感染症学雑誌
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64 巻, 10 号
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  • 大江 幸雄, 西山 泰暢, 杉山 明子, 清水 聖一, Shinji KUNISHIMA, Toshiko ITOU, 杉山 正子
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1251-1254
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B群溶血レンサ球菌 (GBS) 型特異抗原を固相化したマイクロプレートの, ELISA法による抗GBS抗体測定キットを用い, 当院に受診した461名の妊婦を対象に抗体価を測定した. 又, 合わせて膣及び肛門部よりの検体の培養 (以下, 膣及び肛門培養とする.) を行い, 型別も行った. その結果抗GBS抗体Ia型では41.9%, Ib型34.7%, II型31.7%, III型40.1%が抗体陽性であった. 又, 膣培養陽性者は, 16.9%(78名) であった.膣培養の陽性者の内, 低抗体価を示したのはIa型では19名中4名, Ib型18名中9名, II型8名中5名, III型17名中5名であった. これらの低抗体価妊婦に対して抗生剤の投与を行った群, 及び非投与群 (抗体価陽性群) 共に, GBSによる発症は見られなかった.
  • 臨床症状および気候の影響について
    藤田 靖子
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1255-1263
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1986年1月から4年間の主として外来患児のロタウイルス感染症の疫学, 臨床像について観察し, アデノウイルス感染症と共に比較検討した. 採取した急性胃腸炎の急性期糞便材料は957検体であった. その中でロタウイルス (RV) 抗原が陽性であったのは233例 (24%) であった. アデノウイルス (AV) 抗原は60例 (6%) に検出された. 1989年のロタウイルス抗原陽性76検体の血清型は75%が1型であった.
    性差は, ロタウイルス感染症, およびアデノウイルス感染症共に男児にやや多くみられたが有意差はなかった. 罹患年齢は, ロタウイルス, およびアデノウイルス感染症において2歳以下児が約80%を占めており, 最年少例は2ヵ月児であった.
    ロタウイルス抗原は, 4年間の各年ともに冬期の低気温, 低相対湿度の時期に多く検出された. ロタウイルス抗原の検出率と月別平均気温との間, およびロタウイルス抗原検出率と月別平均相対湿度との間に負の相関関係がみられた. アデノウイルス抗原は季節に関係なく1年を通じて検出された.
    ロタウイルス感染症の下痢は1日平均5.5回あり, ロタウイルス陰性例より多く有意差をみた. 持続日数は平均4.5日間であった. 水様, 白色便になることが有意に多かった.
    ロタウイルス感染症の嘔吐は82%にみられた. 嘔吐の回数は1日4回以内であり, 持続日数は短く1~2日間のことが約90%の患児にみられた.
    下痢 (D), 発熱 (F), および嘔吐 (V) の3つの症状 (DFV症状) を示した症例がロタウイルス感染症に有意に多くみられた.
  • 大瀬戸 光明
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1264-1274
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年10月から1988年9月の間, 松山市の急性胃腸炎患児の糞便について, 電子顕微鏡法によるウイルス検索を行い, 2,479例の糞便から561例のロタウイルスを検出した. ウイルスRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動では, 259例は定型的A群ロタウイルスであったが, 60例は非定型ロタウイルスであった. 非定型株は, 1985年に5例, 1986年に7例検出されたが, 1987年には全くみられなかった. しかし, 1988年には48株が検出された.
    これらの非定型株は形態的にはA群ロタウイルスと区別できなかったが, RNA泳動像はC群ロタウイルスと非常に類似していた. 非定型株86-542株は, ブタC群ロタウイルス免疫血清を用いた免疫電子顕微鏡法でC群ロタウイルスと同定された. さらに, 抗86-542株モルモット免疫血清は, 1988年株を含む供試したすべての非定型株と反応したが, A群とは全く反応しなかった. これらのことから, 1988年に松山市においてC群ロタウイルスの地域的な流行があったことが確認された.
    また, この間に検出されたC群ロタウイルスのRNA泳動像には, 1987年以後の48株とそれ以前の12株とで明らかに区別できる差異が認められた.
    C群ロタウイルスの疫学像の特徴は, C群ロタウイルス陽性者の年齢分布がA群に比べ高かったこと, A群ロタウイルスの流行が12月から3月であるのに対しC群は2月から4月であったことである.
    松山市の住民の血清を用いて, 免疫粘着赤血球凝集反応により遡及的血清疫学調査を行った結果, 1971年にすでに78例中15例 (19.2%) がC群ロタウイルス抗体を保有していたことがわかった.
  • 院内感染としてのMRSA
    迎 寛, 岩本 雅典, 高瀬 登美子, 森 理比古, 石野 徹, 道津 安正, 河野 茂, 山口 恵三, 廣田 正毅, 原 耕平
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1275-1286
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1985年1月より1988年12月までの4年間の北松中央病院における各種臨床材料を対象として, Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) について検討を行った. MRSAの分離は, 全体として, この4年間に1985年の3株 (5.6%) から1988年の90株 (50.0%) に急増した. 検体別では, 特に喀痰や褥瘡でMRSAの分離が多かった. また病棟別の検討では, 一般病棟や外来に比べ, 老人病棟のMRSAの蔓延化が著しかった. MRSA保有者は, 何らかの基礎疾患を有する症例あるいは寝たきり状態にみられ, 基礎疾患としては脳血管障害が最も高い頻度でみられた. その臨床的検討では, 当院では老人病棟を中心にMRSAが広く分布していることが示唆された. 各種薬剤に対する感受性ではRFP, VCM, MINOに高い感受性を示し, CEZとIPM/CSとを併用することによって著しい相乗効果が認められた.
  • 大竹 徹, 森 治代, 森本 素子, 上羽 昇, 國田 信治, 佐野 浩一, 中井 益代, 大久保 進, 安永 幸二郎, 永尾 暢夫, 平井 ...
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1287-1294
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HIV感染者の発症予知のためのマーカーとしての有用性を検討するために, 末梢血単核球 (PBMC) からのHIV分離と各種臨床マーカーの検索を行った. 対象は18名のHIV抗体陽性者で, 全員男性であり1名は同性愛者, 1名は感染経路不明, 16名が血友病患者であった. 3名は当初からAIDSを発症しており, 1名は観察途中で無症状キャリアー (AC) からAIDSとなり, 残りの14名はACのままで推移した. AIDS発症者の100%, ACの47%から1回以上HIVが分離され, 有症者からはACからより短期間の培養で分離された. また分離例ではCD4リンパ球数あるいはCD4/CD8比が低い傾向が示された. AIDS患者由来のHIV株は総てMT-4細胞に感染性を有し, ACからAIDSを発症した1例では発症に先立つ9ヵ月前にMT-4細胞に感染性を持つようになった. その他のAC由来株ではMT-4細胞に感染性を持たなかった. これらのことから, AIDS発症には体内のHIV量あるいは増殖力の増大化とCD4細胞数低下が深い関連性を持つことが示唆された. HIV分離の成否や症状とIFA法およびPA法によるHIV抗体価との間には関連性は無かったが, HIV分離例や発症者ではHIVのコア抗原 (p24, p17) に対する抗体の低下が高率に認められた. 血漿中のHIVp24抗原は, ACからAIDSを発症した患者においてHIVの分離成功と並行して検出された.
    これらの成績から, HIV感染者の発症の危険性をモニターするためにはCD4細胞数の低下, HIV分離の成功および分離に必要な培養期間の短縮, 分離されたHIVのMT-4細胞での増殖性獲得, 血中のp24抗原陽性および抗コア抗体の消失に注意を払う必要があると考えられた.
  • 嫌気性菌による膿胸31例の臨床的・細菌学的検討
    高橋 まゆみ, 小原 共雄, 礒沼 弘, 池本 秀雄
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1295-1304
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1961年から1988年までの27年間に我々が経験した嫌気性菌による膿胸31例について検討した. その結果, 次のような結論を得た.
    1. 症例は圧倒的に中高年齢層の男性に多く, 40歳以上の男性が全体の74.2%を占めていた. また, 全体の90%に何らかの基礎疾患や誘因を認めた.
    2. 好気性菌との混合感染を示したものは, 22.6%であった.
    3. 分離菌種は多い順にmicroaerophilic streptococcus, Bacteroides属, Peptostreptococcus属, Fusobacterium属などであった.
    4. 好気性菌と嫌気性菌の混合感染と嫌気性菌のみの感染で, 胸水の悪臭をみとめる割合に有意差はなかった.
    5. 胸水に悪臭のある群ではBacterodies属が最も多く分離されたのに比し, 悪臭のない群では本菌属は分離されておらず, 従って悪臭とBacteroides属との間の密接な開係が示唆された.
    6. 治療法では, 閉鎖排膿法および開胸排膿法により十分に排膿し得た12症例には死亡症例が認められず, 十分なドレナージの重要性が示唆された.
  • 白石 裕昭
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1305-1311
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    野外株麻疹ウイルス (MV) にきわめて感度のよいB95a細胞を用いて, 47例の自然麻疹患者のウイルス排泄につき検討し, 以下の結果を得た. MVは発疹出現後6日目までの末梢血白血球並びに気道分泌物から分離できた. 血液成分別には, 発疹第1病日では血漿, 赤血球・好中球・血小板分画, リンパ球, 単球のいずれからも分離できたが, 前2者からは第2病日には急速に消失した. リンパ球, 単球からは第6病 日まで検出できた. ウイルス分離陽性期間は有熱期間と関連し, 解熱後24時間を越えては分離できなかった.
    以上の成績から小船らが開発したB95a細胞の野外株MV分離での有用性の高さを確認できた. そしてMVの排泄期間が発疹出現後2日目までという従来の定説より長いことを証明できた. また, MVが単球に感染していることを初めて証明した. これは麻疹における免疫抑制現象の一部を説明するものであり, またMVの中枢神経系への侵入の媒介として, 単球の役割がありうることを示唆するものである.
  • 岩澤 晶彦, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 恒川 琢司
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1312-1316
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    一般正常男子群の内外性器におけるHuman papillomavirus (HPV) のscreeningを行う場合, 外陰部所見が正常なすべての症例からのsamplingは不可能に近い. そこでsampling対象群として, 泌尿器科外来で症例数が比較的多い慢性前立腺炎症例を選び, Vira Type TM (Life Technologies Inc.) を用いてHPVDNAの検出を試みた.
    177例の亀頭・冠状溝smearにおけるHPV陽性率は3.4%と低頻度であったが, 臨床所見はなく, 無症候性感染と考えられた. また, 尿道smearを検討し得た86例では, HPVは検出されなかった.
    HPV陽性例について, 数週間後に亀頭・冠状溝smearと尿道smearにおけるHPVの再検索を行った. 検査可能であった5症例において, HPVは亀頭・冠状溝および尿道ともに検出されず, 自然消失の可能性が示唆された.
  • 銭 蘭, 青木 功喜
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1317-1322
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    クラミジア眼感染症における抗クラミジアIgG, IgA特異抗体をIPAZYMETMを用いて測定し, その有用性を検討した.
    クラミジア陽性結膜炎群48名と, トラコーマ瘢痕期の患者群55名を対象として, クラミジア陰性結膜炎群47名と, 70歳以上の高齢者68名をそれぞれ対照と.した
    .IgG陽性率はクラミジア陽性結膜炎群33/48 (68%) と, トラコーマ群44/55 (80%) とそれぞれ14/47 (29%), 37/68 (53%) の対照群とは有意の差を認めた.IgA陽性率はグラミジア陽性結膜炎群25/48 (52%) はトラコーマ群7/55 (12%) とは有意の差を認めた.
    以上のことから抗クラミジアIgA抗体はクラミジア活動性感染を推定出来, IgGとの組合せで診断的有用性が示唆された.
    トラコーマの患者ではIgG抗体が高頻度に認めたので, トラコーマ瘢痕期の眼所見の程度と, IgG抗体の関係を検討したところ, 結膜瘢痕或いは角膜パンヌスの程度が中等度以上ではIgG抗体価 (128倍) と有意の相関を示し, クラミジアがトラコーマ病変の病因であることが血清抗体の面からも認められ
  • 小林 一寛, 勢戸 和子, 赤阪 進, 牧野 正直
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1323-1329
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    コレラ毒素 (CT) 産生性をPCR (Polymerase Chain Reaction) を利用して検出する迅速, 簡便な方法を開発した.本法はCTを産生するコレラ毒素遺伝子 (6メートル) の一部である380bpの長さのDNA断片を, 酵素反応により増幅させるものである.ctxのA-サブユニットの塩基配列に相補的な2つの合成ヌクレオチドを伸長用のプライマーとして用いた.その塩基配列は 5'TCAAACTATATTGTCTGGTC (CT-1) と 5'CGCAAGTATTACTCATCGA (CT-2) である.被検菌のDNA (template DNA) は抽出する必要がなく, 煮沸処理 (5分) した培養菌液を5ul使用する.DNAの増幅は反応後, アガロース電気泳動によって調べたが, CT産生菌のみに認められ, 易熱性毒素産生のE.coliのような菌においてはみられなかった.V.mimicusV.cholerae non-O1の少数の株にもCT産生がみら
  • 勢戸 和子, 小林 一寛, 赤阪 進, 牧野 正直
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1330-1336
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    コレラ菌のエンテロトキシン (CT) 産生性を, CT構造遺伝子 (ctx) の有無によって判定するため, ctx診断用プロープを作製した.Vibrio cholerae 569Bの染色体DNAよりctxをクローニングし, さらにCTのAサブユニットを規定するctxAの一部 (XbaI-ClaI断片: 552bp) をサブクローニゾグして, 1分子のベクターにプローブとなるX6aI-ClaI断片を8分子組み込んだプラスミド (pSKM24) を作製した.プローブDNAを32Pでラベルし, V.cholerae O1, V.cholerae non-O1, V.cholerae以外のVibrio属など72株について, コロニー・ハイブリダイゼーションを行った.CT産生菌のみが陽性となり, 易熱性毒素 (LT) 産生性の毒素原生大腸菌は検出されなかった.このプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法は, 迅速, 確実にctxを検出し, CT産生菌を同定する有用な検査法である.
  • 霜鳥 翔一, 小島 夫美子, 東島 弘明, 天児 和暢
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1337-1344
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mehlmanらの考案によるShigella brothの改良法およびその培養法を用いて, 人為的に赤痢菌で汚染した生ウニ等の生鮮魚介類から菌の検出実験を行なった.用いた43株の赤痢菌保存株は, いずれもその少数生菌を接種したウニから, この増菌法により容易に検出できた.すなわち, 24株 (56%) はわずか10個以下の生菌を接種したウニから検出でき, また他の19株も10~1,000個の接種菌を確実に検出できた.なお, この増菌法による魚介類からの赤痢菌の検出は, それら材料中の一般細菌数 (SPC値) によって, とくに影響されることはなかった.この増菌法の信頼性を確かめるために, さらに多くの魚介類 (生ウニ24例, 生カキ11例, エビ他5例) について, S.flexneri B 株を接種菌に用いて, 同様の実験を行なった.その結果, SPC値がとくに高値を示した生カキの1例を除いて, 大半が10個以下の接種菌を検出でき, また1,000個までの接種菌数ではすべての試料が赤痢菌陽性となった.
    食品の加熱, 冷凍等の処理に起因する汚染赤痢菌の細胞損傷とそれに伴う代謝機能の低下が十分予測されることから, 本実験ではそのような損傷赤痢菌の検出についても同様に調べた.損傷菌におけるカタラーゼ活性の明らかな低下が見られたが, このShigella broth増菌法はそのような損傷菌の魚介類からの検出にとくに支障はなく, 非損傷菌におけると同様に鋭敏に検出することができた.
  • 甲田 雅一, 熊谷 郁子, 小林 準一, 須貝 涼子, 松崎 廣子, 中谷 林太郎
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1345-1354
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    筆者らは590株の臨床分離されたグラム陰性桿菌に対するAZTの抗菌力の調査を行なった.その結果, AZTの最小発育阻止濃度 (MIC) 12.5μg/ml以上を示すAZT耐性菌を, 79株 (13.4%) 検出した.これらの耐性菌の多くは, β-lactamase 産生菌であった.筆者らは, これらのAZT耐性菌の各種β ラクタム剤に対する耐性パターンと, Clavulanic acid (CVA) と AZTとの併用効果より, AZT はIV (K1), Va (OXA1), PSE 2型 β-lactamase により不活化されると, 推測した.
  • 山浦 昇, 駒形 安子, 佐久 一枝, 大久保 吉雄
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1355-1360
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サルモネラのSenftenberg963Kのホルマリン死菌で免疫したBALB/cマウス脾細胞とマウスmyeloma細胞SP2/O-Ag14とを細胞融合させ, 抗サルモネラO抗体であるSBY1を産生するハイブリドーマを得た.このハイブリドーマの産生する抗体のサブクラスはIgM, kであった.
    SBY1の抗原特異性をスライド凝集反応および吸収試験によって検討した.
    免疫に用いたSenftenberg 963KはO1, 3, 19抗原を保有するので, 作製されたSBY1の特異性はO1, 03あるいはo19のいずれかである可能性が考えられた.スライド凝集反応を用いた検討の結果, SBY1はサルモネラO19抗原特異性を示した.吸収試験による検討の結果も同様に, SBY1の凝集反応性はサルモネラO19抗原を保有する菌種によってのみ吸収された.
    これらの所見から, SBY1はサルモネラO19抗原特異的であると考えられた.
    ポリクロナール抗体であるサルモネラO3, 10群診断用因子血清は, O1, 3, 19群の菌に対しても交差反応性を示したが, 今回作製したSBY1はO19抗原以外には交差反応性を示さなかった.
    従って, SBY1は, サルモネラ感染症の診断用因子抗体として有用であると考えられた.
  • 大西 健児, 村田 三紗子
    1990 年 64 巻 10 号 p. 1361-1365
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 40-year-old poor nutritional Japanese male was admitted to our hospital on June 5, 1989, with a 31-day history of fever. He had been working as a crew member of a ship in South East Asia. Salmonella typhi was isolated from his blood culture. In the course of the disease, intestinal hemorrhage, drug-induced fever and liver dysfunction, DIC, ARDS, and psychiatric disorder were identified. Interstinal hemorrhage occurred after the coagulation test became normal, so it was thought that the intestinal hemorrhage did not correlate with DIC. The patient was treated with CP, ABPC and supportive therapy. He became well, and ARDS and pyschiatric disorder were disappeared. He was discharged on the 118th day of illness. Drug-induced fever was thought as one of the allergic reaction and the causative drug was not identified by LST. It was suspected that psychiatric disorder correlated with poor nutrition. Supportive therapy such as mandatory bed rest, intravenous hyperalimentation and low-volume blood transfusions, as well as an antimicrobial treatment were important for the inhibition of shock and/or intestinal perforation.
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