感染症学雑誌
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58 巻, 4 号
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  • 村尾 美代, 岡田 正次郎
    1984 年 58 巻 4 号 p. 275-284
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B/香港/72型インフルエンザ流行前におけるヒト血清 (10~70歳) 中のB/香港/72型ウイルスに対するHI抗体は, 25~29歳の年齢層に最も高頻度に分布されており, これら成人血清中のHI抗体価はB/Seattle/1/49に対するHI抗体価と高い相関性が認められたことから, B/香港/72型は1943~1952年に流行したインフルエンザB/Bon型ウイルスと抗原的に近縁なウイルスの可能性が推測された.
    B型株ニワトリ免疫血清のHI試験によってB/Seattle/1/49はB/香港/72型ウイルス (B/山形/1/73, B/岐阜/2/73) との問に明瞭な交差反応が認められ, また, HI抗体交差吸収試験により, B/Seattle/1/49, B/山形/1/73, B/岐阜/2/73のH抗原には, B/大阪/2/70に存在しない, これら3株間の共通抗原因子が認められた. そして, この共通抗原因子はB/Seattle/1/49およびB/香港/72型ウイルスの主抗原の一部を構成していることが明らかにされた.
    以上の結果からインフルエンザB型ウイルス抗原変異は一般に漸進的変異ではあるが, 時に過去の流行株の抗原へ回帰するような変異の可能性が示唆された.
  • 亀岡 陽子, 六浦 聖二, 吉本 幸子, 田村 正和, 螺良 英郎
    1984 年 58 巻 4 号 p. 285-292
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    マウスにcyclophosphamide (CY) 20mg/kg, 50mg/kgおよび100mg/kgを3日間連続処置後, その翌日にE. coliを腹腔内感染させ, 死亡率の経過を観察したところ, CY50mg/kgおよび100mg/kg 3日間連続処置後のE. coli腹腔内感染にて死亡率が上昇していた.
    CY処置後の感染防御能に果たす, マクロファージ, 腹腔内浸出好中球の役割りを検討したところ, CY100mg/kg 3日間連続処置後, その翌日の腹腔内残留マクロファージによるE. coliの殺菌率に変化はなかったが, CY 20mg/kg, 50mg/kgおよび100mg/kg 3日間連続処置後, その翌日の腹腔内浸出好中球によるE. coliの殺菌率は低下していた. また, CY100mg/kg 3日間連続処置後, その翌日の腹腔内浸出好中球によるsuperoxide generationおよびMPO活性の低下をみた.
    しかし, CY 100μg/mlをE. coliとともに, ヒト好中球と培養したが, 殺菌能の低下はみられなかった.
  • 山田 俊彦, 宮川 洋三, 小酒井 望, 塩川 優一
    1984 年 58 巻 4 号 p. 293-296
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小学4年生 (9~10歳) 58名を対象に血清ASO, ADN-B, ASKおよびASPの測定を行なった. ASO, ADN-B, ASK測定において, 明らか溶連菌感染の既往を否定しうる学童に境界値を越えるASP値を示すものが高頻度に認められた. すなわち, ASO60倍以下, ADN-B60倍以下およびASK80倍以下のいずれか1つを示す学童は17名に認められたが, この中でASPの境界値 (64倍) 以上を示す者は7名 (41.2%) であった. さらに, ASO60倍以下, ADN-B60倍以下, ASP80倍以下といずれも低い抗体価を示したものは9名であり, その中でASPが境界値以上を示したのは3名 (33.3%) であった.
    これらの成績から, 溶連菌感染症を疑いながら, 従来の血清学的方法によって否定された症例については, 今後, ASPの測定を行なうことが望ましいと考えられた.
  • とくにCampylobacter jejuniを中心として
    町井 彰, 新田 義朗, 村上 義次, 相楽 裕子, 瀬尾 威久, 松原 義雄
    1984 年 58 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981年4月から1982年3月までの1年9ヵ月の間に当院内科外来で感染性腸炎と考えられた症例は454例あったが, このうちふん便培養で病原菌の分離された症例は166例 (36.6%) であった. 分離菌はCampylobacter jejuniが107例 (64.8%), Salmonellaが20例 (12.1%), Vibrio pamhaemolyticusは19例 (11.5%), Shigellaは8例 (4.8%) であった. 月別の病原菌の分離例数は7月, 8月が多く, C. jejuniについては1982年では5月から7月が10例から14例, そして9月, 11月がそれぞれ9例, 11例と他の月より多かった. 年齢分布ではC. jajuniは20歳台 (46.7%) から19歳以下 (28.0%) に多く, Salmonellaは20台 (30.0%), 30歳台 (35.0%) に多くみられた. V. pamhaem.は30歳台, 20歳台に多いが40歳台以上にもみられた. 臨床症状については, 発熱はSalmonella次いでC. jejuniに多く, 便回数はSalmonellaが平均10.1回で, 次いで V. parahaem.が8.7回であった. C. jejuniは7.3回で比較的少ない. 水様便の頻度はV. panahaem.が89.4%でもっとも多く, C. jejuniは67.6%でもつとも低かった. 血便はSalmonella, C. jejuni, V. pamhaemの順で頻度が高いがともに20%以下であった. 便性の回復をみた平均回数はSalmonellaは6.2日, C. jejuniは5.7日であり, V. parahaem.3.6日でもっとも短かかった. また入院例, 外来例では著しい差はみられなかった.
  • 鈴木 幹三, 岸本 明比古, 山本 俊幸, 滝沢 正子, 山本 素子, 吉友 和夫, 加藤 錠一, 加藤 政仁, 武内 俊彦
    1984 年 58 巻 4 号 p. 304-311
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    名古屋市厚生院における60歳から103歳までの高齢者95名を対象として, 咽頭菌叢の構成について様々な見地から検討を行い, 以下の結果を得た.
    1) 概ね健康と考えられる高齢者60名においては, α-Streptococcus, Neisseriaがほぼ100%と極めて常在性が強く, 次にYeats砥グラム陽性桿菌, Haemophilus, Klebsiella, Staphylococcusの順にみられた.
    2) 高齢者咽頭菌叢の構成は, 各年代別, 性別, および喫煙により左右されないと考えられた.
    3) ADL別の比較では, ADLO-5点の寝たきり群では, 非寝たきり群に比しグラム陽性桿菌はみられず, Yeastsはやや多くみられた.
    4) 抗生剤使用の有無における比較では, 抗生剤使用例においてS. aureus, S. epidermidisが有意に増加し, S. faecalisおよび各種のグラム陰性桿菌が新たに出現した.
    5) 健康成人咽頭菌叢との比較より, 高齢者群におけるH. parainfluenzaeH. parahaemolyticusの減少, およびKlebsiella, Yeastsおの増加は, 成人群との年齢的差異を示す一つの特徴と考えられる.
  • 2大学病院における分布の比較
    那須 勝, 後藤 純, 後藤 陽一郎, 田代 隆良, 糸賀 敬, 山口 恵三
    1984 年 58 巻 4 号 p. 312-317
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Traubらの方法にもとずいたbacteriocin型別法によって, 1981年1月から1983年7月までに遠隔の地に存在する2大学病院 (大分医科大学医学部附属病院と長崎大学医学部附属病院) の入院患者から分離された212株のSermtia marcescensを型別し, 本法の疫学的有用性を検討するとともに, 両病院における型別成績を比較し考察を加えた.
    本法による型別成績は, 被検菌の接種菌量104~105cells/mlで行うと再現性がよく, 安定した成績が得られた. 大分医大病院での分離菌126株は8種の型に区分され, 4型, 9型, 42型, 52型が主なbacteriocin型で, この4種の型に77%が型別された. 長崎大学病院での分離菌86株は18種の型に区分され, 4型, 9型, 14型, 26型が主なbacteriocin型で, この4種の型に60%が分布した. 両病院の入院患者から分離されたSermtia mamscensは, それぞれ異なったbacteriocin型を示し, その分布には特徴がみられたが, 4型と9型のSermtia marcescensは両病院ともに分離頻度は高く, 普辺的に存在するbacteriocin型であると思われた. なお本法による型別不能株は, 12~16%にみられた.
  • 駒形 安子
    1984 年 58 巻 4 号 p. 318-326
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    経口投与されたある種の抗原は腸管壁において抗体産生細胞に刺激を与えると考えられているが, その機序は明らかでない. われわれはコレラ菌を感作抗原として, その経口投与によってDNP-コレラ菌体の抗体産生にどのような影響を与えるかを検討した. コレラ生菌及び死菌をBALB/cマウスに1~4回経口感作し, 最終感作から3日目にDNP-全菌体を抗原として腹腔内に注射し, その7, 14, 21日後の血中のIgE, IgM, IgGおよびvibriocidal抗体価を測定した. 生菌2~4回感作群および死菌3, 4回感作群においてIgE抗体産生の抑制のみがみられた。また最終感作3日後のマウスリンパ球の移入実験では, 生菌4回感作群と死菌3, 4回感作群の脾臓およびバイエル板細胞が, 生菌1~3回感作群のバイエル板細胞がIgE抗体産生を抑制した. 生菌4回感作マウスおよび死菌4回感作マウスの脾臓とバイエル板細胞をそれぞれナイロンファイバーカラム法で, T cell rich画分 (TrF) ならびにB cell rich画分 (BrF) に分けて移入すると, 生菌感作群の脾臓のBrF, バイエル板 (PP) のTrF, 死菌感作群の脾臓のTrFおよびBrF, そしてPPのBrFによってIgE抗体産生が抑制された.
    更に生・死菌を4回感作したマウスの脾臓およびPP細胞を抗マウスThy1, 2抗体で処理した細胞を移入すると死菌感作群の脾臓およびPP細胞と生菌感作群のPP細胞でIgE抗体産生が抑制された。
    IgE抗体以外では, IgM抗体産生が死菌感作マウスの脾臓のBrF, PPのTrFおよびBrFで僅かに増強され, vibriocidal抗体産生が死菌感作マウスの脾臓のTrFおよびBrF, 生菌感作マウスのPPのBrFで増強された.
    以上の結果からコレラ菌で経口感作すると, 特に抗DNP-IgE抗体産生に対する抑制が顕著に見られたが, また感作抗原の強さや性状によって異なった細胞に影響を与えていることが示唆された.
  • 鵜木 哲秀, 中村 功, 吉岡 朗, 中安 清, 本郷 碩, 亀井 敏明, 国広 誠子, 上田 尚紀
    1984 年 58 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    家畜の出血性敗血症や肺炎の起炎菌として知られているPasteurella multocida (P. multocida) による極めてまれな人の胸膜炎, 心嚢炎を伴った敗血症を報告する. 症例: 19歳男性, 犬との濃厚な接触後に感冒様症状, 発熱, 呼吸困難, 動悸をもって発症し, 1楊日後に当科に入院, 心拡大, 心膜摩擦音, 両下肺の湿性ラ音を認め, 胸部X線CTscan, 心エコー図で心嚢液と両側胸水貯溜が確認された. ampicillin (ABPC) 投与3日目の血液培養でP. multocidaが検出された. cefazolin (CEZ), cefmetazole (CMZ) とlincomycin (LCM) の併用が無効なため, 入院10病日目に左開胸, 心嚢液, 胸水ドレナージと心嚢開窓術を行った. 手術材料の病理組織学的所見は炎症所見のみで悪性所見は認められなかった. 術後も改善が認められなかったが, 術後2週間目からのthiamphenicol (TP) の使用により全治させることが出来た. 本例は救命し得たP. multocida敗血症の本邦第1例と思われる.
  • 岩田 敏, 山下 亮子, 井関 幹郎, 城崎 慶治, 岩崎 由紀夫, 佐藤 吉壮, 笠井 洋子, 緒方 勤, 小佐野 満, 砂川 慶介
    1984 年 58 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Yersinia pseudotuberculosisによる敗血症は稀であるが, 最近1幼児例を経験したので報告する. 症例は2歳9か月, 男児. 入院4日前より発熱が続き, 入院2日前より下肢に紅斑が出現したため昭和57年4月11日に慶応義塾大学病院へ入院となった. 入院時, 下肢の紅斑は消失していたが, 眼球結膜の充血, 口唇及び咽頭の発赤, 苺舌, 指尖の落屑, リンパ節腫脹等の多彩な症状を呈し, 赤沈の亢進, CRP強陽性, α2グロブリンの増加が認められた. 入院当初はMCLSが疑われたが, 血液及び便よりY. pseudotuberculosisが検出されたため本菌による敗血症と診断し, Cefpiramideを3日間, 次いでLatamoxefを39日間投与して軽快した. 又, 経過中ビタミンK欠乏によると思われる出血傾向が出現したが, ビタミンK及び新鮮血の投与により軽快した. 分離された菌株はY. pseudotuberculosis Type IBで, 感染経路は不明であったが, 血液由来株と糞便由来株とは, 生化学的性状と血清型別が一致しており, 何らかの形での経口感染と推察された. 本症例に基礎疾患は認めなかったが, 経過中一過性に細胞性免疫能の低下を疑わせる所見が認められた.Y. pseudotuberculosis Type IBに対する血清抗体価は, 患児回復期血清で有意な上昇を示しており, 血清抗体価の測定は本症の鑑別に有用な手段と考えられる. 尚, 分離株は, Penicillin系, Cephem系, Aminoglycoside系, Tetracycline系, Chloramphenicolの各薬剤に良好な感受性を示した.
  • 高松 健次, 南川 博司, 西本 正紀, 宮本 修
    1984 年 58 巻 4 号 p. 340-346
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症は従来本邦においては少ないとされてきたが, 近年漸増の傾向にあることが指摘されている. 細菌の混在した栓子によるものはseptic pulmonary emboliと称され, 通常の肺塞栓症としての症状を呈するのみならず, 血行性の肺感染症という意味でも重要である. 最近著者らは, 肝膿瘍にて入院中Peptostreptomcusによるseptic pulmonary emboliを発症した例を経験した. 症例, 37歳, 男. 多発性肝膿瘍にて入院, 血液より頻回にPeptostnptococcusが検出された. 入院第12日後の早期, 突然の胸痛と40℃に及ぶ高熱が出現し, 胸部レ線で右S8S9領域に胸膜面に接する扇形の均等陰影が2ケ所認められ, 急速に空洞形成がみられた. 99mTC-MAAによる肺血流シンチにても同部に血流欠損が確認され, septic pulmonary emboliと診断した. PCG, LMOXの投与により肝膿瘍の縮少と共に胸部レ線像も改善し, 約50日後に僅かな瘢痕を残して消失した.
    諸家の報告によればseptic pulmonary emboliの発症要因として, 薬物常用者の不潔な注射の反復による注射部位の血栓性静脈炎が多く, 起炎菌としてはStaphylococcus aureusカミ重要である. 本症例の如く肝膿瘍に由来したPeptostmptococcusによるものは過去に記載がなく, 稀な症例と考え報告した.
  • 1984 年 58 巻 4 号 p. 364-366
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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