感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
58 巻, 7 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 野々口 律子
    1984 年 58 巻 7 号 p. 569-582
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本邦において, アミノ配糖体薬修飾酵素の4′, 4′′-アデニリル転移酵素 (4′, 4′′-AAD) を産生するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS) が見い出された機会に, これらのCNSが検出され始めた極めて初期のある一定期間に区切って, 病院内外におけるこれらの菌の検出状況を調べ, hospital strainとしての意義について検討を行った.
    1. 検索期間中に収集したCNSより無作為に抽出した299株 (入院由来株156株, 外来由来株143株) を対象とした. 入院由来株では, 尿 (28.2%), 喀痰 (28.8%), 便 (25.6%) からの検出が大部分を占め, 外来由来株では尿が最も多く (46.2%) 次いで便 (22.4%) 耳漏 (16.1%) の順であった.
    2. ディスクによる感受性検査で, kanamycin, gentamicin, amikacinのいずれかに耐性を示す菌は, 入院由来で96株 (61.5%), 外来由来で40株 (28.0%) であった.
    3. それらのアミノ配糖体薬 (AGs) 耐性菌のうち, 4′4′′-AADを産生すると推定される菌は, 入院由来で17株 (10.9%), 外来由来で9株 (6.3%) 検出されており, それらを菌種別にみると入院, および外来由来とも各1株を除いてすべてS6pi Semisisであった. これらの菌株のAGS感受性成績は, tobramycinとKMには高いMICを示し, AMKに対しても6.25-25μg/ml程度のMICを示したが, GMには感性であった.
    4. AG s耐性菌の中, 最も検出頻度の高いGM耐性菌 (2′-リン酸転移酵素と6'-アセチル転移酵素を産生すると推定される菌) は, 入院由来株の方に多く, いわゆるhospitalstrainとしての裏付けがなされたが, 4′, 4′′-AADを産生すると推定される菌の分離は, 入院と外来由来株との間で分離率に有意差は認められなかった. そのことから, 現時点では4′, 4′′-AAD産生菌はhospital strainとは言い難いが, すでに病院内外に広く分布し始めていることから, 今後の薬剤の使用方法によつては, 充分にhospital strainとなり得ることが推測された.
  • 橘 宣祥, 楠根 英司, 横田 勉, 志々目 栄一, 岡山 昭彦, 津田 和矩
    1984 年 58 巻 7 号 p. 583-589
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    間接蛍光抗体法によるつつが虫病患者の血清診断に, 宮崎地方の弱毒分離株2株 (入江, 平野) の抗原を用い, 以下の成績をえた.
    急性期血清は入江又は平野抗原に対して標準株よりも高い抗体価を示し, また早期から検出されるので, 診断上有用であった.
    感染リケッチアの血清型の判定は入江, 平野両株に対する抗体価を比較すると容易であった. 抗原株による抗体価の差異は回復期血清では若干不明瞭となったが, 罹患後0.5-3.5年で抗体価が低下した血清では, 入江, 平野株への抗体価が高く, 長期間の経過観察にも適していることが示唆された.
    これらの抗体価とIgクラスの関連は認められなかった.
  • 那須 勝, 後藤 純, 後藤 陽一郎, 田代 隆良
    1984 年 58 巻 7 号 p. 590-595
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Entmbacter cloacadによる院内感染の発生状況やその感染経路などを明らかにするために, 本研究は行われた.
    Traubらによるbacteriocin型別法 (J. Clin. Microbiol., 10: 885-889, 1982) に従って, 1982年3月から1983年7月までに大分医科大学病院において, 入院患者から分離された150株のE. cloacaeをタイピングした. そして本菌の型別成績を検討し, 本法の有用性について考察を加えた.
    本法による成績は, Minitek同定システム (BBL) によるコードNo. による生物型よりも多くの種類に区分された. 供試した150株は10種のbacteriocin型に分けられ, 7型 (15.3%), 5型 (10%), 13型 (9.3%), 3型 (8.7%) などの順に型別された. 19.3%の株は型別不能 (NT) で, 21.3%は原法に記載されていない型 (UC) を示した. 型別成績の再現性は, 不定の型を示した株がみられたが, 一定の設定条件下で型別を行えぱ, 本法は病院内感染をコントロールしてゆく上に簡便でかつ有用な方法であると思われた.
    E. cloacaeのbacteriocin型別成績の分布は, 年度別, 病棟別, 由来別にそれぞれ特徴がみられ, 本菌はSermtia marcescensと同じように院内感染菌として扱われるべき菌であることが考えられた.
  • 高田 伸弘, 立藤 規子, 緒方 昭
    1984 年 58 巻 7 号 p. 596-602
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近の寄生虫感染の疫学的変遷あるいは地域における新設医大の調査研究の方向を考える一資料として, 福井県における寄生虫病の発生頻度について, 1982年4月教室開設と同時に調査を実施した.
    県医師会員に対するアンケート調査の回収率は低く16%であったが, 寄生虫病に対する関心度は地区別の平均で72%であった. 専門別医師の回答数は予想通り内科系に多かったが, 皮膚科の関心も高かった. 過去10年を境とした県内医師における病種ごとの症例経験度では, 追跡調査や文献的考察も加えた結果, 風土病的性格のものは減少する反面, 日和見感染性原虫症や人獣共通寄生虫症とくに幼虫移行症は増加の傾向にあり, さらに北陸地方の特色としてはアニサキス症や広節裂頭条虫症が多かった. 節足動物被害は皮膚科に普通であるが, 慈虫病などはまだ不明な点が多かった.
    教室開設から1年半の間に持込まれた検査依頼は計13件であったが, 病種としてはアンケート結果と同様の傾向を示した.
    県内での寄生虫保有状況についての実地調査の手はじめとして丸岡町で検便・検肛を実施できたが, 土壌媒介性蠕虫類が減少した陰に, 通常の集団検査では検出できない原虫類は未だ温存されていることが分った. また, 県内に散在する蠕虫浸淫や嶢虫の蔓延状況も残された課題である.
  • 松本 慶蔵, 宇塚 良夫, 力富 直人, 田口 幹雄, 隆杉 正和, 原田 知行, 高橋 淳, 大石 和徳, 鈴木 寛, 野口 行雄, 宍戸 ...
    1984 年 58 巻 7 号 p. 603-612
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器感染症の気道病変の進展と起炎菌のエコロジーに関する研究の一環として, 病初期および医療施設受診以前の無自覚期の解析を目的に, 40歳以上の住民を対象とする長崎県愛野町呼吸器病検診を実施した. 対象住民約1,300人中, 徒歩受診可能な, 男261, 女424, 計685名 (約53%) の検診を行い, このうち, 男103名 (39.5%), 女97名 (22.9%) から喀痰が採取できた. 喀痰定量培養で検出された呼吸器病原有意菌種は延113株で, インフルエンザ菌34, 肺炎球菌28, 黄色ブ菌22の3菌種で74%を占めた. 有意菌種が107/ml以上検出された48名中, 単一菌種は38 (79%) で, インフルエンザ菌15, 肺炎球菌11, 黄色ブ菌と化膿連鎖球菌各3が主体であり, 複数菌検出10名 (21%) では, インフルエンザ菌と肺炎球菌の同時検出が7であった. 長崎大学熱研内科における患者からの分離菌種と比較すると, インフルエンザ菌以外のグラム陰性桿菌が2検体と非常に少ないこと以外は, 酷似した成績であった. 107/m1以上の有意菌検出者48名中, 40名は臨床的に慢性呼吸器感染症の存在は見出し得ず, 8名が初期・軽症の慢性気管支炎と診断された. 以上から, 慢性下気道感染症の早期においてはインフルエンザ菌と肺炎球菌が関与し, その他のグラム陰性桿菌は気道病変が進行した後に出現してくるという, 起炎菌の方向性に関する私共の推論を裏付ける成績であった.
  • 深見 トシヱ, 鴻巣 晶子, 彦坂 恵子, 柏 真知子, 右田 琢生, 西川 慶繁, 村田 三紗子, 今川 八束, 斎藤 誠
    1984 年 58 巻 7 号 p. 613-627
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    内科, 小児科および感染症科の散発下痢患者7,246例を対象として, 1979年4月から1983年12月 (感染症科は1981年12月まで) の4年9ヵ月間にわたり, Campylobacter属菌の検索をおこない次の成績を得た.
    内科C. jejuni 5.2%, C. coli 0.1%, C. fetus subsp. fetus 0.04%, 小児科C. jejuni 14.5%, C. coliO.2%, 感染症科C. jejuni 11.2%に認められた.このうち内科, 小児科外来患者201症例について疫学的調査をおこなった結果, 年齢分布は6ヵ月から82歳の広範囲であり, 10歳以下の若年者が全症例の61%(123例) を占め, 特に乳幼児から多く検出された. 性別検出頻度は男性119例, 女性82例で15歳以下では性比が3: 2となり, 男子から多く検出された. しかし成人では性別による差は特に認められなかった.
    主な臨床症状は下痢100%, 腹痛が約半数に, 特に小児では発熱73.6%, 血便は39.3%に認められた. 複数菌感染例は21例 (10.4%) に認められ, これらの21例中Salmonellaが15例, V. parahaemolyticus 4 例, Y. enterocolitica1例, そして1例はSalmonellaと病原大腸菌 (EPEC) の2菌種が同時に検出された. 排菌数については発病後3日までの50症例のうち44例 (88%) が105CFU/g (CFU: colony formingunits) 以上のC. jeuniを排菌し, 病日が進むにしたがって排菌数が減少する傾向を示した.
    C. jejuniにたいする37薬剤の抗菌力測定をおこない次の結果を得た.Macrolide系5剤, Aminoglycoside系5剤, Tetracycline系2剤, Chloramphenicolの抗菌力は強く, そしてPyridonecarboxylic acid系6剤のうちでは最近開発されたDL-8280, AT-2266, MiloxacinとNorfloxacinの抗菌力が強かった.
    そのほかPenicillin系4剤, Cephalosporin系10剤, Novobiocin, Colistin, Polymyxin B, Bacitracinの抗菌力を測定したが, Ampicillinを除いては, その抗菌力は弱かった.なおErythromycinには25μg/mlの高いMIC値を示す1株 (0.7%) が認められた.
  • Ibuprofenを対照薬とした二重盲検比較試験
    松本 慶蔵, 藤森 一平, 螺良 英郎, 佐久間 昭, 林 雅人, 工藤 国夫, 木村 久夫, 河野 通律, 関田 恒二郎, 竹田 義彦, ...
    1984 年 58 巻 7 号 p. 628-646
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しい非ステロイド性抗炎症剤oxaprozin (OXP) の急性上気道炎に対する有効性および安全性をibuprofen (IBP) を対照薬として多施設二重盲検法により比較検討した. OXPは1日400mg 1回投与, IBPは1日600mg分3投与とし, 投与期間は3日間とした.
    その結果, 最終全般改善度 (軽度改善以上: OXP群93.6%, IBP群86.2%), 概i括安全度 (安全性に問題なし: OXP群96.3%, IBP群96.1%), 有用度 (やや有用以上: OXP群87.2%, IBP群82.8%) において両群間に有意差は認められなかったが, 改善率, 安全率, 有用率のいずれにおいてもOXP群がやや高く, 急性上気道炎に対してOXPは少なくともIBPと同等以上の有効性, 安全性をもつ有用な薬剤と考えられた.
  • ヌードマウスにおける実験的つつが虫病リケッチア感染症
    河村 伸一
    1984 年 58 巻 7 号 p. 647-662
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    リケッチア感染症の免疫学的防御機構を研究するために, つつが虫病リケヅチアの強毒Gilliam株ならびに弱毒入江株を用いて, 先天的に胸腺を欠如するヌードマウスにおける感染経過, 抗生物質治療の効果血清抗体の推移ならびに免疫血清あるいは脾T細胞移入の効果を検討した.
    ヌードマウスは強毒株だけでなく弱毒株に対しても高い感受性を示し, テトラサイクリン治療によっても回復しなかった.
    強毒株感染ヌードマウスには7S抗体だけでなく, IgM抗体の上昇もみられなかった. 免疫血清の移入は, 正常マウスの場合と異なって, ヌードマウスにはほとんど防御効果を示さなかった. 免疫脾T細胞の移入は, 正常マウス, ヌードマウスともに有効な防御効果を示したが, ヌードマウスではやや効果が劣っていた. この効果はdonorマウスの免疫10日後にはわずかながら認められるようになり, 免疫1カ月以降に強固となり, 12ヵ月後まで減弱することなく持続した. 免疫脾T細胞の抗Thyあるいは抗Lyt-1.2同種血清処理により感染防御効果は消失し, 抗Lyt-2.2同A種血清処理によっても著明に減弱した.
    弱毒株感染ヌードマウスに対しては, 免疫脾T細胞と同様に, 非免疫脾T細胞の移入によっても十分な防御効果が得られた。しかし弱毒株免疫脾T細胞の移入は, 強毒株による攻撃に対してまったく防御効果を現さなかった.
  • 原 耕平, 斎藤 厚, 山口 恵三, 鈴山 洋司, 重野 芳輝, 中村 功, 小田 俊郎, 奥野 一裕, 岩崎 博円, 斎藤 玲, 富沢 磨 ...
    1984 年 58 巻 7 号 p. 663-702
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しいセフェム系抗生物質Ceftazidime (CAZ) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を客観的に評価する目的で, Cefotiam (CTM) を対照薬として, 二重盲検法により比較検討を行った.
    投与法は, 両薬剤とも1回1g (力価) を1日2回, 14日間点滴静注とし, 以下の成績を得た.
    1.小委員会判定による総合臨床床効果は, CAZ群で73.2%(90/123), CTM群で72.0%(90/125) の有効率を示し, 両薬剤群間の有意の差は認められなかった.
    疾患群別にみると, 細菌性肺炎および肺化膿症では, CAZ群で60.6%(40/66), CTM群で74.2%(49/66) とCTM群の有効率が高かったが, 両薬剤群間に有意な差は認められなかった.慢性気道感染症では, CAZ群の有効率が86.0%(43/50), CTM群が66.7%(36/54) と, x2検定においてCAZ群の方が有意 (p<0.05) に優れた成績であった.
    2.主治医判定による総合臨床効果は, CAZ群で70.7%(104/147), CTM群では68.7%(101/147) で, 両薬剤群間に有意な差は認められなかった. これを疾患群別にみると, 細菌性肺炎および肺化膿症では, CAZ群の有効率が70.1%(68/97), CTM群は71.7%(66/92) と有意差は認められなかったが, 慢性気道感染症では, CAZ群が79.5%(35/44), CTM群で66.7%(34/51) とU検定においてCAZ群が優れた傾向 (p<0.10) が認められた.
    3.細菌学的効果を判定し得た112例 (CAZ群55例, CTM群57例) において, U検定ならびにx2検定でCAZ群に菌消失例が有意、に多かった (p<0.01).
    なお, 菌交代を含めた消失率では両薬剤群間に有意差を認めなかった.
    4.副作用および臨床検査値異常の発現率には, 両薬剤群間に有意な差は認められなかった
    5.有用性は, 小委員会判定において, 慢性気道感染症に対しCAZ群の有用率は84.0%(42/50), CTM群のそれは66.7%(36/54) であり, x2検定においてCAZ群の有用率が高い傾向 (p<0.10) を示した
    以外, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.また, 主治医判定では両薬剤群間に有意の差は認められなかった.
    以上のように呼吸器感染症に対するCAZの有効性と安全性を総合的に評価すると, 本剤はCTMと同等の成績を示し, 有用性の高い薬剤と考えられた.
  • 鵜木 哲秀, 中村 功, 森 勉, 亀井 敏明, 国広 誠子, 上田 尚紀
    1984 年 58 巻 7 号 p. 703-708
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    家畜の出血性敗血症や肺炎の起炎菌として知られているPasteurella multocida (P.multocida) による人の感染症は近年かなり注目されているが本菌による呼吸器感染症は比較的まれで, そのなかでも膿胸は極めて少ない. 我々は英語文献上16例目, 本邦第1例と思われる本菌による膿胸例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例: 78歳の男性, 農業発熱, 咳嗽, 喀痰, 左胸部痛をもって発症, 5日後に当科入院;左胸水貯溜と急性炎症反応が認められた.血性胸水からP.multocidaが純培養状に検出され, sulbenicillinつづいてcephaloridineの使用により自他覚的改善が認められた. 一方, 本患者は入院時に多発性骨髄腫IgG x型と診断されていたため, 膿胸の軽快を待って入院4週目よりcyclophosphamideの使用を開始したが, 入院第33病日に原因不明の急死をとげた. 剖検では骨髄, 脾に幼若な形質細胞の浸潤が認められたが, 他の実質臓器への浸潤は軽度であった.肺には慢性気管支炎の像が認められたが, 膿胸は胸膜の線維化を残して治癒していた. 本症例は多発性骨髄腫, 慢性気管支炎を基礎疾患として有し, 農業に従事していたことから, P.multocidaの経気道感染により発症した膿胸と考えられた.
  • 1984 年 58 巻 7 号 p. 709-715
    発行日: 1984/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
feedback
Top