感染症学雑誌
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68 巻, 10 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 小林 一寛, 田口 真澄, 勢戸 和子
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1203-1210
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サルモネラは急性胃腸炎や食中毒の主要な病原菌である.本菌を迅速, 正確に検出することは食品製造業や臨床検査室では大切なことである.本研究ではpolymerasechainreaction (PCR) 法によってサルモネラを検出するためにphosphate-limitation-inducibleoutermembraneporeprotein (PhoE) を制御するPhoE遺伝子からプライマーを作成して使用した.
    Selenite-Brilliant-Green (SBG) 培地増菌後の培地をChelex樹脂で抽出したDNAをtemplateとしてPCR法を実施すれば, 数個のサルモネラで陽性の結果が得られた.この高感度なPCR法では4QCで1~16カ月保存した糞便, 125検体から従来の培養法陽性, 62検体に比べて1.2倍 (73検体) が陽性であった.
    これらの結果から, 増菌培地のChelex抽出法を利用したPCR法 (E-Chx) は, 食品や環境等の多数の検体からサルモネラを検出するのに有用であると考える.
  • 濱田 朋子
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1211-1217
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新生児室において黄色ブドウ球菌, 特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (以下MRSA) の定着を防止することが, その後の黄色ブドウ球菌感染発症の防止に重要であると考え, 新生児室における看護手順の改善を行い1歳未満の新生児・乳幼児の黄色ブドウ球菌感染症の発症状況の変化を調査した.1期 (開院以来の看護手順で介助をおこなっていた時期) には13例の黄色ブドウ球菌感染症があり, 新生児室入室中の発症は6例 (6例ともMRSA) であった.MRSAは11例に検出され, コアグラーゼ型, 患者の出生時期より院内交差感染が疑われた.2期 (新生児室内の環境の清浄化, 医療従事者の手指消毒の徹底化, 沐浴法などの改善を行い新生児間の院内交差感染防止に努めた時期) には9例の黄色ブドウ球菌感染症があり, 新生児室入室中の発症は2例 (MRSA1例, メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (以下MSSA) 1例) であった.MRSAは5例に検出されたが院内交差感染とは考えにくかった.3期 (2期と同様の新生児介助を行い, さらに妊婦の鼻腔MRSA保菌の有無を検査し病棟へのMRSAの搬入防止に努めた時期) には妊婦よりMRSAは4例 (0.8%) に検出され, 妊婦による新生児室へのMRSAの持ち込みの可能性が明らかとなった.9例の黄色ブドウ球菌感染症があり, 新生児室入室中の発症は2例 (MSSA2例) であった.MRSAは2例に検出されたが, 家族内感染と考えられた.以上の結果から妊婦によるMRSAの搬入防止と, 院内交差感染の防止対策を充実させることによりMRSA感染症は減少させることが可能と思われた.
  • 神田 隆, 秋山 真人, 増田 裕行, 吉田 洋, 志賀 定祠, 萩原 敏且
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1218-1222
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児上気道炎患者 (2歳女児) の咽頭スワブからChlamydia pneumoniae (C.pneumoniae) が分離された.分離株はPCR産物からもC.pneumoniaeと同定された.
    分離株 (静岡-37株) のElementary body (EB) を電顕で観察した結果, 円形に近い形態を呈していた
  • 前田 光一, 喜多 英二, 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 森 啓, 坂本 正洋, 辻本 正之, 竹内 章治, 濱田 薫, 国松 幹 ...
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1223-1228
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ムチン様glycoproteinを産生するIshikawa細胞の培養系を用いて緑膿菌の温度感受性 (Ts) 変異株によるバイオフィルムモデルを作成し, エリスロマイシン (EM) のバイオフィルム形成抑制効果を検討した.本細胞培養系において緑膿菌Ts変異株は培養開始10日目で通常約40個/well前後のmicrocolony (バイオフィルム) を形成したが, EMは0.2μg/mlの濃度から細胞への菌付着およびバイオフィルム形成を抑制し得た.この系の培養上清中のglycoprotein量は1μg/ml以上のEM濃度で, またelastase, exoenzymeA量は2μg/ml以上のEM濃度で抑制された.以上から細胞培養系での緑膿菌によるバイオフィルム形成抑制効果がEMに存在することが示唆された.また菌体外酵素産生を抑制するEM濃度以下でバイオフィルム形成抑制およびIshikawa細胞からのglycoprotein産生抑制がみられたことから, EMのバイオフィルム抑制効果は細胞側因子への作用の関与がより大きいものと考えられた.
  • 藤田 晃三, 吉河 道人, 室野 晃一, 村井 貞子, 岸下 雅通, 山崎 伸二, 竹田 美文
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1229-1236
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981~90年に分離されたA群溶連菌670株について, 患者の背景と分離菌の性状を調べた.
    感染症の内訳は咽頭炎479, 狸紅熱133, 化膿性疾患35, 非化膿性合併症23で, 分離材料は咽頭スワブ655, 皮膚スワブや膿など15であった.発疹症を含めた咽頭炎の再燃は5.3%, 再発は13.4%の症例に認め, 再発エピソードの15.7%は同一のM血清型株によるものであった.発疹症に2回罹患した6例は, 2回目それぞれ前回と異なるM血清型株に感染し, その中4例は新たな型の毒素を産生する株に感染した.
    M血清型とT血清型の一致率は73.3%(同じT血清型を含む混合型まで入れると83.0%) であった.全体ではM12, 4, 1, 3, 28型の順に多く, M12, 4型が主流であったが, 年度によっては1, 3, 28型株の分離頻度が最も高かった.
    ペニシリン・セファロスポリン耐性株は認めず, erthromycin耐性株の分離率は1981年26.5%, 1982年18.4%であったが, 1983年以後激減し1986年以降0に近い.Chloramphenicol耐性もerythromycin耐性と同様で, tetracycline耐性株の分離率は60%から20%以下に年を追って減少した.
  • 小島 弘敬, 高井 計弘
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1237-1242
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    咽頭, 直腸からの淋菌, C.tnchomatisの検出は, 分離培養では偽陰性, 非培養検出法では偽陽性の誤った結果を呈しやすく正診率がひくく, これまで臨床的知見の蓄積が少ない.各種の非培養検出法の咽頭, 直腸スワブを検体としての偽陽性反応の出現率を検討した.Gen-Probe Pace2®のみが他の非培養検出法と異なって, 咽頭, 直腸スワブを検体とする淋菌, C.trachomatisの検出について偽陽性が認められなかった.
    Gen-Probe Pace2®による淋菌生殖器感染症患者の淋菌陽性率は男子咽頭29.4%, 女子咽頭33.3%, 男子直腸0%, 女子直腸46.7%, C.tmchomatis生殖器感染症患者のC.tmckomatis陽性率は男子咽頭3.9%, 女子咽頭10.5%, 男子真腸0%, 女子直腸53.3%であった.淋菌, C.trachomatisの女子直腸炎は頚管分泌物の汚染による直腸への感染拡大と考えられ, C.trachomatisの咽頭感染合併率は淋菌に比してひくく, C.tmchomatisの咽頭感染性は淋菌よりひくいと考えられた.
  • 小橋 吉博, 松島 敏春, 田野 吉彦, 木村 丹, 田辺 潤, 安達 倫文, 中村 淳一
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1243-1250
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    私共の呼吸器病棟内で1990年2月と1993年2月にピークを持つ, 2回のインフルエンザA2 (H3N2) の流行があった.入院患者におけるインフルエンザ様症状は, 1990年の流行では67例中42例 (63%), 1993年では56例中22例 (39%) に認められた.前者の流行では有症状者42例中25例 (60%), 後者の流行でも14例中6例 (43%) でインフルエンザ血清CF抗体価の上昇があり, 更に前者の流行ではA2抗体価の上昇のみであったのに対し, 後者の流行ではA2抗体価が2例, B抗体価が4例で上昇しており, A型とB型の混合感染であった.また, インフルエンザ様症状のなかった入院患者でも前者の流行では25例中3例 (12%) で血清抗体価が上昇していたのに対し, 後者の流行では8例中1例とほぼ同率であった.インフルエンザ感染を契機として67例中6例 (9%) に肺炎や慢性呼吸器疫患の急性増悪などの明らかな合併率が前者の流行ではみられたのに対し, 後者では56例中1例に肺炎の合併をみたのみであった.呼吸器病棟内でのインフルエンザの拡がりは, 前者の流行では各部屋にまんべんなく多発していたのに対し, 後者の流行では女性部屋に多発していた.
    以上, 2回のインフルエンザの病棟内流行において, 有症状者の頻度, 血清抗体価の上昇率, 流行したインフルエンザの型, 合併症の頻度等において差のあることが明らかであった.
  • 三輪 智恵子, 猿渡 正子
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1251-1255
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1993年1月から9月にかけ, 岐阜県でエコーウイルス11型 (E-11) の流行がおこった.86症例について疫学的・ウイルス学的に検討した結果, 以下の事が判明した.
    1.検査患者からのE-11の分離は, 1月から9月まで継続的に分離されたが, 最も患者が多く発生したのは7月であった.
    2.検体が採取された地域すべてからE-11は分離できたが, 西濃・飛騨地区から多く分離できた.
    3.E-11分離患者の年齢は, 0歳から10歳に分布していたが, 0歳が9人で全E-11分離患者の20.9%を占めていた.
    4.86症例中51症例 (59.3%) より5種類のウイルスが分離されたが, 43症例 (84-3%) よりE-11が分離された.
    5.E-11は種々の疾病患者から分離されたが最も多かったのは, 無菌性髄膜炎 (AM) の17名 (39.5%) であった.AMは3歳以上では高い頻度で発生した.
    6.交差中和試験で, 1971年E-11分離株及び1982年E-11分離株と1993年分離株との抗原性には, 大差が認められなかった.
  • 当科における最近3年間の検査成績
    山城 祐子, 比嘉 太, 小出 道夫, 我謝 道弘, 大湾 勤子, 稲留 潤, 川上 和義, 草野 展周, 普久原 浩, 橘川 桂三, 斎藤 ...
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1256-1263
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近3年問に全国の施設より検査依頼のあった症例を中心に当教室で行った間接蛍光抗体法によるレジオネラの血清抗体価の検査成績をまとめ, 主として血清学的にレジオネラ肺炎と診断された症例について検討を行った.
    臨床的にレジオネラ肺炎が疑われ, 血清診断を行った105症例中15例 (14.3%) が陽性を示し, そのうちの9例 (60.0%) の起炎菌がLegronella pneumophila serogroup-1であった.臨床像はこれまでの報告と矛盾しない結果であり, 治療はEMが有効であった症例が多くみられた.抗体価の有意の上昇は発症後3~4週目でみられる症例が殆どであり, 本症の血清診断を行う際に留意すべき点と考えられた.
  • 1978年12月から1993年3月の集計から
    古西 満, 澤木 政好, 三笠 桂一, 前田 光一, 森 啓, 寺本 正治, 坂本 正洋, 辻本 正之, 竹内 章治, 濱田 薫, 国松 幹 ...
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1264-1270
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年12月から1993年3月までに呼吸器感染症を疑い1,165例に経気管吸引法 (TTA) を施行し, 806例 (69.2%) から微生物を分離した.急性気管支炎ではH.inflnenzae (62株), Spneumoniae (39株), M.catarrkalis (24株) を多く分離し, 肺炎ではS.pneumoniae (65株), α-Stnptococcus sp. (52株), H.influenzae (32株), S.amns (29株) の頻度が高く, 慢性下気道感染症ではH.influenzae (174株), S.pneumoniae (84株), P.aemginosa (81株), M.catarrkalis (42株) を高頻度に分離した.嫌気性菌はpeptostreptococcus sp. (19株), Bacteroide ssp. (19株) などを分離した.マイコプラズマは肺炎症例8例でM.pneumoniaeを単独で検出した.ウイルスはRhinovirus (6株) などを分離した.
    呼吸器感染症には多くの微生物がその病態に関わっており, その実態の解明にはTTAなどの正確な診断方法を用いる必要がある.
  • 出口 松夫, 細坪 秀夫, 山下 順香, 大峰 利成, 浅利 誠志
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1271-1277
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Treponema pallidum hemagglutination (HA) 法はTreponema pallidum (T. pallidum) 抗体測定法の1つとして広く普及している.しかし, 最近になって新しい人工担体凝集法が開発され, 日常検査法として使用可能となりつつある.今回, 我々は血清中のT. pallidum抗体をゼラチン担体凝集法 [富士レビオ (株)] により測定し, 従来法であるHA法と比較した.
    安定性の検討より, 溶解後の試薬は少なくとも3週間は安定であった.また, 検体の不活性化 (56℃/30min) による測定値への影響は認められなかった.
    健常人および患者血清800例におけるHA法の判定値は132例 (16.6%) が陽性 (+), 633例 (79.1%) が陰性 (-), 34例 (4.3%) が判定保留 (±) であった.一方, PA法による判定値は144例 (18.0%) が陽性 (+), 627例 (78.4%) が陰性 (-), 29例 (3.6%) が判定保留 (±) と判定され, PA法とHA法の判定一致率は97.8%であった.また, この時の両測定法の抗体価は良好な相関性を示した.
    上記一致率の検討において判定不一致を示した試料についてはfluorescent treponemal antibodyabsorption (FTA-ABS) 法を実施したところ, FTA-ABS法による判定値はPA法の判定値と殆ど一致した.
    第1期および第II期梅毒患者における抗体価の推移をPA, HAおよびrapid plasma reagin (RPR) 法により測定したところ, PA法の抗体価はRPR法のそれと近似した動きを示した.すなわち, 梅毒初期感染におけるPA法の陽性化はHA法よりも早く, 治療による抗体価の推移も臨床経過を反映するものであった.
  • 峰松 俊夫, 細田 健治, 南嶋 洋一
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1278-1284
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サイトメガロウイルス (CMV) のp65抗原に対するヒトモノクローナル抗体 (C7) を用いた直接免疫ペルオキシダーゼ法により, 末梢血中のCMV抗原陽性白血球 (CMV抗原血症) を検出する方法を検討した.CMV抗原陽性白血球の算定を目的として, ペルオキシダーゼ (HRP) を標識したC7のF (ab') 2分画 (HRP-C7F (ab') 2) と, HRP標識Fab'分画 (HRP-C7Fab') を比較した結果, HRP-C7F (ab') 2はHRP-C7Fab'より試薬としてより安定であった.HRP-C7F (ab')、を用いたCMV抗原陽性白血球の算定法は, 再現性, 定量性ともに良好であり, CMV抗原陽性白血球の検出限界は白血球5万個あたり1個であった.このように, HRP-C7F (ab') 2を用いた直接免疫ペルオキシダービ法は, CMV抗原血症の検出法として信頼性と実用性に優れ, CMV感染症の早期診断および抗ウイルス療法の指針として有用である.
  • 入船 賢司, 下口 和矩, 石田 保, 賀来 満夫, 古賀 宏延, 河野 茂, 原 耕平
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1285-1286
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 佐治 守, 田口 桜子, 式田 竜司, 大国 寿士
    1994 年 68 巻 10 号 p. 1287-1289
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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