感染症学雑誌
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59 巻, 6 号
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  • 第2報-腸球菌敗血症46例の臨床的検討
    岡 慎一, 島田 馨, 稲松 孝思, 浦山 京子
    1985 年 59 巻 6 号 p. 545-550
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1972年6月から, 1984年3月までの間に, 931例の敗血症例を経験しており, 腸球菌敗血症は70例 (7.5%) であった. このうち, 49株が保存されており, species levelまで同定を行なった49株の, 原発巣, 予後についてカルテ解析を行ない得たのは46例であった.
    敗血症46例のうち, monomicrobial bacteremia16例 (34.8%), polymicrobial bacteremia 30例 (65.2%) であった. 原発巣は, 尿路15例, 肝胆道10例, 褥瘡10例, 不明12例であり, 尿路15例中13例にバルンカテーテルが留置されていた. また, 尿路においては, monomicrobial bacteremia, polymicrobial bacteremiaは, ほぼ同頻度であったが, 肝胆道, 褥瘡においてはほとんどがpolymicrobial bacteremiaであった. 菌種別にみると, S. faecalisが34株 (69.4%), S. faecium 8株 (16.3%), S. avium 6株 (12.2%), 不明1株であった. 尿路由来の敗血症では15例中14例が, S. faecalisであったが, 肝胆道由来, 褥瘡由来の敗血症においては, S, faecalis, S. faecium, S. aviumの3種がほぼ同頻度であった.
    敗血症発症後1ヵ月以内の死亡率は4].3%であった. 予後を悪化させる因子として, 敗血症発症前2週間以内の抗生剤の使用, DIC, Shockがあげられる (p<0.05). しかし原発巣の差や, 菌種の差, polymicrobial bacteremiaの有無は予後に有意の影響を与えなかった.
  • 岩永 正明, 田辺 将夫, 山本 耕一郎, 仲宗根 昇, 仲宗根 民男, 吉田 朝啓
    1985 年 59 巻 6 号 p. 551-558
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和55年, 沖縄県の都市河川からエルトール稲葉型のコレラ菌が分離された.その菌はカッパファージによる型別で古典ウボール型を示し, 川の汚染源は不明であった.世界各地で散発的に分離されるウボール型菌との性状を比較すると, この菌は他にみられない独特な性状を有していた.37℃, 24時間の培養を行なうと, 好気的条件下では白糖を分解しないが, 嫌気的条件下では分解した.従ってTCBS培養上でコロニーは緑色, TSI寒天の斜面部はアルカリ性であった.白糖加寒天高層培地では嫌気部で白糖を分解し表層部では非分解であった.
    また, エルトールコレラファージ型別で1型および6型を示したが, フィリピン, 台湾, バングラデシュ, ケニア等の株は全て4型または型別不能株であった.以上の点から考えて, この菌は亜熱帯の環境下で古くからその川に生息していた独特のコレラ菌である可能性を示唆していた.この菌はウサギ結紮腸管法によるDe-testでFA比が平均0.48であり, 多くは陰性または疑陽性を示した.腸粘膜への付着も殆どみられず, コレラ毒素を産生しなかった.河川水を原因としたコレラ患者の発生も今日までみられておらず, この菌の非病原性が示唆された.
  • 急性気道感染症患児の咽頭における成績
    増田 真理子
    1985 年 59 巻 6 号 p. 559-570
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    昭和55年10月から56年9月までの期間に, 帝京大学医学部附属溝m病院および小豆沢病院小児科の外来を受診した未治療の急性気道感染症の患児を対象とした.そして, 患児から咽頭擦過液を採取し, その中に含まれる病原細菌と, それらの病原細菌の発育を抑制する物質を産生する常在細菌 (発育阻止物質産生菌) についての疫学的な検索を行い, 以下に述べる成績を得た.
    1. 咽頭常在細菌における発育阻止物質産生性の有無は, S.aurews, S.pyogenes, S.pneumontaeおよびE.coliを指示菌として検索した.4菌種の指示菌に対して発育阻止作用を示す菌の検出率は, 1年を通じて60~70%であったが, 推計学的には4月や7月の検出率が低いという成績であった.
    2.同一検査材料からのS.pyogenesあるいはS.aurewsの分離と, それらに対して発育阻止作用を示す菌の分離頻度との関係は, 負の相関の傾向がみられたが, 有意の相関性は認められなかった.
    3.発育阻止物質産生菌の年齢別分離頻度は6ヵ月未満のグループで著しく低率であり, 6ヵ月以上のグループになるとその分離率は60~70%前後に上昇した.両者間には推計学的にも有意差が認められた.
    4.同一検査材料からの, S.aureecs, S.pyogenes, S.agalactiaeおよびS.pneumoniaeの分離と, それらに対する発育阻止物質産生菌の分離との問には, 相関性は認められなかった.
    5.指示菌として用いたS.auremsの発育を阻止する菌は, S.sangmisS.mitisが主であり, S.pyogenes等の連鎖球菌を阻止するのは, 主にS.salivariusであった.
    6.それらのS.sanguis, S.miti3およびS.salivariusは, 検査材料から分離されたS.aureus, S.Pyogenesに対しても, 指示菌に対して示したのと同じような抗菌域と阻止作用を有していた。
  • 沢畑 辰男, 飯塚 儀明, 藤代 典子, 仲村 妙子, 蛯原 紀枝, 村井 哲夫, 及川 淳
    1985 年 59 巻 6 号 p. 571-579
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    尿路感染症の原因菌の動向を調べる目的で単一菌と複数菌検出例に分け1980年から1982年までの3年間の統計的観察を行なった.
    1) 入院由来の単一菌検出例ではE. coliが583例 (18.3%) と最も多く, ついでS. marcescens463例 (14.5%), P. aeruginosa 403例 (12.6%) であった. 外来由来では3年間ともE. coliが最も多く40%以上の高い検出率を示した.
    2) 複数菌検出例ではEnterococcus groupが752例 (47.1%) と最も多く, ついでP. aeruginosa 458例 (28.7%), E. coli405例 (25.4%), P. mirabilis 291例 (18.2%) であった.3年間ともEnterococcusgroupが最も多く認められた.
    3) 年齢別では単一菌検出例の20~40歳でE. coliが高い検出率を示し, P. aeruginosaは10歳以下と40歳以上で高い検出率を認めた.
    4) 性別ではE. coliは女性が男性を, S. nzarcescensは男性が女性を上回わる検出率で有意差を認めた.
    5) Enterococcus groupの検出率増加は当院における第二, 三世代セフェム系抗生剤使用量増加が一因と考えられた.
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1985 年 59 巻 6 号 p. 580-587
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床分離Acinetobacter calcoaceticus, Pseudomouas cepaciaおよびPseudomonas maltophiliaの尿路感染性について, マウスを用いて検討を行った.
    全般的に, これらの菌種の正常マウスに対する尿路感染性は低いことが認められた.またこれらの菌種の起病性に及ぼす抗炎症剤, 免疫抑制剤の影響について検討したところ, betamethasone, prednisolone, cyclophosphamideおよびazathiopurine前投与マウスの感染性は無投与群よりも上昇することが認められた.
    マウス膀胱上皮細胞への付着性について検討したところ, 付着性は比較的低かった.さらにこれらの菌種の一部は, ヒトおよびモルモットの赤血球を凝集する性質を有していたが, mannoseの添加により阻害された.
  • 猪口 哲彰, 徳富 康男, 篠崎 正博, 中村 照, 加来 信雄, 無敵 剛介, 加地 正郎
    1985 年 59 巻 6 号 p. 588-596
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    重症熱傷患者15例について感染症の推移と免疫能について検討した。
    15例中11例が死亡し, うち7例が敗血症死であった.細菌は熱傷面で緑膿菌が早期より最も高頻度に認められ, 血液, 喀疾でも同様な結果が得られた.尿中にはserratiaの検出率が高く, その他いつれの部位でもacimtobacter, euterobacterが高頻度に検出された.これらの菌は早期より抗生剤に耐性を示し, そのうち緑膿菌はAMK, acimtobacterはMNCに最も長く感受性を有していた.
    一連の免疫能はリンパ球数の低下, うちT細胞の減少, subpopulationでもT4, 8, 11すべて減少, B細胞の相対的増加, Con A stimulation indexの低下, 補体系はC3, CH50の著減, C4の軽度低下, 液性免疫ではIgG, IgAの低下, IgMは不変であり, 死亡例が生存例より, より以上に低下していた.
    以上より免疫能の低下は易感染症を導き, 早期よりgram陰性桿菌 (特に緑膿菌) 感染症を併発して, opportunistic infectionを示唆していると思われた.
  • 黄色ブドウ球菌, ラテックス粒子の貪食作用と比較して
    桜井 明子, 里見 信子, 原中 勝征, 国井 乙彦
    1985 年 59 巻 6 号 p. 597-604
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas aemginosa, Staphylococcus aureus, およびLatex粒子に対する活性化マクロファージの貪食反庵における活性醸素とリソゾーム酵素の役割について検討した.Propionibacterium acnesにより活性化されたマウスの腹腔マクロファージを用いてinvitroでの貪食反応を行わせると, 活性化マクロファージでは常在マクロファージに比べて早期より多数のP.aemginosaを貪食し, それに伴う活性酸素の遊離と, 細胞外液への大量のリソゾーム酵素の放出が認められた.活性化マクコファージにGentamicinとγ-globuninを加えた群では常在マクロファージの未処置群に比べ, 貧食数で20倍, chemiluminescenceで280倍と, 著明な食菌, 細胞内殺菌の増強が認められた.これらの実験より, P.aemginosaの貪食と細胞内殺菌において活性酸素とリソゾーム酵素が重要な役割を果たしていることが示唆された.しかし, S.aureus, およびLatex粒子を貪食する場合には活性化マクロファージであっても活性酸素やリソゾーム酵素の変動は少なかった.
  • 三木 文雄, 生野 善康, 井上 英二, 葭山 稔, 村田 哲人, 谷澤 伸一, 坂元 一夫, 酒井 宏純, 斉藤 玲, 富沢 磨須美, 中 ...
    1985 年 59 巻 6 号 p. 605-638
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Lenampicillin (KBT-1585, 以下LAPCと略す) の細菌性肺炎に対する有効性と安全性をBacampicillin (以下BAPCと略す) を対照薬剤とし, 二重盲検法により比較的検討した.
    肺炎の存在明確な16歳以上の患者を対象とし, LAPC (1日1g) またはBAPC (1日1g) を原則として14日間経口投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 症状改善度, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性を判定した.
    薬剤投与症例209例中, プロトコールに基づいて違反例を除外し, 有効性の解析は187例, 副作用の解析は199例, 臨床検査値異常化の解析は193例について実施した.なお, 有効性の解析はプロトコールに厳密に合致した肺炎・肺化膿症症例と, これに非細菌性肺炎, 気道感染症を加えた全症例の双方について実施した.得られた成績は下記のとおりである.
    1) 肺炎・肺化膿症症例では膿性痰喀出例が, 全症例では膿性痰喀出例と, 咳嗽の強い症例が, それぞれLAPC投与群に有意に多数存在した以外, 他の背景因子に関して両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    2) 小委員会判定臨床効果 (著効と有効を合わせた有効率) は細菌性肺炎・肺化膿症ではLAPC投与群86.9%, BAPC投与群86.7%, 全症例ではLAPC投与群80.2%, BAPC投与群85.4%で, 両薬剤群間に有意差を認めなかった.
    3) 主治医判定臨床効果 (著効と有効を合せた有効率) は細菌性肺炎・肺化膿症ではLAPC投与群90.0%, BAPC投与群84.0%, 全症例ではLAPC投与群81.6%, BAPC投与群81.7%で, 両薬剤群間に有意差を認めなかった.
    4) 細菌性肺炎・肺化膿症症例における症状改善率に関して, 胸痛の3日後, 7日後の改善度はBAPC投与群がLAPC投与群より高く, 改善度の差に有意の傾向が認められた.
    5) 細菌学的効果は細菌性肺炎・肺化膿症症例では46例, 全症例では65例について解析された.細菌性肺炎・肺化膿症症例における除菌率はLAPC投与群78.3%, BAPC投与群85.0%, 全症例における除菌率はLAPC投与群75.0%, BAPC投与群80.0%で, 両薬剤群間に有意差を認めなかった.
    6) 副作用発現率はLAPC投与群4.1%, BAPC投与群7.8%, 臨床検査値異常化出現率はLAPC投与群19.4%, BAPC投与群22.0%であり, いずれも両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    7) 有用性に関して, 小委員会判定の有用率は細菌性肺炎・肺化膿症症例ではLAPC投与群86.9%, BAPC投与群80.0%, 全症例ではLAPC投与群80.2%, BAPC投与群79.2%で, 両薬剤群間に有意差は認められなかった. 主治医判定有用性についても両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
    以上のように, LAPC1日1gの細菌性肺炎に対する有効性はBAPC1日1gの有効性と比較して有意差なく, 安全性に関してもLAPC, BAPC間に有意差が認められなかった結果, LAPCはBAPC同様に, 呼吸器感染症の治療に有用性の高い抗菌薬と考えられる.
  • 坂口 武洋
    1985 年 59 巻 6 号 p. 639-645
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸管感染症の感染および感染防禦機構を研究する一環として, in vitroinvivoの感染モデル試験により, 赤痢菌等の病原性について検討してきた.本報では, 動物腸管結紮ループ起炎性試験 (Detest) を
    家兎・モルモット・マウスの3種で行い, 炎症発現の有無を観察し, 本試験の有用性について調べた.家兎・モルモットの腸管を用いた結紮ループ試験では, 侵襲性病原菌と毒素性病原菌ともに炎症を呈し陽性であった.マウス腸管では元来毒素性病原菌の検査法として用いられてきたが, 侵襲性病原菌の場合にも反応時間を延長すると約1/3に陽性が観察された.
    マウス腸管を滅菌PBS-で洗浄した場合や手術3日前に, マクロファージ機能抑制剤であるcarageenan (100mg/kg) を投与したマウスでは, 陽性率は約1/3であり, 無処理マウスの結果とほぼ同様であった.これに対して, 腸管内細菌叢抑制のため3日間lmg/mlのChlomamphenicolを飲水投与または3日前に好中球機能抑制剤であるcyclophosphamide (100mg/kg) を投与されたマウス群では陽性率は約2/3に上昇した.
    その結果, マウス腸管内細菌叢の除去または好中球機能低下せしめたマウスにおいて, 腸管結紮ループ起炎性試験が陽性になりやすいことを明らかにした.これらの処理により, マウス腸管結紮ループ試験は, 毒素原性菌とともに侵襲性病原菌の検出方法としても利用できることを示した.
  • 町田 裕一, 小松 偉子, 下山 定利, 柚木 仁, 金子 仁, 松本 芳郎
    1985 年 59 巻 6 号 p. 646-652
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    髄膜炎症状を伴ってTSSを発症した13歳6ヵ月の女子例を報告した.
    昭和58年6月上旬より厚い痂皮形成を伴う難治性の右口角炎があった.6月16日より39℃ を越える弛張熱が3日間つづき, その頃より両頬の発赤が増強していた.
    6月25日全身倦怠感があり, その夜より39℃ を越える発熱と共に両側肘関節, 膝関節の癖痛を訴えたが, 翌朝血圧66/0mmHgに低下し, 脈は細少頻脈, 四肢端冷となり, 意識が混濁した.髄膜刺激症状と異常髄液所見から髄膜炎が疑われた.約48時間後にショック状態を脱したが, 眼球結膜充血, 口唇, 口腔粘膜, 咽頭, 全身の皮膚特に顔面, 手掌などの発赤がみられ, また腹痛, 下痢, 嘔吐, 血清GOT, GPT, LDH, BUN, クレアチニン, CRKの高値, 筋肉痛, 眼底のうっ血乳頭, ショック脱出後数日間にわたる傾眠傾向, 発症後約1ヵ月におよぶ下肢指先のしびれ感など消化管, 肝, 腎, 筋肉, 循環器, 中枢神経系, 末梢神経系など多臓器にわたる障害がみられた.発症数日後より指先の落屑がはじまり, 約1カ月後には後遺症を残こすことなく全治した.右口角炎局所, 右前胸壁の膿痕よりファージ型79/84, 咽頭よりファージ型52A/79/84/85の1, III混合群の黄色ブドウ球菌が分離された。これらの菌株はenterotoxinA, coagulase type VIIを産生したがtoxic shock toxin (TST) は証明されなかった.
  • 1985 年 59 巻 6 号 p. 653-655
    発行日: 1985/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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