グラム陰性菌敗血症が推測される症例を対象に, 抗エンドトキシンモノクローナルIgM抗体E5 (エドバコマブ) の有効性, 安全性を検討した.
合計88例の症例にE52mg/kgを1回点滴静注投与し, このうち臨床効果は74例, 概括安全度は85例, 有用度は75例をそれぞれ検討対象とした.また効果判定にあたっては, これら症例をE5投与前の血中エンドトキシン値から3群 (H群9.8pg/ml以上, M群3.0~9.8pg/ml, L群3.0pg/ml未満) に分けて行った.
1.E5の投与による有効率はH群73.1%, M群70.4%, L群38.1%であり, 血中エンドトキシンが3.0pg/m1以上の群 (H群・M群) において3.0pg/ml未満の群 (L群) に比し統計学的に有意に高率であった.
2.血中エンドトキシン有意例 (H群, M群) においては, E5投与後血中エンドトキシン値の速やかな減少が多くの場合みられた.
3.E5投与前に異常値を示した主要検査項目につき, 投与前から7日後までそれぞれの平均値の推移で検討したところ, いずれの群においても体温, 脈拍数, TNF-α, IL-6の改善がみられた.その他H群・M群では血小板数, CRPの改善が, またH群においては白血球数も改善がみられた.
4.ショックスコアの改善はいずれの症例群でもみられたが, とくにH群・M群において, E5投与後早期に有意であった.
5.副作用は85例中5例 (5.9%) にみられ, その内訳は発疹, 全身廣痒感, 発熱, 発赤など, いずれもアレルギー性と考えられるものであった.
なお, これら5例におけるE5投与前のプリックテストは陰性であった.このうち3例で投与前の抗E51gE抗体が測定されたが, いずれも対照健常人, E5投与無症状患者のそれより高く, 3例中1例では対照健常人に比して有意に高値であった.
また, E5投与後2週間で47.6%の症例に抗E51gG抗体の上昇がみられた.
6.臨床検査値異常は85例中3例 (3.5%) にみられ, それらはS-GOT上昇・S-GPT上昇・BUN低下, Al-P上昇・CH5。減少, 好中球 (%) の上昇であり, いずれも軽度であった.
7.E5の有用性を75例で検討した結果, 有用以上の有用率はH群69.2%, M群66.7%, L群36.4%であり, L群に比し, H群及びM群で有意に高い成績が示された.
8.E52mg/kg・1時間点滴静注時の血中濃度はsimulation curveより点滴終了時, 24時間後, 48時間後, 72時間後でそれぞれ18.05, 5.26, 1.53, 0.45μg/mlであり,
in vitzoでLPS活性を抑制した0.2μg/ml以上の濃度を87.65時間にわたり持続した.
以上, E52mg/kg点滴静注は敗血症に伴うエンドトキシン血症に対し, 血中エンドトキシン値の減少, 臨床症状, 主要検査項目等の改善など有効性が示され,“Risk-Benefit-Balance”を考慮して用いるとき, その有用性が十分に期待出来るものと考えられた.
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