感染症学雑誌
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66 巻, 2 号
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  • 刑部 陽宅, 磯部 順子, 児玉 博英, 佐藤 茂秋, 島田 俊雄
    1992 年 66 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    各種材料由来のVibrio mimicus 66株の腸管起病性と腸管毒産生性を調べ, 次の結果を得た.乳呑みマウス胃内生菌接種で, 腸管起病性陽性と判定される菌の頻度はヒト下痢症由来で85%, 魚介, i環境由来で66%であった.コレラ毒素遺伝子, NAG-ST遺伝子陽性菌の頻度は腸管起病菌 (48株) で, それぞれ2, 15%, 非起病菌 (18株) でそれぞれ0, 6%, NAG-rTDH, FAFおよび溶血毒産生菌の頻度は腸管起病菌 (48株) で, それぞれ4, 63および100%, 非起病菌 (18株) でそれぞれ6, 50および100%であった.血清型と腸管起病性との間には密接な相関を認めるに至らなかった.家兎結紮腸管内で溶血毒を産生する菌の頻度は腸管起病菌で6/12, 非起病菌で1/12であった.Non-O1V.cholemeの溶血毒で免疫された高い血中抗体を有する家兎では, 本菌による下痢の抑制が認められた.
    以上の結果は, 自然界に分布する本菌の多くは腸管起病性であること, 溶血毒を主な下痢毒素とする腸管起病菌があることを示している.
  • 村瀬 忠
    1992 年 66 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    好中球減少を伴った血液疾患患者32症例に発症した感染症と考えられる42回の発熱に対し, 予測的抗生物質としてpiperacillin (PIPC) とgentamicin (GM) 併用あるいはPIPCとaztreonam (AZT) 併用のいずれかを無作為に選んで治療を行った.PIPCとGM併用は, 22例中11例で有効であり, PIPCとAZT併用は, 20例中12例で有効であった.有効でなかった症例に対しては, cefamandoleの追加投与を行い, 16例中2例で有効であった.'
    好中球の最低値, 年齢, 性別, 基礎疾患は, 両群の間で有意の差はなかった.PIPCとGM併用群で1例に高度の腎機能障害が発症した以外は, 両群とも, 副作用は比較的軽微であった.PIPCとAZT併用療法は好中球減少症を伴った血液疾患患者に発症した感染症に対する予測的抗生物質として有効でまた安全であると考えられた.
  • 渡辺 登, 森田 耕司, 蔵田 訓, 金森 政人, 島田 俊雄
    1992 年 66 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    下痢症から分離したヒト由来のA.hydropma61株, A.sobria42株, A.caviae5株および環境由来のA.hydropkila39株, A.sobria28株, A.caviae7株についてウサギ赤血球に対する溶血活性, HeLa 229細胞に対する細胞毒素活性を検討し, さらに0群別とマウス致死活性, 自発凝集能の関連性について 検討した.
    0群別では, 011が最も多く, 次いで034,014,016,035の順であった. A.hydrophilaおよびA.sobriaの海外旅行者下痢症由来株において溶血活性および細胞毒素活性が 陽性の株が多く見られ, これらの活性と腸管起病性の関連性が示唆された.しかし,
    A.hydrophilaの海 外旅行者下痢症由来株では両活性値の明らかな相関が見られたが, A.sobriaの海外旅行者下痢症由来株 およびA.hydophilaの国内散発下痢症由来株では両活性に相関は見られず, 溶血活性と細胞毒素活性に関わる毒素の特異性の相違, 複数の毒素の発現が示唆された.
    マウス致死活性陽性の株はO11および034に多く, 011では, これらの株に細胞毒素活性値の高い株が多く見られたが, 自発凝集能との関連性は見られず, マウス致死活性に細胞毒素活性が関与している可能性が示唆された.034では, 溶血活性, 細胞毒素活性および自発凝集能とマウス致死活性との関連性は見られず, 他の病原因子が関与している可能性も示唆された.
  • 西村 昌宏, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 渋谷 秋彦, 塚本 泰司, 大屋 哲
    1992 年 66 巻 2 号 p. 135-143
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    コンピューター制御による尿中濃度自動シミュレーター装置を附属したinvitro複雑性膀胱炎モデルを用い, 抗菌薬を実際の尿中濃度に推移させ, モデル膀胱内の細菌に作用させた.この場合に, 各種抗菌薬のPAEの有無が菌数曲線に与える影響を, 細菌が初期接種濃度まで再増殖するのに要する時間, すなわちEffective regrowth time (ERT) を比較する事で検討し, 以下の結果を得た.
    1.グラム陰性桿菌に対してPAEを有さないβ-lactam系抗菌薬 (AMPC, CFIX) 作用時では, グラム陰性桿菌のERTはグラム陽性球菌よりも約2時間短かった.
    2.グラム陽性球菌と陰性桿菌の双方に対してPAEを有するニューキノロン系抗菌薬 (OFLX) やアミノグリコシド系抗菌薬 (ISP) 作用時では, グラム陽性球菌と陰性桿菌のERTに差は認められなかった.
    したがって, 抗菌薬を尿中濃度推移にシミュレートした場合にも, より臨床に近いこのinvitroモデルにおいて, PAEの有無が菌数曲線に対して反映される事が示された.
  • Zhongxing LI, Xiuhua WANG, Zhanshui BIAN, Shumin LI, Heping ZHENG, Bao ...
    1992 年 66 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は17歳男性, 2週間来持続する頭痛および高熱, 悪心により入院す.入院時現症は体格中等度, 栄養良好, 皮膚および眼球結膜に黄疸を認めず, 体温37.5℃, 脈拍84/分整, 血圧110/70mm Hg, 聴打診上では異常なく, 腹部所見では肝, 脾触知せず, その他の異常は認めなかった.神経学的には左側の不完全顔面神経麻痺を認めた.局所所見としては, 左乳様突起部位に軽度の腫張を認め, 鼓膜表面に化膿性分泌物を認めた.既往歴に8年来の左化膿性中耳炎を罹患していることより, 硬膜外膿瘍および耳原性髄膜炎を合併した化膿性中耳炎と診断, 根治的乳様突起切除術を施行した.硬膜下腔より150mlの膿汁を採取, 細菌検査によりP. penneriを検出, 感受性試験によりcotrimoxazoleとgentamicinを使用し軽快, 退院した.P. penneriP. vuhzrisとして分類されていたが, 1982年Hickmanらにより尿, 糞便より検出されたがその臨床的意義は不明である.
  • 健山 正男
    1992 年 66 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionella 属の菌種の同定には血清学的検査が広く用いられている.1980年~1982年にかけて血清学的にLegionella bozemanii と同定された6菌株について市販のDNA-DNA hybridizationkit (小林製薬) をもちいて再同定を施行したところ全菌株ともにLegionella anisa の同定結果を得た.本菌株は本邦では初の同定である.引続き同菌株に対し, 生物化学的検査をおこなった.oxidase検査は, 反応が非常に弱く信頼度が低い為, 本菌に対する検査としては不適当と思われた.長波長紫外線照射では全株ともblue-white fluorescenceを示したが, 蛍光の強さにはかなりのバリエーションが認められた.血清学的検査では, slide agglutination test (SAT) にて, 市販のデンカ生研のL. bozemanii に対する血清はL. anzsa に対し交叉反応を呈した.当教室で作製した両菌株に対する自家家兎免疫血清も交叉反応を示した.indirect immunofluorescent assay (IFA) では, デンカ血清及び自家家兎免疫血清ともに明瞭に同定できた.以上よりL. bozemanii と血清学的に同定されている菌株の中にL. anisa が含まれている可能性があるので再検討が必要と思われた.またL. anisa に対するDNA-hybridizationによる同定法が普及するにともない本邦での分離頻度が増加することが予想された.
  • 鈴木 紀夫
    1992 年 66 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 増加しつつある深在性真菌感染症, 特にカンジダ症の血清学的診断法について検討した.カンジダ抗原検索はCAND-TEC ® (RAMCO社), カンジダ抗体は受身赤血球凝集反応 (Roche社) で行い, 真菌の代謝産物であるD-アラビニトールと真菌の壁成分である (1→3)-β-D-glucanも同時に測定した. (1) 正常人において, CAND-TEC ® 1: 4以上の症例は173例のうち1例 (0.6%), カンジダ抗体320×以上の症例は200例のうち5例 (2.5%), D-アラビニトール11μmole/l以上の症例は157例のうち7例 (4.5%) であり, これら以上の値を陽性と判断した. (2) 1988年11月~1990年3月までに当科及び関連施設で取り扱った, 一般抗菌剤不応の発熱患者171例のうち, 明らかにカンジダ感染症を認める症例41例では, CAND-TEC ® は33例 (80.5%), カンジダ抗体は21例 (51.2%), D-アラビニトールは29例 (70.7%), (1→3)-β-D-glucanは, 23例のうち13例 (56.5%) が陽性であった.少なくとも一項目が陽性であった例は97.4%と高率であった.一方, カンジタ感染の全く認められなかった群では, CAND-TEC ® は57例のうち1例 (1.7%), カンジダ抗体は55例のうち10例 (18.2%) が陽性であり, 両者ともカンジダ感染確実群に対しp<0.01で有意差を認めた. (3) CAND-TEC ® と他の検査法との比較では, 1: 4, 1: 8≦の症例で, D-アラビニトールとの相関関係を認めたが, 他に有意の相関は認められなかった. (4) カンジダ感染が強く疑われた呼吸器カンジダ感染疑い群及び尿路カンジダ感染疑い群でも, CAND-TEC ®, D-アラビニトール, (1→3)-β-D-glucanは感染のなかった群に対して, 有意に陽性率が高かっだ.
    以上の結果から, カンジダ症の血清診断として, CAND-TEC ® の1: 4以上は有意義であり, 更に, 他の検査法を組み合わせることにより, カンジダ感染の早期血清学的診断は可能であると考えられた.
  • 岩澤 晶彦, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 塚本 泰司, 郷路 勉, 生垣 舜二, 坂 丈敏, 南 邦弘, 藤永 惠
    1992 年 66 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    視診上異常所見のない性器にもHuman Papillomavirus (HPV) が検出されており, 無症候性感染の可能性が示唆されている.一般健常人に比べて多数のsexual partnerを有すると考えられる性感染症 (Sexually transmitted diseases: STD) 症例において, HPV感染がどの程度蔓延しているかをViraType TM (東レ) を用いて7種 (6/11, 16/18, 31/33/35) のHPVDNAの検出をcross hybridizationのない条件で行った.
    男子の尖圭コンジローマ以外のSTD症例の亀頭・冠状溝におけるHPV陽性率は4.7%(5/106) で, 健常成人では6.1%(2/33), 慢性前立腺炎症例では3.4%(7/205) だったが, 前立腺肥大症症例にはHPVは検出されなかった.
    女子の尖圭コンジローマ以外のSTD症例の子宮頸管におけるHPV陽性率は5.1%(3/58) で, 妊婦症例では4.6%(9/197) であった.
    年齢別でHPV陽性率を比較すると, 男女のSTD症例および非STD症例とも若年層においてHPV感染が広く蔓延している傾向にあった.
    HPV陽性症例の追跡調査を数週間後に施行したところ, 男子STD症例の10例中1例と妊婦症例の10 例中2例に初回と同qじDNA型のHPVが検出された.しかし, この3例における3~4ヵ月後の再検査ではHPVは検出されず, 自然消失の可能性が示唆された.
  • 出口 隆, 山本 啓之, 多田 晃司, 岩田 英樹, 米田 尚生, 斉藤 昭弘, 伊藤 康久, 坂 義人, 玉木 正義, 前田 真一, 斉藤 ...
    1992 年 66 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis検出におけるpolymerase chain reaction (PCR) 法と酵素抗体法 (ChlamydiazymeTM) との比較検討をおこなった. PCR法では, 242bpのC. trachomatis DNAの増幅を認めた場合にC. trachomatis陽性と判定した.Chlamydiazymeでは, 検体の最終吸光度をcut-off値にて除したcut-off indexを算出し, それが1以上の場合にC. trachomatis陽性と判定した. PCR法ではC. tmchomatis 102コ/assayに相当するDNA量まで検出可能であるのに対して, Chlamydiazymeでは2.6×103コ/assayが検出限界であった.男子尿道炎患者の尿道擦過材料からのPCR法とChlamydiazymeとによるCtrachomatis検出結果の比較では, PCR法により74例中45例 (60.8%) が陽性と判定されたのに対して, Chlamydiazymeでは, 74例中41例 (55.4%) が陽性と判定された. Chlamydiazyme陽性例41例すべてでPCR法陽性であり, Chlamydiazyme陰性例33例中, 29例でPCR法陰性で, 4例でPCR法陽性であった. PCR法のChlamydiazymeに対する陽性一致率は100%(41/41), 陰性一致率は87.9%(29/33) で, 全体での一致率は94.6%(70/74) と高い一致率を示した. 以上より, PCR法は, Chlamydiazymeに比較し, より高感度のC. trachomatis検出系であり, 尿道擦過材料を検出材料とした場合には, Chlamydiazymeの検出結果と高い一致率が認められ, クラミジア性尿道炎診断において特異性の高い有用な検出方法と思われた.
  • Levofloxacinによる検討
    広瀬 崇興, 熊本 悦明, 西村 昌宏, 青木 正治, 塚本 泰司, 三宅 正文, 柳瀬 雅裕, 宮尾 則臣, 赤樫 圭吾, 横尾 彰文, ...
    1992 年 66 巻 2 号 p. 177-188
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗菌薬による感染症治療法は本来, 必要最小量に近い量で行われるべきである. 女子急性単純性膀胱炎は比較的抗菌薬に反応しやすい感染症であるため, 単回療法の対象として適している. そこで今回新キノロン薬であるLevofloxacin (LVFX) 200mgによる単回療法を女子急性単純性膀胱炎に対して行い, 76例について治療成績を検討し得た. この投与法によりE. coliに対するMIC90. 以上の尿中濃度が約3日間持続する. 排尿痛, 膿尿, 細菌尿の3つの臨床所見の反応を総合的に判断して治療成績を判定したところ, 有効率は治療後3日目では100%(76/76), 7日目では93.9%(46/49), 14日目では94.4%(34/36) と優れた治療成績が得られた.
    また, アンケート調査による3ヵ月後までの膀胱炎症状の再発率でも12.5%(5/40) と問題はなかった. 効果不十分または再発した6例に対して膀胱鏡などの泌尿器科的精査を行ったところ, 3例の膀胱内に難治性因子と考えられる軽度の基礎疾患を見つけることが出来た.
    以上より, 新キノロン薬であるLVFXによる女子急性単純性膀胱炎に対する単回療法は, 従来の連日投与療法の治療成績と同等で, drug complianceに優れ, 医療費も安く, 耐性菌も選択されにくく, 副作用も少なく, さらに隠れた軽度の基礎疾患を見つける機会となるなどの特長から優れた治療法であると考えられた.
  • 和山 行正
    1992 年 66 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia pneumoniaeChlamydia trachomatisの同時分離ならびに同時鑑別同定法を確立した. 新法の概要は, 次の様である;メンブランフィルターで処理した検体を, 8穴スライドチャンパーで培養したHL細胞とHeLa-229細胞に接種し, 72時間37℃CO2 incubatorで培養後, モノクロナール抗体を用いた蛍光抗体法により同定する.
    この方法を用いて, 耳鼻咽喉科領域の109件からクラミジア多種同時分離培養同定を試み, 11株 (10.1%) のChlamydia pneumoniaeと10株 (9.2%) のChlamydia trachomatisとを分離, 同定することができた.
  • 崎戸 修, 門田 淳一, 織田 裕繁, 迎 寛, 横山 篤, 河本 定洋, 加勢田 誠, 森川 透, 草野 史郎, 浅井 恒彦, 澤 英顕, ...
    1992 年 66 巻 2 号 p. 194-200
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    びまん性汎細気管支炎 (DPB) に対するエリスロマイシン (EM) の効果については有効であることが明らかとなっているが, その作用機序については未だ不明である. 今回我々は, リポポリサッカライド (LPS) 注入にょるマウス気道内好中球遊走におよぼすEMの影響を検討した. BALB/Cマウス1匹につきEM5mgを腹腔内投与し, 2時間および10時間後にLPSの気道内注入を行い, 24時間後に気管支肺胞洗浄 (BAL) を施行した. 総細胞数はEM投与2時間後にLPSを注入した群においては, コントロール群7.9±1.0×105 (mean±SEM) に対して, EM処理群では3.4±0.5×105と有意 (p<0.01) の低下を認め, 好中球数でもコントロール群6.5±0.8×105に対しEM処理群では1.7±0.3×105と有意 (p<0.001) の低下を認めた. この総細胞数と好中球数の低下は, LPS注入後6時間より認められ, 24時間にて最大となった. EM投与10時間後にLPSを注入した群においては, コントロール群とEM処理群との間には差を認めなかった.またEMを3日間7日間および14日間連日投与し24時間後にLPSを注入した群では, 有意な好中球数の低下は認められなかった. 一方, EMは末梢血中の白血球および好中球数には影響を与えなかった. 以上のことから, EMの作用は末梢血から気道内への好中球の浸潤を抑制しているものと考えられ, この抑制効果にはある程度の血中濃度の上昇が必要と思われた. 従ってEMは, 少なくとも一部分では気道内への好中球の浸潤を抑制し, 抗炎症的に作用することで効果を現している可能性が示唆された.
  • 海保 郁男, 時枝 正吉, 田中 寛, 川村 明義
    1992 年 66 巻 2 号 p. 201-205
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    千葉県では, 1987年に初めて紅斑熱患者の発生があり, 以後1990年までに, 9名の患者を血清学的に確認した. 患者発生地は, 県南部の天津小湊町, 勝浦市, 大多喜町であり, 発生時期は, 6月から10月であった. 一方, 本県で多発しているつつが虫病患者の発生時期は, 10月から翌年の2月であり, 両者の発生時期の違いは, 紅斑熱群リケッチア症の臨床診断と抗体検出に役立つ季節消長である. 患者血清は, YH株リケッチアに対し最も高い抗体価を示すものの, 他の紅斑熱群リケッチアとも高い交差反応を示した. これにより, 血清学的に患者を確認する場合は, どの紅斑熱群のリケッチアを用いても十分に可能であると考えられた.
  • 力丸 徹, 田中 泰之, 樋口 英一, 香月 まこ, 市川 洋一郎, 大泉 耕太郎
    1992 年 66 巻 2 号 p. 206-211
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    気管支結核症および肺結核症に対するストレプトマイシン (SM) 吸入療法の副作用および有効性を検討した. 吸入器はジェット式ネブライザーまたは超音波ネブライザーを, 薬液はSM単独またはステロイドおよびナファゾリンとの混合液を疾患により使い分けた. 副作用の検討として, 健常ボランティアにSM吸入を行い, その前後で肺機能検査および経時的なSM血中1濃度を測定した.
    SM血中濃度は測定可能範囲以下の場合が多く, 副作用を増悪させるほど血中濃度の増加はないと考えられた. 肺機能検査を施行できた4例において, 吸入前後で肺機能に変化はなかった. 吸入前後で経時的に血液ガスを測定できた肺結核患者6例では, PO2・PCO2ともに著明な変化は認めなかった.
    効果的にはSM吸入療法が有効と考えられた症例が多かったが, その評価に対してなおいっそうの検討が必要と考えられた.
  • 家兎を用いた嫌気性菌性膿胸の実験モデル
    高橋 まゆみ
    1992 年 66 巻 2 号 p. 212-220
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    家兎においてはturpentineを胸腔内に注入することによって無菌性の胸水を産生させることができる.今回, こうして得た胸水内に更に諸種細菌を接種し, その結果, 嫌気性菌を用いた膿胸の実験モデルの作製に成功した.使用した菌はEscherichia ccli, Paptcstrep tcooccus asaccharcbticus BacTercidesfragilisの3種で, (1) 単独接種: a) E. coliのみ, b) Pasaccharcbticusのみ, c) B fhagilis のみ, (2) 好気性菌と嫌気性菌の混合同時接種: a) E. coli+P asaccha rcbticus, b) Ecoli+Bjragilis, (3) 好気性菌接種5日後に嫌気性菌接種: a) E. coli接種5日後のP. aocharcbtious接種, b) E. coli接種5日後のB. fragilis接種, の各グループに分け, 膿胸の作製を試みた.また, 胸水中の酸化還元電位, シアル酸, 菌量, glucose, 白血球数などの経時的変化を観察した.
    その結果, 各グループ間での膿胸の発症率に大差は認められず, 嫌気性菌単独接種においても高率に膿胸が発生した.また, 各測定項目の経時的変化では, (1) B. fragilisが関与する場合にのみシアル酸と酸化還元電位が低下し, (2) E. coliと嫌気性菌の混合感染ではおそらく嫌気性菌が関与することによって, 感染後期にE. coliの菌数が増加する傾向が認められた.なお, (2) 群および (3) 群は好気性菌と嫌気性菌のいわゆる二相性感染が成立することを想定して組まれた実験であるが, 得られた結果は予想とはかなり掛け離れたものであった.
  • (1) イヌ, ネコ, ヒトのPasteurella属保有状況と, ペットとのキスによる保有率への影響
    荒島 康友, 熊坂 一成, 奥山 清子, 川端 眞人, 土屋 俊夫, 河野 均也, 浅野 隆司, 保刈 成男
    1992 年 66 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    今回, 我々はZoonosisの観点から, 基礎資料とするため, Mutters等の分類を用いイヌ3頭・ネコ29頭の被毛および口腔内P. multocidaの保有率を調査した. また, イヌ3頭, ネコ11頭の畜主24人の口腔内pasteurellaの保有率とペットとのキスの関係についても検討した.
    イヌ・ネコの被毛からP. multocidaは分離されなかった. 口腔内にはイヌでp. muotocide subsp. multocida 1株とp. stomatis2株が分離された. また, ネコの口腔内からはpasteurella属35株が分離された. 1頭のネコの口腔内には生化学的性状を異にするP. multocida subsP. multocida2株が認められた. ネコ3頭ではP. multocida subsP. multocida以外のPasteuella属が同一口腔内から分離された. ネコとキスをしていないヒト19人の口腔内にはPasteuella属は認められなかった. しかし, ネコとキスをしていたヒト2人中1人からは口腔内にP. stomatisが, イヌとキスをしていたヒト3人中2人の口腔内からはP. stomatisが分離され, 飼育中のイヌ1頭からも同一の菌が分離された. この3人のうち1人にキスを禁止し1ヵ月後に再検を行ったところ, 同菌は検出されず, 一過性の感染と思われた.
    以上のことより, ペットとキスを行うことで, ペットの口腔内に存在する菌がヒトに感染症を起こす可能性があると思われた.
  • 連鎖球菌菌体によるモノマーIgA抗体の吸収
    橋戸 円, 川名 尚, 井上 栄
    1992 年 66 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス (HSV) の性器への感染によって起こる性器ヘルペスは, 臨床的に初感染および再発・誘発の二つに大別される. HSV特異的IgA抗体は, 初感染時にはポリマー型 (p-IgA) であるが, 再発・誘発時にはモノマー型 (m-IgA) が主体になるため, 血清学的に臨床型を鑑別する指標となりうる. 我々は, 超遠心分画法を用いないで簡便にp-IgA抗体を検出するべく, Streptococcus pyogenes (S. pyogenes) AW43株のもつm-IgA抗体吸収能とS. pyogenes ARI株のもつIgG抗体吸収能を組合せ, Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) により測定する系を開発した. 被検血清をS. pyogenesAW43株とAR1株の混合物で吸収処理し, 吸収前のIgA抗体活性 (ELISA吸光度で表示) を全IgA活性, 吸収後に残存するIgA抗体活性をp-IgA活性として, p-IgA/全IgAをp-IgAインデックスと表した. 性器ヘルペス17例から経時的に採取した47本の血清についてP-IgAインデックスを求めたところ. 初感染の発症から2週間以内は0.5以上と高値を示し, その後低下したのに対し, 再発・誘発の場合は発症直後から0.2以下で変動しなかった. 従って, p-IgAインデックスを用いれぽ, 単一血清でもHSVの初感染と再発・誘発が鑑別できる可能性が示された.
  • 荒島 康友, 熊坂 一成, 奥山 清子, 土屋 俊夫, 河野 均也, 小泉 紋禎, 佐野 和三, 賀屋 秀男
    1992 年 66 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 1992/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 53-year-old male visited our hospital due to nasal obstruction persisting for 6 months and constant rhinorrhea. Pasteurella multocida subsp. multocida was isolated from his nasal discharge and lavage fluid of the maxillary sinus, and also from the oral cavity of the dog he kept. The bacterial strains isolated from the patient and dog were identical in terms of biochemical properties, and drug sensitivity. Although serotype was different, the strain from the patient showed (A: 6) and that from his dog showed (A: 5). The microorganism is not present in the general environment. The patient had contact with his dog such as he kissed it frequently, gave it food with his chopsticks et al. From the mouth of the people who kiss one's dog, we detected Pasteurella of the same character of bacteria as from the mouth of the dog. We detected two Pasteurella multocida of different character from only one mouth of a cat. Pasteurella multocida was checked in only one colony for sero type. Sero type A is the popular type for dogs and cats. The above suggest that their was a high possibility that the Pasteurella multocida subsp. multocida found in the patient was from his dog.
    In Japan, the incidence of Pasteurella multocida subsp. multocida infection has been increasing. In 1969, the Japanese Ministry of Health and Welfare officially communicated this infection as a zoonosis to related institutions. At both medical and surgical departments, wither the patient keeps a pet should be confirmed during interview, and guidance of pet keeping methods is important in some cases from the aspect of clinical bacteriology.
    We await the establishment of a general institution which collects and analyzes data on various zoonoses in various fields, and formulates preventive measures.
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