感染症学雑誌
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64 巻, 1 号
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  • 特にU.urealyticumの除去効果について
    河村 信夫, 西澤 和亮, 川嶋 敏之, 肥沼 明, 大原 憲
    1990 年 64 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌剤であるNY-198 (Lomefloxacin: LFLX) はキノロン骨格の6, 8位にF原子を有し, その抗菌力はグラム陽性, 陰性菌に幅広いとされている.
    今回我々は本剤を性行為感染症病原体, 特にUreaplasma urealyticum (U.urealyticum), Chlamidiatmchomatis (C.tmchomatis) を中心に臨床的な検討をし, 以下の結果を得た.
    (1) U.urealyticumについては21例, 本剤1日600mg/3にて6日~16日間投与で検討し, 1例の投与前に-菌は検出されず, 投与後に確認された例を除き他はすべて本剤投与後消失し, 有効率も7日目判定で88.8%, 14日目判定で100%であった.
    (2) C.tmchomatisについては15例検討した. 投与量は同じく600mg/3にて3日~16日間投与で1例の投与後確認例を除きU.urealyticum検討時に, C.tmchomatisが確認された4例を加えての18例はいずれも本剤投与にて消失した. 有効率も100%であった.
    (3) 病原体不明11例を加えての総計40例の有効率及び51例の細菌学的効果, いずれも100%であった.
    以上の成績によりNY-198は, 性行為感染症の主たる病原体であるU.urealyticum及びC.trachomatisによるNGUに有用な薬剤の1つと考えられる.
  • 杉本 峯晴, 荒木 淑郎
    1990 年 64 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HTLV-I-associated myelopathy (HAM) の患者にはsubclinicalな肺病変 (T-lymphocytealveolitis) が合併している. この肺病変は同じHTLV-Iの感染でおこる成人T細胞白血病の肺病変とは異なり, 非腫瘍性のT細胞浸潤によって引き起こされるものである.
    本疾患の発症機序はまだ明かにされてはいないが, 肺病変と脊髄病変の病理組織所見は極めて類似しており, 両病変の発症機序は同一であると考えられる. HAM患者の血清および気管支肺胞洗浄液 (BALF) には, T細胞活性化の指標である遊離IL-2レセプターが増加しており, かつ, 末梢血およびBALF中のT細胞はin vitroで培養すること自己増殖をする. また, 末梢血リンパ球の培養上清には遊離IL-2レセプターが増加している. 以上の結果から, HAM患者ではT細胞が活性化された状態にあり, この活性化T細胞が中枢神経病変および肺病変の発症機序に重要な役割を演じていると考えられる.
  • 北村 聖, 高久 史麿, 宮崎 保, 涌井 昭, 溝口 秀昭, 内野 治人, 正岡 徹, 永井 清保, 仁保 喜之
    1990 年 64 巻 1 号 p. 19-33
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    内科領域の重症感染症患者で原則として3日以上の抗生剤投与による治療効果が不十分もしくは無効であった患者262例を対象として新しく開発された静注用液状人免疫グロブリン製剤C-425と抗生剤との併用効果, 安全性ならびに有用性を検討した.
    本剤が投与された262例の判定委員会における取扱いは, すべての評価より除外された症例12例, 安全性のみ採用例87例で, 有効性, 安全性および有用性のいずれもが採用となった症例 (完全採用例) は163例 (62.2%) であった.
    完全採用例163例の感染症の内訳は, 敗血症疑93例 (57.1%), 肺炎33例 (20.2%), 敗血症18例 (11.0%) などで, 基礎疾患については, 80%以上の患者が白血病や悪性リンパ腫などの造血器悪性腫瘍であり, 全般に重篤な疾患を有していた.
    臨床効果は, 主治医判定で有効以上が49.1%, やや有効も含めた有効率は74.8%であり, 委員会判定でも有効以上およびやや有効以上での有効率は, それぞれ53.4%, 68.7%で主治医の判定とほぼ同様の成績が得られた.
    細菌学的効果を検討しえた症例は19例で, 陰性化11例, 減少1例, 不変5例, 菌交代2例で陰性化率は57.9%であった.
    副作用症状については250例中6例 (2.4%) に認められたが, 本剤との関連が疑われたもの, あるいはありとされた症例は3例 (1.2%) で, 特に臨床上問題と考えられた症例はなかった. また, 肝機能異常が4例 (1.6%) に認められたが, 本剤との関連は明らかでなかった.
    これらの成績より内科領域における重症感染症に対して本剤は有効でかつ安全性の高い薬剤と考えられた.
  • 西村 忠史, 藤井 良知, 阿部 敏明, 目黒 英典, 比留間 藤昭, 堀 誠, 立沢 宰, 前川 喜平, 和田 紀之, 久保 政勝, 豊永 ...
    1990 年 64 巻 1 号 p. 34-53
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児の重症感染症を主体に難治性感染症を含め, 新規液状静注用人免疫グロブリン製剤C-425の抗生剤との併用効果と安全性, ひいてはその有用性について検討を行った. その結果C-425はこれら感染症に対し, 有用な静注用人免疫グロブリン製剤であると考えられる成績が得られた.
    対象は全国23施設に入院した重症感染症を主体に難治性感染症を含む患者で, C-425が投与された総症例は87例であった.
    委員会における解析対象は61例で, 臨床効果は主治医判定では著効23例 (40.4%), 有効24例 (42.1%), やや有効7例 (12.3%), 無効3例 (5.3%), 判定不能4例であり, 有効以上の有効率は82.5%, やや有効を含めると94.7%であった. 委員会判定では著効27例 (44.3%), 有効18例 (29.5%), やや有効7例 (11.5%), 無効9例 (14.8%) であり, 有効以上の有効率は73.8%, やや有効も含めると85.2%であった. 細菌学的効果は, 起炎菌が確定された31例のうち菌の消長が追跡出来た19例にて検討を行ったが, 菌陰性化12例 (63.2%), 減少2例 (10.5%), 不変5例 (26.3%) で陰性化率は63.2%であった.
    安全性については全87例中, 投与終了後2日目劇症肝炎で死亡した1例を除く86例が対象とされ, そのうち1例に発疹が認められた. また, 臨床検査値異常変動としてはGOT・GPT上昇5例, GOT上昇2例, GPT上昇1例の計8例に認められたがいずれも臨床上問題となるものではなかった.
  • 三島 好雄, 井上 敏直, 早坂 滉, 戸塚 守夫, 江端 俊彰, 元木 良一, 井上 仁, 遠藤 幸男, 玉熊 正悦, 今井 順, 森岡 ...
    1990 年 64 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全国11施設の外科系臨床研究機関において3日以上同じ抗生剤を投与しても主要症状の改善が不十分あるいは認められなかった重症感染症患者47例に新しく開発されたC-425 (静注用液状人免疫グロブリン製剤) を上のせ投与して, 抗生剤との併用効果と安全性の検討を試み, 以下の結果を得た.
    総症例47例における臨床効果の主治医判定は, 著効3例, 有効13例, やや有効15例, 無効4例, 判定不能12例で, 有効以上の判定をうけた症例は16例 (45.7%) で, やや有効も含めると31例 (88.6%) であった.
    委員会では症例採択基準を満たさなかった31例を除き, 16例で効果判定を行った. その結果, 臨床効果は著効2例, 有効4例, やや有効9例, 無効1例で, 有効以上の判定をうけた症例は16例中6例 (37.5%), やや有効以上では15例 (93.8%) であった. また, 細菌学的効果判定が可能であった症例は9例で陰性化3例, 減少1例, 菌交代2例, 不変3例で, 起炎菌が消失もしくは減少した症例は9例中6例 (66.7%) であった.
    副作用は全例に認められず, また本剤に起因すると考えられる臨床検査値の異常変動も認められなかった.
  • 渡辺 彰, 大泉 耕太郎, 本宮 雅吉, 佐藤 忠夫, 庄司 真
    1990 年 64 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1988年3月から1989年2月までの1年間に個人開業医を受診した咽頭炎を中心とする呼吸器感染症568例から病原細菌の分離を試みると共に, 45薬剤に対するdisk感受性を検討した. 疾患内訳は急性咽頭炎514例, 急性扁桃炎8例, 急性気管支炎8例, 急性肺炎7例, ヘルパソギーナ6例, 呼吸器感染症状を合併した手足口病18例, 同じく水痘5例および急性耳下腺炎2例であった. この568例中293例 (51.6%) から300株の有意 (≧107/ml) 病原細菌を分離し, その構成はH. influenzae124株, S. pneumoniae58株, S. aureus45株, B. catsrrhalis26株, S. pyogenes25株, K. pneumoniae9株, その他13株であるが, 縁膿菌を含むブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌は全く分離されなかった. 複数菌分離7例中6例でS. sureusと他菌種を同時分離した. S. aureusは若年者で年間を通じて分離されるのに対し, B. cstorrhalisは高年者で冬期間に多く分離された.300株中231株の感受性を3濃度ディスク法で測定した. H. influenzseのABPC耐性, S. pneumoniaeおよびS. pyogenesのABPC, CEZ耐性およびS. sureusのMCIPC, CEZ, GM, OFLX耐性は認められず, 一次医療においては薬剤耐性菌の頻度は低い, と考える.
  • 病原リケッチアの血清型と臨床像
    橘 宣祥, 志々目 栄一, 村井 幸一, 津田 和矩
    1990 年 64 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    宮崎地方の恙虫病患者から分離されたR. tsutugamushiのマウスに対する病原性と免疫血清学的性状ならびに患者の臨床所見を対比検討した. マウスに対してはHirano型リケッチアがIrie型より病原性が強い傾向がみられた. 患者の臨床所見においても肝機能検査成績はHirano型で異常の程度が強く, マウスの場合と同様にHirano型のほうが, 病変がやや高度であることが示唆された.
  • 別所 敞子, 松本 明
    1990 年 64 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    われわれは本学付属病院を中心とする地域のChlamydia trachomatisによるSTD感染症の疫学調査をおこなっているが, 1984年10月から1988年10月までの結果を報告する.
    1) クラミジア感染を疑われる外来患者血清のChlamydia trachomatisに対するIgG抗体をmicroplate immunofluorescence antibody technique (MFA) 法で測定した.男子の55%, 女子の61%がIgG抗体陽性であった.
    2) 男子735検体, 女子251検体を対象に患部擦過物から分離培養法及び直接蛍光抗体法 (DFA) により抗原検索を行った.男子の34%, 女子の22%にC. trachornatisが検出された.
    3) 女子患者の年齢構成は男子より若かった. 29歳以下の女子患者は女子抗原陽性者の57%を占めた.
  • DEAE-dextran, 遠心吸着, Cycloheximide, および併用の効果
    三宅 恭司, 森下 高行, 小林 慎一, 石原 佑弌, 磯村 思无
    1990 年 64 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia psittaci (鳥類由来株) の一律的且つ効率的な分離増殖法を検討するため, DEAE-dextran (D), 遠心吸着, Cycloheximide (C), これらの併用が感染増殖に及ぼす効果をHeLa229細胞の系で感染細胞の形成およびElementarybody (EB) 産生量を指標として調べた.
    感染細胞形成の効果は鳥類由来10株とヒト由来1株 (Ito株) を用い, 無処理, D単独処理, C単独処理, およびD処理とC処理の2者併用でそれぞれ検討した. その結果, 最も効果的であった処理は11株中9株が2者併用で, 1株がD単独処理, 残りの1株はいずれの処理においても効果がなかった.
    一方, EB産生の効果は鳥i類由来5株とIto株を使用し, 無処理, D単独処理, 遠心吸着単独, C単独処理, D処理とC処理の併用および, D処理, 遠心吸着, C処理の3者併用で検討した. 感染後48時間では6株中5株が2者併用, 1株は3者併用が最も効果的であった. また感染後72時間では6株中4株は2者併用, 2株が3者併用であった.
    以上から, HeLa229細胞の系ではD処理とC処理の2者併用法が主に鳥類由来C. psittaciの効率的な分離増殖法になり得ると考えられた.
  • ワクチンの2回接種率と延べ欠席率との関係
    薩田 清明, 眞貝 晃, 長谷部 昭久
    1990 年 64 巻 1 号 p. 96-104
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    9小学校を対象に1987年, 1988年の2年連続して, 学級単位でみたワクチンの2回接種率と発熱を伴い欠席した者の延べ欠席率との関係について検討し, 次のような結果が得られた.
    1) 平均接種率は1987年の157学級の58.6%に対し, 1988年の151学級では29.9%を示し, 1987年のほうが有意に高いことが認められた.
    2) 一方, 平均延べ欠席率は1987年の1.524%に対し, 1988年は2.802%を示し, 1987年のほうが有意に低いことが認められた.
    3) 1987年では9校中7枚で接種率と延べ欠席率との間に有意の逆相関が認められた. すなわち, 接種率が高くなるにつれて延べ欠席率の低くなることが有意に認められた.
    4) しかし, 1988年ではいずれの学校でもそのような傾向は全く認められなかった.
    両年のこの差として考えられることは, 1987年の接種率が高かった上に, 流行株の変異度 (V0が82%) が小さかったこと. 一方, 1988年の接種率が低かったことに加えて, 変異度 (V3以上が78%) の大きいB型ウイルスの流行に起因しているものと考えられる.
  • 趙 素元
    1990 年 64 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本論文においては非A非B型肝炎流行地域患者を対象とした.非A非B型肝炎の診断は他の原因による肝炎が否定され流行性である事により下した. 感染の形式は経口感染であった. 本症の臨床症状及び検査値異常はA型及びB型肝炎より軽度であった. 年齢分布では青壮年層に多く, また妊婦は感染しやすく致命率も高かった.
    本症の主たる死因は出血であった. 病理組織学的所見では門脈域の炎症所見及び胆汁欝帯並びに巣状壊死巣が認められた. 透過型電子顕微鏡において細胞質内に26~30nmのウイルス粒子を認めた.
    回復期患者の経過を観察したが慢性化する傾向を認めた.
  • HBs抗原・抗体のsubtypeからの検討
    徳本 静代, 武井 直已, 土肥 和子, 毛利 久夫
    1990 年 64 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    健康者集団 (年齢15~20歳, 633名) で, HBV重複感染と考えられる新たにr型HBs抗体を獲得したadw型HBVキャリアが検出された. 感染源はr型HBs抗原陽性者であると考えられ, 対象集団内のその他のHBs抗原陽性者10名のHBVマーカーを精査し重複感染者との関係について検討した.
    HBs抗原陽性者10名のHBs抗原のsubtypeはadr型;5名, adwr型;2名, adw型;2名 (1名は検査されなかった) で, 7名のr型HBs抗原陽性者が検出されたが, この内感染マーカーのPreS2抗原とHBe抗原陽性者は4名であった. そこでこれら4名との関係を中心に疫学的調査を行った.
    ワクチン接種等の学校全体的な医療行為は全く実施されておらず施設内での医療事故は否定的であり, 日常的な学内での生活面 (学年, クラス等が異なる) でもこれら4名と重複感染者との間にHBV感染を推測させるような接点は認められず感染経路を調査対象集団内に特定するまでには至らなかった.
  • 平賀 千兼, 児玉 義勝, 杉山 剛, 市川 洋一
    1990 年 64 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ロタウイルス性下痢症に対する受身感染防御について検討を行った. ニワトリをウシロタウイルス (血清型・1) で免疫し, 高力価の抗ロタウイルス中和抗体を含む卵黄免疫グロブリンGを得た. この抗ロタウイルス鶏卵抗体 (CEYI) をSPFネコに経口投与し, ヒトロタウイルスで攻撃をおこなった. CEYI処置ネコはウイルス攻撃後も健康状態を維持したが, コントロール群では下痢発症がみられた. コントロール群のうち下痢発症がみられたネコ糞便からはウイルス抗原が検出されたが, CEYI抗与群におけるウイルス抗原の検出は散発的であった. しかしながら, 感染防御はその抗体がウイルスの感染と同時に腸管内に存在した場合にみられた. 以上の結果から, CEYIの連続投与によりヒトロタウイルス感染による子供の下痢発症とウイルス排泄を予防しえることが示唆された.
  • マウス感染実験並びにMFA法によるTWAR血清抗体価測定の検討
    岸本 寿男
    1990 年 64 巻 1 号 p. 124-131
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chhmydia pneumoniae TWAR株の感染成立機序, 並びにMFA法によるTWAR血清抗体価測定について検討する目的で, マウス経気道感染モデルを作成した. 方法は, C. pneumcniae (TW-183株) を用い, ICRマウスに対し1071FU/mouseにて点鼻感染を行った. マウスは1日目より衰弱し体重減少を示したが死亡せず7日目には回復した. 肺組織変化は感染後3日目に間質性肺炎像を呈し, 5日目にはさらに実質性肺炎像も加わっていた. 封入体は1日目より10日目まで気管支上皮および肺胞上皮内に認められたが, 3日目に最も多く次いで5日目に比較的多く認められた. TW-183株の封入体を抗原としMFA法にて測定した血清IgG抗体価は, 感染後7日目より急激に上昇し2週後に1: 4,096のピークに達したのち3週後まで持続し以後漸減した. IgMは感染後7日目より上昇し14日目の1: 16をピークに以後低下し1ヵ月後には検出し得なかった. 次に各クラミジア抗原の特異性を検討するため, 今回のTW-183株感染マウス血清の他に, 同様の方法で得られたC. psitTaci MP株感染マウス血清, 並びにC. trachcmtis L2株感染マウス血清の三者について, TW-183株, MP株, L2株の各封入体を抗原としてIgG抗体価を測定した. TW-183株感染マウス血清ではTW-183株を, またMP株感染マウス血清, L2株感染マウス血清ではそれぞれMP株, L2株を抗原として測定した抗体価が最も高値を示し, 他の抗原の場合と比較して常に4倍以上で推移していた. 以上の結果より, 同一血清につき三者のクラミジア抗原を用いてMFA法でIgG抗体価測定を行い, それぞれに対する抗体価を比較することにより, いずれのクラミジアによる感染であるかを血清学的に鑑別できる可能性が示唆された.
  • 河野 基子, 藤野 時彦, 稲光 信二, 梶原 淳睦, 植田 浩司
    1990 年 64 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1988年6月より7月, 北九州市において主として顔面と四肢の斑丘疹を呈する発疹性疾患が流行した. 特徴的な発疹を呈した15例 (男児12例, 女児3例) のうち, 9例の便または咽頭ぬぐい液よりechovirustype 18が分離された. その15例の発疹以外の症状は, 発熱10例 (66%), 消化器症状7例 (47%), 上気道症状2例, 髄膜炎1例, 腱反射亢進1例を認めた.
  • 岡 暢之, 加藤 讓, 出来尾 哲, 西尾 崇, 板垣 朝夫, 内山 恒夫, 内田 孝宏
    1990 年 64 巻 1 号 p. 136-142
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    従来日本には存在しないと考えられていた紅斑熱リケッチア症が太平洋側の地域で発生し, これまでに50数例が報告されている. 今回我々は, 島根県大社町において発生した紅斑熱リケッチア症を経験した. 症例は57歳男性. 昭和62年下旬に, 悪寒頭痛を伴った発熱, 全身倦怠感, 紅斑性発疹などを主訴とし近医を受診し, cefaclorの投薬を受けたが無効であり, 当科を紹介された. 受診時, 全身に紅斑性発疹, 左側腹部に黒色痂皮形成を伴う傷跡, 全身性表在リンパ節腫大を認めた. 肝脾は触知しなかった. 検査所見では, 白血球数正常 (リンパ球数減少), 血沈およびCRPの軽度増加, トランスアミナーゼ軽度上昇を認めた. 血清学的検査では, Weil-Felix反応 (OX2) およびPaul-Bunnel反応陰性, Rickettsia tsutsugamushiに対する抗体陰性, 各種ウイルスに対する抗体価の有意な上昇も認められなかった. 一方, Rickettsia japonicaに対するIgMおよびIgG抗体価は, 急性期血清では20倍以下であったが, 回復期血清では320倍と有意な上昇が認められた. 回復期血清は他の紅斑熱群リケッチア, 発疹チフス群のリケッチアであるRickettsia typhiとも陽性の反応を示したが, いずれもRickettsia japonicaに対する抗体価と比較すると低値を示した. 以上より, 本症例血清中には, わが国の紅斑熱リケッチアと反応する特異的な抗体が出現したと考えられ, 本例を紅斑熱リケッチア症と診断した. 6日間ofloxacin単独で, その後ofloxacinとminocyclineの併用で治療したが, ofloxacin単独投与中の6日間のうちに上記臨床症状および検査所見は著明に改善した.
    以上のように, 今回我々は山陰地方で初めて紅斑熱リケッチア症を発見した. 日本海側での発症としては第一例であると同時に, 全身性リンパ節腫大を認めた点で非常に興味が持たれた. さらに, ofloxacinが本疾患の治療に有効である可能性も示唆された.
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