感染症学雑誌
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61 巻, 4 号
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  • 中島 邦夫
    1987 年 61 巻 4 号 p. 437
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 小林 貞男, 吉原 英児, 鈴木 潤
    1987 年 61 巻 4 号 p. 438-448
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B群溶連菌の易熱性蛋白質抗原として, 新たに提案されたQ, SおよびW型抗原と, c型抗原との関連について検討を行った.
    14株の新しい抗原型菌 (デンカ生研より分与された標準株7株, 分離菌株7株) は, 免疫電気泳動で10株にcα またはcβ あるいはその両者の抗原が認められたが, 残りの4株はc型抗原は認められなかった.
    ss700 (Ia/c) 株のc型抗原は, A909 (Ia/c) 株と同様に, cα およびcβ 抗原で構成されており, この菌体で免疫した抗血清は, 両抗原に対する抗体を含むが, 同一菌株の抽出抗原で免疫して作製されたデンカ生研のc型抗血清はcβ 抗体のみから成っていた.
    新しい蛋白質抗原型の標準株Fz345 (Ia/Q), Fz301 (Ia/S) およびFz450 (W) で免疫し, ss700 (Ia/c) で吸収した抗血清について, 免疫電気泳動, ゲル内沈降反応で, その特異性を検討したところ, 各型抗血清は, それぞれの菌型の抽出抗原と特異的な反応を示した.
    Q型抗原は, cβ 抗原より移動度が遅く, ペプシンに抵抗性を示すが, トリプシンに対しては感受性であった. S型抗原は, cα 抗原と同一の移動度を示し, ペプシン, トリプシンに感受性であった.W型抗原は, Q型抗原と同じく, cβ 抗原より移動度が遅く, ペプシン, トリプシンに対し抵抗性を示した.
  • 寺尾 通徳, 岡尾 勇一, 桶谷 修三
    1987 年 61 巻 4 号 p. 449-455
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床由来B群溶血レンサ球菌 (Streptococcus agalactiae) 100株について血清型別及び薬剤感受性試験を行った. そのうちChloramphenicol (CP) 耐性株をBTO21, BTO22及びBTO23とし, CP耐性とChloramphenicol acetyltransferase (CAT) 産生能を他のB群溶連菌に接合伝達で転移させることができた. よってBTO株の耐性はplasmidによって支配されるCAT産生に帰せられるものと考えられた.
    接合伝達性Rplasmid (pBTO22) をrecipientに伝達し, その分子量を求めたところ原株と同一の大きさ (19~20×106) のplasmidDNAが検出された.
    CP不活化産物の分析の結果, CPのアセチル化産物である1-acetoxy CP, 3-acetoxy CP及び1, 3-diacetoxy CPを証明し, 本酵素は, CATであることが確認された.
  • 中島 邦夫, 奥山 道子, 奥田 清
    1987 年 61 巻 4 号 p. 456-463
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    溶血レンサ球菌のA, B, CおよびG群の新しい群別法である亜硝酸抽出菌液による逆受身ラテックス凝集反応 (セロアイデン・ストレプトキット'栄研': 以下E法) について若干の検討を行った.
    大阪市内の小学校の健康学童咽頭由来株についてE法と, 抗原処理なしでcoagglutination testを行う方法 (Phadebact streptococcus test: P法), およびブタ膵臓エキス処理菌を家兎免疫抗血清によって凝集する方法 (デンカ生研キット: D法) の三法によって群別を行い比較した. E法については, Todd.Hewitt broth (THB) 一夜培養菌液を亜硝酸処理後ラテックス反応を実施するover-night法を実施した. その結果, E法とD法は完全に一致したが, P法では不一致株がいくつかみられた.
    またE法のうちTHB-夜培養菌液を亜硝酸処理をせずにラテックス凝集反応を行簡易法, 前述のover-night法とD法およびP法を用い, 健康学童咽頭由来の34株の群別を実施し, 比較検討したところ, D法とE法のover-night法は完全に一致したが, P法については非特異凝集が何株かについてみられ, E法の簡易法については凝集の弱い株がいくつかみられた. しかしながら, いずれの方法においても群別は可能であった.
    4時間法については, 標準菌株および健康学童咽頭由来株について検討したが, 1コロニーの釣菌では培養6時間後に全株の群別が可能となった. また4時間後に群別決定するためには標準菌株では3コロニー, 臨床分離株では4コロニーの釣菌を要した.
    また平板よりコロニーを釣菌し, 直ちに亜硝酸処理を行い, ラテックス凝集反応を実施する平板培養法を同様に標準菌株と臨床分離株を用いて実施したところ, 3~7コロニーの釣菌によって群別が可能となった.
  • 滝沢 慶彦, 冨沢 功, 高瀬 愛子
    1987 年 61 巻 4 号 p. 464-470
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    過去11年間に札幌市で分離された溶レン菌4,720株の菌型について集計し, 以下の結果を得た.
    1. 分離された菌型と分離頻度はT12型45.9%, T4型23.3%, T1型8.4%, T6型4.3%, T18型2.0%, T22型1.7%, T3型1.3%で, その他T28型, T11型, T2型, T8型, T13型およびB3264型の計14種類の菌型がみられた.
    T12, T4, T1, T6の分離率は全国的な傾向と一致するものであった. しかし, 札幌市ではB3264型とT28型の分離率が低かった.
    2. T12型, T4型, T1型の3大流行菌型では6~7年の周期をもって流行波を形成していた. T18型, T22型, T3はある間隔をもって流行する傾向がみられた.
    3. 年齢によって菌型分布が異なり, 低年齢層ではT12型やT4型の主流菌型が, 高年齢層の小児では型別不能株や希少菌型の分離率が高かった.
  • 患者の概要, 診断, 分離菌株について
    村井 貞子, 稲積 温子, 野上 和加博, 懸 俊彦, 徳丸 実, 村田 篤司
    1987 年 61 巻 4 号 p. 471-481
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    第一線の小児科診療における溶血連鎖球菌 (溶連菌) 感染症の現状を知る目的で, 1975年5月より愛媛県松山市内の一小児科医院を訪れる患者の研究を続けている. 1985年3月までに, 溶連菌感染症の疑いで培養を行ない陽性であった2, 373例について, その患者の概要と, 診断, 分離菌型等について報告する.
    1) 分離菌株の96.2%はA群溶連菌であり, 診断別では咽頭炎68.1%, 猩紅熱は31.2%であった.
    2) 4月から翌3月までを一年度とした場合, 月別の患者数の分布には, 5, 6, 7月を中心とする小さな初夏の山と, 10, 11, 12月を中心とする冬の山の2峰が存在した. 年齢分布及び菌型推移から考えると, 一菌型の流行は冬に増幅され, 更に初夏に感受性の高い若年者に広がった後, 徐々に終息すると考えられる.
    3) A群の主要流行菌型は, 12型, 4型, 1型であり, 5~6年毎に流行の極期を迎える周期を示している.
    4) A群菌のT型別率は99.6%, M型別率は67.9%であった. 又T型とM型の一致率は菌型により異なり, 次の如くであった. 3型97.9%, 6型97.7%, 4型92.4%, 1型91.3%, 12型79.9%.
    5) M12型は他の菌型に比較して統計的に有意に高い割合で猩紅熱を起した.
    6) 12.9%の患者はこの間に再感染を起しており, 病初期の抗生剤の投与が, 抗体産生を抑制していることが予想された.
  • 特に富山県における1985年のA群3型菌の増加傾向
    児玉 博英, 徳満 尚子, 安井 伊津子, 刑部 陽宅, 柏木 義勝
    1987 年 61 巻 4 号 p. 482-488
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1985年1月から12月までの1年間に, 富山県において臨床材料から分離された溶血レンサ球菌の一部について, 群・菌型分布と薬剤感受性を調べ, それ以前の5年間の分離株についての成績と比較した. その概要は次のようであった.
    1. 1985年の分離株241株の群別分布はA群143株, B群82株, G群14株, 群不明2株で, A群とB群はそれぞれ全体の59.3%と34.0%を占めた. それ以前の5年間 (A群: 72.1%, B群: 21.9%) に比べ, B群の比率がさらに高くなったが, これらB群菌に関して, 凝集反応による菌型分布にはほとんど変化はみられなかった.
    2. 1985年のA群菌143株のT凝集反応による菌型分布をみると, それ以前の5年間のA群菌591株の中でわずかに7株 (1.2%) を占めていたにすぎない3型が55株 (38.5%) を占め, 1980年以来一貫して優勢であった12型菌にかわって, 最優勢の菌型になった. これら3型菌は, 血液寒天平板上のコロニーの形態は多様であったが, A群菌の中では溶血は強く, 37℃, 1夜培養でほぼ典型的なβ溶血環を形成した. 自家製の抗M3型血清とのゲル内沈降反応により, これら3型菌は3型に特異的なM蛋白を豊富に持っていることが示され, 病原性という点では, それまで優勢であった12型菌に比肩し得ると思われたが, 12型菌と違って薬剤耐性を示さず, テトラサイクリンとクロラムフェニコールに耐性を示した1株を除き, 他は総てペニシリン, セフアロスポリン系, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, マクロライド系の各抗生物質に対して感受性であった.
  • 今井 千尋, 金 龍起, Yoshiko KOUNO, 島田 能子, 小林 祥男
    1987 年 61 巻 4 号 p. 489-500
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    京都市立病院において1978年1月から1985年12月までの8年間に分離されたA群溶血レンサ球菌 (以下A群菌と略す) 605株とB群溶血レンサ球菌 (B群菌と略す) 640株の血清型別をおこない流行菌型の年次別推移を検討した. 先ずA群菌は1984年までは年によって多少の変動はあるが12型または4型が最も多く次に1型, 13型の順に多かった. 1985年には'これ等の菌型がすべて減少し, かわって3型が急に増加し, 45.5%を占めるに至った. またB群菌はIa型, III型, Ib型の順に多く首位の交代の見られることもあるがあまり明らかな変化は認められなかった.
    次に1983年から85年までの3年間に検出された溶連菌のうちA群菌142株, B群菌282株の9薬剤に対する感受性を測定し, 且つ耐性パターンと菌型との関連をしらべた. それによればA群菌, B群菌ともにペニシリン系, セフェム系薬剤に対する耐性菌は見られなかった. またA群菌ではTC耐性とEM, JM, OL耐性菌の出現頻度は菌型によって著明な差異があり, TC耐性は4型, 12型, 13型に多くEM, JM, OL耐性は12型のみに見られた. それに反し, B群菌では菌型による差は明らかではなかった.
    この8年間に新生児および幼若乳児のB群菌による髄膜炎と敗血症例が7例あったが, 菌型の判明した5例中4例までがIII型にかたよっていた. それに対し, 成人の敗血症例, 健康新生児とその母親からの検出菌には菌型のかたよりは見られなかった.
  • 柏木 義勝, 遠藤 美代子, 光岡 ルミ, 天野 祐次, 小野川 尊
    1987 年 61 巻 4 号 p. 501-509
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983-1985年に全国の医療機関あるいは研究機関で, 臨床材料および健康学童より分離されたA群溶血レンサ球菌2,499株について薬剤感受性を測定し, そのうち2,242株については菌株との関係も調査した.
    臨床材料別の菌型分布に特徴を見出すことはできなかった.
    主要流行菌型は12型であり, 他に4型, 3型, 28型も比較的多く分離された.
    βラクタム系薬剤に耐性を示す菌株は, 過去の成績と同様に分離されなかった. 臨床材料由来株では, TC耐性株53.3%, CP耐性株12.2%, MLs耐性株6.6%であり, 健康学童由来株では, TC耐性株36.3%, CP耐性株12.4%, MLs耐性株3.4%であった. 臨床材料由来の各耐性株は3ヵ年を通じ漸次減少傾向を示した.
    菌型と耐性の関係では, 臨床材料由来TC・CP・MLs多剤耐性株は3.3%であり, 1978-1979年の23.1%, 1980-1982年の31.7%に比べ著しい減少を示した. 各菌型についてみると, 12型の多剤耐性株が減少し, 代ってTC・MLs2剤耐性, TC・CP2剤耐性およびTC単剤耐性のものが増加した. 4型ではTC単剤耐性の減少傾向はみられず, 臨床材料由来株のうちTC単剤耐性を示すものが約90%を占めた.
  • 宮本 泰, 山井 志朗, 渡辺 祐子, 新川 隆康, 仁井田 太郎, 数野 勇造, 武田 植人, 佐々木 斉, 川音 晴夫, 武村 民子
    1987 年 61 巻 4 号 p. 510-522
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    患者由来のStreptococcus sanguis株でマウスの感染を行った実験によって, MCLSの病変に近似した病理組織変化すなわち系統的血管周囲炎と血管炎の所見を得た. S. sanguisとS. mitisの菌体多糖体に対する14名の患者のペア血清のPHA価は一般的には, 30日間の入院期間を通じて不変であって, 免疫抑制を示唆していた. しかし1例, 例外的に退院時の価が明らかにsanguisに対してのみ2段階上昇を示した例があった. mitisに対する価は全く不変であった. 本例はBCG接種周辺部位に前駆疹を生じた唯一の症例であって, それは免疫増進の反映であるので, この特異的な力価の上昇はsanguisがMCLSの引き金であったに相異ないことを示すものと思われる.
    選択された10名の患児の咽頭培養平板培地から無作意に採取された141コの集落の解析から, 萠出前期にはsanguisが陰性で検出されないことが判った. 10名中4名が陰性で, 彼らの生後月齢は萠出前か初回萠出時期 (8ヵ月) であった. sanguisはこれらの陰性乳児の検査された母親の全てから検出されているので, 口腔細菌学者の間で, 今まで一般に承認されてきたように, 我々は次のように示唆する. 通常歯表面に棲息し, そこで増殖する本微生物は最も近い接触を通じて母親から移行し, 感染性心内膜炎の株と同様にsialidaseやproteaseを分泌して直接粘膜を攻撃する. 何故なら歯がないか乏しいからである. あるいはやや遅れて萠出開始後には直接萠出による開口部を通じて侵入し, 隣接臓器に到達するか, または, 私達のモデル実験で示したように, グルカンなどにより血管内皮上に付着し (Fig. 10), そこで増殖して, ひきつづき種々のproteaseないしtoxinを産生する. その結果MCLSが発症する.
    我々は目下上記の仮説を検証中である.
  • 溶連菌感染症について
    森田 盛大, 後藤 良一, 石田 名香雄
    1987 年 61 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1976年9月-1977年8月及び1978年9月-1985年2月における秋田県感染症サーベイランス情報から得られた溶連菌感染症 (発疹を伴う) の1定点観測医療機関当りの旬別平均患者発生数を目的変数及び9種類の気象 (平均気温, 最高気温, 最低気温, 相対湿度, 平均蒸気圧, 風速, 日照時間, 日射量及び降水量) の旬別平均旬間値を説明変数として重回帰分析をした結果, 気象値を数値変換したり或いは更に対数変換することによって, 平均気温, 最高気温, 相対湿度, 日照時間, 日射量及び降水量を説明変数とするY=5.216log TME-0.017TMAX+2.10810g RH+1.99010g NHS-3.65210g TRH-0.558log PR-5.548並びに平均気温, 相対湿度, 平均蒸気圧, 日照時間及び日射量を説明変数とするY=1.595logTME+0.005RH-0.010MVP+2.639log NHS-4.12610g TRH+2.407の重回帰式が得られた. これらの重回帰式における回帰変動及び各変数の偏回帰係数の統計学的信頼性は降水量の偏回帰係数を除いて高く, しかも, 重相関係数は0.946と0.941及び寄与率は0.895と0.885といずれも高値であった. そして, これらの重回帰式によって求められた患者発生数の推定値と実測値との間の誤差を測定してみると, 36旬平均では0.243-0.265人 (最小0.006-0.012人, 最大0.721-0.789人) に過ぎなかった. このことから, これらの重回帰式は患者発生数推定式として有用性があると考えられた. しかし, 推定値と実測値との間の誤差は主に4-10月に発生したので, 今後更に検討する必要があると考えられた.
  • 森田 盛大, 庄司 キク, 山脇 徳美, 斉藤 志保子, 石田 名香雄, Takeo MOTEGI
    1987 年 61 巻 4 号 p. 529-536
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    家兎免疫血清と人血清を用いて, A群溶連菌T抗体のT3/T13/TB3264群およびT8/T25/T Imp, 19群における交叉反応性を検討し, 次の成績を得た.
    (1) 家兎免疫血清の場合, 抗T3型血清はT13型とTB3264型のヘテロ抗原に対してホモ抗体価の1/16の抗体価しか示さなかったが, 抗T13型血清と抗TB3264型血清はヘテロ抗原に対してホモ抗体価の1/2-1/4の抗体価を示し, かなり高い交叉反応性が観察された. 一方, 抗T8型血清と抗T25型血清はヘテロ抗原に対してホモ抗体価の1/32-1/256の抗体価しか示さず, 交叉反応性は必ずしも高くなかった. (2) 秋田県本荘市住民とエクアドル国住民から採取した人血清の場合, 同一群内で3種類のT抗体が同時に検出された血清は, T抗体陽性血清中, T3/T13/TB3264群で34.9%(22例/63例) およびT8/T25/T Imp.19群で4.4%(2例/45例) あったが, これらのT抗体がそれぞれホモT型菌の感染によって産生されたものなのか或いは同一群内のいずれかのT抗体のヘテロ交叉反応として検出されたのかは, これらの抗体価を比較する以外, 十分に明確に判別できなかった.
    (3) 一方, 同一群内で1種類のT抗体しか検出されなかった血清はT3/T13/TB3264群で49.2%(31例/63例) およびT8/T25/T Imp, 19群で71.1%(32例/45例) あったが, 多くの場合, 抗体価は極めて低値であった. しかし, 群特異抗体吸収後に検出されたT抗体であるので, ホモT型菌の感染によって産生された可能性が強いと考えられた.
    (4) 以上の如く, S. pyogenesの感染経験を積み重ねていく人血清の場合, 家兎免疫血清の場合と異なり, 検出されたT抗体が感染によって産生されたのか或いは他の抗体のヘテロ交叉反応として検出されたのかを判別することがかなり容易でなかったので, 今後, T抗体のヘテロ交叉反応性について更に検討していく必要性が認められた.
  • 森田 盛大, 金 鉄三郎, 庄司 キク, 茂木 武雄, 高山 和子, 山脇 徳美, 斉藤 志保子, 藤宮 芳章, 柴田 芳実, 岡村 敏弘, ...
    1987 年 61 巻 4 号 p. 537-544
    発行日: 1987/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1976年4月-1986年3月, 秋田県の感染症サーベイランスにおいて各種感染症の患者3,128名から採取した咽頭ぬぐい液についてA群溶連菌の分離を行なった結果, 690株 (分離陽性率22.1%) が分離された. 分離陽性率の最も高率であった疾患は71.6%の猩紅熱及び最も低率であった疾患は0.9%の下痢症であった. 分離された690株の内608株 (88.1%) が, T2, T8, T11, T18, TImp.19の5菌型を除く, 14種類の菌型 (T型) に型別された. 最も高率の菌型分布率を示したのはT12型, 次いでT4型であり, 両菌型だけで全分離株の59.4%を占めた. その他の12種類の菌型の分布率は7.7-0.1%の範囲であった. また, 多くの菌型において菌型分布率の年度変動が観察されたが, 近年の菌型傾向としてはT12型とT4型の優勢持続, T3型とT28型の増加及びT1型, T6型及びT13型の減少が特徴であった. 一方, 秋田での菌型分布率を全国の場合と比較すると, 秋田のT4型, T12型, T14型及びT25型の菌型分布率は全国より, 逆に, 全国のT1型, T11型, T13型, T18型, T22型, T28型及びTB3264型などの菌型分布率は秋田よりそれぞれ有意に高率であった. また, 秋田での菌型分布率を疾患群別に比較すると, 猩紅熱などのI群の疾患から分離されるT12型の菌型分布率はウィルス性発疹症や下痢症などのIII群 (発疹症を除く) の疾患から分離される場合より, 逆に, 後者のIII群から分離されるT13型, T25型, T28型及びTB3264型の菌型分布率は前者の1群から分離される場合よりそれぞれ有意に高率であった.
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