感染症学雑誌
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62 巻, 11 号
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  • その基礎的検討
    中里 博子
    1988 年 62 巻 11 号 p. 921-930
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ELISA法によるL.pneumopkilaの可溶性抗原検出とその定量化を行い, さらに家兎尿中Legionella抗原の検出を試みたので報告する.
    固相化抗体は家兎ポリクローナル抗体, 酵素標識抗体はマウスモノクローナル抗体を使用した.吸光光度法では, L.pneumopkila serogroup1の加熱処理可溶性抗原の106CFU/mlに相当する抗原量が検出可能であった.蛍光光度法では, 105CFU/mlに相当する抗原量が検出可能で, 吸光光度法の約10倍の感度を示した.
    実験的レジオネラ肺炎動物 (家兎) における尿中可溶性抗原は, 感染早期の6時間後から検出可能であり, 第1病日には最高に達し105CFU/ml相当の抗原量を検出できた.
    以上よりELISA法による尿中Legionella抗原検出はレジオネラ症の早期診断に極めて有用であると考えられた.
  • 浦上 弘, 多村 憲, 宮村 定男, 山本 正悟, 川畑 紀彦
    1988 年 62 巻 11 号 p. 931-937
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年流行の慈虫病患者から分離されるRickettsia tsutsugamushiの血清型には, 従来から知られているGilliam, Karp, Kato型リケッチア以外に, これらと異なる血清型のShimokoshi, Kawasaki, Kuroki型リケッチアの存在が見出されている.そして新潟地方での分離株はGilliam型, Karp型のリケッチアが多いが, 九州地方の分離株は殆どすべてマウスに対し弱毒性のKawasaki型とKuroki型であることも明らかとなってきている.本研究ではこれらの性状を異にするリケッチア間での化学療法剤感受性の差異の有無を明らかにすることを目的として, 新潟地方で分離したGilliam型の3株, Karp型の2株, Shimokoshi型の1株と, 宮崎及び長崎地方で分離したKawasaki型の4株, Kuroki型の5株, 及び標準株であるGilliam, Karp, Katoの3株, 計18株について, 6種の抗生物質に対するMICを測定して比較した.その結果, すべての株に対してTetracycline, Minocycline, Dimethylchlortetracycline, Leukomycinはいずれも0.012~0.391μg/mlの範囲内のMICを示し, Chloramphenico1のMICは0.39~6.25μg/mlであった.Ampicillinはいずれの株に対しても100μg/mlの濃度で全く発育阻止を示さなかった.
    以上の成績より, 各分離株はその血清型や分離地域に関係なくいずれもこれらの抗生物質に感受性を示すこと, マウスに対する毒性の異なる株間にも感受性の差異がないことが判明した.
  • 特にファージ型別について
    加藤 広行, 塚田 勝彦, 長町 幸雄, 伊豫部 志津子, 橋本 一
    1988 年 62 巻 11 号 p. 938-943
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    群馬大学付属病院において分離された緑膿菌385株について, 検査薬剤はpiperacillin (PIPC), cefsulodin (CFS), ceftazidime (CAZ), imipenem (IPM), aztreonam (AZT), gentamicin (GM), amikacin (AMK), nornoxacin (NFLX) のいずれかに耐性の株90株といずれにも感受性の37株について12種類のファージを用いて型別を行い, 次の結果を得た.
    1) GM耐性株, AZT耐性株, CFS耐性株はHh8型のファージ型別, つまりいずれのファージにも溶菌しない型 (nontypable) が多かった.
    2) 多剤耐性型の多数はHh8型であり, 特にGM耐性を伴うものに多かった.
    3) 血清型が1型, ファージ型, Hh8型のものはすべてGM・PIPC耐性であった.これらより院内感染がつよく疑われた.
  • 特にserovar smithiならびにserovar naamを中心として
    佐田 栄司
    1988 年 62 巻 11 号 p. 944-958
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Leptospira interrogans serogroup Icterohaemorrhagiae の血清学的性状を詳細に解析する目的で, serovar smithi Smith 株とserovar naam Naam株に対するモノクローナル抗体を細胞融合法により作製し, それらの性状について検討した。まず, 抗Smith抗体18系統, 抗Naam抗体4系統の計22系統のモノクローナル抗体を作製し, 顕微鏡的凝集反応によって, それらの血清学的性状を解析した.その結果, 免疫原としたそれぞれの株に特異的に反応する抗体としてSMIMA-1, NAAMA-1が作製されたほか, serovar weaveri, sarmin, tonkiniを除いた各株に幅広く反応し, 群特異性と考えられる抗体, およびそれらの中間的反応を示す抗体が得られた.次いで, これらの抗体を用いて, serogroup Icterohaemorrhagiaeに属するレプトスピラの血清学的関係を解析した結果, 次の3亜群に大別された.すなわち, (1) 免疫原としたserovar smithiに強い類属反応を示す血清型としては, serovar monymusk, birkini, mankarso, icterohaemorrhagiae, copenhageni, ndambari, ndahambukuje, budapest;(2) ほとんど類属反応を示さない血清型はserovar weweri, samnin, tonkini;そして, (3) その中間的性状を示す血清型として, serovar gem, bogoere, mwogoto, naam, dakotaに分けられた.さらに, 強い類属反応を示す亜群では, 反応様式の違いによって, 免疫原とした卑清型を含めると, serovar smithi, monymusk, birkini, mankarso, icterohaemorrhagiae, およびserovar copenliageniのうち白水株が類似の反応を示し, 他は, serovar copenhageni のうちM20株と芝浦株, serovar ndambari, ndahambukuje, budapest が類似の反応を示した.また, serovar naamに類属反応を強く示す血清型は, serovar monymusk, birkiniでeserovar icterohaemorrhagiae がこれらに次いで反応を示した.
    次いで, 免疫プロット法を用いた抗原解析により, それらのモノクローナル抗体のうち15系統の抗体に反応する抗原は, それらの血清学的反応性に関係なく分子量約23kDの部位に幅広いバンドとして認められた.そして, それに一致するバンドはCoomassie blue染色では染色されず, 銀染色では染色され, また, 熱処理, proteinaseK処理では耐性を示し, 過ヨウ素酸処理によって消失することにより, リボ多糖体と推定された.
  • 田代 隆良, 後藤 陽一郎, 重野 秀明, 後藤 純, 那須 勝
    1988 年 62 巻 11 号 p. 959-966
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    内臓真菌症とくに肺真菌症の発症要因を解明するため, 当内科で経験した剖検例の臨床病理学的検討を行った.1981年から1987年までに行われた剖検182例中42例 (23.1%) に日和見肺真菌症が認められた.基礎疾患別では, 造血器悪性腫瘍71例中30例 (42.3%), 固型悪性腫瘍79例中7例 (8.9%) と前者で高率であった.悪性リンパ腫よりも白血病で高率であり, 固型腫瘍では肺癌で高率であった.菌腫別では, アスペルギルス症18例, カンジダ症15例, 重複真菌症6例, クリプトコッカス症2例, ムコール症1例とAspergillusCandidaが多く, 重複真菌症ではこれらとMucorの組み合わせが多かった.薬剤との関係では, 抗生物質, ステロイド剤, 抗腫瘍剤が68%で併用投与されていた.生体防御能の検討では, 低栄養, 末梢血好中球およびリンパ球減少, 低γ-グロブリン血症が認められたが, とくに好中球減少が著明であった.
    以上より, 日和見肺真菌症の発症要因として抗生物質投与に伴う菌交代現象による真菌の増殖, ステロイド剤, 抗腫瘍剤の粘膜傷害による真菌の組織内侵入が重要であること, 侵入した真菌の防御因子として好中球がとくに重要であることが示唆された.
  • 高橋 昌巳, 寺久保 繁美, 川角 浩, 吉富 文昭
    1988 年 62 巻 11 号 p. 967-972
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床材料から分離したAcinetobacter calcoaceticus subspecis anitratusより型の異なる5種類の因子血清を作製し, その因子血清を用いて臨床材料より分離したAc.anitratus305株についてsoft-agar法を試みた結果, 281株 (92.1%) が型別された.そのうち, 単一の因子血清と反応した株が63/281株 (22.4%) 認められた.残りの77.6%が複数の因子血清と反応し, Ac-80型・Ac-132型・Ac-147型の3種類の血清と反応する株が48.1%を占め, 次いで, 全因子血清, Ac-80型・Ac-132型, Ac-80型・Ac-132型・Ac-147型・Ac-156型の順に少なくなる傾向を示した.
    材料別では胆汁, 血液を除いた各由来株にAc-80型, Ac-132型が60%以上含まれていたのに対し, 血液, 胆汁由来株には未知の血清型が含まれている傾向を示した.
  • 柴 孝也, 斎藤 篤, 嶋田 甚五郎, 宮原 正, 小野寺 壮吉, 佐々木 信博, 斎藤 玲, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 田村 昌士, ...
    1988 年 62 巻 11 号 p. 973-1001
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しい経口用セフェム剤CS-807の細菌性肺炎に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に検討する目的でCefaclor (以下CCL) を対照薬剤とし, 二重盲検法により比較試験を実施した.
    CS-807は1日200mg (1日100mg, 1日2回), CCLは1日1,500mg (1回500mg, 1日3回) を原則として14日間経口投与し, 以下の成績を得た.
    1) 総投与症例186例中, 小委員会により採用された臨床効果解析対象例は144例 (CS-807群75例, CCL群69例), うち細菌性肺炎・肺化膿症 (以下細菌性肺炎群) は138例 (CS-807群71例, CCL群67例), マイコプラズマ肺炎・原発性異型肺炎 (以下非細菌性肺炎群) は, 6例 (CS・807群4例, CCL群2例) であった.背景因子は全症例および細菌性肺炎群においてCCL群に胸痛が有意に多く見られた以外, 有意な偏りはみられなかった.
    2) 小委員会判定による臨床効果は全症例ではCS-807群86.7%(65/75), CCL群81.2%(56/69), 細菌性肺炎群ではCS-807群85.9%(61/71), CCL群82.1%(55/67) で, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.また, 主治医判定は全症例ではCS-807群86.7%(65/75), CCL群83.8%(57/68), 細菌性肺炎群ではCS-807群85.9%(61/71), CCL群84.8%(56/66) で同様に有意差は認められなかった.
    3) 細菌学的効果は除菌率CS-807群100%(18/18), CCL群85.7%(24/28) で両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    4) 副作用はCS・807群89例ではまったくみられず, CCL群85例では3例 (3.5%) にみられたが, 両薬剤群間に有意差は認められなかった.臨床検査異常も, CS-807群23.7%(19/80), CCL群26.9%(21/78) で同じく有意差は認められなかった.これら副作用, 検査値異常とも重篤なものは認められなかった.
    5) 小委員会判定による有用性は, 全症例ではCS-807群86.7%(65/75), CCL群77.1%(54/70), 細菌性肺炎群ではCS-807群85.9%(61/71), CCL群79.1%(53/67) で両薬剤群間に有意差は認められなかった.また主治医判定による有用性は, 全症例ではCS-807群86.7%(65/75), CCL群76.8%(53/69), 細菌性肺炎群ではCS-807群85.9%(61/71), CCL群78.8%(52/66) で, いずれにおいても両薬剤群間に有意差は認められなかった.
    以上より, CS-8071日200mgの細菌性肺炎に対する有効性, 安全性は, CCL1日1,500mgと同等の成績が示された.
    従って, CS-807は細菌性肺炎の治療に臨床的有用性が高い薬剤であると考えられた.
  • 椎名 義雄, 飯島 淳子, 沢田 好明, 岩倉 理雄, 宮沢 博, 武田 敏
    1988 年 62 巻 11 号 p. 1002-1009
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    EIA法であるChalmydiazymeを用い, 1,888例の産婦人科外来患者について子宮頚部のChlamydia trachomatis (C. trachomatis) 感染症の診断を試みた.また, Chlamydiazyme陽性の30例とMicroTrak陽性の30例について, ELISAと間接蛍光抗体法 (IFA) を用い血清IgG・IgA量を測定した.更に, Chlamydiazyme陽性で血清抗体価の低かった8例は培養を実施した.
    1) Chlamydiazymeの陽性率は分娩希望妊婦9.5%, 特殊浴場接客婦24.2%, 学生23.1%で, 以前行なったMicroTrakに比べ著しく高値を示した.
    2) Micro Trak陽性例のELISAは全例 (16例) が陽性であったのに対し, Chlamydiazyme陽性例は73.3%であった.
    3) IFA (IgA) で10倍以上の明らかな高値を示したのはMicro Trak陽性例が66.7%であったのに対し, Chlamydiazyme陽性例は53.3%であった.
    4) Chlamydiazyme陽性で, ELISA陰性の8例は全例培養陰性, IFA (IgG) 価は全例80倍以下, IFA (IgA) は全例5倍以下であった.
    以上の結果より, 子宮頚管C. trachomatis感染症のChlamydiazymeによる診断は感度に優れた点でscreeningには適した方法と思われるが, 最終診断はMicroTrak等の直接塗抹蛍光抗体法が望ましい結果を得た.今後, さらに直接塗抹蛍光抗体法の感度を上げる努力が必要であるように思われた.
  • 桑原 健介
    1988 年 62 巻 11 号 p. 1010-1021
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma pneumoniaeに対するモノクローナル抗体を, P3-X63同Ag8-U1マウスミエローマ細胞株を用いた細胞融合法で作製した.M.pneumoniaeに対する抗体を産生する117株のハイブリドーマクローンのうち, ELISAにて最も反応性の高かった5系のモノクローナル抗体を更に詳細に検討した.これらのモノクローナル抗体は, 著者が検討したM. pneumoniae以外の各種常在マイコプラズマ標準株 (M.genitalium G37, M. fermentans PG18, M. hominis PG21, M. salivarium PG20, M.orale CH19299, M. buccale CH20247, M. faucium DC333, Ureaplasma urealyticum T960) には, 交叉反応を示さず, 種特異的な反応を示した.Immunoblottingの成績より, これら5株のモノクローナル抗体のうち, 4株が認識する抗原決定基は, M. pneumoniaeの分子量約45,000の蛋白中にあり, 耐熱性で, トリプシン消化性のペプタイド部分であった.他の1株が認識する抗原決定基は, M.pneumoniaeの分子量約40,000の糖蛋白中にあり, 糖鎖とペプタイドにまたがる部分, または, 糖鎖に関連ある部分であると考えられた.これらの種特異的モノクローナル抗体を用いて, 本菌の抗原検出感度をSandwich ELISAで検討した.その結果, 耐熱性ペプタイドを認識する8A4A5を用いたSandwich法での検出感度が最も良く, マイコプラズマ抗原液を1%牛血清アルブミン加PBS-Tで希釈し, 2段階希釈系列を作製して測定した場合, M. pneumoniaeMac株では総蛋白濃度で16ng protein/ml (約104CFU/ml) で, M.pneumoniae臨床分離株では, 22株中21株 (95%) が250ng protein/ml (約105CFU/ml) 以下で検出可能であった.また, M.genitalium以外の各種常在マイコプラズマ標準株は検出しなかった.一方, M, pneumoniaeと抗原的に区別不可能とされるM. genitaliumは1,950ng protein/ml以上の高濃度でしか検出されなかった.
  • 伊藤 雄介, 山田 正道, 塙 直樹, 東 威
    1988 年 62 巻 11 号 p. 1022-1025
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 20 year old woman was admitted to our hospital because of fatigue and persistent low grade fever lasting for a 8 month period.
    Physical examination on admission revealed neither elevation of temperature, lymphadenopathy nor jaundice.
    Laboratory studies showed increased leukocyte counts with absolute lymphocytosis including atypical lymphocytes, an elevation of GOT, GPT and LDH levels in the serum, a negative heterophil agglutination test and mild hepato-splenomegaly on the radiological scintigram. Anti-cytomegalovirus antibody of IgM class (ELISA) was markedly elevated, while antibodies against hepatitis associated antigen and EB-virus were negative.
    Histological findings on liver biopsy showed sinusoidal infiltration of mononuclear cells, however, typical inclusions of cytomegalovirus were not identified.
    Cytomegalovirus was isolated from urine specimens.
  • 森山 耕成, 岡田 薫, 沢江 義郎, 加治 良一, 工藤 二郎, 藤本 一眞, 岡村 孝, 仁保 喜之, 大村 一郎, 河村 伸一, 草場 ...
    1988 年 62 巻 11 号 p. 1026-1032
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 33-year-old male was sent to our clinic for vomiting, shock, and a skin rash. Descrete pink papules became larger and purpuric within 24 hours, some of which had a central hemorrhage.
    Physical and laboratory examinations revealed meningitis, herpes labialis, septic shock, DIC, adrenocortical insufficiency, and cardiac failure with evidences of myocardial infarction. N.meningitidis, serogroup B and herpes simplex virus type 1 were identified in the cultured blood and exudates of the swollen lips on the second hospital day, respectively.
    The patient recovered with medications of ABPC (6-8g/day), heparin, FOY, antithrombin III, and with intensive care for cardiac-septic shock.
    Hemolytic activities of the patients's compliment were less than 12/CHSO during the course. Screening for each component of the compliments and the reconstruction test of the hemolytic activity with addition of purified seventh component of compliment (C7) disclosed that this patient is a congenital deficiency of C7.
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