感染症学雑誌
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58 巻, 6 号
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  • 澤木 政好, 三上 理一郎, 三笠 桂一, 国松 幹和, 成田 亘啓, 浜田 薫, 播金 収
    1984 年 58 巻 6 号 p. 469-476
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症における複数菌感染の実態について経気管吸引法 (以下TTA) で検討した. TTA細菌陽性117回のうち複数菌を検出したのは57回 (48.7%) であった.
    TTAから検出された主な細菌はH. influenzae (54回), S.pneumoniae (29回), B. catarrhalis (21回), P. aeruginosa (16回), H. parainfluenzae (12回), α-streptococcus (19回) とNeisseria (16回) であった. これらの細菌の複数菌としての検出率はH influenzae 53.7%, S. pneumoniae 69%, B. catarrhalis95.2%, P. aeruginosa 31.3%, H. parainfluenzae 41.7%, α-streptococcus 78.9%, Neisseria 100%であった.
    複数菌の組合せでH. influenzae+S. pneumoniae が最も多く9回, 次いでS. pneumoniae+B. catarrhalis8回, H. influenzae+B. catharrhalis 7回などであった. この3菌で菌量を比較すると, H. influenzae >S. pneumoniae, S. pneumoniae=B. catarrhalis, H. influenzaeB. catarrhalis という傾向がみられた.
    以上の成績より, 慢性下気道感染症の複数菌感染の主体はH. influenzaeを中心とした上気道常在細菌である事が示唆された.
    又, 菌量の比較から複数菌感染の分類を試み, 2菌の菌量が同等の場合を“均衡型・Equal type”菌量不ぞいの場合を“不均衡型・Unequaltype”とした.
  • とくに複数菌感染の意義について
    澤木 政好, 三上 理一郎, 三笠 桂一, 辻村 みち子, 鴻池 義純, 伊藤 新作, 成田 亘啓, 播金 収, 増谷 喬之, 石井 勇治, ...
    1984 年 58 巻 6 号 p. 477-482
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の患者に経気管吸引法 (TTA) を施行し, Branhamella catarrhalisを, TTA細菌陽性の慢性下気道感染症23例・35回中の8回 (22.9%) に検出した.
    すべてにおいてB. catarrhalisは, 他の細菌といっしょに, 複数菌として検出されており, 本菌の菌量は, 同時に検出された他に細菌に比し, 同等又は多かった. 同時に検出された細菌はKlebsiella pneumoniae2回, Serratia marcescens2回, Streptococcus pneumoniae1回, Haemophilus influenzae1回, Streptococcus pneumoniae+ γ-streptococcus 1回, Haemophilus influenzae+Streptococcus pneumoniae+non-fermentative GNR1回であった.
    同時喀出疾ではB. catarrhalisは8回中3回 (37.5%) しか検出しなかった. 本菌による呼吸器感染症の正確な把握にはTTAが不可決と考えられた.
    以上よりB. catarrhalisの慢性下気道感染症における役割は決して少ないものではないと考える.
  • 奥田 俊郎, 廣澤 千男, 遠藤 宣子, 善養寺 浩
    1984 年 58 巻 6 号 p. 483-490
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980年12月より1982年7月までの期間, 杏林大学病院中央検査部細菌検査室において尿路感染症の推定起因菌として分離されたSerratia marcescens 196株について血清型別を行った. その結果, O-13型60株 (30.6%), O-2/3型56株 (28.6%), O-12/14型18株 (9.2%), O-14型10株 (5.1%), その他の血清型21株 (10.7%) および型別不能31株 (15.7%) であった. O-12/14型は1980年12月から1981年9までの期間にO-2/3型は1981年6月以降それぞれ集中的に, 0-13型は全期間を通じて分離され, これら3つの血清型による院内流行が推定された.
    O-2/3型, O-13型, O-12/14型および型別不能の139株についてMICを測定した結果, sulbenicillinおよびcefmetazoleには高度耐性を示した. 血清型によりgentamicin (GM) の薬剤感受性に差が認められた. O-12/14型は高い感受性を示したが, その他の血清型では中等度耐性であった. 各血清型ともamikacin (AMK) には中等度耐性を示した. またO-13型は1981年から1982年にかけてGMに対して顕著な, AMKには緩やかな耐性化傾向が認められた. 各血清型ともmicronomicinおよびastoromicinには高い感受性を示した.
    今回流行が推定されたO-12/14型はAMK耐性であり, O-2/3型はGMおよびAMK耐性であった. O-13型はGMおよびAMKが耐性化の傾向にあった.
  • 中村 善明, 茂田 士郎, 藪内 英子
    1984 年 58 巻 6 号 p. 491-494
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Psendomonas cepaciaの加熱死菌 (0抗原) による家兎免疫で作製した10種の特異抗血清を用いて, P.cepacia105株の血清型別を行った. その結果, 92株 (87.6%) が型別され, A型6, B型2, C型22, D型19, E型11, F型11, G型6, H型5, I型5, J型5であった. 型別不能であった13株のうち, 10株は多価凝集株, 3株は非凝集株であった.
    P. cepaciaの血清型別は, 院内感染症の疫学解明に有用である.
  • 福見 秀雄, 木村 三生夫, 加藤 俊一, 村中 清一郎, 林 秀樹, 川名 林治, 島田 馨, 稲松 孝思, 浦山 京子, 大友 英一, ...
    1984 年 58 巻 6 号 p. 495-511
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肺炎球菌多糖体22価および23価ワクチンをそれぞれ173例, 163例に接種し, 発現した副反応の調査と抗体価測定 (23価ワクチン) を行った.
    副反応は局所反応として落痛が22価ワクチンで60.7%, 23価ワクチンで40.5%に認められ, 発赤, 腫脹, 硬結, 局所熱感の発現頻度は22価ワクチンで17.9~23.7%, 23価ワクチンでは4.3~12.3であった. 37.5℃以上の発熱は22価ワクチンで4.1%, 23価ワクチンでは1.9%にみられた. 全身反応の悪寒, 頭痛, 倦怠感, 違和感, 筋肉ないし関節痛は22価ワクチンで1.7~18.5%, 23価ワクチンでは4.9~14.7%であった. 局所反応, 全身反応とも症状の程度はほとんどのものが軽度であり, 発現期間も短日であった.
    抗体価測定は23価ワクチン接種対象者から30例を無作為に選びRadioimmunoassay法で行った. 接種後の幾何平均抗体価は接種前の2.7~6.8倍で2倍以上の上昇率は73~100%であり, 抗体反応は良好であった.
  • 那須 勝, 後藤 純, 後藤 陽一郎, 田代 隆良, 明石 光伸
    1984 年 58 巻 6 号 p. 512-517
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    主に臨床材料から分離されたBacteroides fragilis11株, no-B. fragilis11株 (B. distasonis 8, B. thetaiotaomicron 2, B.uniformis 1) の計22株を用い, モルモットの背部, 側腹部皮内を炎症の場とした両菌群の病原性を比較した. 病原性の程度は, 皮内に0.1mlの菌液を接種し24時間後に直径10mmのlesionを形成するのに要する菌量であらわした. 生菌接種群は死菌接種群よりも全般に大きいlesionを形成した.B. fragilisはnon-B. fragilisに比較して, 生菌接種群では平均約3倍, 死菌接種群では約2倍強い病原性を示した. 死菌による皮内局所の反応は菌体物質によるtoxicity, 生菌による反応は菌の増殖性または残存性, 組織侵襲性によるものと解釈した場合, B. fragilisはnon-B. fragilisよりも有意にモルモット皮膚内に残存し, 病原性が強いことが考えられた (p<0.1).
  • 今泉 厚, 鈴木 洋二, 佐藤 勇治
    1984 年 58 巻 6 号 p. 518-524
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    製法の異なる3種類の静注用ヒト免疫グロブリン製剤 (インタクト;GG, スルポ化;GGS, 及びペプシン処理;GGP) を用いて, マウス百日咳菌噴霧感染実験における感染防御効果及び百日咳毒素 (Pertussistoxin;PT) に対する中和効果を比較し, 以下の結果を得た.
    1) 同一ヒトプール血漿由来のGG, GGS, GGPの感染防御効果を白血球増多症の抑制, 体重増加の度合, 及び生存率を指標にして検討した. GG及びGGSはこれら全ての指標において感染防御に有効であった. しかしGGPの効果はほとんど認められなかった.
    2) GG, GGS, 及びGGP中の百日咳菌凝集抗体価, 抗F-HA (Filamentous hemagglutinin) 価及び抗PT価を調べた結果, いずれの免疫グロブリン製剤においても, ほぼ同程度にその存在が確認されたが, PT中和能はGG及びGGSには認められたがGGPには認められなかった.
    3) PTで高度に免疫したウサギ血清より得られたGG及びGGPを用いた場合でも, GGは感染を防御し得たが, GGPにはその効果が認められなかった.
    これらの結果は実験的百日咳菌感染症に対して, 静注角ヒト免疫グロブリンが有効であったこと, 及びその防御効果の発現には免疫グロブリンのFc部分を保有していることが必須であることを示唆した.
  • 小林 宏行, 高村 研二, 河野 浩太, 小野寺 壮吉, 佐々木 信博, 長浜 文雄, 川上 義和, 本間 行彦, 松崎 道幸, 谷村 一則 ...
    1984 年 58 巻 6 号 p. 525-555
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ピリドンカルボン酸系の合成経口抗菌剤DL8280の呼吸器感染症に対する有効性, 安全性及び有用性を検討する目的で, Amoxicillin (AMPC) を対照として二重盲検比較試験を実施した.
    対象疾患は慢性気管支炎, び漫性汎細気管支炎の感染性増悪及び気道感染を伴った慢性呼吸器疾患 (気管支拡張症, 気管支喘息, 肺気腫, 肺線維症, 陳旧性肺結核など) ならびに細菌性肺炎とした. 投与量はDL. 82801日量600mg分3, AMPC1日量1,000mg分4とした. 臨床効果, 細菌学的効果, 安全性, 有用性を検討し, 以下の成績を得た.
    1) 臨床効果:DL-8280投与群では, 122例中, 著効6例, 有効89例, やや有効16例, 無効10例, 判定不能1例 (有効率78.5%), 一方AMPC投与群では, 115例中, 著効5例, 有効73例, やや有効14例, 無効22例, 判定不能1例 (有効率68.4%) であった. すなわち, DL-8280投与群でAMPC投与群に比し, その臨床効果の点ですぐれた傾向が示された. また, 疾患群別に層別した場合, 慢性気道感染群において, DL-8280投与群で傾向差をもってすぐれた成績が得られた.
    2) 細菌学的効果:DL-8280投与群79株で消失率88.6%, AMPC投与群72株で消失率61.1%が示され, その消失率に有意差が認められた. 菌別に層別した場合,H.influenzaeにおいて, DL-8280投与群で有意に高い消失率が示された.
    3) 副作用:副作用発現率はDL-8280投与群132例中6.1%, AMPC投与群130例中7.7%であり, また, 臨床検査異常値発現率はDL-8280投与群126例中11.1%, AMPC投与群127例中14.2%であり, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
    4) 有用性:DL-8280投与群では, 124例中, 非常に満足78例, 満足16例, まずまず17例, 不満13例, 一方, AMPC投与群では, 117例中, 非常に満足60例, 満足15例, まずまず16例, 不満22例, 非常に不満4例で, DL-8280投与群で有意にすぐれた成績が得られた.
    5) 以上の成績より, DL-8280は下気道領域以下の呼吸器感染症, とくに慢性気管支炎などのいわゆる複雑性呼吸器感染症に対して, 臨床的に高い有用性が示唆される薬剤と考えられた.
  • 吉岡 朗, 弘中 貢, 鵜木 哲秀, 中村 功, 亀井 敏昭, 国広 誠子, 上田 尚紀
    1984 年 58 巻 6 号 p. 556-561
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近我々は急性白血病の末期に肝, 脾など多臓器に結節性病変を多発した特異な播種性カンジダ症の一剖検例を経験した. 症例は26歳, 女性, Acutelymphocyticleukemiaの診断にて多剤併用化学療法を数回試みたが寛解に入らず, 著しい穎粒球減少と共に39~40℃の高熱, 躯幹, 四肢に小豆大の紅色丘疹を生じた. 又, 筋肉痛は訴えなかったが, 生化学検査上, glutamic oxaloacetic transaminase (GOT) のみ3.185IU/Lと著しい高値を示した. 生前の血液, 咽頭, 尿培養ではカンジタ陰性であった. 剖検にて肝に大豆大の結節を無数に認めた. 同様に病変は脾, 腎, 胃, 小腸, 肺にも認めた. 病理学上これらは凝固壊死より成り, 内部にカンジダ菌系を多数認めた. 肺病変にはアスペルギルス菌系も伴っていた. このような播種性カンジダ症の報告は本邦では少なく, 今後増加するものと思われる. 播種性カンジダ症の生前診断は極めて困難であるが, 本例の皮膚病変及びGOTの上昇はその一兆候であった可能性が高い. 今後急性白血病を含むCompromised stateの患者にこのような徴候を認めた時は, 皮膚, 筋等を積極的に生検し, 播種性カンジダ症の早期診断に努めるべきであろう.
  • 田口 豊, 広瀬 誠, 井関 幹郎, 鈴木 敏雄, 永井 龍夫
    1984 年 58 巻 6 号 p. 562-565
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は, 2歳の女児で, 発熱と嘔吐を主訴に入院し, 血液, 髄液よりListeria monocytogenesを検出した. Ampicillin (以下AB-PC) の経静脈投与により髄液所見の改善は認められたものの発熱, 不機嫌, 及び血清学的炎症反応は遷延した. 化学療法剤をAB-PCよりChloramphenicol (以下CP) に変更後, 急速な臨床所見の改善をみ, 患児は後遺症なく治癒した. 経過中のAB-PC髄液中濃度を経時的に測定したところ, 髄液所見の改善に伴いAB-PC髄液中濃度は, 大きく低下していた. AB-PCによる治療中, 臨床経過が遷延した原因の一つとして, 髄膜炎の改善に伴いAB-PCの髄液移行が減少した為, 充分な髄液濃度が得られなかった事が示唆された。
  • 1984 年 58 巻 6 号 p. 566-568
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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