったが, 血液由来株と糞便由来株とは, 生化学的性状と血清型別が一致しており, 何らかの形での経口感染と推察された. 本症例に基礎疾患は認めなかったが, 経過中一過性に細胞性免疫能の低下を疑わせる所見が認められた.
Y. pseudotuberculosis Type IBに対する血清抗体価は, 患児回復期血清で有意な上昇を示しており, 血清抗体価の測定は本症の鑑別に有用な手段と考えられる. 尚, 分離株は, Penicillin系, Cephem系, Aminoglycoside系, Tetracycline系, Chloramphenicolの各薬剤に良好な感受性を示した.
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