Treponema pallidum hemagglutination (HA) 法は
Treponema pallidum (
T. pallidum) 抗体測定法の1つとして広く普及している.しかし, 最近になって新しい人工担体凝集法が開発され, 日常検査法として使用可能となりつつある.今回, 我々は血清中の
T. pallidum抗体をゼラチン担体凝集法 [富士レビオ (株)] により測定し, 従来法であるHA法と比較した.
安定性の検討より, 溶解後の試薬は少なくとも3週間は安定であった.また, 検体の不活性化 (56℃/30min) による測定値への影響は認められなかった.
健常人および患者血清800例におけるHA法の判定値は132例 (16.6%) が陽性 (+), 633例 (79.1%) が陰性 (-), 34例 (4.3%) が判定保留 (±) であった.一方, PA法による判定値は144例 (18.0%) が陽性 (+), 627例 (78.4%) が陰性 (-), 29例 (3.6%) が判定保留 (±) と判定され, PA法とHA法の判定一致率は97.8%であった.また, この時の両測定法の抗体価は良好な相関性を示した.
上記一致率の検討において判定不一致を示した試料についてはfluorescent treponemal antibodyabsorption (FTA-ABS) 法を実施したところ, FTA-ABS法による判定値はPA法の判定値と殆ど一致した.
第1期および第II期梅毒患者における抗体価の推移をPA, HAおよびrapid plasma reagin (RPR) 法により測定したところ, PA法の抗体価はRPR法のそれと近似した動きを示した.すなわち, 梅毒初期感染におけるPA法の陽性化はHA法よりも早く, 治療による抗体価の推移も臨床経過を反映するものであった.
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