感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
61 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 鈴木 宏, 中村 明, 宮治 誠
    1987 年 61 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    第1報において, 血中カンジダ抗原検出法としてのavidin-biotin系を用いたenzyme-linked immunosorbeit assayについての基礎的検討を報告したが, 本論文では, 同一個体で経時的に抗原濃度を測定する目的で実施した家兎のCandida albicans感染実験の結果と抗原陽性を示した臨床例5例につき報告する.
    家兎を用いた実験では, 致死例において感染初期より死亡するまで高い抗原濃度を示した.非致死例では持続的には抗原が検出されなかつたが, 1羽を除き感染初期に陽性を示した.
    臨床例で抗原陽性を示した5例の内訳は, 新生児2例, 急性リンパ性白血病2例, 骨髄線維症の疑い1例であり, いずれもcompromised hostであった.Candidaの血液培養陽性例は3例で, そのうち1例では, 血液培養陽性となる前に抗原が検出され, もう1例では, 抗真菌剤投与により血液培養が陰性化してからも抗原が陽性を示した.血液培養陰性の2例では, 抗真菌剤投与前後の臨床症状及び検査成績とカンジダ抗原の消長がよく一致していた.
    以上より, 臨床症状より深在性真菌症が強く疑がわれる症例において, 検体採取時期に注意し, 抗原検索をすることにより, 本法は深在性カンジダ症の早期診断法としてきわめて有用な方法であると考えられた.
  • 金子 通治, 岩下 まさ子
    1987 年 61 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1971~1985年に山梨県で分離したヒト由来207株, 食品由来130株の計337株のVibrio parahaemolyticusと貝類由来Vibrio algiolyticus 22株の薬剤感受性試験を行なった.
    V.parahemolyticusが自然耐性と思われるPBを除いた10薬剤のうち, いずれかの薬剤に耐性であったのは44株あり, 13.1%であった.薬剤ごとにみると, KM耐性が23株, 6.8%, ABPC耐性14株, 4.2%, CBPC耐性11株, 3.3%, SA耐性7株, 2.1%およびCET耐性1株, 0.3%であった.44株のうち3剤耐性が2株, 2剤耐性が8株のほかはすべて1剤耐性株であり, KM1剤耐性株が21株, 61.8%ととくに多かった.
    V.alginolyticusはABPC, CBPCに対する耐性株が多く, ABPCに86.4%, CBPCに95.5%の耐性率で非常に高率であった.しかし, V.parahaemolyticusにみられたKM耐性株は1株もなく, ペニシリン系薬剤とアミノグリコシド系薬剤に対する薬剤感受性に両菌種で大きな相違がみられた.
    V.parahaemolyticus, V.alginolyticusの両菌種ともにDOXY, CP, EM, NAおよびLMOXに対しては, すべての菌株が3.1μg/ml以下の感受性を示し, 臨床上, 治療薬として有効であることがうかがえた.
  • 本田 俊一, 後藤 郁夫, 広瀬 英昭, 市来 重光, 池田 長繁, 浅野 信夫, 本田 武司, Kesera KESEMUSUKUL, N ...
    1987 年 61 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    海外旅行者下痢症患者180名より直接分離して得たEscherichia coli 821株についてHydrophobicityをSalting out法で調べ次の結果を得た.
    (1) Hydrophobicity陽性で毒素産生株は137株, 毒素非産生株は20株であった.
    (2) Hydrophobicity陰性で毒素産生株は29株, 毒素非産生株は635株であった.
    (3) Hydrophobicity陽性でST単独産生株は54株, LT単独産生株は17株, ST-LT両産生株は66株, 毒素非産生株は20株であった.
    (4) Hydrophobicity陰性でST単独産生株は21株, LT単独産生株は3株, ST-LT両産生株は5株, 毒素非産生株は635株であった.
    (5) 180名中55名より毒素原性大腸菌が分離され, 得られたすべての大腸菌に対し, HydrophobicityをSalting out法でスクリーニングした場合, Sensitivity83%, Specificity97%で検出が可能であった.
    以上の結果より毒素原性大腸菌検出の迅速化, 省力化にHydrophobicityをSalting out法によって調べスクリーニングする方法が有効であると考えられる.
  • 原 耕平, 斉藤 厚, 山口 恵三, 重野 芳輝, 平 和茂, 小田 敏郎, 林 敏明, 富田 弘志, 増山 泰治, 斎藤 玲, 富沢 磨須 ...
    1987 年 61 巻 1 号 p. 22-53
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しいアミノ配糖体系抗生物質HBKの呼吸器感染症 (肺炎・肺化膿症および慢性気道感染症) に対する有効性と安全性を比較する目的で, amikacin (AMK) を対照薬として全国50機関のもとで二重盲検比較試験を行った. 使用した薬剤は, HBK 1日200mg (力価) とAMK 1日400mg (力価) であり, 1日2回, 14日間筋注を原則とした.成績は以下のとおりであった.
    1. 小委員会判定による総合臨床効果は, HBK群100例で56.0%, AMK群99例で64.6%の有効率で, 両群の間に有意の差は認められなかった. また主治医判定による総合臨床効果も, HBK群97例中63.9%, AMK99例中61.6%で, 両薬剤群間に有意の差は認められなかった.
    2. 細菌学的効果を, 小委員会判定による消失率でみると, HBK群38.8%, AMK群37.5%で, 両薬剤群間に有意の差を認めなかった.
    3. 副作用については, 小委員会判定による発現率でみると, HBK群では108例中10例, 9.3%に出現したのに対し, AMK群105例では全く発現がみられず, HBK群で有意に高かった. 臨床検査値異常の出現率では, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    4. 有用性は小委員会判定で, HBK群104例で53.8%, AMK群99例で64.6%で, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    以上の結果より, 呼吸器感染症に対しHBK 200mg (力価)/日は, AMK 400mg (力価)/日とほぼ同程度の有用性を有するものと考えられた.
  • 留目 優子, 大国 寿士, 横室 公三, 工藤 厚, 工藤 忍
    1987 年 61 巻 1 号 p. 54-63
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A群レンサ球菌細胞壁から抽出したC-多糖体 (C-poly) を塩化シアヌルをcoupling agentとしてpoly-I-lysin (PLL) と結合させ (C-poly-PLL), これを抗原としてELISA法により抗Gpoly抗体の測定につき基礎的検討を行ない, 以下の結果をえた.
    1.ELISA法によるA群菌感作ウサギ血清の本抗体測定での抗原至適濃度は, Well当り0.7μgであつた.またこの抗体はB, C, D, G群のレンサ球菌並びに肺炎球菌の菌体では吸収されず, A群の菌体, A群C-poly, haptenであるGlcNAcにより吸収された.このことはC-poly-PLL抗原が特異的にA群C-poly抗体と反応していることを示唆する.
    2.臨床検査室より分与されたヒト血清を無作為に抽出し, その血清または急性糸球体腎炎患者血清中の本抗体の測定においても, 抗原至適濃度は0.7μgであり, 血清希釈は1: 1,000で最も高いO.D.値がえられた.また血清の非仇化はその値に影響するとは思われなかつた.
    3.EHSA法による抗C-poly-IgM抗体と感作血球凝集反応との間で相関係数0.62を示し高い相関がみられたが, IgG抗体とは相関がみられなかつた.
    4.ELISA法により, 急性糸球体腎炎とリウマチ熱の患者血清と健常ヒト血清中の抗体を測定すると, IgG抗体は健常ヒト血清に比べて, この2疾患で高い値を示し (p<0.01), IgM抗体では有意な差はみられなかった.
  • 佐伯 裕子
    1987 年 61 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1982年7月から1984年1月の間に各種臨床材料から分離されたH.influenzae335株とH-parainfluenzae11株を対象として, 各種薬剤感受性とβ-lactamase産生性ならびにβ-lactamase産生性とbiotypeについて検討し, 以下の成績を得た.
    1.ABPC感性H.influenzae231株は全株がβ-lactamase陰性であった.ABPC耐性H.influenzae104株のうち101株はβ-lactamase陽性, 3株は陰性であつた.
    2.β-lactamase産生性と各種薬剤感受性について検討したH.influenzae215株のうち, β-lactamase産生ABPC耐性H.influenzae66株はSBPC, PIPC, MZPCにも耐性であつた.セフェム系薬剤ではCPZを除きβ-lactamase産生性と感受性分布に相関性はみられず, CTX, CZX, CMXは強力な抗菌力を示した.
    3.三濃度ディスク法でCMZ, CTMの感受性が廾であつたH.influenzae5株は, ABPCには耐性でCTM, CMZ, CTX, LMOX, AZTのMICが上昇していたが, β-lactamase産生は2株であった.
    4.β-lactamaseは, 簡易法であるnitrocefin試験紙法, PCGを基質とするpHディスク法のいずれでも検出され, 両方法による成績は一致した.
    5.β-lactamase産生ABPC耐性H.influenzaeの特定のbiotypeへの集中はみられなかつた.
    6.気道由来H.parainfluenzaeH.influenzaeと同様な感受性パターンであつた.尿路由来5株はABPCに耐性でCTX, LMOX, AZTにも耐性を示したが, β-lactamase産生は2株であつた.
  • 田村 偉久夫, 市村 宏, 栗村 統, 栗村 敬
    1987 年 61 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呉市および呉市近郊在住のB型肝炎ウイルス (HBV) 感染者におけるデルタ抗体 (anti-delta) の検索をRIA法により行い, 以下の成績を得た.
    1) HBV感染者321例中18例 (5.6%) にanti-deltaが検出された.B型急性肝疾患では劇症肝炎5例中2例 (40.0%), B型急性肝炎36例中2例 (5.6%) に検出された. B型慢性肝疾患では200例中14例 (7.0%) に検出されたが, 無症候性HBVキャリア80例では全く検出されず, 両群の間のanti-delta検出率には有意の差が認められた.
    2) HBVキャリア280例のanti-delta検出率を地域別に検討した.東部地区は92例中9例 (9.8%) にanti-deltaが検出され, 他の3地区の検出率 (2.7%) に比べて有意に高かつた. また, 東部地区のB型慢性肝疾患のanti-delta検出率は, 無症候性HBVキャリアの検出率に比して有意に高率であった.
    以上の成績より, 本邦のHBVキャリアにおいてもデルタ肝炎ウイルス (HDV) が肝疾患を発症させる一つの要因であり, 呉市および呉市近郊の東部地区のB型慢性肝疾患患者にHDVが集中的に伝播していることが示唆された.
  • 渡辺 満, 原口 恰子, 権田 隆明, 青山 辰夫, 小沢 広子, 村瀬 雄二, 岩田 崇, 岩田 敏, 草野 正一
    1987 年 61 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1975年から1985年にかけて関東地方の百日せき患者から百日せき菌197株とパラ百日せき菌16株を分離した.パラ百日せき菌の分離頻度は7.5%であった.百日せき菌197株のうち11株 (5.6%) は血清型1, 2, 3で, 186株 (94.4%) は1.3型であった.
    百日せき菌株はpiperacillinとcefoperazoneに極めて感受性は高く, erythromycin, minocycline, josamycin, latamoxef, tetracycline, amoxicillin, cef.taxime, ampicillin, chloramphenicolに高度感受性であり, benzylpenicillin, nalidixicacid, cephalothin, streptomycin, cefatrizin-e, sulfamonomethoxazolに中等度感受性, cefaclorとcephalexinに低度感受性であった.
    パラ百日せき菌はpiperacillin, cefoperazoneとminocyclineに極めて感受性が高く, 1atamoxef, erythromycin, tetracyclineに高度感受性であり, chloramphenicol, ampicillin, amoxicillin, nalidixiacid, cefotaxime, josamycin, sulfamonomethoxazo1, benzylpenicillin, cephalothinに中等度感受性, cefatrizinecefaclor, streptomycin, cepnalexinに低度感受性であった.百日せき菌およびパラ百日せき菌ともに耐性菌は検出されなかった.
  • 矢野 敬文
    1987 年 61 巻 1 号 p. 87-100
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    幼弱および成熟ハムスターを用いて実験的Mycoplasma pneumoniae (M.pn.) 肺炎を経気道注入法により作成し, 細胞レベルよりみたM.pn.感染動態を解明するためM.pn.の動向, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中の細胞成分と肺組織像を経時的に対比検討し, 以下の結果を得た.
    1.血清抗体価は全例に上昇が認められ, 成熟ハムスター群の方が早期に上昇傾向を示した.
    2.M.pn.の分離成績はtrachea, BALFともに感染後7日目に最大に分離され, 幼弱ハムスター群と成熟ハムスター群間にはその分離成績に差はみられなかった.
    3.BALF中の総細胞数は感染後7日目に最も増加し, BALF細胞成分は感染後7日目に好中球, マクロファージ, 感染後21日目にリンパ球の増加がみられ, 成熟ハムスター群の方がBALF中の総細胞数は有意に増加が認められた.
    4.肺組織像は感染後7日目に顕著で, その病理学的所見は, 単核細胞浸潤を背景とした好中球の浸潤を伴なう気管支炎, 血管周囲炎, 胞隔炎で成熟ハムスター群の方が肺病変の程度も著明であった.
    以上の結果より, 経気道注入による感染方法は従来の報告にない極めて良好な実験モデルを作成できることが判明した.またM.pn.肺炎の病変形成には生体の免疫反応が重要であり, 特に, 感染初期にみられた一過性の好中球の出現はその病変形成に密接な関連性を有していると考えられる.
  • 原田 佳明, 伊藤 明子, 進藤 久人, 久保 典夫, 新井 勝, 藤井 肇, 兼丸 幸典, 槇坪 慎一
    1987 年 61 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1987/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Anpicillin・Chloramphenicol両剤耐性Haemophilus influenzae type Ibの本邦第1例と思われる1例を経験した.患者は1歳8ヵ月の女児で2日間の発熱, 嘔吐の後入院した.Ampicillin Chloramphenico1静注にて治療開始したが, β-Lactamase産生試験が陽性, ディスク法による薬剤感受性試験がAmpicillin-, Chloramphenicol 2+, Latamoxef 3+であったのでLatamoxef静注に治療変更した.第10病日に施行した頭部CT検査にて, 左前頭葉に硬膜下膿瘍を認め, 穿頭排膿術を行った.後に実施した平板希釈法による最小発育阻止濃度はAmpicillin 62.5, Chloramphenicol 12.5, Latamoxef 0.39 (μg/ml) であった.Chloramphenicol acetyltransferase産生試験陽性であった.
feedback
Top