感染症学雑誌
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59 巻, 1 号
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  • 第1報基礎的検討
    地曳 和子, 中村 佐栄子, 大井 聖至, 熊田 徹平, 出村 黎子, 小田桐 恵美, 出村 博, 清水 喜八郎, 山森 俊治
    1985 年 59 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionella 症の診断のために, RIA法により尿中のLegionella 抗原の測定の基礎的検討およびモルモット感染実験を行った.
    標準可溶性抗原は, L.pneumophila, Philadelphia1 の菌液を加熱殺菌後, 遊離した可溶性成分を用いた.抗血清は, ホルマリン死菌をウサギに免疫して作製し, 硫安塩析, DEAE cellulose, Sephadex G-200 column によって精製した.測定は尿試料または標準可溶性抗原500μ1に抗体コートビーズを加え37℃90分インキュベーション後, 1251標識IgG液を加え更に37℃90分インキュベーションし, ビーズを洗浄後1251をγ カウンターにて測定した.測定感度は12.5 Unit/ml, 標準曲線の各濃度のC.V.は2.7~9.2%, 希釈試験も良好な結果を示し, 交叉試験では本抗体はSerogroupIにのみ特異的に反応した.Sephadex G-200 columnおよびG-75 columnによるゲル濾過で, 可溶性抗原はvoidvolumeに溶出される高分子であるが, 感染モルモット尿では種々の分子量の抗原が含まれていた.モルモットにL.pneumophila, Philadelphia 1109 cells/mlを接種後, 経時的に尿中抗原をRIA法により測定し, 9匹中8匹で翌日に尿中抗原が検出され, 3日から8日目まで持続したが, 陰性1例も認められた.
    以上の結果, レジオネラ可溶性抗原のRIA法は簡便かつ短時間で測定され, 感染早期からの検出が可能であるため, Legionella症の診断に有用な検査法と考えられた.
  • 第2報臨床例について
    熊田 徹平, 友利 直樹, 加園 恵三, 出村 黎子, 小田桐 恵美, 大井 聖至, 出村 博, 封馬 敏夫, 清水 喜八郎, 鎮目 和夫, ...
    1985 年 59 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    第1報においてLegionella症診断のためにRIA法により尿中五Legionella抗原の測定の基礎的検討, およびモルモット感染実験の成績を報告した.
    本法を用いて臨床例について検討を行ったところ, 若年者のLegionella症の散発例を診断しえた.
    本法は, 早期に, また有効抗生剤の投与後においても陽性を示す点, 臨床診断上きわめて意義のある検査法である.また感度の面においてもすぐれていることは, 血清抗体価が境界値のものであっても診断が可能であることを意味しており, その面でもすぐれた診断法である.
    RIAによる尿中Legionella抗原測定により, 本邦において初めて診断しえた症例を報告する.
  • 柴田 政俊, 和山 行正, 山本 満, 久保田 好之, 松浦 基博, 本間 遜, 平山 寿哉, 加藤 巌
    1985 年 59 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床及び自然環境由来緑膿菌のロイコシジソ及びプロテアーゼ, エラスターゼ, エキソトキシンの産生性並びにOEPの存在の有無を調べた.ゲル内拡散法を用いて抗原は高度に精製したロイコシジン, プロテアーゼ, エラスターゼ, エキソトキシン及びOEPを用い.抗血清は交叉反応を示さない特異性の高いものを用いた.
    被検菌をペトリ皿の一端に塗抹し37℃ で2日間培養後クロロホルム蒸気を接触させて殺菌後集落より5mm位の所に5つの穴をあけそれぞれの穴に5種の抗血清を入れ25℃ で一夜放置後沈降線の有無により産生性を判定した.
    その結果臨床由来株90株中87株 (96.7%), 自然環境由来株30株のすべてにロイコシジンの産生性を認めた.
    プロテアーゼ産生性は臨床由来株で82.2%, 自然環境由来株で73.3%, エラスターゼ産生性はそれぞれ83.3%, 96.7%, エキソトキシン産生性は98.9%, 100%に認められた.
    OEPは由来の如何に拘らずすべての株に存在している事を確認した.
  • 和山 行正, 柴田 政俊, 山本 満, 久保田 好之, 松浦 基博, 本間 遜, 平山 寿哉, 加藤 巌
    1985 年 59 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒト血清中の抗ロイコシジン抗体価を測定するため, ELISAによる抗体価測定法を検討した.ついで患者血清に応用して抗ロイコシジン抗体が上昇しているかどうかについて調べた.
    びまん性汎細気管支炎 (DPB) 患者のうち緑膿菌の定着した患者群では, 未感染患者・一過性感染患者及び健康者群に較べて明らかに抗ロイコシジン抗体価が上昇していることを認めた.
  • 柏木 征三郎, 梶山 渉, 池松 秀之, 野村 秀幸, 林 純, 新宮 世三, 林田 一男, 田中 健, 名取 英世, 加地 正郎
    1985 年 59 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    九州は成人T細胞白血病adult T-cell leukemia (ATL) が多発し, adult T-cell leukemia virus (ATLV) に対する抗体 (anti-ATLA) の陽性率は高いとされている.九州南部の宮崎県県南地方におけるanti-ATLAの陽性率を検討するために, 宮崎県日南市に存在する一般総合病院に, 1983年8月から12月までに入院した入院患者914例を対象としてanti-ATLAを測定した.測定方法はエーザイ株式会社で最近開発された酵素抗体法によるキット (E-0733) を用いた.
    1.全体のanti-ATLA陽性率は18.9%(914例中173例) であり, その陽性率は加齢と共に上昇し, 70歳以上では37.1%に達した.
    2.性別のanti-ATLA陽性率は, 男性18.1%, 女性19.6%とやや女性に高率であった.
    3.疾患別では, 新生物が36.7%と最も高率であり, ついで筋骨格系および結合組織系の疾患の33.3%であった.新生物のうち, 悪性リンパ腫は100%, 胃癌は41.7%, その他の癌は26.8%であった.筋骨格系および結合組織系の疾患では, 膠原病で陽性例はなく, とくに疾患特異性はみとめられなかった.
    4.吸光度の分布は, anti-ATLA陽性の173検体の平均は1.034±1.035であり, 陰性の741検体の0.038±0.023と比べて明確な差がみとめられた.
  • 二宮 紀郎
    1985 年 59 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日本脳炎の発病病理を明らかにする目的で, マウスの足踪に日本脳炎ウイルスの新鮮分離株を接種し, その前後の異なった時期にcyclophosphamide (CY) で処置を行い, 感染ならびに発症・死亡におよぼす影響を検討した.
    CY 1回処置群では, いずれの時期に処置した群でも, 感染価は対照群との間に差はなかった.しかし, 致死率は, ウイルス接種の2日前から4日後までの間に処置した群で上昇を示し, 感染マウスに対する死亡マウスの比は54.5%以上と高かった.
    CY2回および3回処置群では, 感染価, 致死率ともにいずれの時期に処置した群も上昇した.とくに, 致死率は, 2回および3回処置群ともに, 1回目の処置をウイルス接種と同日, 2回目の処置をウイルス接種の5日後から10日後の間, さらに3回処置群では, 3回目の処置を20日後までに行った群で著しく上昇した.それらの群において, 2回処置群の感染マウスは78.6%以上が死亡, 3回処置群の感染マウスは一般と高い値を示し, 94.1%以上が死亡した.
    CY処置マウスにおける感染から発症・死亡までの期間は, 接種ウイルス濃度が低い群に遅れて死亡する傾向がみられた.また, ウイルス接種後20日以上経って死亡したものは, 2回あるいは3回処置群に多数みられた.最も長い経過で死亡したマウスは, ウイルス接種後26日を要した.
  • 新井 俊彦
    1985 年 59 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    免疫グロブリンの効果は含んでいるそれぞれの病原体 (毒素を含む) に対する正常な特異抗体価によって決まる.しかし, 静注用に使われているヒト免疫グロブリン製剤は, ガンマ・グロブリン (Cohn fractionII) の凝集体を作り易い性質を除くためにいろいろな処理がおこなわれているので, 凝集抗体価や中和抗体価のみでは有効性を判定しにくい.そこで, スルポ化免疫グロブリン製剤について, 従来法による毒素・ウイルス中和活性をしらべると共に, 凝集反応にかえて, ELISA法を用いて各種日和見感染菌種の代表株に対する結合活性をしらべた.その結果, スルポ化工程は特に抗体活性を低下させないこと, スルポ化抗体も最初から補体活性化能をもっていることが確認された.これは, スルポ化免疫グロブリン製剤が, 鎖間ジスルフィド結合のスルポ化によって投与時の安全性を達成しているにもかかわらず, 完全な抗体としての機能をもっていることを示唆している.なお, 高い抗水痘ウイルス中和活性のあること, 抗菌抗体では, 表皮ブドウ球菌, 肺炎杆菌, 緑膿菌およびエンテロバクターに対する高い結合活性をもつことが確認された.スルポ化製剤は特異的補体活性化能もあり, Fc部分も正常であるから, これらの感染に対して高い防御効果を期待できることが示唆された.
  • 浦山 京子, 稲松 孝思, 島田 馨, 安達 桂子
    1985 年 59 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    糞便以外の臨床検体5検体 (内訳: 血液1, 胆汁1, 褥瘡2, 膿1) からC.difficileを分離した.分離症例5症例全例にC.difficile分離前にセフェム系薬剤を中心とした広域スペクトラムの抗生物質の投与歴があった.また感染病巣の部位, 発症から判断すると, C.difficileの起源は消化管細菌叢由来と考えられた.
  • 川崎 琴代, 澤木 政好, 西川 潔, 成田 亘啓, 三上 理一郎
    1985 年 59 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性, 10数年前より糖尿病に罹患.以後, 加療されるもコントロール不良であった.主訴は胸痛, 腹痛, 労作時息切れを訴え入院.入院時の胸部X線写真にて左胸膜炎と診断し, 左胸部の肩甲骨線第9肋間, 後腋窩線第9助間の2ヵ所で胸腔穿刺を施行した結果, 前者からは血性, 後者からは膿血性の性状の異なる2種類の穿刺液を得た.入院経過中, 発熱を認め, その時の穿刺液と血液培養からStreptococcus agalactiaeを検出した.胸部CTにて, 穿刺液の1つが左横隔膜下膿瘍に由来するものと判明し, 膿瘍ドレナージに加え, 糖尿病のコントロールとCefoperazone, Ampicillin等の投与により軽快した.Streptococcus agalactiaeによる成人男子の感染症の報告は少なく, ここに報告した.
  • 渋谷 恒文, 衛藤 宏
    1985 年 59 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Herpes zosterは後根神経節に潜伏していたvaricella-zosterウイルス (V-Zウイルス) が免疫能の低下した患者で再活性化され発症すると考えられている.これ迄はAra-A, acyclovir等が抗ウイルス剤として使用されてきたが, 本邦では一般に入手困難であり, 免疫不全患者でのherpes zosterの治療は重大な問題であった.最近我々は肺炎で入院中の患者に発症したherpes zosterに対しcimetidineを投与することにより著明な症状の改善をみた1例を経験した.患者は81歳の女性で, 悪性腫瘍の合併はなく, herpes zosterの発症とともにCRPの強陽性化をきたした.cimetidine 800mgを非経口的に投与することにより劇的に症状は軽快し, CRP, 血沈の改善を認めた.抗V-Zウイルス抗体価は発症5日目は16倍, 14日目に32倍となった.cimetidineはhistamine H2-receptorを持ったsuppressor T細胞による細胞性免疫抑制をブロックすると言われ, cimetidineによるherpes zosterの治療が報告されている.本邦ではまだcimetidineによるherpes zosterの治療の報告はないが, 十分に臨床応用可能と考えられた.
  • 1985 年 59 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 1985/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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