神奈川県近郊のY園において, 平成4年10月中旬ごろから11月中旬までに, 放し飼いのリス500例中台湾リス373例およびシマリス41例の計414例 (82.8%) が, 顔面に軽度の腫脹を来し, 外鼻孔および口腔から出血し, 相次いで急死した。その急死した台湾リス6例から細菌およびウイルスの分離を行うとともに各臓器の病理像を観察した結果は以下のとおりである.
1) 細菌学的検査において, 6例中5例 (83.3%) からβ溶血を示したレンサ球菌が純培養状に分離された. この分離した14菌株について血清学的に検討した結果, Lancefieldの分類でC群に型別され, 生化学的性状によって
Streptococcus egui subsp. zooepidemicusと同定された. また, 12種類の薬剤感受性試験においてはABPC, PCG, CMX, CP, EMおよびCPZに高い感受性を示した.
2) ウイルス学的検査において, リス腎臓皮質の初代培養細胞で各臓器を3代継代したが, 細胞変性は認められなかった.
3) 死後6時間後の剖検所見では肺のみに病変が認められた. 病理組織学的には, 肺葉全体に高度な肺胞壁の肥厚が認められ, 肥厚した肺胞壁は高度な充出血を伴う出血性肺炎と好中球浸潤が認められ, これらの病変部にヘマトキシリン好性のレンサ球菌の集塊が認められた. その他の臓器には組織学的に著変は認められなかった.
4) Y園の関係者の咽頭からレンサ球菌の分離を行ったが検出されなかった.
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