感染症学雑誌
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63 巻, 7 号
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  • 青木 隆一, 松原 義雄, 相楽 裕子, 清水 長世, 冨沢 功, 滝沢 慶彦, 新田 義朗, 瀬尾 威久, 上村 誠, 金久 直子, 増田 ...
    1989 年 63 巻 7 号 p. 659-675
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サルモネラ腸炎に対するT-3262 (tosuHoxacintosilate) の臨床的有効性, 安全性および有用性を評価する目的で, 同患者・保菌者103例に本剤を投与し検討した. 同時に, 臨床分離株に対する本剤の抗菌力を測定し, NA, PPA, ENX, NFLX, OFLXと比較した. また, 急性腸炎患者においてTー3262投与時の糞便中'濃度と腸内菌叢について検討した.
    投与方法は1日量450mg (分3, 食後) を7日間経口投与とした. 解析対象症例は63例 (赤痢菌との混合感染1例を含む) であった.
    臨床効果 (n=6) はすべて有効であり, 細菌学的効果 (n=61) は有効率98.4%(60/61) であった. 副作用は102例中4例 (3.9%) にみられ, 発疹1, 悪心・頭痛.口内炎・口角炎1, 軟便2例であった. 臨床検査値異常は23例中, GOT上昇1, GOT.GPT上昇2, BUN上昇1, 好酸球増加1の計5例 (17.4%) に見られたが, いずれも軽微であった.
    T-3262のサルモネラに対するMIC90は0.05μg/mlで他のキノロン剤よりも低かった.
    急性腸炎患者7例におけるT-3262投与時の糞便中薬剤濃度はMIC90以上の濃度が得られ, 回収率は24時間で2.85~46.3%で, 個体差が大きく, 同一の傾向は認められなかった. 薬剤投与後24時間内の腸内菌叢の変動にも一定の傾向はみられなかった.
  • 大竹 徹, 下仲 治代, 金井 素子, 宮野 啓一, 上羽 昇, 國田 信治, 栗村 敬
    1989 年 63 巻 7 号 p. 676-683
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    単糖類イノシトールの硫酸化体であるイノシトール六硫酸 (IHS), および燐酸化体であるイノシトール六燐酸 (フィチン酸, IHP) の抗ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 作用について, invitroの実験系で調べた. その結果, イノシトール六硫酸は1.67mg/ml以上の濃度で, HIV感染によるMT-4細胞の傷害を完全に抑制し, 830μg/ml以上でHIV特異抗原の発現を抑制した. また40μg/ml以上の=濃度で, AIDS患者から分離したHIVを感染させた健常人末梢血単核球 (PBMC) におけるHIV特異抗原の発現を抑制した. しかしイノシトール六硫酸は, HIVの感染したMolt-4細胞と非感染のMolt-4細胞を混合した場合に認められる巨細胞形成を阻止せず, HIVの逆転写酵素 (RT) の活性も阻止しなかった. 一方イノシトール六燐酸は250μg/~1.5mg/mlの濃度でHIV感染によるMT-4細胞の障害とHIV特異抗原の発現を軽度に抑制し, 1.25mg/mlでPBMCでのHIV抗原の発現を抑制したが, その他のテストでは抗HIV作用は示さなかった.
  • 彌吉 眞澄, 早津 栄蔵, 吉岡 守正
    1989 年 63 巻 7 号 p. 684-691
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma pneumoniae感染により, 菌分離ならびに免疫応答のみられることが確認されたBALB/cマウスを実験モデルとして, Mycoplasma pneumoniae FH-P24および非溶血弱毒変異株P24-S1, P24-S11で生菌免疫した生菌免疫群, またそれらの抗血清での受身免疫群において感染防御実験を行った.
    生菌免疫による防御効果は免疫回数に関係なく, 免疫8週後ではFH-P24, P24量S1免疫群ともに70%, 12週後ではFH-P2480%, P24-S160%であった. 一方P24-S11と非免疫対照群との間に差は認められなかった.
    受身免疫ではIgG抗体価と感染防御効果とは必ずしも平行しなかった. 親株抗血清による防御効果は20%にすぎなかったが, これと同じ結果を得るためには, P24-S1, P24-S11ともにその10倍=濃度の抗血清が必要であった. また, ヒトマイコプラズマ肺炎患者血清とのWestern immunoblottingによると, P1抗体に対しては親株, 変異株ともに強い反応を示したが, およそ85KDaの強いbandはP24-S11には全くみられなかった.
  • 榎谷 直子
    1989 年 63 巻 7 号 p. 692-700
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    健康小児の咽頭, 鼻咽腔におけるH. influenzae (以下Hi) とH. parainfluenzae (以下Hp) の検出状況について調べた. 咽頭でのHi検出率は4, 5歳児38.9%, 小学1年生18%, 小学3年生13%, 小学5年生4%と年齢増加と共に減少傾向が見られ, 反対にHpは増加傾向がみられた. 咽頭の半定量的細菌叢百分率では, Hiは4, 5歳児が高く, 小学5年生で低かった. 反対にHpは4, 5歳児で低く, 小学3, 5年生で高かった.
    Hiの検出率および半定量的細菌叢百分率に季節変動はなかった.
    鼻咽腔では, 咽頭よりHiの検出率, 半定量的細菌叢百分率が共に高かった. Hpの検出率は咽頭より低かったが, 半定量的細菌叢百分率に差はみられなかった.
    Hiの生物型は, 咽頭・鼻咽腔共にI・II・III型が多く78~85%をしめた. Hpの生物型はIII型が50~75%であった.
    ABPC耐性Hiは咽頭1.6%, 鼻咽腔17.7%であった.
  • 全国アンケート調査結果を中心に
    保里 恵一, 由良 二郎, 品川 長夫, 桜井 敏, 真下 啓二, 水野 章
    1989 年 63 巻 7 号 p. 701-707
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 黄色ブドウ球菌, 特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による感染症が増加傾向にあり, この中でMRSAによる術後感染性腸炎の症例も見られるようになってきた. このため, 1980年以降の本邦における術後感染性腸炎の実態を明らかにするため, 全国アンケート調査を行なった. 全国875施設 (外科学会認定施設) にアンケートを行ない, 370施設 (42.3%) より回答を得た. このうち25施設から67症例の報告を頂き, さらに文献例20症例を加-えた87例について検討を行なった. 術後感染性腸炎は, 1985年以降に多く認められ, MRSAによるものは, 関東を中心にそれより以北に多く認められた. 男性に多く, 平均年齢は, 57.9歳であった. 術後2~5日までに下痢・発熱で発症する例が多く, 発症前にほぼ全例がセフェム系抗生剤の投与を受けており, そのほとんどが第三世代セフェム剤であった. MRSA症例のうち6例 (24%) は, 死の転帰をとり, また数施設では, 短期間にMRSAによる術後感染性腸炎の続発が見られ, 院内感染が示唆された.
  • 特に尿中尿素濃度との関連について
    尾花 芳樹, 西野 武志
    1989 年 63 巻 7 号 p. 708-713
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    実験的アロキサン糖尿病マウスにおけるSerratia marcescensの膀胱炎発症に及ぼすインシュリン投与の影響について検討した.
    インシュリン投与による糖尿病態の改善について調べたところ, 1 I. U./mouse/b. i. d. 3日間投与により病態の改善が認められた. またこれらの動物を用いて膀胱炎発症について検討したところ, インシュリン投与マウスは正常マウスより劣るものの, 糖尿病マウスよりは明らかに感染性が低いという結果が得られ, 血糖コントロールの重要性が示唆された. またこの感染性の低い原因の一つとしてインシュリン投与によって, 低下状態にあった尿中尿素窒素量が増加し, S. marcescensの尿中での増殖が抑制されたものであると結論した.
  • 岡崎 則男, 明間 鯉一郎, 滝沢 金次郎, 広岡 義郎, 小島 幸司
    1989 年 63 巻 7 号 p. 714-719
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1982年から1986年の5年間にMycoplasma pneumoniae (以下Mpn) 感染症を疑われた患者566名について, Mpn分離あるいはIHA抗体測定を実施したところ, 141名 (25%) がどちらかで陽性となり, Mpn感染症と診断された. 141名のMpn感染患者の内, 分離と抗体測定の両者を実施した患者が110名おり, これらの患者の分離陽性率は87%, 抗体陽性率は81%であった.
    本症患者の多く (93%) は7病日以内でもMpn分離陽性となり, 発病後約1ヵ月間は分離が可能であった. また, エリスロマイシンやテトラサイクリン系抗生物質による治療後も, 調べた患者の半数程度が発病後2~3ヵ月間は分離陽性であった.
    IHA抗体の陽性率は7病日以内では43%と低く, 15~21病日で陽性率 (92%) および平均抗体価ともに最高値となった. 抗体陽性率はその後低下したものの, 3ヵ月後も70%以上を維持した. また, 乳幼児 (0~3歳) においてもIHA抗体は順調に上昇した.
    本症患者の内9%に滲出性中耳炎の併発がみられ, 6名中2名の中耳滲出液からMpnが分離された.
  • 宇佐美 郁治, 山本 俊信, 妹尾 恭司, 古谷 雅秀, 五藤 雅博, 加藤 正達, 吉野 貞尚, 加藤 政仁, 武内 俊彦
    1989 年 63 巻 7 号 p. 720-725
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    じん肺患者を対象に非感染時での喀痰分離菌を季節別に検討した. 一人平均4回, 延べ1,427回の喀痰検査により, 合計3, 318株の菌を分離した. 分離菌を検討すると, α-Streptococcus, GPC (グラム陽性球菌), Neisseria, GNC (グラム陰性球菌) は各々74.1%, 22.1%, 64.8%, 21.3%と高頻度に分離された. その他気道感染の起炎菌となりうるS. pneumoniae 1.5%, S. aureus 5.1%, B. catarrhalis 2.5%, H.influenzae3.3%, E. coli 2.9%, K. pneumoniae 6.4%, P. aeruginosa 2.8%が分離された.これらの細菌の季節変動を検討したところ, H. influenzae, B. catarrhalis, S. pneumoniae は冬に多く, S. aureusは春に多く, E. coli, K. pneumoniae は夏に多く分離される傾向を示した. しかしP. aeruginosaには季節変動はみられなかった. 気道感染症の起炎菌となりうる菌が非感染時にすでに上気道または下気道に常在し, またその常在に季節変動がみられたことは, じん肺に合併する感染症急性増悪の原因菌との関連において興味ある所見である.
  • 加藤 直樹, 渡辺 邦友, 上野 一恵, 伊藤 陽一郎, 武藤 泰敏, 加藤 はる, 酒井 俊助
    1989 年 63 巻 7 号 p. 726-731
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンH2受容体拮抗剤 (H2プロッカー) を投与された21例の胃吸引液を細菌学的に検索した.同時にH2プロッカーを投与されていない7例についても同様に検討した.H2プロッカー投与症例の胃吸引液のpHは1.91~6.51に分布し, 平均値は4.32でpH5以上の症例は10例見られた.好気性菌は20例 (95%) から検出され, 検出菌数は胃吸引液のpHと正の相関関係を示した.嫌気性菌は7例 (33%) において培養陽性であったが, 好気性菌で認められた菌数と胃吸引液pHとの相関関係は見られなかった.菌群別にはCandida (82%) とStaphylococcus (41%) の検出率が高く, 嫌気性菌ではFusobaoteriumが33%の陽性率で, Bacteroides fragilisgroupはまったく検出されなかった.対照症例においても胃吸引液のpHが高い症例では好気性菌や嫌気性菌が陽性であった.以上の成績より, H2プロッカーの投与は胃内容液のpHを上昇させる結果, 好気性菌のみならず嚥下情肺炎と関連しうる嫌気性菌の増殖も招来し, 胃内フローラを異常に形成することが明らかとなった.
  • 牛島 廣治, 本間 仁, 大楽 真健, 向山 淳司, 北村 敬, 篠崎 立彦, 荒木 和子, 小林 正明, 藤田 靖子, 阿部 敏明, 赤谷 ...
    1989 年 63 巻 7 号 p. 732-737
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    東京およびその周辺地域 (以下, 東京地域) の主として3病院 (帝京大学付属病院, 東京厚生年金病院, 春日部厚生病院) の小児科で1981年から1988年までのロタウイルスの流行疫学を行なった. ロタウイルスの血清型は, 池上らが報告した関西の2病院とは異なるものの (文献6, 13), 3病院間では際だった差は見られず, A群の1, 4型が多くを占めていた. A群の2, 3, 9型の頻度は年によって異なるものの一般的には少なかった. RNAの電気泳動型を詳細に検討した結果は異なった泳動型が1期間内, 1病院内で見られるとともに, 同一の泳動型が年, 病院を越えて存在することがわかった. 異なった血清型で同一の泳動型を示す株群の存在は見い出せなかった.この3病院では, C群ロタウイルスの頻度は少なかったが, 1987年から見い出されるようになった. 今までにこのような長期間にわたる血清型および電気泳動型についての研究は少なく, ロタウイルスのワクチンの開発のためにも重要な事と思われた.
  • 糖尿病マウスにおける緑膿菌性腎盂腎炎での検討
    横尾 彰文, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 田仲 紀明
    1989 年 63 巻 7 号 p. 738-747
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    白血球数は正常であるがその機能低下が疑われるcompromisedhost病態モデルとして, streptozotocin (STZ) 投与による糖尿病マウスを作製し, さらに緑膿菌を用いた上行性尿路感染症を発症させたところ, 著明な易感染性を示した. 末梢血好中球の負食殺菌能は糖尿病発症3週間目で有意な低下が認められ, 糖尿病マウスの易感染性の原因のひとつにこの貧食殺菌能の低下が存在すると考えられた. 低下した好中球貧食殺菌能の改善, 賦活を期待したgranulocyte-colony stimulating factor (G-CSF) の効果を検討したところ, G-CSF投与4日目で有意な回復が認められた. そこで, 緑膿菌上行性腎孟腎炎モデルにG-CSFを予防投与し, その感染予防効果を検討した. G-CSFの予防投与により非投与群に比べ, 生存率および感染発症率でも有意な感染予防効果を認めた.
    以上よりG-CSFは好中球貧食殺菌能の低下したcompromisedhostの細菌感染症に対して予防効果が期待できると考えられた.
  • 白血球減少マウスにおける緑膿菌性腎孟腎炎での検討
    田仲 紀明, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 横尾 彰文
    1989 年 63 巻 7 号 p. 748-756
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cyclophosphamideの2回投与により感染日から感染7日目の屠殺日まで, 末梢白血球数を2,000/mm3前後の減少状態に保たせたマウス実験モデルを作成した. そのマウスに対し, 緑膿菌 (G群) による上行性尿路感染実験を行い, 免疫調整物質であるUbenimexの細菌感染予防効果について検討した.
    Cyclophosphamide群は正常対照群に比し, 有意に易感染性化した. このcyclophospmide群にUbenimex100μg/mouse, 5日間連日の予防投与を行った群では, Cyclophosphamide単独群に比し尿と腎の感染率および感染死亡率は変らなかったが, 感染発症率が有意に低値となり, 感染予防効果を認めた.
    Ubenimexの予防投与を行っても末梢白血球数は感染日から感染7日後の屠殺日までの間, cyclophosphamide単独群と比し, 増加を認めず白血球分画にも変動を認めなかった. しかし腹腔浸出好中球の食食殺菌能を検討すると, cyclophosphamide単独群では正常対照群より著明低下したが, Ubenimexの予防投与により有意に促進を認めた. 以上の結果から, Ubenimexは白血球減少マウスにおいて細菌感染予防効果を有し, その作用機序の一つとして好中球の貧食殺菌能の促進に基ずくことが考えられた.
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