感染症学雑誌
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68 巻, 5 号
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  • 第2報: 慢性下気道感染症において
    竹内 章治, 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 前田 光一, 坂本 正洋, 辻本 正之, 濱田 薫, 国松 幹和, 成田 亘啓, 喜多 ...
    1994 年 68 巻 5 号 p. 595-600
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症18症例 (急性増悪期13例, 安定期5例) について化学療法施行前, 施行中, 施行後に化学発光 (chemiluminescence, 以下CL) 法による好中球機能を測定し, その推移について検討した.
    1) 化学療法施行前CLindexは安定期症例に比べ, 急性増悪期症例に高値を示す傾向はあったが有意差はみられなかった. CLindexと末梢血中好中球数 (N) との積 (CL-index・N) は急性増悪期症例で有意に高値を示した.
    2) 急性増悪期症例では化学療法施行前に比べ9症例で化学療法施行中にCL-indexの低下がみられた. CL-index・Nは10症例で化学療法施行前に高値を示し, 急性増悪の改善とともに低下した.
    3) 安定期症例ではCL-index, CLindex・Nとも化学療法による変動が小さかった.
  • 吉田 芳哉, 古屋 由美子, 片山 丘, 海保 郁男, 山本 正悟
    1994 年 68 巻 5 号 p. 601-606
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    つつが虫病の診断とRickettsia tsutsugamushi (R. tsutsugamushi) の型別のためにnested PCRを行った. PCRに用いたプライマーは, 56kDaのタンパク質をコードしている遺伝子の塩基配列から選択した. R. tsutsugamushi Gilliam, Karp, Kato, Kawasaki, Kuroki の5株はnestedPCRにより特異的DNAの検出と型別が可能であった. このプライマーを用いて, 1990年から1992年の間の神奈川県のつつが虫病患者血ぺいから抽出したDNAを鋳型として, 型特異的なDNAの検出を試みた. つつが虫病患者の60%はKawasaki型を示し, Karp型とKuroki型がそれぞれ20%ずつであった. その結果神奈川県でのつつが虫病の流行はKawasaki型が主流であると考えられた.
  • 黒木 俊郎, 渡辺 祐子, 浅井 良夫, 山井 志朗
    1994 年 68 巻 5 号 p. 607-611
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    酵素抗体法 (Gonozyme & reg;, Abbott Laboratories) による男子淋菌性尿道炎患者の診断における尿沈渣の有用性について検討した. キットに添付の緩衝液での尿沈渣の希釈率を検討したところ, 1: 4~6に希釈することが適当であった. これを検体としてGonozymeを実施し, 培養法と比較したところ, 感度は88.9~100%, 特異度は95.6%であった. 尿沈渣を5℃ で7日間保存し, Gonozymeによる吸光度の変化を調べたところ, わずかな減少が見られたものの変化は小さかった. 患者に対する苦痛がなく, また冷蔵保存した検体の検査も可能であり, 尿沈渣をGonozymeの検査材料として利用することは有用であると考えられる.
  • 山本 晋一郎, 二木 芳人, 副島 林造
    1994 年 68 巻 5 号 p. 612-616
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1975年から1991年までの16年間に剖検により確認された肝胆道膵疾患に合併した深在性真菌症25例について臨床的検討を行った.肝疾患20例, 胆嚢癌2例, 膵癌3例で, 男性20例, 女性5例平均年齢は61.2歳であった. 肝疾患の内訳は肝細胞癌12例, 肝硬変5例, 劇症肝炎2例, 結節性多発動脈炎1例であった.真菌の種類はカンジダ56%(14/25), アスペルギルス36%(9/25) の他クリプトコッカスが2例 (8%) みとめられた. 感染部位別では肺がもっとも多く8例 (32%) を占め, 食道6例 (24%) が次いで多く, 他に胃, リンパ節, 肝, 甲状腺, 胃, 胆嚢にも認められた。全身性真菌症は4例 (16%) にみられた. 真菌症が直接死亡原因となったものは5例あり, その内訳は肝硬変2例, 劇症肝炎1例, 胆嚢癌1例, 膵嚢胞腺癌1例であった. 5例のうち3例はアスペルギルス肺炎が直接死因となり, 2例はカンジダによる敗血症によるものであった. ステロイドは25例中13例 (52%) にまた抗癌剤は2例 (12%) に使用したが, いずれも使用していない例も9例 (36%) に真菌が検出された. 重症肝疾患においては真菌感染の危険性が高く, 予防的な抗真菌剤の投与も考慮される必要があるかもしれない.
  • 長崎労災病院における過去6年間の検討
    真崎 宏則, 井手 政利, 吉嶺 裕之, 持永 俊一, 川内 安二, 福田 勝行, 塚本 憲子, 山領 豪, 永武 毅, 松本 慶蔵
    1994 年 68 巻 5 号 p. 617-624
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    血液培養の臨床的意義を明確にするために分離菌の頻度と臨床的背景因子について検討した. 1984年1月から1989年12月の6年間に血液培養は2,219回施行され, 398回 (17.9%) が陽性であった. 血液培養陽性率は約18~20%でほぼ一定しており, 複数菌感染は数%であった. 血液分離菌は, グラム陽性菌の頻度が高く, Coagulase-negative staphylococciが常に1位を占めた. グラム陰性菌ではAcinetobacter calcoaceticusが脳神経外科で高頻度に分離され, 真菌はCandidaが10~20%分離された. 提出検体数は内科が62.9%と最も多く, 脳神経外科が22.8%であった. さらに血液培養陽性例188症例213エピソードについて臨床的解析を行った. 菌血症の発症は入院後24時間以内と1ヵ月以内にピークが存在した. 感染原発巣は尿路系が26.7%と最も多く, IVHカテーテルも重要な感染源であった.基礎疾患は急性脳血管障害, 心不全が多く, 合併症はdisseminated intravascular coagulationが24.4%あり半数にCNS, E. faecalis, MRSA等のグラム陽性菌が関与した. Multiple organ failureは8.9%に合併し, その68.4%にグラム陰性菌の関与がみられたが, CNS, MRSA等のグラム陽性菌および真菌の関与も注目された. 無効群では, E. faecalis, A. calcoaceticus, Candidaの分離頻度が高く, 呼吸器感染とIVHカテーテルは難治要因と考えられた. また低血圧, DIC, MOFの合併率は無効群で高く, 化学療法剤ではCNS, S. aureus, A. calcoaceticusにminocyclineの併用が有用と考えられた.
  • Shiba Kumar RAI, 久保 隆, 中西 守, 住 勝実, 柴田 宏, 松岡 瑛, Hari Govinda SHRESTHA
    1994 年 68 巻 5 号 p. 625-630
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ネパールにおいて土壌媒介性蠕虫の感染状況を8年間 (1985~1992) にわたり経年的に調査した. 調査はネパールトリブウァン教育病院の病理学教室寄生虫検査室により行われ, 毎年平均6,573件の糞便検体からの種々の腸内寄生虫を検出した. その結果, 土壌媒介性蠕虫全体の検出率は一様でなく, 18.0~36.6%の範囲で経年的に減少した. この傾向は性別に関係なく, 成人・小児両方に見られた. 検出された蠕虫の中では回虫 (roundworm) の検出率が最も高く, 続いて鉤虫, その他の順であった. 本調査期間を通じて回虫の検出率が一定であったのに対し, 他の寄生虫では検出率が低下するという注目すべき事実が認められた.
  • その検体採取法の検討を含めて
    山下 祐子, 河野 茂, 田中 研一, 岩本 雅典, 前崎 繁文, 橋本 敦郎, 朝野 和典, 古賀 宏延, 原 耕平, 菅原 和行, 賀来 ...
    1994 年 68 巻 5 号 p. 631-638
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症67例での嫌気性菌の分離に当たり, 呼吸器感染症における嫌気性菌の意義付けやその検出のための検体採取法について検討を行った. 疾患の種類は, 肺炎, 肺膿瘍, 膿胸, 気道感染症, 肺嚢胞および空洞内感染について検討した. 検体は, 気管支鏡による採疾, 経気管吸引, 経皮肺吸引, 気管切開や挿管チューブからのサクションチューブによる採疾, および胸水を用いた. 結果は, 疾患別の嫌気性菌検出率は膿胸が80%, 肺膿瘍が43%, 肺炎が15%(嚥下性肺炎では42%) であった. 検出された嫌気性菌は、Prevotella属, Fusobacterium属, Peptostreptococcus属が多く, 大部分が口腔内由来菌であった. 検体採取法は, 肺炎からは気管支鏡による採疾が有用であり, 肺膿瘍においても経皮肺吸引のみならず気管支鏡による採疾も有用であると思われた. 同一症例において検体採取法の違いにより分離菌の結果が異なることがあり, 適切な検体採取法の選択や検査結果の総合的な解釈などが必要と思われた.
  • Enterococcus faecalis感染症例を中心に
    熊本 悦明, 西村 昌宏, 広瀬 崇興, 守殿 貞夫, 荒川 創一, 熊澤 浄一, 松本 哲朗
    1994 年 68 巻 5 号 p. 639-653
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    SY5555の臨床効果をMIC breakpointの検討という立場から, 多施設による治験研究を行った.
    SY5555150mg×3/日および300mg×3/日, 7日間投与を中等度複雑性尿路感染症 (カテーテル留置のない症例) を対象に行い, 主として細菌学的効果 (除菌) を判定基準としつつ, MIC breakpointを検討した.
    その際, 本抗菌剤がEnterococcusヵecalisに対し抗菌力が強く, 臨床分離株に対するMIC80ガ1.56μg/mlであることが, 臨床的なE. faeaclis除菌効果でどの程度実証されるかについての分析も行った.
    1. 実験的検討
    中等度複雑性膀胱感染実験モデルを用いての検討では, SY5555150mg×3/日および300mg×3日投与のMIC breakpointはそれぞれ2μg/mlおよび8μg/mlと判断された.
    2. 臨床的検討
    SY55555 150mg×3/日, 7日間投与は6例, 300mg×3/日, 7日間投与は32例にて臨床効果の検討を行った.
    a) 臨床的MIC breakpointの検討では, 150mg×3/日投与, 300mg×3/日投与共に12.5μg/mlであった. しかし, 今回の検討症例数が少ないため, 全国的phaseIIstudyでの症例を合わせての多数例での検討では, それぞれ3.13μg/ml, 6.25μg/mlとなっており, 多数例での検討が上述の実験的MIC breakpointと一致していた.
    b) UTI薬効評価基準による有効率評価では有効以上が150mg×3/日投与群で5/6例, 300mg×3/日投与群で25/32例 (78.1%), 計30/38例 (78.9%) と全国的phase II study 82.0%と同様な成績であった.
    c) 分離されたE. faecalisは150mg×3/日投与群で4株 (すべてMIC 3.13μg/ml以下), 300mg投与群で18株 (すべてMIC6.25μg/ml以下) は全株菌消失をみた. また両群ともE. faecalisの治療後出現をみていない.
    3. 以上の中等度複雑性尿路感染症治療における検討より, 次のことが結論されると考えている.
    a) SY5555 300mg×3/日, 7日間治療の臨床的MICbreakpointは6.25~12.5μg/mlである.
    b) ことに, E. faecamlisに対するSY5555のMIC80が1.56μg/mlであることから推定されるように, 本剤のE. faecalisに対する除菌効果はかなり顕著である
  • 新宮 正久, 出口 雅経
    1994 年 68 巻 5 号 p. 654-655
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 第1編検出率の推移
    奥山 道子, 下山 洋子, 中島 邦夫
    1994 年 68 巻 5 号 p. 656-664
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    大阪市内1小学校の全校児童を対象に1980年9月~1992年11月までの12年間にわたり, 隔月毎に咽頭溶血レンサ球菌の検索を行った.
    被検者総数は11,647名であり, 検出した溶血レンサ球菌 (A, B, C, G群) は5,023株 (43.1%) であった.群別ではA群菌が2,395株 (20.6%) と最も多く, 次いでB群菌1,674株 (14.4%), G群菌767株 (6.6%), C群菌187株 (1.6%) の順であった.群別の検出率の推移をみると1980~84年まではA群が最多であったが, 1985年から約2年半はB群が優位になることが多く, その後はA群, 1991~1992年はB群がそれぞれ最多となり, B群菌を多く検出したことが注目された.
    A群の型別をみると, T-1型が最も多く, 638株 (26.6%), 次いでT-12型377株 (15.7%), T-6型210株 (8.8%), T-13型203株 (8.5%) の順であった. 年次別の最多分離菌型は1~2年毎に変遷したが, 1983~86年の4年間はT-1型が最多分離菌型となった.
    B群の型別をみると, 最も多く検出したのはIa型で524株 (31.3%), 続いてIII型417株 (24.9%), Ib型164株 (9.8%), III/R型130株 (7.8%), Ia/c型122株 (7.3%) の順であった. 年次別に最多分離菌型の推移を検討すると, 1988年までは概ねIa型, 1989~1990年はIII型, 1991~1992年はNT6という結果であった.
  • 第2編薬剤感受性
    奥山 道子, 下山 洋子, 中島 邦夫
    1994 年 68 巻 5 号 p. 665-679
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980年11月から1992年までの12年間にわたり, 大阪市内1小学校の学童咽頭より溶血レンサ球菌 (A, B, C, G群) の検出を行い, 得られた菌株の内の3,227株について薬剤感受性 (MIC) を測定した.
    1. Penicillin系, Cephem系薬剤については耐性菌は認めなかった. A, C, G群菌に比してB群菌では感受性が2~3管劣っていた.
    1980年11月から1992年までの12年間にわたり, 大阪市内1小学校の学童咽頭より溶血レンサ球菌 (A, B, C, G群) の検出を行い, 得られた菌株の内の3,227株について薬剤感受性 (MIC) を測定した.
    2. Macrolide系薬剤 (ML) に対してはMIC90は全群共感性城にあった. 耐性菌は1980~82年までは5.9~8.6%認めたが, その後漸減し1986年以降は殆ど検出されなかった. 群別ではA群菌に多く認め, B, G群にも若干認めた.
    3. Tetracycline系薬剤 (TC) のうちMINOに対しては耐性菌は少数であったが, TCに対してはこの12年間を通してA, B, C, G群すべてに耐性菌を認め, MIC90も耐性城にあった.
    4. Chloramphenicol (CP) に対しMIC90は全群とも感受性域にあったが, A, B, G群については1980~85年までに3.0~5.1%の耐性菌を認めた. しかし1986年以降は大幅に減少した.
    5. 1980~82年には多剤耐性菌を多く認めた. 特にA群にMLs, TC, CPの多剤耐性菌, TC, CP耐性菌などを多く認めた. 他にはB, G群についても多剤耐性菌を少数認めたが, 1986年以降は激減した.
    6. A群の多剤耐性菌の殆どはT-12型であり, B群ではIa, Ia/C, III, III/R型に認めた.
    7. TC耐性はA群T-13型に特に多く認め, 1980~86年には60%以上の耐性率を示したが, その後はやや減少した.
  • 滝沢 慶彦, 坂本 裕美子, 冨沢 功
    1994 年 68 巻 5 号 p. 680-685
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    9年間にわたって2ヵ所の幼児心身障害児施設において継続的に咽頭溶血レンサ球菌培養を行った. 咽頭培養は1回につき1施設の半数を対象とし年4~12回行った. 対象児はK施設におけるダウン症候群児, 精神発達遅延児など計244名とH施設における脳性麻痺児, その他脳脊髄性を含む肢体不自由児計134名である. 平均保菌率はK施設では11.1%, H施設では6.4%であり施設により差が認められた (p<0.05). K施設では0~43.5%の保菌率で冬期 (16.5%) に高く夏期 (6.6%) に低く推移していた (p<0.005). 87年 (T12), 88年 (T28), 90年 (T1), 9年 (T1) に同一菌型による流行がみられた. H施設ではK施設よりも明らかに低率で推移し冬期でもA群菌の保菌率の上昇は認められなかった. 疾患別では年齢の最も低いダウン症候群が12.6%(平均年齢2.7歳) と最も高く, 精神発達遅延児群では10.0%(同3.9歳), 脳性麻痺児との他の脳脊髄性運動麻痺群が6.4%(同3.3歳) であった. 同一菌型が2回以上分離されたのは2例のみであった.
  • 新井 秀雄, 柏木 義勝, 遠藤 美代子, 奥野 ルミ
    1994 年 68 巻 5 号 p. 686-690
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1992年度に分離された咽頭炎患者由来のA群連鎖球菌70株について, その培養上清中のヒトフィブリノーゲン結合活性を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合フィブリノーゲンを用いたDotblotassayで検出したところ, 63株に活性が認められた. 強い活性の見られた16株の結合活性はトリプシソ消化に感受性を示したが, いずれの菌株も完全には結合が消失することはなかった. 4型菌SS91株の濃縮培養上清について, SDS-PAGEとWesternblotで結合活性を調べたところ, 89K, 66K, 59K, 49K, 42KDaの濃い発色・ミンドと, 77K, 53K, 51K, 44KDaの薄いパンドが認められた. トリプシン消化後には, 42KDaのバンドのみが認められた.
  • 奥山 雄介, 井上 豊, 雨宮 一彦
    1994 年 68 巻 5 号 p. 691-697
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    大多数の新生児B群レンサ球菌 (group B Streptococcus: GBS) 感染症は, 主に分娩時における産道感染によることが知られている. そこで, 健常な女性の腔内GBSの年齢層における動態を調査する目的で, 幼稚園児, 小・中学生, 高校生, および20歳以上の成人女性を対象に, 尿中GBSの分離を行った. 各対象群の年齢層別の尿中のGBS分離率は, 幼稚園児3~5歳女子93人では12.5~18.2%, 男子90人では0~3.0%, 小学生 (1~6年) 6~11歳女子285人では6.4~25.3%, 男子319人では0~3.2%, 中学生 (1~3年) 12~14歳女子183人では11.8~19.1%, 男子233人では0~7.1%, 高校生 (1~3年) 15~17歳女子416人では16.4~23.7%, 男子114人では2.6~7.1%, 成人女性20~60歳85人では27.2~42.9%であった. 3~17歳の男756人と女977人との性別分離率は, 男2.2%に対し女17.5%であり, 明らかに女性のGBS分離率が有意に高率であった (p<0.01). 調査対象者1,818人の尿から分離されたGBSは220株 (12.1%), うち型別できたものは146株 (66.4%) であった. 各対象集団で最も高率に検査された菌型と菌型数は, 幼稚園児ではIa型とIb/c型, 他2菌型, 小学生ではIa型と他7菌型, 中学生ではIa/c型と他7菌型, 高校生ではNT/R型と他10菌型であった.
  • 勝川 千尋
    1994 年 68 巻 5 号 p. 698-705
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A群溶血レンサ球菌M3蛋白遺伝子のN末端の高度型特異領域からC未端の保存領域までの部分をPCR法を用いてクローニングを行った.
    各菌型に共通なN末端のリーダーシクエンス部分とC末端の保存領域部分をプライマーとして用い, 1465bpの遺伝子配列を決定し, 他のM蛋白遺伝子と比較検討した. その結果, N末端側の100塩基から750塩基の範囲にM3型特異的な領域を見いだすことができた. また, アミノ酸配列を検討したところ, 2つの繰り返し配列を見いだした (BリピートおよびCリピート). Cリピートは現在知られている他のM蛋白遺伝子の塩基配列と非常に高い相同性を示した. これに対して, BリピートはM12蛋白遺伝子のBリピート配列とのみ高い相同性を示し, また二次構造の解析結果でもこの2菌型は構造が類似していた. これらの結果よりM3蛋白とM12蛋白は遺伝学的に非常に近い蛋白であることが示唆された.
  • 勝川 千尋, 原田 七寛, 牧野 正直
    1994 年 68 巻 5 号 p. 706-711
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A群溶血レンサ球菌はM蛋白の抗原性の違いにより型別が実施されている.このM型別は熱塩酸抽出抗原とウサギ免疫血清との沈降反応によって行われるが, 免疫血清の作製は全菌によりウサギを免疫し, 他菌型との交差反応を吸収操作により除かねぽならず, 良好な血清が得にくいことからM型別の実施を困難なものとしている. そこでわれわれはA群溶血レンサ球菌M-12蛋白に対するモノクローナル抗体を作製し, これを用いた比較的手技の簡単なラテックス凝集反応による型別方法の開発を試みた.
    作製したM-12蛋白に特異的に反応するモノクローナル抗体は凝集反応および沈降反応で抗原と直接反応することはなかったが, ラテックス粒子に感作する事により型別用試薬として用いることができた. この試薬はごく微量の熱塩酸抽出抗原とも反応し, M蛋白産生量の少ない菌の型別も可能であった.
  • 保科 清, 小林 真澄, 鈴木 葉子
    1994 年 68 巻 5 号 p. 712-716
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新生児期のB群溶連菌 (GBS) 感染症を予防するためには, 妊婦保菌者を検出しなければならない. 検出方法は, より簡便で検出率の高い方法を検討していたが, 妊婦検診の際に採取される尿を用いて, 尿中の細菌を活性炭に吸着させることを考えた. 活性炭に吸着させて保存した場合, 101CFU/mlの菌量が4℃ から42℃ の温度設定で, 7日間保存可能であった.実際の臨床例で尿沈渣培養との比較を行ったところ, 活性炭吸着培養での検出率は26.2%, 尿沈渣培養での検出率は20.1%であった.
    妊婦のGBS保菌者検出には, 活性炭吸着培養が簡便で検出率も高く, 有用であることがわかった.
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