培養McCoy細胞における生殖器由来
Chlamydiat rackomatis (以下
C. trackomatis) 株の特異な増殖環の各段階に, minocycline (MINO) 1μg/mlを作用し, 経時的に透過型電子顕微鏡で観察し以下の成績を得た.
1) McCoy細胞におけるC. tmckomtisの最小発育阻止濃度 (MIC) は, 0.025μg/mlであった.
2) 接種開始時より接種液にMINOを添加した場合, 遠心接種あるいは静置接種いずれの場合でも, MINOはelementary body (EB) のMcCoy細胞への吸着, 侵入を阻害しなかった. 48時間後 (遠心接種), 侵入したEBの74%が前期intermediate form (IF) に展開し, MINOはEBから前期IFへの展開を阻止しなかった. しかし, reticulate body (RB) の出現や封入体形成は完全に阻害された. 侵入したEBは前期IFに変化する段階で, 細胞壁の重複化や細胞質の融解性変化などの形態異常がみられた.
3) 遠心接種後12時間で, RBが出現した段階にMINOを作用させた場合, RBから後期IFへの展開は阻止された.
4) 遠心接種後24時間の封入体では, 1断面あたり後期IFは平均0.64個, EBは平均0.17個生じている. この段階に, さらにMINOを24時間作用させると, コントロールの後期IFの平均10.5個, EB65.6個に対し, MINO作用群では後期IFは平均0.10個, EBは0.67個となった. a) MINOを24時間作用させた場合, 後期IFの有意の減少 (0.64→0.10) と, EBの有意の増加 (0.17→0.67), b) MINOを作用させても後期IFとEBの合計にはほとんど変化がみられないこと (0.64+0.17=0.10+0.67), c) コントロールの後期IF: EBの比 (10.5: 65.6=1: 6.2) に対し, MINO作用群の後期IF: EBの比 (0.10: 0.67=1: 6.7) がほとんど同じであることが, 認められた. b) より, MINOはRBから後期IFへの展開を阻害すると考えられ, a), b) およびc) より, 後期IFからEBへの展開は阻害されないとo考えられた.
tetracycline系の抗生剤であるMINOは細菌のリボゾームにおけるタンパク合成を阻害することが知られている. このことに基づいて推察すると, 宿主細胞へのEBの吸着, 侵入段階およびEBから前期IFまでの発展段階では, 新タンパク合成を必要としないが, 前期IFからRBおよびRBから後期IFへの展開では新タンパク合成を必要とし, 後期IFからEBへの展開では, 新タンパク合成を必要としないと考えられた.
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