感染症学雑誌
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58 巻, 5 号
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  • 廣松 雄治, 佐藤 靖美, 猪口 哲彰, 梅野 秀治, 黒沢 美郎, 石井 浩三, 小林 研次, 加地 正郎, 新宮 世三, 林田 一男, ...
    1984 年 58 巻 5 号 p. 367-375
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年から1981年までの3年間に, インフルエンザHAワクチンを高校生, 看護学生, 病院職員, 重症心身障害児の総計約450名に接種し, 接種後の抗ノイラミニダーゼ抗体 (NI抗体) 産生について検討した.
    接種年度, ワクチンウイルス株, 接種集団によってかなりの相違がみられたが, 接種1ヵ月後におけるNI抗体価の3倍以上の有意上昇率は, A/USSR/92/77 (HIN1) に対して10~40%, A/福島/108/78 (HIN1) 0%, A/熊本/37/79 (HIN1) 5%, A/山梨/2/77 (H3N2) 6%, A/Bangkok/1/79 (H3N2) 12%, B/神奈川/3/760~38%といずれも低率であった.
    A/USSR/92/77 (HIN1) およびB/神奈川/3/76については, 接種前の平均NI価の低い集団では30~40%にNI価の有意上昇がみられたのに対して, 接種前の平均NI価の高い集団では, ほとんどNI価の上昇がみられなかった.
    ワクチン接種1ヵ月後のNI抗体価の有意上昇率は, 概してHI抗体価の有意上昇率よりも低く, 現行のHAワクチン接種後のNI抗体産生は充分とはいいがたい成績であった.
  • 大黒 寛
    1984 年 58 巻 5 号 p. 376-384
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年増加している新生児, 乳児における敗血症, 髄膜炎の原因であるB群溶血連鎖球菌 (B群菌) の菌型分布を示し, 菌型と病原性との関連を検討する目的で, マウス脳内接種法 (i. c. 法) を応用し, 次の結果を得た.
    1976年より1982年までに本教室で同定した敗血症, 髄膜炎或いはそれらの合併した症例から分離, 同定されたB群菌を型別にみると64.5%が多糖体111をもつ111型と111R型, 29.1%が多糖体1aをもつ1a型と1c型であり, 多糖体1aをもつ菌型での致命率は50%であり, 他の菌型に比較して有意に高い結果を示した.
    病原性を検討する目的で従来百日咳の盛染防禦実験で用いられているマウス脳内接種法 (i. c.法) を応用した. 18時間Todd-Hewitt Brothに培養した菌体を遠心沈澱し, 減菌生理食塩液に再浮遊し段階稀釈を行ないその0.025mlを脳内に接種し, 7日間のマウスの死亡 (一部発症) を観察した. その結果a) 型多糖体をもつ菌株では攻撃菌量と死亡 (一部発症) の間に容量反応関係が成立する. b) 攻撃菌量の差により死亡時期に差が存在する. c) 菌型 (菌株) 間の毒力の差が再現性をもってみられる. d) 抗体価の充分に上昇した免疫血清を用いpassive immunizationが成立する. 等i. c. 法の有用性が示された.
    多糖体1aをもつ菌株では, 採取材料, 診断を問わずi. c. 法において強い毒力を示しており, 又, マウス血中への菌の移行も他菌型に比較すると圧倒的に多く, この菌型の浸淫の強さ或いは人に対する病原性の強さを裏づける結果であった.
    又, 蛋白質1bcのみをもつ菌株では強い毒力はみられず, 従来より言われている型多糖体による病原性を確認した.
  • 那須 勝, 後藤 純, 後藤 陽一郎, 田代 隆良
    1984 年 58 巻 5 号 p. 385-392
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    モルモット皮内を炎症の場としたBacteroides fragilis感染症の実験的化学療法について検討し, 本実験モデルについて考察を加えるとともに, 若干の知見を報告した.
    臨床材料分離のlincomycin高度耐性株を含む23株のB. fragilisの菌液 (109cells/ml) を3匹のモルモット皮内に0.1ml接種し, 24時間後に皮膚lesionの平均直径値を求め, これを菌力とした. Lincomycin投与法 (200mg/kg) は, A群: コントロール群, B群: 菌接種1時間前に筋注した群, C群: 菌接種6時間後に筋注した群, D群: 菌接種前と後に筋注した群の4群に分けた.
    皮内接種菌量と皮膚lesionの直径値は比例した (Y=0.0111X+4.06, r=0.75). lincomycin 200mg/kg投与した場合のモルモット心血と皮膚lesionのピーク濃度は, それぞれ54, 23.7μg/mlであった.
    MIC>100μg/mlの6株は, A群にくらべC群とD群にp<0.05, MIC1.56~6.25μg/mlの12株は, B, C, Dの各群にp<0.01, MIC≦0.39μg/mlの5株は, B, C群にp<0.01, D群にp<0.001の有意差で皮膚lesionが小さかった. B群とC群, C群とD群には, 有意な差はなかった.
    Lincomycin濃度が接種菌のMICに達しなくとも効果がみられた. 1回投与法よりも2回投与法が有意に皮膚lesionは小さかった.
    本法は, 多数株を簡単に実験することができるが, B. fragilisの菌量が107~1010cells/mlでないと皮膚lesionの境界が不鮮明で, 測定し難いことがある.
  • 伊藤 武, 斉藤 香彦, 高橋 正樹, 柳川 義勢, 高野 伊知郎, 坂井 千三, 福山 正文, 上村 知雄
    1984 年 58 巻 5 号 p. 393-399
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    家庭で飼育されている愛がん用イヌのカンピロバクターの保菌状況を明らかにするとともに, 著者らが開発したCanzpylobacter jejuniの血清型分別法を応用し, 分離菌株の血清型別を実施し, ヒト下痢症由来のC. jejuniの血清型と比較検討した.
    1980年11月~1981年3月の冬期と, 1981年6~10月の夏期に分けて, 3ヵ所の動物病院に来院したイヌ405頭のふん便や直腸便を検査対象にした. 405頭のうち196頭のイヌは来院時に下痢症状が認められた. このうち, 13件 (6.6%) からカンピロ・ミクターが検出された. イヌの年齢別に検出率をみると, 1歳以下の幼犬では65件中9件 (13.8%) が陽性, 1歳以上の成犬では131件中4件 (3.1%) が陽性であった.
    これに比して, 下痢症以外の疾患で来院したイヌ209件中8件 (3.8%) からカンピロバクターが検出され, 菌陽性例はいずれも1歳以上の成犬であって, 1歳以下の幼犬からは本菌は検出されなかった. 夏期と冬期の季節別にはカンピロバクター検出率に有意な差異を認めなかった.
    この他に, サルモネラ4件 (1.0%), Y. entemolitica 2件 (0.5%) およびY. pseudotuberculosis 1件が検出された.
    イヌから検出されたカンピロバクターはすべてC. jejuniで, Iron mediumで硫化水素非産生のため, Skirrow & Benjaminの生物型1に該当した. 分離菌株21株中15株 (71.4%) が著者らが開発した血清型に該当し, TCK2, 6, 10など12型の血清型が認められた. イヌ由来株の血清型と同一型がヒト下痢症からも多数検出されており, イヌとヒトとの関連性が示唆された.
  • 泉 幸雄
    1984 年 58 巻 5 号 p. 400-407
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    これは去る昭和57年10月第4回アジア小児科学会議におけるシンポジウムで口演した内容の概要であり, 全国30施設の御協力によりアンケートを行い, これを集計したものである.
    1.感染性心内膜炎は107例で, 81%は1~11歳, 基礎心疾患の90%は先天性心疾患であった. 起因菌は30%が S. uiridans, 22%が S. aureusであった. 死亡率は17%で, その約半数は S. aureusによるものであった. 種々の合併症が34%にみられた.
    2.心筋炎は102例で, 90%が0~11歳であった. 病変体はコクサッキーB1-4が最も多く (13例), 次いでその他のウイルス (9例), マイコプラズマ (4例) 等であった. 59%は治癒ないし軽快し, 24%に重症不整脈, うっ血性心筋症等の後遺症を残した. 死亡率は17%であった.
    3.心膜炎は32例で, 80%が0~11歳であった. 病原体はコクサッキーB2, 4, ECHO3, 25等のウイルス (5例), S. aureus等の細菌 (5例), マイコプラズマ (2例) 等であった. 78%は著明軽快, 19%は心筋炎, 僧帽弁閉鎖不全等の後遺症を残した. 死亡率は3%であった.
  • 血清学的反応を指標にみたB型の流行について
    薩田 清明, 乗木 秀夫, 長谷部 昭久, 中山 幹男, 武内 安恵
    1984 年 58 巻 5 号 p. 408-416
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1982年から1983年にかけてのインフルエンザの流行期を利用して, 246名の女子高校生集団を対象に1982年度の市販ワクチンの効果について, 血清学的反応を指標として検討し次のような結果が得られた.
    1) ワクチン接種群は194名 (78.8%), 非接種群は52名 (21.1%) であった.
    2) B型の流行が血清学的に本対象集団で認められた. 感染者は246名中23名 (9.3%) に認められ. 感染率は接種群で8名の4.1%に対し, 非接種群では15名の28.8%であった.
    3) 両群の感染率の差について統計学的にみると, 接種群より非接種群のほうが有意 (x2=29.1, n=1, p<0.001) に高いことが認められた。このことは1982年度の市販ワクチンの予防効果を認めるものである.
    4) 2) の事実は再度実施したHI抗体やNI抗体の流行前後の推移でも認められた.
    5) 本検討期間中全国的にみてB型ウイルスの分離は認められていないので, おそらく本対象集団におけるこのB型流行の様相は地域的あるいは局地的流行で経過したものと推測される.
    これらの事実は, 今後のB型流行の疫学的調査に注意を喚起するものであろう.
  • 手島 博文, 舟田 久, 服部 絢一
    1984 年 58 巻 5 号 p. 417-428
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    3例の自家骨髄移植患者に, gentamicin (GM) 960mg/日, amphotericin B 800~1,600mg/日の経口抗生剤処方 (GA処方) で選択的腸管内菌叢抑制を試み, その菌叢抑制効果と感染予防効果について検討した.
    処方を開始して1週目に, 3例の便菌叢の好気性グラム陰性桿菌は完全に抑制された. 嫌気性菌は, ほぼGA処方開始前の菌数で保持された. GAの投与は. 2例で8週間の長期に及んだ. そのうち1例では, GA投与中に好気性グラム陰性桿菌の定着はみられなかった. 他の1例で, GM耐性Klebsiella pneumoniaeが出現したが, これはcefmetazoleの点滴静注が開始され, 嫌気性菌が完全に抑制された時に獲得された. Candidaの抑制が不十分で2例で持続した. 咽頭菌叢の推移に便と大きな差はみられなかった. GAの内服により, 下痢, 体重減少, 血清コレステロール値の低下がみられた. また, 移植前処置として化学療法・放射線療法を施行した時, 一過性に嘔気・嘔吐が出現した. GA投与中に, enterococcus敗血症が1例に合併した. この侵入門戸は腸管と考えられた.
    GA処方には, いくつか問題がみられたものの, 好気性グラム陰性桿菌の抑制に優れ, 追加検討する価値が十分にあると思われた.
  • 山本 素子, 林 嘉光, 花木 英和, 天野 冨貴子, 岩田 芳郎, 内藤 通孝, 葛谷 文男
    1984 年 58 巻 5 号 p. 429-434
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サルモネラ肺炎と思われる1例を経験した. 症例は67歳, 男性. 約50日前より, 頭痛, 発熱のため某医にて加療中であったが, 高熱が続き, また10日前より, 咳, 喀痰, 胸痛が出現し, 時々血痰がみられた. 胸部X線像および胸部CT所見にて, 右下葉後肺底区の気管支肺炎と診断され, また喀痰より2回連続して有意のS. enteritidisが分離されたため, 当院へ入院となった. 入院後糞便から3日間連続して同菌が検出されたが, 血液培養は陰性であった. ChloramphenicolとFosfomycinの併用療法にて解熱し, 自・他覚症状, 胸部X線所見も順調に改善した. また抗生剤投与中止後の検査では再排菌はみられていない. 患者は無症候性胆石を保有していたが, 悪性腫瘍, 糖尿病などの重篤な基礎疾患は合併せず, また全経過を通して下痢などの胃腸症状を認めなかった.
    S. enteritidisによる肺炎はまれであり, また喀痰より同菌が分離されたという報告は少ない. 肺炎の発症機序については, 無症候性保菌症から菌血症を経て肺に感染病巣を形成したのか, あるいは経気道感染によるものかは判定できなかった.
  • 根岸 昌功, 楊 振典, 増田 剛太, 清水 長世, 竹内 勤, 小林 正規, 西嶋 修一, 奥内 豊
    1984 年 58 巻 5 号 p. 435-440
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    African trypanosomiasisの本邦第1例を報告する. 症例は26歳女性. アフリカを旅行中, 左大腿を虫に刺されたが元気に帰国. 帰国後13日目に突然の悪感戦藻を伴う発熱で発症. 第4病日の末梢血標本でTrypanosoma原虫を確認した. 第10病日の入院時, 神経学的異常所見なく, 胸・腹部に理学的異常所見なく, 発熱, 黄疽, 左大腿外側の硬結を認めた. 末梢血液中に原虫が500万/ml認められ, 軽い血管内凝固症候群を示唆する所見, 肝障害, 高γグロブリン血症, 特にIgMの著明な増加, 血清梅毒反応の奇妙な型の陽性が認められた. 治療薬剤はsuraminを使用し, 投与3日目から末梢血液中に原虫を検出できなくなった. 臨床症状および検査所見とも徐々に改善し, 約11ヵ月経過した現在, 患者は元気で働いている.
  • 花井 直子, 小田原 弘明, 増田 剛太, 矢野 雄三, 佐久 一枝
    1984 年 58 巻 5 号 p. 441-446
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Campulobacter fetusは全身性感染症の原因となり, 多彩な臨床像を呈することが知られるが, 日本における本症の報告は未だ数少ない. 今回われわれは, C. fetusによる髄膜炎の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は53歳男性で, 基礎疾患は特になく, 感染経路も不明であった. 昭和57年7月27日頭痛, 発熱が出現し, 近医から抗生剤を投与されたが反応せず, 8月10日都立駒込病院に入院した. 入院時検査成績は, 体温38.0℃, WBC 8, 400/mm3, 血沈11mm/1h, CRP (-), 髄液は初圧80mmH20, 蛋白490mg/dl, 細胞数1,138/3mm3 (単核球973/3mm3), 糖47mg/dlであった. 無菌性髄膜炎として治療を開始したが, 髄液及び血液からC. ftus subsp. fetusが検出されたため, CP, GM, LMOXによる抗生剤療法に変更し, 臨床症状の著明な改善を得たので, 昭和57年11月17日退院とした. 退院時に認められた髄液所見の軽度異常は, 約1年後に正常化した.
  • 1984 年 58 巻 5 号 p. 465-467
    発行日: 1984/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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