感染症学雑誌
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69 巻, 1 号
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  • 石川 清仁, 鈴木 恵三, 堀場 優樹, 加藤 忍, 伊従 茂, 四元 砂金, 安藤 慎一, 名出 頼男
    1995 年 69 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    平塚市民病院において1992年と1993年の2年間に, 入院患者より分離されたmethicillin-resistant Stapkylococcus aureus (MRSA) について疫学的検討をしたので, その成績を検討する.
    被検体は各科領域で入院中に分離された起炎菌と思われる株を30株ずつ選択して用いた.1992年と1993年との比較をすると, 抗生剤に対する感受性試験では, MINOとIPMのMIC80が3-13μg/mlから25μg/ml, 25μg/mlから200μg/mlと著明に低下した.また, VCMやABKなどMRSAに有用とされている薬剤も1~2管抗菌活性の低下がみられた.コアグラーゼ型別では, 1993年には全部II型に変化した.エンテロトキシン型別では, B/C型のbi-typeが検出される割合が増加した.toxic shock syndrometoxin-1 (TSST-1) 産生能では, 産生株24, 非産生株6から被検体30全株が産生株となった.Plasmid DNA profileは多種の型が見られるようになった.同一株の検出された場所, 時期, 患者の相互関係は殆ど認められなかった.
    僅か1年の問に薬剤感受性, トキシン産生能や型別, plasmid DNA profileの著明な変化が認められた結果より, MRSAに対抗すべき抗菌剤には改めて慎重な配慮が必要であることが示唆された.更にその発生には院内感染と表現するより院内汚染といった傾向が伺われ, 予防については再検討する必要があると思われた.
  • 久保田 利博, 藤岡 利生, 那須 勝
    1995 年 69 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriの胃粘膜細胞障害性を検討するために, モルモット遊離胃腺にH.pylori臨床分離株を反応させた.
    遊離胃腺にH.pyloriを加えた群 (H群), 尿素を加えた群 (U群), H.pyloriと尿素を同時に加えた群 (HU群), H.pyloriと尿素にさらにurease活性阻害剤であるacetohydroxamic acid (AHA) を加えた群 (HUA群), 何も加えず遊離胃腺のみの群 (コントロール) の5群に分け, それぞれを微好気条件下で37℃, 30分, 60分, 180分反応させた.HU群は培養上清中のアンモニア濃度の上昇, pHの上昇と, 細胞が崩壊し細胞内部より流出した培養上清中のLDHとGOT濃度の上昇が認められた.AHA群はurease活性の阻害により, アンモニア濃度及びpHの上昇が有意に抑制され (P<0.001), LDH, GOT濃度の上昇が有意に抑制された (p<0.001~0.01).光顕・電顕による形態的な観察により, HU群では有意な細胞の空胞化と細胞表面への菌の付着を認めた.これらの結果は, H.pyloriの持つurease活性によって尿素より産生されたアンモニアが, 遊離胃腺の細胞障害性を引き起こす重要な要素であることを示唆する.
  • 足本 敦, 浜田 驕, 足立 昭子, 谷川 孝彦, 田中 吉紀
    1995 年 69 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    鳥取大学医学部附属病院病棟の床, 器具よりStaphylococcus spp.の分離を試み, 合計274株の分離株のうち29株がS. aureusで, S. aureusの41.4%がメチシリン耐性 (MRSA) であった.12株のMRSAはまたMPIPC, CZX, ABPC, CLMにも耐性であった.CNSの中にもメチシリン耐性 (MR) のS. epidermidis, S. capitis, S. warneri, S. haemolyticus, S. hominis, S. auricuhlris, S.saprophyticus, S. cohniiなどが分離された.
    PCRおよびSouthern blot分析でfem AはMRSAおよびMSSAにみられたが, CNSには認められなかった.mecAはMRS AとMR-S.epidermidisにみられ, MR-S. hominisの2株のうち1株に見られた.MSSA, MS-CNSには認められなかった.MR-S. hominisの1株とS.haemolyticusの2株のDNAにはmec Aが検出できなかった.原因について考察を試みたが, いずれにしても病棟環境中にMR-Staphylococousが存在することを考えると, 院内感染に十分な注意が必要である.
  • 松永 貞一, 長谷川 美奈子, 龍野 国弘, 大眉 寿々子, 川満 幸子, 村崎 義紀, 笹本 和広, 西谷 潔, 猿田 克年, 飯倉 洋治 ...
    1995 年 69 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒノキチオールの黄色ブドウ球菌にたいする抗菌力について検討した.また対照としてその抗菌力の主成分としてヒノキチオールを含む青森ヒバ油と青森ヒバ水についてもその抗菌力を検討した.ヒノキチオールのMRSAに対するMICは15~125μg/mlでMSSAに対するそれは125μg/mlであった.しかし奇妙なことにヒノキチオールの濃度を1.87~0.94μg/mlと更に希釈するとMRSAは再び発育を阻止される傾向を示した (Table1, Fig.1).同様の結果はディスク法でも認められた (Fig.3).青森ヒバ水でもヒノキチオールと同様の結果が観察された.我々はヒノキチオールがダブルゾーン現象を呈する強い抗菌力を黄色ブドウ球菌に対し示す事を確認した.またこの抗菌力はMSSAよりはMRSAにおいて一層顕著にあらわれることを認めた.
  • 村瀬 忠
    1995 年 69 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    造血器障害患者の顆粒球減少期におけるnew quinolone剤の細菌感染症併発予防効果を検討する目的でciprofloxacin (CPFX) を試験薬としてtrimethoprim-sulfamethoxazole (ST) 単独とCPFX+ST併用との無作為比較試験を行った.その結果, ST単独群では24例中17例 (70.8%) に, CPFX+ST併用群では29例中9例 (31.0%) に38℃ 以上の発熱を認め, CPFX+ST併用群で有意 (p<0.005) に優れた予防効果を認めた.ST単独では最少顆粒球数が250/μl以上の症例においては有効 (5例/5例) であったが, 250/μl以下の症例ではほとんど感染予防効果は認められなかった (2例/19例).一方, CPFX+ST併用では最少顆粒球数にかかわらず有効であった.また, 両群とも臨床上問題となるような副作用は出現しなかった.以上の結果より, new quinolone剤であるciprofloxacinとST合剤との併用投与は造血器障害患者の顆粒球減少期における感染予防に有効で, 特に, 急性白血病の症例等の最少顆粒球値の低い症例でその効果が顕著であると考えられた.
  • Lomefloxacin 100mgと300mgの比較検討
    広瀬 崇興, 熊本 悦明, 酒井 茂, 島村 昭吾, 山崎 清仁, 渋谷 秋彦, 梅原 次男, 三宅 正文, 高塚 慶次, 青木 正治, 門 ...
    1995 年 69 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    女子急性単純性膀胱炎は抗菌化学療法に比較的反応し易い.特にニューキノロン薬は血中半減期が長く, 膀胱炎起炎菌に対して抗菌力が強く女子急性単純性膀胱炎に対する1回のみの単回療法用の抗菌薬として適している.その中でもlomefloxacin (LFLX) は血中半減期が長く, 単回投与により尿中有効薬剤濃度が約3日間も維持される.そこで今回, 女子急性単純性膀胱炎に対してLFLX100mgまたは300mgの単回投与を行い臨床効果を比較検討した.臨床効果 (有効率) は, 3日目では100mg投与i群98.2%(56/57), 300mg投与群100%(62/62) であった.7日目までの臨床効果は100mg投与群91.3%(42/46), 300mg投与群95.8%(46/48) であった.また菌消失率は, 3日目では100mg投与群73.7%(42/57), 300mg投与群75.8%(47/62), 7日目では100mg投与群71.7%(33/46), 300mg投与群83.3%(40/48) であった.いずれの判定日にも両群問に有意差はないものの300mg投与群の方が若干良好な成績であった.担当医の判断などにより効果不十分と判定された12例のうち, 6例に対して泌尿器科学的精査を行ったところ, 4例に尿道口狭窄などの軽度の難治性因子をみつけることができた.以上より, 女子急性単純性膀胱炎に対するLFLX単回療法は100mgでも十分な臨床効果を認めるが, 300mgの方がより良好であった.また, 効果不十分例を精査することにより軽度の難治性因子を発見する契機にもなり得ることが考えられた.
  • Lomefloxacin 100mgと300mgによる検討
    広瀬 崇興, 熊本 悦明, 酒井 茂, 島村 昭吾, 渋谷 秋彦, 山崎 清仁, 梅原 次男, 三宅 正文, 高塚 慶次, 青木 正治, 門 ...
    1995 年 69 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    女子急性単純性膀胱炎は抗菌化学療法に比較的容易に反応して短期間で治癒するが, 繰り返し発症しやすいことが問題である.しかし, 一度罹患した患者の長期経過観察を行った報告はみられない.そこで今回ニューキノロン薬により単回療法を行った症例に対してアンケート調査を主体に行い, 平均242日間の長期観察, すなわち治療後の自然経過の調査を行った.排尿痛, 膿尿 (≧10WBCs/hpf), 細菌尿 (≧104cfu/ml) を有する女子急性単純性膀胱炎に対し, 10mefloxacin100mgまたは300mgによる単回療法を行い, 3日目と7日目に治療効果を判定した.原則的に7日目に治癒判定を行い, その7日後 (治療14日目) までの早期再発の検査をした.その後は平均242日後までの晩期再発をアンケートにより調査を行い, 臨床所見の確認を可能な限り行った.自然経過観察は3日目の臨床効果が有効以上の101例について可能であった.KaplanMeier法により再発率の経過をみると, 270日以上では100mg投与群47例で23.4%, 300mg投与群54例で11.1%, 計16.5%の再発率であり, 300mg投与群の方が再発は起こりにくい成績であったが有意差はなかった.したがって, 女子急性単純性膀胱炎の治療後の自然経過としては約9カ月で約17%が再発を起こしている事が考えられた.
  • 第3報: 全血・好中球Chemiluminescence同時測定例において
    竹内 章治, 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 前田 光一, 寺本 正治, 森 啓, 坂本 正洋, 辻本 正之, 濱田 薫, 国松 幹 ...
    1995 年 69 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性呼吸器感染症12症例 (肺炎7例, 慢性下気道感染症急性増悪期4例, 急性気管支炎1例) について抗菌化学療法開始前後に全血・好中球化学発光 (chemiluminescence, 以下CL) 法による好中球機能を測定, その推移を検討した.
    1) 抗菌化学療法開始前, 全血CL, 好中球CLはいずれも高値を示し, 開始後に低下したが, 開始前全血CLのほうが好中球CLより高値を示し, 抗菌化学療法開始前後も大きな変化を示した.
    2) 好中球CLindexと全血CLindexとの間に相関はみられなかったが, 好中球CLindexと末梢血中好中球数 (N) との積である好中球CL-index・Nと全血CLindexとの間で相関がみられた.全血CL, 好中球CLを用いて好中球機能を検討する場合好中球数が重要な因子となると考えられた.
  • 全身性カンジダ症に対する感染防御効果およびマクロファージ機能への作用
    藤田 英之, 増田 博俊, 中島 常隆, 中江 孝, 成田 祐士, 矢田 考治, 渡辺 正弘, 鍵谷 昌男
    1995 年 69 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    humanMacrophageColony-StimulatingFactor (hM-CSF) の真菌感染症に対する作用を検討するため, 正常マウスまたはcyclophosphamide投与により易感染状態としたマウスで全身性カンジダ症モデルを作製し, hM-CSF単独またはFluconazoleとの併用により検討を行った. さらにその作用機序を探る一端として組織化学的検索, マクロファージの貧食能に対する作用およびNBT還元能について検討した.
    その結果, hM-CSFは正常マウスまたは易感染状態のマウスでの全身1生カンジダ症に対し感染防御作用を示し, Fluconazoleとの併用によりhM-CSFの感染防御効果は亢進した. また, hM-CSFはマウス網内系細胞を活性化し, マクロファージの貧食能およびNBT還元能を亢進させた.
    以上の結果より, hM-CSFはマウスのマクロファージ系細胞を賦活化し, 低濃度の抗真菌剤との併用により真菌感染モデルに対し防御効果のあることが示された.
  • 西條 政幸, 山本 美智雄, 西條 晴美, 滝本 昌俊
    1995 年 69 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    乳児のrespiratory syncytial virus (RSV) 感染症は時に重篤化し致死的である. 私たちは生後3ヵ月以内の (以下, 幼若) 乳児のRSV感染症の特徴を把握するため, 1993年4月から1994年3月までの1年間に気道感染症状を主訴に受診した65人の幼若乳児について, 外来受診時鼻咽腔液中RSV抗原を酵素免疫測定法で検索した. 65人中17人 (26%) がRSV感染症で, 春と冬に流行したが, 夏にも認められた. RSV感染症患者17人中14人 (82%) が細気管支炎や肺炎に罹患したのに対し, 非RSV感染症患者48人中3人 (6%) のみが下気道感染症を起こした。幼若乳児のRSV感染症は上気道炎で済むことは少なく, 多くは細気管支炎や肺炎に至ると考えられる.
  • 高山 直秀
    1995 年 69 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日本では昭和32年以降狂犬病の国内発生は1件もなく, 輸入例も昭和45年の1例のみであるが, 海外ではなお多くの地域で狂犬病の発生をみている. 海外で狂犬病危険動物に咬まれ, 曝露後免疫のため当院を受診した29名について検討した. 受傷地はタイ, 受傷部位は下肢, 加害動物はイヌが最も多かった. 受傷地で発病予防を受けた被害者群と受けなかった被害者群はほぼ同数であったが, アジア・アフリカ地域で被害を受けた人では約76%が狂犬病ワクチンないし狂犬病免疫グロブリンの注射を受けていた. 海外旅行者ないし出張者は増加しており, 今後外国で狂犬病危険動物に咬まれる被害者の増加, さらには輸入狂犬病の発生が予測されるので, 医療側の受け入れ体制を整備する必要があろう.
  • 小出 道夫, 斎藤 厚, 伊志嶺 朝彦, 山城 祐子, 比嘉 太, 普久原 浩, 川上 和義, 草野 展周
    1995 年 69 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日本各地のクーリングタワー水から分離し保存していたLegionella pneumopkila serogroup 4;5株, L. pneumopkila serogroup 5;7株, L. pneumopma UT;7株, Legionella like organisms (LLO);15株をMahbubani (1990) の報告したmipプライマーおよびStarnbach (1989) の報告したLEGプライマーを用いてPCRをおこなった.
    mipプライマーではL. pneumopkila serogroup 4, L. pneumopkila serogroup 5, L. pneumophila UTはすべて陽性で, LLOも15株中11株が陽性であった. LEGプライマーではそれぞれ2株, 6株, 5株および8株が陽性であった.
    LEGプライマーで陽性の株はmipプライマーでもすべて陽性であったが, mipプライマーで陽性の株の中にはLEGプライマーで陰性になる株 (30株中9株) もあったので, 臨床検体における検索にはmipプライマーを用いるべきであると思われた.
  • 塚本 定三, 河合 高生
    1995 年 69 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸管病原性大腸菌 (EPEC) の持っ病原因子の一つであるeae遺伝子の検出を下痢症患者から分離した大腸菌について行い, HeLa細胞への局在性付着およびEAFプラスミッド, 血清型との関連性を調べた. 大腸菌1,104株のうち144株 (13.0%) からeae遺伝子を検出した. このうち93株 (8.4%) は局在性付着を示す大腸菌でEAFプラスミッドを保有しており, そのうちの79株 (7.2%) はEPEC・14株 (1.3%) はEPEC以外の大腸菌であった.また, 5株 (0.5%) は局在性付着が弱くEAFプラスミッドを保有しておらず, 46株 (4.2%) は局在性付着もみられず, EAFプラスミッドも保有していなかった.
    局在性付着を示すEPECの主な血清型はO55: H-, O86: H34, O111: H2, O119: H6, O128: H2であり, EPEC以外の大腸菌は088: H25が多い. eae遺伝子が検出されたが, 局在性付着の全く示さない株の血清型はO26: H-, O55: H-, O101: H-が多かった.
    局在性付着を示すEPECは下痢症との関連が強いと言われるが, EPEC以外の大腸菌も下痢原性が疑われる. eae遺伝子を保有しているが局在性付着を示さないものの一部にはEAFプラスミッドが脱落したとも考えられる. しかし, eae遺伝子そのものについても類似のものが多く存在するため, 局在性付着のないeae遺伝子保有株の腸管病原性については今後の研究が必要である.
  • 佐藤 明正, 大石 英明, 阪下 哲司
    1995 年 69 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    両性界面活性剤アルキルジアミノエチルグリシン (ニッサンアノン#300®, ADGと略記) の結核菌に対する殺菌効果を高める目的で, ADGにエタノールを添加した溶液 (Et-ADGと略記) を調製し殺菌効果を検討した.
    培養結核菌をADGの100倍希釈溶液 (1/100ADG) で1分間および10分間処理した場合, その生存菌数はそれぞれ500cfu/0.1mlおよび25cfu/0.1mlであった. 一方, エタノールを23v/v%添加した溶液 (23%Et-1/100ADG) では各々7cfu/0.1mlおよびOcfu/0.1mlとなった.
    喀痰中の結核菌に対しては, ADGの50倍希釈溶液 (1/50ADG) およびエタノールを23v/v%添加した溶液 (23%Et-1/50ADG) を用いてその殺菌効果を比較した. この場合においてもADGの殺菌効果はエタノール添加で高まった.
    30%Et-1/50ADGおよび1/50ADGで処理した結核菌の形態を走査電子顕微鏡を用いて観察した. 両者に菌体の粘着化・融解化が観察されたが, その程度は前者でより強かった.
    ADGの殺菌作用は結核菌を粘着化・融解化させて発育不能に導くことにあると推察されたが, ADGへのエタノール添加はその作用を高めることが観察された.
  • 伊保谷 憲子
    1995 年 69 巻 1 号 p. 98-104
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腎移植患者より経時的に採取した末梢血白血球と尿を用いて, polymerase chain reaction (PCR), shellvial法, 及びウイルス分離によりhuman cytomegalovirus (HCMV) の検出を試みたところ, 18例中11例から検出された. 今回用いたPCR法はshell vial法に比較して, より長期間HCMVを検出することができ検出感度が高いと思われた. しかしHCMVの検出された11例中3例のみ, HCMV感染症状が認められ, 他は無症状に経過した. 発症した症例は, PCR法でのHCMV検出が頻回であった. 更に, 末梢血白血球から抽出したDNAをテンプレートとし, PCRの反復回数を変更する検討を行った. その結果, major immediate early (MIE) 領域を増幅するプライマーを用いたとき, 発症した3例全例の急性期と3例中2例の2日前, および1日前の検体からは, PCRの反復回数を減少させ検出感度を下げてもHCMVを検出し得た. 一方, 発症前, ganciclovir治療後, 及び非発症例検体は, 少ない反復回数ではHCMVは検出されなかった. PCRの1反応系に用いる検体量を一定にすることにより, このように簡易な, PCRの反復回数の変更によりHCMVの検出された患者の中で発症例と非発症例を区別できる可能性が示唆された.
  • 高瀬 登美子, 河野 茂, 七種 道男, 藤井 毅, 坂田 慎吾, 石野 徹, 大坪 孝和, 岩本 雅典, 井上 祐一, 賀来 満夫, 古賀 ...
    1995 年 69 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1986年から1993年までの8年間における, 当院の呼吸器由来の検体からの分離菌の動向を検討した. 8年間の総検体数は18,345であり, その中で一定の菌量 (1+もしくは105CFU/ml以上) が分離された検体数は8,648であった. 8年間の累計で最も多く分離された菌はEnterobacteriacae, Pseudomonas aer-uginosa, Hemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae, glucose nonfermenting gram-negativerods (GNF-GNR) であった. しかし, H. influenzae は1986年の20.9%から1993年の10.2%に減少した. 一方, PaerugiNosaは1986年の11.5%から1993年の16.3%に増加した. 外来では, S. pneumoniaeH. influenzae で約半数を占め, ついでEnterobacteriacae やP. aeruginosa, methicillin sensitive Staphylococcusaureus (MSSA) が多く分離された. 病棟では, Enterobacteriacae やP. aeruginosa が多く, methicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA) や /β-Streptococcus, Candida spp. もそれに次いで多く検出された. Enterobacteriacae の内訳では, Klebsiella pneumoniae, Serratia marcescens, Proteus mirabilis が約60%を占めた.老人病棟では, Streptococcus agalactiaeSerratia rnarcescens, Corynebacteriurn spp. 等も増加した. 塵肺患者では, 外来の主要な分離菌と同様に S. pneumoniaeH. influenzae が多く, これらは特に冬期に多く検出された.
  • 渡辺 豊彦
    1995 年 69 巻 1 号 p. 114-122
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    共焦点レーザー走査顕微鏡 (CLSM) は, 試料内の焦点面からのみの蛍光を抽出して画像化することにより, 任意の深さでの光学的断層像を得ることが可能である. modified Robbins deviceを用いて, silicon disk表面に形成させた緑膿菌バイオフィルムを, CLSMを用いることにより, 水分を含んだ生の状態で観察することが可能であった.
    菌体とmatrixの染め分けを試みるため, 種々の蛍光色素を用いて検討したところ, 菌体の染色にはacridine orangeおよびsafranine, matrixの染色にはFITC標識ConA (FITC-ConA) が優れていた. また, 菌体およびmatrixの染色性におけるpHの効果に関し検討したところ, pHの変化が色素の荷電, 菌体表層の弱い陰性荷電, およびmatrix全体の強い陰性荷電に影響し, 最終的に菌体, およびmatrix全体の染色性を変化させていると考えられた.
    さらに, safranine, FITG-ConAの蛍光波長の違いを利用し, 菌体とmatrixの染め分けと2重染色について検討したが, matrixの陰性荷電がより強調されるpH9.5の条件下ではほぼ満足すべき2重染色が得られたことより, 今後, 立体的なcelldensityの解析にも応用可能であると考えられた.
    以上の成績よりCLSMはバイオフィルムの新しい解析法の一つとして極めて有用であると考えられた.
  • 小林 寅哲, 長谷川 美幸, 藤岡 利生, 那須 勝
    1995 年 69 巻 1 号 p. 123-124
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 69 巻 1 号 p. 125a
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 69 巻 1 号 p. 125b
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/09/07
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