腸管病原性大腸菌 (EPEC) の持っ病原因子の一つである
eae遺伝子の検出を下痢症患者から分離した大腸菌について行い, HeLa細胞への局在性付着およびEAFプラスミッド, 血清型との関連性を調べた. 大腸菌1,104株のうち144株 (13.0%) から
eae遺伝子を検出した. このうち93株 (8.4%) は局在性付着を示す大腸菌でEAFプラスミッドを保有しており, そのうちの79株 (7.2%) はEPEC・14株 (1.3%) はEPEC以外の大腸菌であった.また, 5株 (0.5%) は局在性付着が弱くEAFプラスミッドを保有しておらず, 46株 (4.2%) は局在性付着もみられず, EAFプラスミッドも保有していなかった.
局在性付着を示すEPECの主な血清型はO55: H-, O86: H34, O111: H2, O119: H6, O128: H2であり, EPEC以外の大腸菌は088: H25が多い.
eae遺伝子が検出されたが, 局在性付着の全く示さない株の血清型はO26: H-, O55: H-, O101: H-が多かった.
局在性付着を示すEPECは下痢症との関連が強いと言われるが, EPEC以外の大腸菌も下痢原性が疑われる.
eae遺伝子を保有しているが局在性付着を示さないものの一部にはEAFプラスミッドが脱落したとも考えられる. しかし,
eae遺伝子そのものについても類似のものが多く存在するため, 局在性付着のない
eae遺伝子保有株の腸管病原性については今後の研究が必要である.
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