いわゆる慢性気道感染症に対する新しい経ロセフェム剤CS-807の有効性, 安全性および有用性を客観的に検討する目的で, Cefaclor(以下CCL)を対照薬剤とし, 二重盲検法により比較試験を実施した. CS-807は日400mg(1回200mg, 1日2回), CCLは1日1,500mg(1回500mg, 1日3回)を原則として14日間経口投与し, 以下の成績を得た.
1)全例で199例に投与され,小委員会により採用された臨床効果解析対象例は170例(CS-807群84例, CCL群86例)であった.その背景因子は, 感染症の重症度を軽症, 中等症に層別した場合, CCL群に有意に中等症が多かった.
2)小委員会判定による臨床効果は, CS-807群75.0%(63/84), CCL群76.7%(66/86)の有効率で両薬剤群間に有意差は認められなかった. 主治医判定でもCS-807群75.6%(62/82), CCL群70.9%(61/86)で同様に有意差は認められなかった. 一方, 感染症の重症度で層別した場合, 軽症でCS-807群の有効率68.2%(55/66), CCL群74.5%(38/51)で両薬剤間に有意差を認めなかったが, 中等症でCS-807群の有効率100.0%(18/18), CCL群80.0%(28/35)でCS-807群が有意に優れていた(
U-test). また, 起炎菌別に層別した場合,
H. influenzae単独感染例の有効率は, CS-807群73.3%(11/15), CCL群35.7%(5/14)でCS-807群が有意に優れていたが(U-test), 単独菌, 複数菌および全体では両薬剤群間に有意差は認められなかった.
3)細菌学的効果はCS-807群の除菌率81.0%(34/42), CCL群60.0%(18/30)で両薬剤群間に有意差はみられなかった. 一方, 菌種別にみた場合, H. inHuenzaeの除菌率はCS-807群95.0%(19/20), CCL群50.0%(8/16)でCS-807群が有意に優れた成績が示されたが, 他の菌種においては両薬剤間に差を認めなかった.
4)副作用はCS-807群4.3%(4/93), CCL群4.2%(4/96)で両薬剤群間に有意差は認められなかった. 臨床検査値異常の発現はCS-807群13.9%(11/79), CCL群26.3%(21/80)で両薬剤群間に有意差は認められなかった.
5)小委員会判定による有用性はCS-807群74.1%(63/85), CCL群76.7%(66/86), 主治医判定ではそれぞれ73.2%(60/82), 69.8%(60/86)でいずれにおいても両薬剤群間に有意差は認められなかった. 以上より, CS-8071日400mgの慢性気道感染症に対する有効性は, CCL1日1,500mgの有効性と比較して, 全体の臨床効果, 除菌率とも両薬剤群間に差を認めなかったが, 中等症の感染例および
H. influmzae感染例では除菌率も含めて, 有意に優れた成績が示された. 一方, 副作用については両薬剤群ともその発現は低値であり, かつ重篤な例はみられなかった. また, 投与中の検査値異常の出現率に関しても有意差はみられず, かつ高度な異常例および後遺的な値もみられなかった. 従って, 経口抗生剤CS-807は外来での慢性気道感染症の治療およびその管理に有用性の高い薬剤と考えられた.
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