感染症学雑誌
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62 巻, 7 号
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  • 細菌付着能からみた検討
    黒木 秀明, 加藤 政仁, 林 嘉光, 多代 友紀, 伊藤 剛, 松浦 徹, 武内 俊彦
    1988 年 62 巻 7 号 p. 623-627
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ラット気管粘膜を機械的に傷害し, それに対するグラム陰性桿菌の付着能を正常群と比較検討した. Swan Ganz catheterを気管内に挿入しバルーンを膨らませ2時間圧迫し傷害粘膜を作製した. 使用菌は, P. aeruginosa1210, K. pneumoniae NK31, E. coli NIHJJC-2の3菌種で2×107CFU/mlに調製し実験に供した. 傷害群では正常群に比し3菌種とも有意に付着率が増加し, 特にP. uruginosa1210が高い付着率を示した. この付着態度はさきに報告した塩酸による傷害粘膜に対する成績と同様であった. しかし菌を気道粘液で前処置するとP. uruginosa1210の傷害粘膜への付着能は著明に抑制されP. aeruginosaの気道粘液への親和性の高さが示唆された.
  • 宮西 邦夫
    1988 年 62 巻 7 号 p. 628-635
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ProteinAによるIg-G吸収法を用いた日本脳炎, デング両ウイルスの新鮮感染状況の推定法の有用性を検討するため, タイ国内一地域の人血清481検体を用い, 吸収前および吸収後のHI抗体価を測定した.
    被検血清0.3ml中のIg-G抗体は, Protein Aを含む黄色ブドウ球菌 (CowanI株) の菌体0.05gにより, ほぼ完全に吸収出来た.
    Ig-G吸収前の日本脳炎, デングウイルスに対する抗体陽性率は, 各々77.3%, 77.5%であり, 吸収後のIg-M抗体陽性率より, 初感染, 重感染を含めた新鮮感染者の割合が, 各々12.3%, 19.8%であった.
    年齢別, 地域別の抗体陽性率から, 新鮮感染率は吸収前の陽性率に必ずしも比例しておらず, 吸収前の抗体価が160以下の低い者の中にも日本脳炎とデングウイルスのIg-M抗体陽性者が各々4.3%, 22.7%認められた.
    さらに, 吸収前に両ウイルスに陽性であった336名の内, 日本脳炎ウイルス又はデングウイルスのいずれかの特異Ig-M抗体陽性者の割合は22.9%(各々23名, 54名) であり, 両ウイルスの抗体陽性者割合も10.4%と低かった. 以上の成績から, Protein AによるIg-M抗体の検出法は, 両ウイルスの新鮮感染状況の推定のみならず, 原因ウイルスの鑑別診断においても有用であることが示唆された.
  • 谷 直人, 井上 凡己, 吉田 哲, 中野 守, 島本 剛, 西井 保司
    1988 年 62 巻 7 号 p. 636-640
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Isolation of enteric viruses from sewage of a sewage treatment plant in Nara Prefecture was carried out during one-year from June 1984 to May 1985. Both supernatant and sediment of the sewage samples were subjected to virus isolation. Viruses were isolated almost similarly from the supernatants and the sediments.
    Poliovirus, echovirus, coxsackievirus, adenovirus and reovirus were found in the sewage. Polioviruses were isolated during the periods which coincided with those of vaccine administration, and the group B coxsackieviruses were frequently isolated all year round. Among the group B coxsackieviruses isolated type B2, B4 and B5 viruses were isolated successively for a long period, suggesting that these type viruses caused epidemics. The incidences of antibodies against the group B coxsackieviruses in the sera collected in this study area supported that these types of viruses caused epidemics. Futhermore, we observed that the epidemic of type B4 which virus occurred in 1984 though this type was isolated successively for a long period in 1983.
  • 紺野 昌俊, 大成 滋, 伊藤 直子, 生方 公子, 橋本 ゆかり, 川上 小夜子
    1988 年 62 巻 7 号 p. 641-651
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    帝京大学医学部附属病院中央検査部細菌検査室で, 主に1986年10月から1987年3月までの期間に扱った臨床検査材料を対象とし, その中から検出された各種細菌中に占めるフルオロキノロン (QNLs) 耐性菌の割合を調べた. また, それらの耐性菌について, norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX) およびcipronoxacin (CPFX) に対する感受性を測定した. 得られた成績は下記の通りである.
    1. 分離菌株中のQNLs耐性菌の割合が高率であったのはS. auruesの13.0%, S. marcescensの45.8%, およびP. aeruginosaの8.7%であった. 他の腸内細菌ではいずれも5%以下であった.
    2. それらのQNLs耐性菌は, S. aureusでは既に種々の検査材料から検出されているのに対し, S. mazcescensP. aeruginosaでは大多数が尿由来株であった.
    3. S. aureusにおけるQNLs耐性菌の大多数は, メチシリン耐性菌がさらにQNLsにも耐性化したものであった.
    4. S. marcescensにおけるQNLs耐性菌も多剤耐性菌が多く, β-ラクタム系薬やアミノ配糖体薬の全てに対して耐性を示す菌株が約半数を占めていた.
    5. 上記の2菌種に比べ, P. aeruginosaのQNLs耐性菌は, β-ラクタム系薬あるいはアミノ配糖体薬中の1薬剤には感性を示す株が多かった.
    6.QNLs耐性菌の上記3薬剤に対する感受性成績は, 感性菌の示すMIC値とは明らかに異なっており, しかもそれらの耐性菌は6.25μg/ml前後の中等度のMICを示す菌株群と, 100μg/ml程度のMICを示す菌株群とに区別された. また, 各薬剤間には相関性のあることを認めた.
  • 廣澤 浩, 中村 幸義, 渡辺 言夫, 米山 国義, 伊達 禮次
    1988 年 62 巻 7 号 p. 652-656
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1977年8月から定期接種に組み込まれた風疹ワクチンの接種を受けた女子が妊娠適齢に達したので, 妊婦の風疹抗体保有率を求めるとともに, 問診による風診既往歴および風疹ワクチン歴と抗体保有の実態を調査した. さらに, 罹患時期およびワクチン接種時期から抗体測定までの期間と抗体価について検討した. 対象とした妊婦は382名で, 年齢は18歳から42歳にわたった. このうち, 1962年4月2日以後に出生した定期接種対象者が63名含まれていた. 抗体保有者は301名, 78.8%の抗体保有率で, 年齢別では, 定期接種対象者の抗体保有率が92.1%と最も高く, 1955年1月1日から1962年4月1日までに出生し, 1986年現在, 妊娠に最も適齢の者の抗体保有率が73.4%と最も低かった. 既往歴およびワクチン歴と抗体保有の実態は, ワクチン接種者は全員抗体を保有していたが, 既往歴と抗体価が一致したのは61.2%で, 問診による風疹既往歴の判断は困難と思われた. しかし, 定期接種対象者の一致率は90. 6%と高く, ワクチン接種が始まってから社会的に風疹に対する認識が高まったことを示していた. 風疹罹患およびワクチン接種から抗体測定までの期間と抗体価についてみると, 罹患群では, 測定までの期間は2年から31年で, 抗体価は8倍から256倍であった. ワクチン群では, 期間は5ヵ月から10年で, 抗体価は16倍から128倍にわたり, 接種後9年以上を経た2名の抗体価はいずれも64倍であった.
  • 高山 直秀, 南谷 幹夫, 近藤 了, 亀山 昭一, 長岡 芙美子
    1988 年 62 巻 7 号 p. 657-663
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本邦において破傷風患者数は, ジフテリア患者数と同様に近年著しく減少しており, 特に死亡率の減少は若年層で著しい. 我々は破傷風抗毒素価を年齢別に調査し, 年齢別ジフテリア抗毒素価と比較した.
    平均破傷風抗毒素価は6~17歳の各群では1.0Hemagglutination Unit (HAU)/ml以上であり, 18~30歳の各群では0.15~0.6HAU/mlであったが, 31歳以上の年齢では平均抗毒素価が0.02~0.06HAU/mlに低下し, 抗毒素陰性者の数も増加した. 一方ジフテリア抗毒素の場合, 平均抗毒素価は36~40歳群で低下しているものの, 全年齢群で0.03HAU/ml以上であり, 抗毒素保有率は26~40歳の間では年齢が増すにつれて低下する傾向がみられたが, 41歳以上で再び上昇していた.
    各年代間および破傷風とジフテリアとの間でみられた平均抗毒素価および抗毒素保有率における差は, 本邦で両疾患に対する予防接種が開始された時期および用いられたワクチンの種類, さらに疾患流行の有無と相関があると思われた. すなわち, 青少年層では予防接種によって破傷風およびジフテリア抗毒素を獲得し, 中高年齢層では顕性ないし不顕性ジフテリア感染によっててジフテリア抗毒素を獲得したものと思われる.
  • 杉島 仁, 下間 庸光, 板垣 信生, 長谷川 廣文, 堀内 篤
    1988 年 62 巻 7 号 p. 664-668
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性で, 汎血球減少の精査目的で昭和57年4月12日に当科入院となった. 各種検査により, 再生不良性貧血と診断したが, 入院時より発熱が続き, 抗生剤に不応であった. 5月には悪心, 嘔吐が出現するとともに意識レベルの低下を認めた。髄液よりクリプトコックスが検出され, Amphoter icin B (AMPH-B) と5-Fuluorocytocinを開始した. AMPH-Bは経静脈的に計2,190mg, 髄腔内に3.2mgを投与した. その結果, 髄液所見, 臨床症状とも改善し退院した. クリプトコックス髄膜炎は, しぼしば血液疾患に合併するが, 再生不良性貧血に合併したという報告は少ない. さらに, 本例のようなcom. promisedhostで救命し得た例は稀であると思われた. この要因として早期から治i療が開始されたこと, 充分量のAMPH1Bが投与されたことなどがあげられた.
  • 林 嘉光, 松浦 徹, 加藤 政仁, 武内 俊彦
    1988 年 62 巻 7 号 p. 669-674
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は34歳男性.昭和61年5月上旬より39℃ の発熱が持続し近医にて投薬をうけるも改善せず, 乾性咳嗽も加わったため当科来院した. 胸部X線で右下肺野に浸潤影を認め, 同部位からの気管支肺胞洗浄液には有意な細菌は検出されず, その細胞分画では肺胞マクロファージ71%, 好中球27%, リンパ球1%を示した. 気管支肺生検所見では肺胞腔に肺胞マクロファージ, リンパ球浸潤および肺胞中隔の軽度の肥厚とII型上皮の腫大を認めた. セキセイインコの飼育歴があり, その腸管, 糞便乳剤をマウス腹腔内に接種し, マウスの脾臓乳剤をHela細胞に接種させたところ細胞内封入体が検出され, またオウム病CF抗体価の有意な上昇がみられたことからChlamydia psittaciによる肺炎と診断した.
  • 三笠 桂一, 澤木 政好, 国松 幹和, 浜田 薫, 藤村 昌史, 成田 亘啓
    1988 年 62 巻 7 号 p. 675-681
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    長期人工呼吸患者は緑膿菌などによる難治性の気道感染を合併しやすく, weaningの妨げとなる. 我々は, これらの患者に気道感染の治療を目的としてEMの投与を試み, 有効と考えられた4症例を経験したので報告する.
    症例1: 70歳, 男. 既往に肺結核による両肺上葉切除術.胃癌手術後, 呼吸不全となり人工呼吸. P. mattophitiaによる気道感染合併.EM投与後, 経過良好でweaningでき, 退院. 症例2: 74歳, 女. 気管支喘息重積発作のため人工呼吸. P. aeruginosaによる気道感染合併. EM投与後, 経過良好. 気管切開孔閉鎖し退院. 症例3: 56歳, 男. 既往に肺結核のため人工気胸術. 急性増悪きたし人工呼吸. P. aeruginosaによる気道感染合併. EM投与後, 経過良好のため気管切開孔閉鎖し退院. 症例4: 50歳, 男. サルコイドーシスのステロイド治療中アスペルギールス, 結核菌, 緑膿菌の呼吸器感染合併し, 呼吸不全となり気管切開. 多種抗菌剤とEM投与. 薬熱にて抗緑膿菌剤中止後も経過良好のため気管切開孔閉鎖し退院.
    以上, 4症例は, 慢性呼吸器疾患の気管切開患者の気道感染の治療にEMが有用であることを示唆する症例と考えた.
  • 有益 修, 目黒 英典, 白石 裕昭, 菅又 久美子, 比留間 藤昭, 阿部 敏明
    1988 年 62 巻 7 号 p. 682-683
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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