近年, 増加しつつある深在性真菌感染症, 特にカンジダ症の血清学的診断法について検討した.カンジダ抗原検索はCAND-TEC
® (RAMCO社), カンジダ抗体は受身赤血球凝集反応 (Roche社) で行い, 真菌の代謝産物であるD-アラビニトールと真菌の壁成分である (1→3)-β-D-glucanも同時に測定した. (1) 正常人において, CAND-TEC
® 1: 4以上の症例は173例のうち1例 (0.6%), カンジダ抗体320×以上の症例は200例のうち5例 (2.5%), D-アラビニトール11μmole/l以上の症例は157例のうち7例 (4.5%) であり, これら以上の値を陽性と判断した. (2) 1988年11月~1990年3月までに当科及び関連施設で取り扱った, 一般抗菌剤不応の発熱患者171例のうち, 明らかにカンジダ感染症を認める症例41例では, CAND-TEC
® は33例 (80.5%), カンジダ抗体は21例 (51.2%), D-アラビニトールは29例 (70.7%), (1→3)-β-D-glucanは, 23例のうち13例 (56.5%) が陽性であった.少なくとも一項目が陽性であった例は97.4%と高率であった.一方, カンジタ感染の全く認められなかった群では, CAND-TEC
® は57例のうち1例 (1.7%), カンジダ抗体は55例のうち10例 (18.2%) が陽性であり, 両者ともカンジダ感染確実群に対しp<0.01で有意差を認めた. (3) CAND-TEC
® と他の検査法との比較では, 1: 4, 1: 8≦の症例で, D-アラビニトールとの相関関係を認めたが, 他に有意の相関は認められなかった. (4) カンジダ感染が強く疑われた呼吸器カンジダ感染疑い群及び尿路カンジダ感染疑い群でも, CAND-TEC
®, D-アラビニトール, (1→3)-β-D-glucanは感染のなかった群に対して, 有意に陽性率が高かっだ.
以上の結果から, カンジダ症の血清診断として, CAND-TEC
® の1: 4以上は有意義であり, 更に, 他の検査法を組み合わせることにより, カンジダ感染の早期血清学的診断は可能であると考えられた.
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