感染症学雑誌
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62 巻, 6 号
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  • 矢部 普正, 矢部 みはる, 満田 るみ, 星 伸和, 尾崎 和代, 石丸 裕司, 勝田 真理子, 金 竜一, 松田 倫夫, 加藤 俊一, ...
    1988 年 62 巻 6 号 p. 527-533
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    29例の小児骨髄移植患者において, 腸内殺菌としてVapcomycin 750mg/m2/day, Polymyxin B300万単位/m2/day, Nystatin 150万単位/m2/day (VPN), あるいはNystatinをAmphotericin B150mg/m2/day (VPA150) または500mg/m2/day (VPA500) に変更して投与した.全ての投与群において腸内菌叢の消失が得られたが, VPN投与群およびVPA150投与群ではCandidaがそれぞれ14例中10例, 5例中5例に検出され, うち1例はCandidaの全身感染症で死亡した.VPA500投与群においてはCandidaは10例中1例に検出されたのみでAmphotericin Bの増量は有効であると思われた.
    各群における緑膿菌の検出頻度をみるとVPN投与群では14例中3例, VPA150投与群が5例中1例であったのに対し, VPA500投与群は10例中5例と増加しており, VPA500投与群の1例は緑膿菌の壊疽性膿瘡から敗血症を発症して死亡した.
    それぞれの検出部位をみるとCandida, 緑膿菌とも検出例では咽頭から肛門にわたって検出される例が散見され, 抗生剤, 抗真菌剤のネブライザーに加えて含漱などの処置も考慮すべきと思われた.
    結果としてCandidaに対してはVPA500の投与が有効であったが, 緑膿菌対策は今後の重要な課題と思われた.
  • リンパ球サブセットおよびNatural Killer (NK) 活性を用いて
    深山 牧子, 稲松 孝思, 白木 正孝, 井藤 英喜, 大山 俊郎
    1988 年 62 巻 6 号 p. 534-538
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗生剤投与中に臨床材料からカンジダが検出された老年者10例のリンパ球subpopulationをモノクローナル抗体 (Leu4, Leu3a, Leu2a, HLA-DR, OKM1, Leu7) を用いて分折し, 同時にK-562細胞を用いた51Cr-release法によりNK活性を測定した.これらの値を健康老年者42例, 抗生剤投与中であるがカンジダの検出されなかった10例と比較検討をした.
    カンジダ検出群では, 健康老年者に比しLeu2a+細胞は高値であり, Leu3a/Leu2a比, OKM1+細胞の低値を認めた.HLA-DR+細胞は, 健康老年者, カソジダ非検出群の両群に比し有意に高値を示した.NK活性は, カンジダ非検出群において, 健康老年者, カンジダ検出群に比し, 有意に高値を示した.
    NK細胞は, 真菌感染の防御因子のひとつである可能性が示唆された.
  • 鎌形 有祐, 内山 竹彦, 北原 光男, 清水 喜八郎
    1988 年 62 巻 6 号 p. 539-542
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    インターロイキン-1 (interleukin-1, IL-1) に対するC3H/HeJマウス胸腺細胞増殖反応をIL-1活性の指標とした場合, IL1活性を抑制する物質が発熱患者尿中に存在することを認めた.このIL-1活性抑制物質はマウス胸腺細胞に傷害活性はなく, 分子量20,000から50,000の物質である.このようなIL-1活性抑制物質の存在はIL-1によって増幅される炎症反応の調節に重要であろう.
  • 野上 和加博
    1988 年 62 巻 6 号 p. 543-550
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全菌体を抗原として用いたELISA法により, 連鎖球菌抗体の測定を試み, 基礎的実験を行った結果より次の結論を得た.
    1) A, B, C, G群溶連菌標準菌株を用い, 各抗群血清との反応を行った結果, 410nmで示される吸光度は, 群特異的な反応を反映していた.
    2) A群M1, M4, M6, M12型の標準菌株を用いた反応では, C多糖体, T蛋白質等に対する抗体と共に, M蛋白質に対する反応も示していた.
    3) A群C多糖体及び抗原の菌型と対応する菌株のトリプシン処理菌体で吸収をした後に, 人血清中にM特異抗体が残存した.
    4) 心臓病患者の血清中には, この20年間の主要流行菌型といわれる菌型に対するIgG抗体が, 比較的高い値で検出された.
    従来まで引用されているM抗体の測定方法に比較して, 本方法は簡便であり, A群溶連菌のM抗体を反映させうる方法と考えられた.
  • 赤松 えり子, 楊 振典, 根岸 昌功, 増田 剛太
    1988 年 62 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    カリニ肺炎は我国のAIDS患者においても発現頻度が高く, 時に致命症となるが, 化学療法による治癒例も多いことから, ST合剤, Pentamidine等による積極的な治療が望まれる.
    ST合剤はsulfamethoxazole75~100mg/kg/日, 及びtrimethoprim15~20mg/kg/日の大量投与が推奨されている.副作用としてはAIDS以外の患者においては消化管症状が最も多く, AIDS患者においては, 発熱, 発疹, 倦怠感, 白血球減少が特徴的であるとされている.
    Pentamidineは4mg/kgの静注あるいは筋注による大量投与が推奨されており, 各々の副作用について異論も多い.transaminaseの上昇, 嘔気, ロ区吐, 血糖値の変動, Creatinineの上昇等に対し, 観察を密にしながら1~2時間かけてゆっくり静注する方法が今後主流になるものと思われる.
    今回我々は6例のHIV感染者に, カリニ肺炎の治療及び予防投与の目的でST合剤を投与し, 3例 (50%) に発熱・発疹・transaminaseの上昇等の副作用を認めたため投与を中止した.そのうち1例にpentamidineの静注法を試みたところ, 一過性の著しい全身倦怠感, transaminaseの上昇, creatinineの上昇, 貧血等の副作用を呈したもののカリニ肺炎の軽快をみた.
    我々はカリニ肺炎の治療及び予防投与に, ST合剤を第一選択に, 又その不成功例及び副作用例に対しpentamidineをゆっくり静注する方法を推める.
  • 山田 義貴, 地土井 襄璽, 斎藤 肇, 冨岡 治明
    1988 年 62 巻 6 号 p. 557-563
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    マウスでの熱傷モデルを用いて, 熱傷後の腹腔マクロファージ (Mφ) 機能の変動とLactobacillus caseiYIT9018 (LC9018) のそれに及ぼす効果について検討した.体表面積の15%の熱傷をおこさせた場合, 腹腔Mφ の貧食能は低下, 殺菌能は逆に10日目まで亢進, また化学発光誘起能は受傷1日後には一過性に亢進, その後は減少した.従って, 受傷後1日目での殺菌能の亢進は活性酸素の生成の亢進に起因したものと考えられるが, その後の亢進は別の機序の関与が考えられる.本熱傷モデル系では, Mφ の貧食能が低下するにもかかわらず, 殺菌能は逆に亢進するという相反する現象がみられたが, このことは熱傷によるMφ 機能の障害には選択性があることを示唆しているもののように思われる.熱傷マウスにLC9018を投与すると熱傷宿主の低下したMφ の貧食能が正常近くまで回復し, また殺菌能及び化学発光能が著明に亢進した.このことはLC9018が熱傷宿主における日和見感染を防止しうる可能性を示唆しているもののように思われる.
  • 菌の性状と患者の背景因子
    大成 滋
    1988 年 62 巻 6 号 p. 564-589
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本学附属病院中央検査部細菌検査室において, 1984年1月から1986年4月までの2年4ヵ月間に, 入院患者の血液培養より分離されたS.aureusを対象として, 薬剤感受性, ファージ型, コアグラーゼ型, TSST-1産生能の検索を行った.加えて菌が検出された患者の背景因子や治療抗菌薬について多変量解析を試みた.
    1.検索期間中に検出されたS.amusは81株で, その中57株 (70.4%) がメチシリン耐性菌 (MRSA) であった.
    2.このMRSAの中, 55株 (96.5%) がアミノ配糖体薬 (AGs) に耐性を示した.3′-燐酸転移酵素 (3′-APH) 産生能を除外すると, 当院における以前の調査では, AGs耐性のMRSAは, 6′-アセチル転移酵素と2′′-燐酸転移酵素のbifunctionalな酵素 (6′-AAC+2′′-APH) を産生する菌 (GMr-MRSA) と4′, 4 ′′-アデニリル転移酵素 (4′, 4′′-AAD) を産生する菌 (TOBr-MRSA) とに大別されていた.今回, 新たに両酵素を産生する菌 (GMr+TOBr-MRSA) が8株見出された.
    3.GMr+TOBr-MRSAのファージ型, コアグラーゼ型, トキシン型は, GMr-MRSAのそれらと同様の株 (3株) と, TOBちMRSAと類似している株 (5株) とに分類された.このことから, hospital strain化しつつあるMRSAは次第に変異しつつあることが示唆された.
    4.MRSAが検出された患者は, 1) 高齢であることに加えて, 何等かの意味で免疫不全状態にある脳疾患や悪性腫瘍, 心疾患, あるいは糖尿病等に罹患している患者, 2) 先天性免疫不全症や低出生体重児等highriskな状態にある小児, 3) 年齢を問わず (しかし実際は20歳台が多い) 多発性外傷や広範な熱傷における患者, の3群に大別することができた.菌が検出される時期は, 1) と2) では入院後積極的に抗菌薬の投与が行われた1週間以降の患者が多く, 3) は入院短期間の患者が多かった.
    5.MRSAの検出例では, 前治療薬として第2, 第3世代セフェム系薬が使用されている例が有意に高いことが, 林の数量化理論第II類による解析で示された.
    6.GMr-MRSAは内科系病棟に入院している患者, TOBr-MRSAは外科系病棟に入院している患者からそれぞれ多く検出されていた.その理由としては, 内科系病棟では前治療薬として比較的単独使用例が多いのに対し, 外科系病棟では併用例の多いことが関与していると考えられた.
    7.MRSA感染症にはいずれも多くの抗菌薬が治療薬として併用されていた.数量化理論による解析は, 部分的には有用と考えられる薬剤もいくつか認められた.しかしながら, 積極的に最も有用であると断定し得る抗菌薬は見出されなかった.上記の成績から, MRSAによる感染症は, 一度発症すると極めて難治であることが明らかにされた.
  • 小澤 茂, 金子 通治, 吉野 亀三郎, 原田 志津子, 柳 壹夫
    1988 年 62 巻 6 号 p. 590-597
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    国内の5つの地域で分離された224株の単純ヘルペスウイルス (HSV) 1型について, 制限酵素を用いたDNAフィンガープリント法による分子疫学的解析を行なった.
    制限酵素BglII切断片のサイズが変動する変異が意外にも全分離株の約1/4に観察された.一方, 制限酵素BglII切断点の消失, および出現による変異は少数の分離株のゲノム上の広い領域に分散して観察された.
    我々はBglII消化K断片のサイズが標準株のK断片に比べ大きくなる変異を初めて見出し, これをA型変異と命名した.A型変異株は全分離株の18.3%に見出された.A型変異株の分布に地域差があることを発見した.この地域性はHSVが生涯続く潜伏感染を起こし, かつ親密な接触によってのみ伝播するという感染様式によると考えられる.ウイルスの生態学, 進化と分散, あるいはウイルス感染症の地域的特性の可能性という面からみて興味深い.
  • C. difficileの発芽増殖に対するpHの影響
    川崎 賢二
    1988 年 62 巻 6 号 p. 598-607
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗菌剤投与後に発生するClostridium difficileによる腸炎の発症機序を基礎的に解明する目的で, 本菌の増殖に関与する条件を検討した.
    Bifidobacterum adotescentisと混合培養したC.difficileの増殖形細胞は, 単独培養時に比べ増殖は阻止されなかったが, 芽胞形成は著しい低下を示した.
    一方, C.difficileの芽胞は, 単独培養では培養24時間後に発芽増殖したのに対し, B.adotescentisとの混合培養では培養48時間後でも発芽増殖しなかった.混合培養菌液とC.cifficile単独培養菌液の酸化還元電位とpHは, 12時間後に前者は一300mV, pH5.3であり, 単独時では-360mV, pH6.0であった.
    BHI broth (pH7.41) に接種したC.difficileの芽胞は, 培養12時間後 (酸化還元電位,-230mV) から発芽増殖し, 24時間後に発育は最大に達した.BHIbrothの初期pHを酸性側 (6.45, 6.10) に調製し, 芽胞を接種すると発芽増殖は前者では培養36時間後, 後者は72時間後まで遅延し, さらにpH5.72に調製したBHIbrothでは, 芽胞からの発芽増殖は培養7日目でも認められなかった.
    以上の結果は, 正常腸管内においては菌叢を構成する他の菌種が低級脂肪酸などを産生することにより腸管内環境pHが酸性側に維持され, このことがC.difficile芽胞の発芽増殖に対する抑制因子の一つとなっていることを示唆するものと考えられた.
  • 石原 圭子, 林 純, 梶山 渉, 石橋 大海, 柏木 征三郎
    1988 年 62 巻 6 号 p. 608-612
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は出生時, 母児間ABO型不適合のため交換輸血を受けた女性で, 家族内にはHBs抗原陽性者は1名も存在せず, 患者はこの時B型肝炎ウイルスに感染し, キャリア化したと考えられた.16歳でHBs抗原陽性, HBe抗原陰性, HBe抗体陽性, HBs抗体陰性, HBe抗体陽性と判明し, 肝生検にて慢性活動性肝炎と診断された.経過観察中, 19歳でHBs抗原が陰性となり, 高値を示していたHBc抗体価は著明に低下した.22歳でHBs抗体が陽性となったが, 肝機能異常は持続し, HBs抗原が陰性化して7年後の26歳には, 臨床的に肝硬変への進展が確認された.慢性肝炎の段階ではHBs抗原が陰性化した後は肝炎は鎮静化するとされ, また一般にHBs抗原の陰性化は比較的高齢者に多く, 20歳以下での自然陰性化は極めて少なく, まれな症例と思われたので, 報告する.
  • 梅木 茂宣, 岡本 嘉之, 久本 信実, 原 義人
    1988 年 62 巻 6 号 p. 613-618
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    基礎疾患のない22歳の若年健康女性のAeromonas hydrophila敗血症例を経験した.腎不全, DIC等を併発することなくLatamoxefとOnoxacinが著効し, 約2週間後に軽快退院した.健康成人に発症したAeromonas hydrophila敗血症は文献的に殆ど報告なく, 本邦第1例と考えられたので報告した.
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