感染症学雑誌
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63 巻, 12 号
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  • 金本 康生, 妹尾 正登
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1291-1295
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1987年6月中旬から8.月にかけて, 広島県内の某小学校でMycoplasma pneumoniaeによる上気道炎の集団発生が認められた. 全児童68名中40名 (59%) に何らかの気道感染症の症状が認められ, そのうち肺炎で入院した児童は10名であった.
    検体採取が可能であった児童31名中24名 (77%) がM. pneumoniaeによる感染症であると確認された. これらの患者の大部分は咳, 発熱を主徴とする上気道炎患者であり, その他に肺炎2例, 上気道炎に合併した中耳炎が1例に認められた. このたびM. pneumoniaeの分離に用いたPPLO液体培地, SP-4液体培地及び重層培地のうちでは, SP-4液体培地での分離率が最も高かった.
  • 福井 康朗, 鈴木 正徳, 柳井 慶明, 江田 淳二, 寺沢 徳昭, 仲田 幸文, 磯村 思无
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1296-1300
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    海外旅行者が, 旅行中に感染するロタウイルスについて, その実態を知るため, 東南アジア各国を出発し名古屋空港に到着する乗客の糞便からウイルスの検出を試みた.
    1. 1985-1988年の間に, 消化器症状を訴えた334名を検査し, 10名からロタウイルスを検出した.
    2. ロタウイルス陽性者の年齢層は, 10歳代から楊0歳代まで広い範囲にわたり, 特に40歳代と50歳代に集中した.
    3. 推定感染国別では, 特定の地域に集中することは無く台湾, タイそれぞれ3名, 香港2名, フィリピン, ネパールそれぞれ1名であった.
    4. ロタウイルス陽性者の臨床症状は, 消化器症状のうち下痢を訴えた者が, 100%であった.
    5. 季節的変動は認められず, 乾季と雨季がはっきりしている熱帯地域に限れば, フィリピンが乾季1例, タイが乾季2例, 雨季1例であった.
  • 3. 実験的深在性カンジダ症におけるリポソーム封入アムホテリシンBの治療効果の検討
    笹原 武志
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1301-1307
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    マウスにおける実験的深在性カンジダ症の治療にリボソームに封入したアムホテリシンBを用い, その治療効果について検討を行なった.
    Candida albioansを静脈内感染させた場合, その感染に対する感受性の違いが, マウス系統間で認められた. BALB/C系マウスについて生体内での本菌の動態を調べてみると, 肺臓と心血においても菌の増加は僅か認められたものの, 主たる増殖の場は腎臓であり, 発死直前には生菌数にして約106個/gに達した.
    アムホテリシンBをリボソームに封入することによって, アムホテリシンBが本来持っているアナフィラキシー様のショック死といった急性毒性や腎機能障害などの亜急性毒性の成立を迎えることが出来た. その結果, 4mg/kgのリボソーム封入アムホテリシンBを1回投与するだけで, 腎臓内におけるC. albicansの増殖が強く抑制され, マウスの死期も延長することが分かった. 以上の成績から, アムホテリシンBによる深在性カンジダ症の治療にリボソームを薬剤運搬体 (drugdeliverysystem) として応用することによって, 本剤の抗真菌効果を著しく向上させ得ることが示唆された.
  • 平賀 千兼, 石井 文由, 市川 洋一
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1308-1312
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    破傷風トキソイドの経口免疫について検討を行った. 破傷風トキソイド封入リボソーム (LTT) をネコに経口投与し, 血清抗体応答を調べた. その結果, LTT抗原は血清中に抗体産生を誘導し, 破傷風の予防レベルである0.11U/mlより高い抗毒素抗体を産生することが分った. これに対して, 破傷風トキソイドを単独投与した群では, 試験期間を通じて抗体は検出されなかった. また, LTTで経ロプライミングしたネコに沈降破傷風トキソイド (ATT) をブースター注射すると, 高い2次免疫応答が誘導された. さらに, LTTをブースター抗原として経口投与した場合, 血清中の抗毒素価は急激な上昇を示した. 以上の成績から, LTTは, その経口投与によりATTの皮下接種法に匹敵する抗体を産生することが明らかになった.
  • 内山 秀和, 等々力 達也
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1313-1321
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    自然環境からVibrio choleme non-O1が検出されたという従来の報告によれば, 検出が海水か河川水などかによって, 検出時の環境の個々の条件が異なっている.
    そこで, 2つの河川で河川水質の差異, および指標細菌の動向を中心にV. choleme non-01の生存条件の検討を試みた.
    1) V. cholerae non-O1は陸上や他の汚染地点からの流入ではなく, 河川のその検出地点での生存が考えられた.
    2) 水質汚染度の高い河川, あるいは同一河川でも水質汚染度の高い地点ほどV. choleme non-O1の検出率が高かった.
    3) 水質汚染度の低い河川あるいは水質汚染度の変動の少ない河川でC1-イオン, リン酸イオンの増加, または普通寒天培地上37℃24時間で集落を形成する細菌菌数の増加はV.cholerae non-O1の検出度を高めるようである.
    4) V. cholerae non-O1の検出させた試料のうちコレラエンテロトキシン産生菌を含む試料は約13%であった.
  • 福永 謙, 和田 紀之, Stéphane BLANCHE, Claude GRISCELLI
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1322-1328
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983年4月から1988年9月までの5年半の間にパリ, ネッケル小児病院を受診, 経過観察されている母児垂直感染による小児HIV感染症94例をretrospectiveに検討した. 初診時平均年齢は10ヵ月であった. 2例のみ無症状で経過 (28ヵ月, 26ヵ月) し, 全体の98%にリンパ節腫脹/肝脾腫を平均生後6ヵ月時に認めた. この観察期間内に28%が日和見感染症, 16%が重症神経症状, 15%がLIPを呈した. 初回検査所見で24%の症例でOKT4細胞500/mm3以下, 44%の症例で抗原刺激 (Candida) によるリンパ球幼若化反応が陰性であった. ウイルスのコア蛋白成分に対する抗HIVIgG抗体 (P25, P18) の陰転化 (移行抗体を除く) がOKT4細胞数の低下, 幼若化反応の低下と関係があり, これらの症例で有意に日和見感染症, 重症神経症状を呈する例が多かった. また, 現時点での生存率はこれらの症状を呈さない例に比し著明に低値を示していた (図2).
  • 井関 幹郎, 青山 辰夫, 小泉 友喜彦, 小島 正, 村瀬 雄二, 小佐野 満
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1329-1332
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児B型慢性肝炎9例に, トランスファーファクター (T. F.) を投与し, HBe抗原系の変化を指標として, その臨床効果を検討した.T.E投与6か月後のHBe抗原陰性化率は2/8 (25%), 同じく1年後は4/7 (57%) であった. HBe抗原が陰性化した例は, すべて血清GPTは正常化した. T. F. の副作用は見られなかった. T. F. 投与後, 高率にHBe抗原の陰性化が認められたが, 同疾患の自然経過と比較し, その効果を明らかにすることは出来なかった.
  • 吉田 直隆, 高橋 由利子, 森 雅亮, 斉藤 和代, 横田 俊平, 松山 秀介, 杉田 昭
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1333-1337
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸結核および結核性胸膜炎に罹患したダウン症候群の13歳女児例を報告した. 患児は昭和62年に急性大腸炎に罹患し, 治療で一時改善したが食欲不振が続き, 著明な体重減少を認めていた. 昭和63年4月の学校検診でツ反強陽性と胸部異常所見より結核が疑われ当科を受診し, 結核性胸膜炎と腸結核の疑いで入院となった. 入院後, SM, INH, RFPの3者併用療法により, 約5ヵ月間の入院期間を要したが, 胸部所見および消化器症状は改善した. 腸結核は, 回盲部における潰瘍病変, 組織標本の肉芽腫で診断した. 穿孔や瘻孔は認められず, 外科的な手術適応はなかった. 腸結核の発症は入院約1年前の急性大腸炎と考えられ, 原因不明の大腸炎, 特に限局性腸炎では鑑別診断として結核を考える重要性が痛感された. さらにダウン症候群を含め免疫不全状態が考えられる症例では, 腸結核をはじめとする肺外結核に留意する必要があると考えられた.
  • 野口 昌幸, 成井 浩司, 中谷 龍王, 蝶名林 直彦, 中森 祥隆, 中田 紘一郎, 杉 裕子, 谷本 普一
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1338-1343
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    24歳男性, 慢性アルコール中毒, 胃亜全摘術後の状態, 膵内外分泌機能低下による極度の低栄養状態の患者に生のレバー摂取により発症したと考えられる本邦第4例めのC.fetus敗血症を報告した. 肺膿瘍, 胸膜炎, 下肢静脈血栓症, 黄疸, 肝腫大, 下痢, 気胸, low T3 low T4 syndrome等多彩な合併症を呈した. 感受性のあるCM, CP, MINOの併用により治癒した.C.fetus敗血症は, 欧米では多く報告されているが, わが国では, 少なく, 日和見感染の傾向が強い点で, また食生活の多様化とともに増加する傾向があり, 適切な抗菌剤の選択と継続により, 治癒する点で, 留意すべき感染症と考え報告する.
  • 古谷 信彦, 下地 克佳, 中村 博, 大湾 朝尚, 健山 正男, 玉城 和則, 普久原 浩, 草野 展周, 志喜屋 孝伸, 兼島 洋, 伊 ...
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1344-1349
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    80歳, 男性, 発熱, 意識障害を呈し, 血液培養, 髄液培養にてEnterococcus faeciumが分離された. さらに喀痰, 便からも糞線虫が検出され, RFP, MINO, OFLXの併用およびthiabendazoleにて治癒せしめ得た症例を経験したので報告する. 糞線虫による腸管内グラム陰性桿菌敗血症および髄膜炎は, 稀に報告されているが, Enterococcus faeciumによるものはこれまでに報告されていない. 本菌は多剤に耐性であるので, 早期の適切な抗生剤の選択が重要と思われ, 今後糞線虫に合併した敗血症や髄膜炎がみられた場合, 起炎菌の1つとして考慮すべきと思われる.
  • 市川 洋一郎, 古賀 英之, 中村 雅博, 田中 雅子, 徳永 尚登, 加地 正郎
    1989 年 63 巻 12 号 p. 1350-1351
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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