感染症学雑誌
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64 巻, 7 号
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  • Vp-TRH産生性神奈川現象陰性菌がヒト病原菌である可能性について
    本田 武司, 本田 俊一, 倪 語星, 三輪谷 俊夫
    1990 年 64 巻 7 号 p. 767-773
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    神奈川現象陽性の腸炎ビブリオの病原性についてはすでに確立されているが, 神奈川現象陰性菌の病原性はこれまで否定的に考えられてきた. しかし, 筆者らは神奈川現象陰性菌による食中毒事例を見いだし, これらの分離菌が神奈川現象の原因物質であるVp-TDHと類似する (同一ではない) 新しい毒素 (Vp-TRH) を産生することを見いだし報告してきた. 本研究では, Vp-TRHに対する単クローン抗体を作成し, これを用いて, また培地を工夫することによって, Vp-TRHを特異的に検出するELISA法を開発した. そして, このELISAを多数の腸炎ビブリオについて応用したところ, Vp-TRHがヒト下痢便由来の神奈川現象陰性菌に集中してみられ, 環境や食品由来の神奈川現象陰性菌にはほとんど認められないことが明らかになった. このように, Vp-TRH産生性腸炎ビブリオがヒト由来菌に集中してみられたことから, Vp-TRH産生菌はVp-TDH産生菌 (神奈川現象陽性菌) と同じく病原菌である可能性が示唆される. この可能性は, さらにウサギ結紮腸管ループ試験の結果からも示唆された. このような結果から, 神奈川現象陰性菌のうちVp-TRH産生性神奈川現象陰性菌はヒト病原菌となりうる可能性が考えられた.
  • フィラリア検診との関連において
    佐久川 廣, 国吉 孝夫, 赤嶺 勝成, 上原 剛, 親川 富憲, 嘉手納 啓三, 金城 福則, 斎藤 厚
    1990 年 64 巻 7 号 p. 774-780
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HBウイルスが予防接種等の医療行為によって伝播することはよく知られている. そこで, HBV感染とフィラリア検診との関係を明らかにするために, 過去にHBV感染とフィラリア症がいずれも流行を示した沖縄県宮古地区において, 疫学調査を実施した.同地区住民2,231名についてHBV保有率の調査がなされ, HBs抗原の陽性率は20代後半の世代の15.5%をピークに, 全体で6.3%と高率であった. 一方, HBs抗体の陽性率は30歳以上でいずれも60%以上の高値を示した. また, いずれの陽性率も県内の他の地域に比較して高率であった.
    年齢別のHBV暴露率から独自の計算方法によって求めた年次別のHBV感染率を比較すると, フィラリア検診の最も盛んに行われた1960年代後半の感染率は, それ以前の感染率と比較して低くなっており, HBV感染の蔓延の主な原因は, 耳朶採血による検診という医療行為よりもむしろ, 寄生虫感染が流行するような社会環境によるところが大きいと思われた.
  • in vitroにおける細胞増殖抑制作用について
    片山 友子
    1990 年 64 巻 7 号 p. 781-786
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    乳酸菌菌体成分の抗腫瘍性をin vitroにおける細胞増殖抑制作用より検討した.
    乳酸菌菌体成分は白血病細胞株 (MT-2細胞, MT-4細胞, Molt-4細胞) 組織球性リンパ腫細胞株 (U-937細胞) の増殖を直接抑制し, この作用は同時に行った抗癌剤ビンプラスチンの殺細胞作用とは明かに異なるものであった. BrdU-抗BrdU抗体法を用いた細胞周期動態解析では乳酸菌菌体成分の投与によりG1+G0期 (DNA合成準備期) の細胞の蓄積がみられ, 乳酸菌菌体成分は低濃度の蛋白合成阻害剤として働いていると考えられた. また, 乳酸菌菌体成分にペニシリン処理を加えても細胞増殖抑制作用の増強はみられなかった.
  • 斉藤 香彦, 新垣 正夫, 高橋 正樹, 甲斐 明美, 柳川 義勢, 伊藤 武, 大橋 誠, 松原 義雄, 瀬尾 威久, 相楽 裕子, 水岡 ...
    1990 年 64 巻 7 号 p. 787-793
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981~1987年の7年間に東京都立駒込病院, 墨東病院, 荏原病院, 豊島病院の感染症科, 内科並びに小児科の入院下痢患者や外来の下痢患者から検出されたC. jejuni 3,749菌株を対象に著者らが開発した血清型別法 (TCKシステム) によって血清型を検討した.
    4病院の小児科で分離されたC. jejuni 2,499株の内1,962株がTCKシステムで型別された.高頻度に認められた血清型はTCK7, 1, 4, 12, 21, 23, 24, 14, などであった. 成人から検出されたC. jejuni1,250については974株がTCKシステムで型別できた.高頻度に検出された血清型は小児の場合とほぼ同様にTCK1, 4, 7, 12, 20などであった.
    年次別に検出されたC. jejuniの血清型の推移をみた場合, 小児由来株と成人由来株の両者間では殆ど同じ傾向であった.高頻度に検出されたTCK1, 7についてはそれほどの変動はみられないが, やや減少傾向である. TCK23, 14, 9は漸次減少している血清型である. これに反しTCK30は増加傾向がみとめられた.
    C. jejuni陽性の102名の小児科下痢患者を対象に同一人について5集落を釣菌して型別を行った. 69件は5集落とも同一血清型であった. 5件は2種の血清型, 28件は型別不能であった. 本菌の感染はほとんどが同一菌型によるものであった.
  • 1984年の多治見市における流行例より
    三輪 智恵子, 渡辺 豊
    1990 年 64 巻 7 号 p. 794-801
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年5月から9月にかけ, 岐阜県多治見市を中心とする東濃地域で, 無菌性髄膜炎 (AM) の流行が認められた. そのうちの71症例について, ウイルス学的. 血清学的検索を実施した. その結果は以下の様な成績であった.
    1. ウイルス分離検査を実施した59症例の38症例 (64.4%) より, コクサッキーウイルス (Cox.) B-1, Cox. B-4, Cox.B.5とエコーウイルス (Echo.) 16の4種のエンテロウイルスが分離された. 病原ウイルスと確定されたウイルス型は, Cox. B-1とCox. B-5であった. しかし, Cox. B-4とEcho-16もAM流行と関連性があったことが推定された.
    2. 47症例の急性期と回復期のペア血清につき, 4種の分離株に対する中和抗体価を測定した. その結果, 各型分離株に対する有意抗体上昇率は, Cox. B-1では29.8%, Cox. B-4では12.8%, Cox. B-5では17.0%, Echo-16では34.0%であった.
    3. ウイルス分離陽性で血清学的検査も実施した24症例の10例 (41.7%) が, 分離ウイルス型と, 有意抗体上昇を示したウイルス型と一致していた. いずれのウイルス型に対しても有意抗体上昇を示さなかった症例は6例 (25.0%) であった. 残り8例 (33.3%) は, 分離ウイルス型と, 有意抗体上昇を示したウイルス型と一致しなかった.
    4. 患者血清検査で, 有意抗体上昇が認められた35症例中, 1つのウイルス型に有意抗体上昇が証明されたのは28例 (80.0%) で, 2つ以上のウイルス型に有意抗体上昇を示したのは7症例 (20.0%) であった.
  • 打矢 恵一, 杉原 久義
    1990 年 64 巻 7 号 p. 802-808
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    The chemical and biological characteristics of Soluble Protective Antigen (SPA) separated from culture fluids of Salmonella enteritidis strain 2547 were analysed. It was shown that SPA has 3-hydroxy, nonpolar fatty acids by thin-layer chromatography. The fatty acids were identified as lauric, myristic, palmitic and 3-hydroxymyristic acid using gas chromatography-mass spectrometry and mass chromatography. These fatty acids are common constituents of the lipid A obtained from S. enteritidis. SPA was found to enhance the plaque-forming cell (PFC)-response to sheep erythrocytes in the recipients' spleen. In addition, SPA enhanced the clotting activity of Limulus amebocyte lysate. These results show that SPA possesses the properties of lipopolysaccharides isolated from strain 2547 by chemical procedures.
  • 1984年岐阜県東濃地区での流行
    三輪 智恵子, 渡辺 豊
    1990 年 64 巻 7 号 p. 809-814
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年5月から8月に, 岐阜県東南部の東濃地区において, エコーウイルス16型による感染症の流行があった.
    このウイルス型による感染症は, 臨床的には発疹症 (24例) と無菌性髄膜炎 (24例) と2つの病型を示した. ウイルス学的・血清学的方法により確認された症例は, 48例であった.
    岐阜県では1984年以前には, エコーウイルス16型は分離されなかったが, 血清学的検査により1984年以前にエコーウイルス16型が侵入していたことが明らかとなった.
  • 三輪 智恵子, 渡辺 豊
    1990 年 64 巻 7 号 p. 815-821
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1988年, 岐阜県の無菌性髄膜炎 (AM) 患者137症例と, 急性熱性疾患及び発疹症等36症例について, ウイルス学的・血清学的に検討した結果, 以下のことが判明した.
    1. AM患者の年齢は, 0歳から15歳に分布していたが, 8歳以下が90.5%を占めていた.
    2. AM患者137症例の58症例 (42.3%) より, 7種類のエンテロウイルスと同定困難株が分離されたが, 46症例 (79.3%) はエコーウイルス18型 (Echo-18) であった.
    3. Echo-18は, AM患者以外の急性熱性疾患・発疹症など36例のうち16症例 (44.4%) からも分離された.
    4. 1988年Echo-18分離株の抗原性は, 標準株と抗原的に軽度の変異が確認された.
    5. Echo-18に対する住民抗体保有率は, 流行後には8歳以下の年齢層で著明に上昇したことが確認できた.
  • 柳生 善彦, 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 竹内 章治, 国松 幹和, 浜田 薫, 成田 亘啓, 播金 収, 増谷 喬之
    1990 年 64 巻 7 号 p. 822-829
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    経気管吸引法 (transtracheal aspiration: TTA) によりNeissena meningitidisを検出した呼吸器感染症の5例について検討した. 症例は18歳から78歳の男性4例, 女性1例で疾患の内訳は気管支肺炎2例, 急性気管支炎2例, びまん性汎細気管支炎の急性増悪が1例であった. 基礎疾患は気管支肺炎では肺癌と急性心筋梗塞, 急性気管支炎では間質性肺炎と肺結核が各1例ずつであった.
    5例中N. meningitidis単独検出は1例で, 他の4例は複数菌検出であった. 同時検出菌はHaemophilusinfluenzae2例, Streptococcus dysgalactne1例, Mycobacterium tubezculosis1例であった.
    誘因として感冒が1例に見られ, 気管支鏡検査との関連が2例に見られた. 2例は同室者で前後しての発症で院内感染の可能性が示唆された. 臨床像・宿主要因に特徴的は所見は認めなかった.
    以上よりN. meningitidisは呼吸器感染症の起炎菌となり得ることが示唆された.
  • 北海道におけるfield survey
    林 謙治, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 西村 昌宏, 小六 幹夫, 恒川 琢司, 横尾 彰文, 佐藤 隆志, 中条 俊博, 南 邦弘, 川瀬 ...
    1990 年 64 巻 7 号 p. 830-839
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, Chlamydia trachomatis感染症の一般人口への潜かな流行が注目されている. そこでわれわれは性器局所よりの抗原検出が可能な妊婦例を対象とし一般人口における流行度の調査を施行した. 既婚妊婦 (5,000例) 及び未婚の人工妊娠中絶施行女子 (317例) を対象とし, EIA法 (Chlamydiazyme) を用い施行した. 調査期間は1986年6月から1989年9月までの期間, 札幌市 (3,932例), 釧路市 (328例), 室蘭市 (280例), 北見市 (357例), 倶知安町 (220例), 浦河町 (200例) の計11産婦人科病院である.
    1. 既婚妊婦におけるC. trachomatis検出率は, 札幌市で6.1%(222/3,666), 釧路市で7.3%(24/328), 室蘭市で6.1%(17/280), 北見市で7.8%(24/306), 倶知安町で6.8%(15/220), 浦河町で7.5%(15/200) であり地域差を認めなかった.全体では6.3%(317/5,000) の検出率であった.
    2. 未婚の人工妊娠中絶施行女子におけるC.trachomatis検出率は, 札幌市で22.9%(61/266), 北見市で15.7%(8/51) と両者共に既婚妊婦と比べ高く, このような性的活動性の高い若年女子の間でのC. trachomatisの流行が示唆された.
    3. 年齢別検出率は既婚妊娠では10歳代後半で21.3%, 20歳代前半で8.9%, 20歳代後半で6.3%, 30歳代前半で3.7%, 35歳以上で2.9%と, 若年者ほど検出率が高い傾向を認めた.
    以上よりC. trachomatis感染症は若年婦人にかなり潜在的に流行してい ることが確認された.
  • 杉山 正子, 小島 正義, 安田 由紀子, 堀 好博, 西山 泰暢, 杉山 明子, 木藤 伸夫, 太田 美智男
    1990 年 64 巻 7 号 p. 840-846
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    人血清中のIa型B群溶連菌に対する型特異抗体, 特に感染防御に関連すると考えられる免疫グロブリンGの測定の簡便化と感度を上げることを目的として酵素抗体法について検討した. 抗原にはKaneand Karakawaの方法にしたがって菌体より抽出, 精製したIa型B群溶連菌の型特異抗原を用いた. 蛍光抗体法を用いた抗体測定法と比較して約4倍の感度が得られ, 測定時間の短縮, 一度に扱える検体数の増加が可能となった. 87例の妊婦において膣のIa型B群溶連菌保菌状態と血中抗体価には相関関係は見られなかった. しかしIa型B群溶連菌感染症を発症した1例については母親の分娩時の抗体価は酵素抗体法にて10倍と低く, 同人は2年後には非保菌者となっておりこの時の血中抗体価は160倍に上昇していた. 27例につき母体血と臍帯血中の抗体価を比較したところ抗体価はほど一致していた.
  • 矢木 崇善
    1990 年 64 巻 7 号 p. 847-853
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高感度逆転写酵素活性測定法をヒト免疫不全ウイルス2型 (HIV-2) に応用することを目的として, 酵素反応のカイネティクス, 酵素の安定性, BSAの添加効果をGH-1株について検討した結果,'反応温度37℃ で10μl/mlのBSAを添加することによって最も感度が高くなることが明らかになった. この条件で培養上清中のHIV-2 (GH-1株) を検出する場合, CPEによるtitrationに比べ逆転写酵素活性を測定する方が4倍以上感度が高いことが明らかになった. GH-1株以外のHIV-2分離株LAV-2ROD株にも応用できた. またHIV-2特異的逆転写酵素阻止抗体検出することも可能であった.
  • 斧 康雄, 馬場 ますみ, 大谷津 功, 野末 則夫, 上田 雄一郎, 芳賀 敏昭, 宮司 厚子, 西谷 肇, 小林 国男, 国井 乙彦
    1990 年 64 巻 7 号 p. 854-860
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    市販免疫グロブリソ製剤 (IVIG) の各種病原菌に対するオプソニン効果を調べるために, 菌をIVIGでオプソニン化した後, その食菌過程で食細胞より放出される活性酸素の生成能をchemiluminescence (CL) 法を用いて検討した.
    1) ポリエチレングリコール処理IVIGで, 各種細菌やCandida albicansをオプソニン化することによって, 好中球CL活性が有意に増強した (p<0.01).
    2) Fc活性を有するIVIGのCL増強効果は, 処理法やロットがちがってもほぼ同様であった.
    3) 血清の存在しない好中球CLや, 低補体血症を伴う全血CLにおいて, ペプシン処理IVIGはCL増強効果をほとんど認めなかった.
    4) 血清免疫グロブリン値の著明な低値を示す重症熱傷患者においては, Fc活性を有するIVIG添加による全血CL増強効果が著明であり (p<0.05), IVIG投与の有効性が期待できる疾患であると思われた.
    5) 全血CL測定は, IVIG製剤の目標菌に対するin vivoでのオプソニン効果をin vitroで評価することに利用できるかもしれない.
  • 所 光男, 長野 功, 後藤 喜一, 中村 章
    1990 年 64 巻 7 号 p. 861-865
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    SS寒天平板上で赤痢菌が疑われた集落由来株を培養時間24時間で簡易に鑑別できる培地を改良するための基礎実験を赤痢菌23株, Escherichia coli 129株を用いて行なった. その結果, 合成培地に酢酸ナトリウム0.3%, ブドウ糖0.02%, クエン酸ナトリウム0.3%を加え改良したCA培地 (Citrate-Acetatemedium) は, 従来我が国で常用されているクリステンゼンのクエン酸塩培地に比べ, 赤痢菌とE. coliの鑑別に優れていることが確認された.
    健康者検便のSS寒天板上で赤痢が疑われた集落由来株130株を用い赤痢菌との鑑別性をCA培地, クリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地を用いて比較した結果, 24時間の培養の時点では, CA培地はクリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地より鑑別性が優れていることが確認された.
    更に, 使用した130株の同定を行い上記3培地の菌種による鑑別性を検討した結果, 赤痢菌の鑑別培地としてCA培地はEscherichia sp. の鑑別ではクリステンゼンのクエン酸塩培地より優れており, Hafnia sp. の鑑別では酢酸ナトリウム培地より優れていることが確認された.
  • 日浦 研哉, 山田 穂積, 山口 常子, 加藤 収, 山口 雅也, 永沢 善三
    1990 年 64 巻 7 号 p. 866-870
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Pasteurella multocida (以下P. multocida) はグラム陰性短桿菌で, 動物の敗血症等を起こす. 人の感染症は動物による咬傷後局所化膿症や敗血症が知られている. 呼吸器感染症は気管支拡張症など慢性呼吸器疾患を有する患者に発生する報告がなされているが, 本邦での報告は少ない. 今回, 気管支拡張症を有する患者に発症したP. multocida感染症を経験したので報告する.
    症例は80歳, 女性.60歳時より気管支拡張症の診断を受けていた. 昭和60年8月に咳, 血痰, 微熱で本院入院となった. 入院時胸写で右中葉無気肺, 左肺下葉の気管支拡張が認められた. 喀痰よりP. multoci4aが検出された. セフェム系抗生剤投与にて, 軽快退院した. 退院後来院せず, 昭和63年5月に微熱, 喀痰増加にて再受診した. 喀痰より再びP. multocidaが検出された. その後行った喀痰検査で毎回同菌が多量 (108/ml) に分離され, P. multocida感染と診断された. 本邦では呼吸器感染の報告は少ないが, 慢性気道疾患の増加している現在, 本菌による呼吸器感染症にも注意を払う必要があると考える.
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