新しいセファマイシン系抗生物質Cefminox (MT-141以下CMNXと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を, Cefotaxime (以下CTXと略す) を対照薬剤として, well-controlled studyにより比較検討した.
感染症状明確な15歳以上の, 慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, び漫性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症症例を対象として, CMNXあるいはCTXを1回1g宛1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性を判定し以下の成績を得た.
1.薬剤投与260例 (CMNX投与126例, CTX投与134例) 中, 42例を除外した218例, (CMNX投与108例, CTX投与110例) について有効性の解析を行ない, 副作用は243例 (CMNX投与121例, CTX投与122例) について, 臨床検査値異常化は232例 (CMNX投与116例, CTX投与116例) について解析を実施した.
2.小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではCMNX投与群76.6%, CTX投与群67.0%, 肺炎・肺化膿症症例ではCMNX投与群 (58例) 78.9%, CTX投与群 (68例) 63.2%, 肺炎・肺化膿症以外の呼吸器感染症症例ではCMNX投与群 (50例) 74.0%, CTX投与群 (42例) 73.2%の有効率が認められ, 5%の有意水準では, 両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.
3.症状改善度では, 肺炎・肺化膿症症例におけるCRPの3日後の改善度, 肺炎・肺化膿症以外の症例における赤沈値の14日後の改善度はともにCMNX投与群がCTX投与群よりすぐれ, 両薬剤投与群間に有意差 (p<0.05) が認められた. 肺炎・肺化膿症症例における7日後の赤沈値と胸部レ線点数の改善度, 14日後の体温, CRPの改善度, 肺炎・肺化膿症以外の症例における胸部ラ音の3日後の改善度, 体温の14日後の改善度においてはいずれもCMNX投与群がCTX投与群より高率を示したが, 5%の有意水準では両薬剤群問に有意差を認めなかった.
4.細菌学的効果はCMNX投与群47例, CTX投与群52例について検討したが, 除菌率はCMNX投与群91.5%, CTX投与群80.8%で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
5.副作用解析対象243例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はCMNX投与群121例中6例, CTX投与群122例中9例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
6.臨床検査値異常化解析対象232例中, 何らかの検査値異常化の認められた症例はCMNX投与116例中26例 (22.4%), CTX投与116例中42例 (36.2%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた.臨床検査項目別にみると, 好酸球増多がCMNX投与116例中6例 (5.2%), CTX投与116例中16例 (13.8%) と, その出現率に関して両薬剤投与群間に有意差が認められた.
7.有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではCMNX投与111例中極めて有用61例 (55.0%), 有用20例 (18.0%), CTX投与110例中極めて有用43例 (39.1%), 有用27例 (24.5%), 肺炎・肺化膿症症例ではCMNX投与60例中極めて有用34例 (56.7%), 有用11例 (18.3%), CTX投与68例中極めて有用25例 (36.8%), 有用16例 (23.5%) と, ともにCMNXの有用性がすぐれ両薬剤投与群間に有意差 (p<0.05) が認められたが, 肺炎・肺化膿症以外の症例においては, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
以上の成績より, CMNXは呼吸器感染症の治療においてCTXより有意にすぐれた臨床的有用性をもつ薬剤であると考えられる.
抄録全体を表示