感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
68 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 特にrespiratory syncytial virus感染症に注目して
    西條 政幸, 滝本 昌俊, 高橋 庸二
    1994 年 68 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    北海道北部に位置する当院の小児下気道感染症入院患者をもとに, 疫学的研究を行った. 1991年4月から1993年3月までの2年間に467人の小児下気道感染症患者が入院した. そのうち456人 (97.6%) の鼻汁中respiratory syncytial virus (RSV) 抗原の有無を酵素免疫測定法で検索した. また, Mycoplasmapneumoniae (以下, M. pneumoniae) 感染症を疑った125人の急性期と回復期の血清中M. pneumoniae抗体価を補体結合反応で測定した. RSV下気道感染症は133人 (全体の28.9%) で, 11月から流行し翌年2月には減少した. また, RSV感染症はほぼ年間を通じて認められた. 次いで, M. pneumoniae感染症が45人 (9.8%) であった.北海道でもRSVは小児の下気道感染症に大きな役割を果たしていた. また, RSV感染症は春と冬の2峰性に流行する年と冬にのみ流行する年があった.M. pneumoniae感染症とRSV感染症の流行は互いに干渉し合う可能性が示唆された.
  • 倉園 貴至, 山田 文也, 山口 正則, 大関 瑶子, 奥山 雄介, 伊藤 健一郎, 島田 俊雄
    1994 年 68 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1992年10月よりインド及びバングラデシュで流行しているK.choleraeの新しい血清型O139が, インドから帰国した下痢症患者の便より分離された.患者は1993年4月インドに出張し, 帰国後5, 6回の水様性下痢があった.患者の糞便より分離されたK111株は, V.cholemeの既知の抗血清 (01~0138) には反応しなかったが, 新しい血清型であるV.choleme O139の抗血清に強く凝集した.K111株の生化学的性状は通常のV.choleraeと同じ性状を示したが, Vibrio static agent O/129に々ま耐性で, さらにCT (コレラトキシン) 及びzonula occludens toxin (ZOT) 遺伝子を保有し, CT産生量も55ng/mlであった.本報告はV.cholerae O139が下痢症から分離された本邦初事例と考えられる.
  • 志喜屋 孝伸, 座覇 修, 新村 政昇, 上原 剛, 大城 淳一, 金城 福則, 斎藤 厚, 安里 龍二
    1994 年 68 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    糞線虫症患者125例に対するivermectinの治療結果を報告するとともに, 駆虫できた症例と治療に抵抗した症例および糞線虫陰性例とを比較した結果について報告する.
    1. Ivermectin1錠 (6mg) を2週間間隔で2回投与する方法で108例 (86.4%) は糞線虫が陰性となった. 陰性化しなかった17例のうちivermectinで再治療し得た8例は全例が陰性化した.
    2.1錠投与後に7.2%, 2錠投与後に3.2%の症例にめまいなどの副作用が出現したが, いずれも軽度であった. 肝障害が1錠投与後に10.4%, 2錠投与後に3.2%出現したが, 特に治療を必要としなかった.
    3.初回治療で陰性化した108例, 初回治療に抵抗した17例およびコントロール (糞線虫非保有者) 17例との比較では, 抗HTLV41 (human T-lymphotropic virus type I) 抗体の陽性率は抵抗群 (80%) が駆虫群 (29.2%) およびコントロール群 (0%) より有意に高かった. 治療前の白血球, 好酸球および好中球の平均数は駆虫群がコントロール群より多かったが, 抵抗群とコン, トロール群の間に差はなかった. 抵抗群のIgEの平均値は駆虫群より低かったがコントロール群とは差がなかった.
    以上の結果から, 糞線虫症に対する治療薬としてivermectinはきわめて有用であると思われ, 一般臨床医が入手できる方法の早期解決が望まれる.
  • 経鼻カテーテル挿入および人工呼吸器装着の影響
    信国 圭吾, 永礼 旬, 北野 裕子, 河原 伸
    1994 年 68 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    当院では神経難病病棟の入院患者でMRSAが高率に検出される.今回, 神経難病病棟入院患者37人および一般内科病棟入院患者36人の鼻腔前庭細菌叢を調査した.
    S.aureusP. aeruginosaをはじめとするグラム陰性桿菌が検出されるのは神経難病病棟入院患者の中でも経鼻カテーテル挿入患者に集中しており, 嚥下障害に伴い経鼻カテーテルが挿入されていることが鼻腔前庭の細菌叢に影響を与える重要な因子であると考えられた。また, MRSAは経鼻カテーテル挿入患者のみから検出され, 経鼻カテーテル挿入はMRSA定着の重要な危険因子と考えられた.
    経鼻カテーテル挿入患者について検討すると, 気管切開が行われて人工呼吸器が装着されている患者ではP. aeruginosaなどのグラム陰性桿菌が検出される者は多いものの, S. aureus.とくにMRSAが検出される者は少なく, 呼吸器装着はグラム陰性桿菌, とくにP. aeruginosa定着の重要な危険因子であるが, 必ずしもMRSA保菌の定着因子とはならないと考えられた.
  • 臨床効果とサイトカインにおよぼす影響
    門田 淳一, 崎戸 修, 河野 茂, 阿部 航, 白井 亮, 川上 かおる, 飯田 桂子, 森川 透, 草野 史郎, 原 耕平
    1994 年 68 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症15例 (びまん性汎細気管支炎11例, 副鼻腔気管支症候群4例) に対して, ロキシスロマイシン (RXM) の長期持続投与の効果を検討した. (1) RXMの臨床効果では, 総合改善度において15例中14例 (93.3%) に有効であった.PaO2は74.2±10.4Torrから84.3±10.9Torrへ,%VCは86.9±20.2%から96.0±21.9%へ, またFEV1.0は1.81±0.87Lから2.14±1.08Lへ有意に改善した. (2) RXM投与前の気管支肺胞洗浄 (BAL) 液所見では, 健常成人2.5±4.3%に対して慢性下気道感染症58.5±25.9%と好中球の増加が著明であり, RXMの有効であった症例では49.8±28.3%から17.1±15.7%へ好中球の有意な減少を認めた. またBAL液中のインターロイキン1β とインターロイキン8はそれぞれ43.0±22.5pg/mlと421.7±362.1pg/mlであり健常人22.6±4.2pg/mlと5.9±3.9pg/olに比して有意に上昇しており, とくにインターロイキン8は好中球の増加と相関を認めた (r=0.619, p<0.05).RXM投与後これらサイトカインは減少した.これらの結果から, RXMは炎症性サイトカインに作用している可能性が考えられ, また気道内好中球の持続的浸潤を抑制し, 気道炎症を抑えることで慢性下気道感染症に対して有効に作用しているものと考えられた.
  • 松井 隆, 田中 一志, 長久 裕史, 宮崎 茂典, 岡田 弘, 荒川 創一, 守殿 貞夫
    1994 年 68 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1992年6月までの5年間に神戸大学付属病院泌尿器科入院患者延べ1,512名のうちの菌血症患者30例を臨床的に検討した.
    内訳は男性22例, 女性8例で年齢は32歳から88歳, 平均62.7歳であった.
    血液培養にて分離された菌はグラム陽性菌18株 (56.2%), グラム陰性菌8株 (25.0%), 嫌気性菌2株 (6.2%), 真菌4株 (12.5%) で, そのうちMethicillin Resistant Staphylococcus aureus (MRSA) が6例 (18.8%) と最も多く, ついでStaphylococcus epidermidisが4例 (12.5%), Pseudomonas aeruginosa, Enterococcusfaecalis, Corynebacteriumが各3例 (9.4%) の順であった. 原疾患は悪性腫瘍が26例 (86.7%) でうち膀胱腫瘍が15例 (50.0%) と最も多かった. 術後患者が22例 (73.3%), 抗癌化学療法中の患者が16例 (53.3%) を占めていた. 感染源と血液の分離菌が一致したのは5例 (16.7%) であった. このうち尿路感染が先行したのは3例 (10.0%), 創感染その他が2例 (6.7%) であった. compromisedhostと考えられたのは23例 (76.7%) で, 菌血症による死亡は7例 (23.3%) であった. 死亡例のうち5例は抗癌化学療法中であった. 死亡例での血中分離菌はP. aeruginosa2例, Candida2例, MRSA, E. faecium, Corynebacteriumが各1例であった.P. aeruginosaの2例とGandidaの1例はいずれも背景に抗癌剤による急激な白血球減少症を有していた. 死亡例を除く他のMRSA分離例に関してはVCMを中心とする抗菌化学療法が奏効した.
  • 楠 伸治, 村田 豊, 南出 和喜夫, 五十君 裕玄, 内田 清久, 佐藤 明正, 三浦 宏明, 江崎 孝行
    1994 年 68 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium属菌の16S rRNA遺伝子のPCR産物についてM. avium, M. intracellulm, M. kansasiiの菌種特異的塩基配列を認識するプライマーを用いた2nd PCRを行う方法 (本法) により喀痰中の各菌種を検出することができた. 基準株と保存株による試験の結果, MAおよびM. intracellumare PCRはそれぞれの菌種に特異的であったが, M. kansasii PCRでは本菌種以外にM. gastriが増幅された. 本法で3菌種いずれかに陽性であった22例の試料中17例からは培養法でも同菌種が分離され本法による試験結果が確i認できた.喀痰からの非結核性抗酸菌の検出頻度は7.5%(27/360) であり, うちM. avium9例, M. intracellulare8例, M. kansasii5例, M. avium/M. intzacellulazeの双方に反応したもの1例, これら3菌種に特異的なDNAの増幅がみられなかったもの4例であった.
  • 感染病態の基礎的検討 (第1報)
    木村 雅司
    1994 年 68 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia pneumoniae肺炎の発症機序を明らかにする第一段階として, 初感染時と再感染時の病態の差異をマウス感染モデルを用いて検討した.C. pneumoniaeをマウスに点鼻感染して初感染を惹起せしめ, さらにその35日後に同様の手技にて再感染を行った. 各々, 経時的に血清抗体価測定と肺の病理学的検討, 蛍光染色による封入体数の算定を行い比較検討した.
    初感染時の肺組織の検討では感染後3日目より肺胞内及び肺胞壁に好中球, マクロファージの浸潤が散在性に認められた. 肺炎像は5日目をピークとして以後消退傾向を示し10日でほぼ治癒していた. 再感染時の病理所見は初感染群に比べ肺炎像は極く軽度であり初感染時に見られた肺胞内, 肺胞壁への細胞浸潤は殆ど見られず, 血管及び気管周囲でのリンパ球の集簇はより著明であった. 肺組織内の封入体形成も初感染時に比べ再感染時では少ない傾向が認められた.
    初感染時の血清抗体価の推移は感染7日目よりIgG抗体の上昇が見られ, 21日目で512倍から1,024倍とピークに達しその後ほぼ同値で推移した. 再感染時では感染後10日目よりIgG抗体価の再上昇が見られ, 21日目では2,048倍から4,096倍に達し, その後徐々に抗体価は下降した. IgM抗体についてもIgG抗体と同様に再上昇が認められた.
    以上の結果よりC. pneumoniae肺感染における再感染時の病態は, 防御的免疫反応により初感染時より軽症となるものと考えられた.
  • 小林 宏行, 河合 伸, 酒寄 享, 遠藤 重厚, 星 秀逸, 稲田 捷也, 吉田 昌男
    1994 年 68 巻 1 号 p. 59-80
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗エンドトキシンモノクローナルIgM抗体E5 (エドバコマブ) の臨床第1相試験をグラム陰性菌敗血症患者 (含む疑い) 10例を対象に, 1mg/kg, 2mg/kgもしくは4mg/kgをいずれも1時間の単回点滴静注で実施し, E5の有効性, 安全性及び体内動態を検討し, 併せて適切な用量の検索を行った.
    1.E51mg/kg, 2mg/kg及び4mg/kgを単回点滴静注投与した時の最高血中濃度は, それぞれ9.92, 11.52及び35.64μg/mlであり, 血中濃度曲線下面積 (AUC) についてもそれぞれ129.83, 200.80及び574.39μg・hr/mlといずれもほぼ投与量に応じて増大した. また, 血中濃度半減期はそれぞれ8.72, 11.74及び10.82時間とほぼ同様であった.
    2. 尿中にE5は全例で検出されず, 未変化体の腎排泄は認められなかった.
    3. 血中エンドトキシン濃度は, 投与前9.8pg/ml以上の陽性を示した8例のうち投与1時間以内に9.8pg/ml以下に減少した症例は, 1mg/kg投与群で2例中0例 (0%), 2mg/kg投与群で3例中3例 (100%), 4mg/kg投与群で3例中1例 (33.3%) であった.
    4. E5を単回点滴静注投与した際の臨床効果は, 1mg/kg投与で3例中3例 (100%), 2mg/kg投与で4例中4例 (100%), 4mg/kg投与で3例中2例 (66.7%) が有効以上であった.
    5. E5投与後の主要検査項目の改善度を投与量別に平均値でみると, 2mg/kg投与群では投与12時間後より36℃ 台に解熱をみており, 脈拍数, 白血球数, 血小板数, CRPの改善の度合も2mg/kg投与群でより明らかであった.
    6. 概括安全度は10例とも “安全性に問題なし” であり, 本剤投与によると思われる副作用及び臨床検査値異常はみられなかった.
    7. E5に対する抗体 (HAMA) 陽性は10例中2例 (IgG抗体のみ上昇) で認められたが, 1例 (4mg/kg投与) は9週後で陰性化し, 他の1例 (1mg/kg投与) も次第に減少する傾向がみられた. 8. 有用以上の有用度は, 1mg/kg投与群で3例中3例 (100%), 2mg/kg投与群で4例中4例 (100%), 4mg/kg投与群で3例中2例 (66.7%) であった.
    9. 血中エンドトキシンの減少及び体温・白血球数・血小板数・CRPの改善度等を考慮し, E5の1回投与における至適用量は2mg/kgと考えられた.
    以上の成績より, E5はグラム陰性菌敗血症に由来するエンドトキシン血症に対し有用性が示唆された.
  • 小林 宏行, 河合 伸, 酒寄 享, 金子 正光, 伊藤 靖, 氏家 良人, 小林 謙二, 今泉 均, 星 秀逸, 遠藤 重厚, 元木 良一 ...
    1994 年 68 巻 1 号 p. 81-115
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    グラム陰性菌敗血症が推測される症例を対象に, 抗エンドトキシンモノクローナルIgM抗体E5 (エドバコマブ) の有効性, 安全性を検討した.
    合計88例の症例にE52mg/kgを1回点滴静注投与し, このうち臨床効果は74例, 概括安全度は85例, 有用度は75例をそれぞれ検討対象とした.また効果判定にあたっては, これら症例をE5投与前の血中エンドトキシン値から3群 (H群9.8pg/ml以上, M群3.0~9.8pg/ml, L群3.0pg/ml未満) に分けて行った.
    1.E5の投与による有効率はH群73.1%, M群70.4%, L群38.1%であり, 血中エンドトキシンが3.0pg/m1以上の群 (H群・M群) において3.0pg/ml未満の群 (L群) に比し統計学的に有意に高率であった.
    2.血中エンドトキシン有意例 (H群, M群) においては, E5投与後血中エンドトキシン値の速やかな減少が多くの場合みられた.
    3.E5投与前に異常値を示した主要検査項目につき, 投与前から7日後までそれぞれの平均値の推移で検討したところ, いずれの群においても体温, 脈拍数, TNF-α, IL-6の改善がみられた.その他H群・M群では血小板数, CRPの改善が, またH群においては白血球数も改善がみられた.
    4.ショックスコアの改善はいずれの症例群でもみられたが, とくにH群・M群において, E5投与後早期に有意であった.
    5.副作用は85例中5例 (5.9%) にみられ, その内訳は発疹, 全身廣痒感, 発熱, 発赤など, いずれもアレルギー性と考えられるものであった.
    なお, これら5例におけるE5投与前のプリックテストは陰性であった.このうち3例で投与前の抗E51gE抗体が測定されたが, いずれも対照健常人, E5投与無症状患者のそれより高く, 3例中1例では対照健常人に比して有意に高値であった.
    また, E5投与後2週間で47.6%の症例に抗E51gG抗体の上昇がみられた.
    6.臨床検査値異常は85例中3例 (3.5%) にみられ, それらはS-GOT上昇・S-GPT上昇・BUN低下, Al-P上昇・CH5。減少, 好中球 (%) の上昇であり, いずれも軽度であった.
    7.E5の有用性を75例で検討した結果, 有用以上の有用率はH群69.2%, M群66.7%, L群36.4%であり, L群に比し, H群及びM群で有意に高い成績が示された.
    8.E52mg/kg・1時間点滴静注時の血中濃度はsimulation curveより点滴終了時, 24時間後, 48時間後, 72時間後でそれぞれ18.05, 5.26, 1.53, 0.45μg/mlであり, in vitzoでLPS活性を抑制した0.2μg/ml以上の濃度を87.65時間にわたり持続した.
    以上, E52mg/kg点滴静注は敗血症に伴うエンドトキシン血症に対し, 血中エンドトキシン値の減少, 臨床症状, 主要検査項目等の改善など有効性が示され,“Risk-Benefit-Balance”を考慮して用いるとき, その有用性が十分に期待出来るものと考えられた.
  • 佐藤 隆志, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 西村 昌宏, 小六 幹夫, 松本 明, 宮下 修行, 郷路 勉, 生垣 舜二, 小六 義久, 南 ...
    1994 年 68 巻 1 号 p. 116-126
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    尿路性器C. trachomatis感染症を対象に, EIA法によるC. trachomatis抗体測定キットであるHITAZYME (日立化成工業), SERO IPALISA (サビョン社) の臨床的有用性をIPAzyme, micro-IFを混え検討した.
    1. C. trachomatis抗原陽性症例82例について活動性感染の指標と考えられるIgA陽性率を比較したところ, HITAZYMEおよびSERO IPALISAで測定されたIgA陽性率はIPAzyme, micro-IFよりも有意 (p<0.005) に高く, これらEIA法に基づくキットの有用性を示すものであった.
    2.HITAZYMEとSERO IPALISAの測定成績, 特にIgA検出能について比較したところ, HITAZYME陰性, SERO IPALISA陽性となる症例が142例と多く認められた.そこで, これらの中からランダムに抽出した39例に対して, HITAZYMEの使用抗原であるC. trachomatis L2株EB外膜 (COMC), SERO IPALISAの使用抗原であるL2株完全EBを用いたwestemblot法を行い, C. trachomatisに対する特異性を検討した.その結果, EB外膜 (qOMC), 完全EBともにHITAZYMEとwestern blot法との一致率がSERO IPALISAとwestern blot法との一致率よりも有意 (p<0.001) に高く, HITAZYMEはSEROIPALISAよりもC. trachomatisに対する特異性が高いことが示唆された.
    3. C. pneumoniae 抗体との交差反応性をみるために, C. pneumoniae TW-183株粗精完全EBを抗原としてIgAを対象にwesternblot法を行ったところ, C. trachomatis抗原が陰性で, かっHITAZYME陰性, SEROIPALISA陽性であった35症例中25例 (71.4%) がC. pneumoniae IgA 陽性であった.このことから, これら25症例ではC. pneurnoniae抗体との交差反応性のためにSERO IPALISAで陽性となった可能性が高いと考えられた.
    以上より, HITAZYMEはC. trachomatisに対する特異性も高く, 客観性に富み操作が簡単で多量の検体を処理できるなどの長所を持った優れたC. trachomatis抗体測定キットと考えられた.今後, 抗原検査の困難な症例のC. trachomatis感染の診断や, スクリーニングに広く使用されることが期待される.
  • 隆杉 正和
    1994 年 68 巻 1 号 p. 127-137
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    15ヵ月間にわたって急性気管支炎患者137症例についての病原診断および臨床的解析を行った.喀痰細菌定量培養および喀痰炎症細胞診が実施された99症例中58症例, 58.6%に起炎菌が決定された.起炎菌の内訳は, Haemophilus influenzaeが45.7%, 次いでStreptococcus pneumoniaeが27.1%, Branhamellacatarrhahsが17.2%で計90%になり, これらが3大起炎菌であった.
    本症での喀痰炎症細胞診ではマクロファージ, vividな好中球が多く, 線毛上皮細胞が見られ, 細胞残渣成分 (celldebris) が少ないことが慢性下気道感染性疾患との相違点であった.
    59症例に各種呼吸器病原性ウイルスとMycoplasma pneumoniaeについての特異抗体検査を実施し26症例 (44.1%) に有意な上昇をみた.
    45症例で治療前後で呼吸機能, 血液ガス検査を施行したが, PaO2, FEV1.0%等で有意な改善がみられた.
    1982年から8年間にわたる急性気管支炎の起炎菌の推移ではB.catarrhalisが次第に増加してきており, 2次的細菌感染は各年とも約半数前後の症例に認められた.
  • 大垣 憲隆
    1994 年 68 巻 1 号 p. 138-151
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    細菌のバイオフィルム形成が感染症難治化要因の1つと考え, 気道感染症における細菌バイオフィルムの臨床的意義を明らかにするため以下の実験を行った.
    まず, 難治性気道感染症患者の気道表面を顕微鏡的に観察し, 気道表面に粘着している細菌バイオフィルムを認めた. これら気道biofilm diseaseの多くは緑膿菌あるいは肺炎桿菌感染性びまん性汎細気管支炎と気管支拡張症であった. 次にマウス経気道的細菌接種実験では, パイオフィルム菌の場合, 気管支肺胞洗浄液中の細胞数は少なく, 好中球遊走はfloating菌の場合に比し弱かった. また, invitro実験で緑膿菌バイオフィルムと抗菌剤の相互作用を観察した. 緑膿菌バイオフィルムを2MBC濃度のciprofloxacin (CPFX) あるいは2MIC-10 MIC濃度のcefclidin, meropenemと接触させた場合, バイオフィルム菌の生存率はfloating菌のそれに比し有意に高く, 抗菌剤抵抗性であった. これら細菌バイオフィルムの対策について, clarithromycin (CAM) の細菌バイオフィルムに対する効果を観察した. CPFXにCAMを併用した場合, バイオフィルム菌の生存率はCPFX単独の場合に比し, 急激に減少した.すなわち, CAMはバイオフィルム菌の対策の1つの方法と考えられた。
  • 宮下 琢, 徳村 保昌, 西谷 肇, 杉山 肇, 山口 守道, 大谷津 功, 青木 ますみ, 斧 康雄, 亀井 喜世子, 澁谷 敏朗, 国井 ...
    1994 年 68 巻 1 号 p. 152-156
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We report a case of 40-year-old with chloroquine-and mefloquine-resistant Plasmodium falciparum. He had a single grand mal seizure 37 days following retreatment with qunine intravenously, which resulted in rapid clearance of fever and parasitemia, in addition to mefloquine. He had a long history of seizures, which were well controlled by phenytoin. Because he has never had such a seizure before and computerized tomographic scanning of the brain after admission showed no abnormal findings which caused convulsions, it seemed to be an adverse reaction caused by antimalarial drugs.
    It is possible that a double or triple combination treatment for the emergence of multiresistant falciparum malaria might more frequently produce severe side effects, such as psychiatric reactions and convulsions. This case suggests that physicians must have a long follow-up period for chronic toxicity of antimalarial drugs, especially after using drug combinations for falciparum malaria.
  • 太田 嘉英
    1994 年 68 巻 1 号 p. 157-162
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    智歯周囲の炎症より気道閉塞, 敗血症およびDICを継発したが, 救命できた2例を経験した.2例とも宿主因子となる重篤な基礎疾患はなく, 初期治療時に適切な抗菌剤の投与が行われなかったため重篤化したものと考えられた.2例とも膿汁よりS.milleriが検出されたが, 細菌学的に特殊な菌株とは考え難かった.しかし, 本菌は下気道感染や髄膜炎等だけでなくoral streptococciの混合感染が多い歯性感染症においても単独で感染を起こし得る菌株として重要な位置を占める.
    早期診断及び治療にご協力いただいた平塚歯科医師会副会長伊東明先生, 当院7C病棟 (東高子婦長, 当時), 救命救急センター (川瀬菊婦長) 看護婦諸姉に深謝いたします.
  • 辻本 正之, 北岡 健, 中上 由美子, 森本 淳詞, 笹岡 保典, 松本 宗明, 鎌田 喜太郎, 吉村 豊, 中山 章文, 本田 武司, ...
    1994 年 68 巻 1 号 p. 163-167
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A case of a 53 year old healthy female complaining of diarrhea and abdominal pain after taking raw fish is presented. She immediately went into shock and unconsciousness. Central venous pressure was 8 cmH2O and her ECG showed a first-degree AV block and ST-T changes in almost all leads. After mechanical ventilation and administration of dopamin, dobtamin, cefotiam, ciprofloxacin, she became alert and recovered from her critical condition.
    V. parahaemolyticus which produces thermostable direct hemolysin (TDH) was cultured from the feces on admission. Kanagawa phenomenon was positive.
    Arterial blood culture was negative and the titer of serum endotoxin was low. The diagnosis of cardiogenic shock due to exotoxin produced by V. parahaemolyticus was made.
    Serological examination by ELISA showed elevation of IgG class antibody against TDH and TRH (TDH related hemolysin). And antibody against TDH was normalized after 180 days.
    By review of literature, there are some case reports of cardiogenic shock complicated with V. parahaemolyticus infection, but few showed elevation of antibody against TDH and TRH in the serum of the survived patient.
  • 久保 信彦, 飯森 洋史, 金丸 峯雄, 進藤 俊幸, 大久保 周二, 中尾 稔, 宮本 健司, 荒島 康友, 川端 真人, 河野 均也
    1994 年 68 巻 1 号 p. 168-169
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
feedback
Top