感染症学雑誌
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69 巻, 10 号
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  • 池田 紀男
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1093-1102
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1991年から1993年までに臨床材料より分離した肺炎球菌のうち, oxacillin (MPIPC) ディスク1μgに対して阻止円直径が19mm以下を示した66株を対象とし, 血清型別と薬剤感受性についての検討を行い, 合わせて微量液体希釈法とディスク拡散法との比較を行った.さらに菌型分布においては, MPIPCディスクの阻止円直径が20mm以上を示した32株も追加し調査を行い, 以下の結果を得た.
    1) 肺炎球菌98株は6種類の抗血清で約70%が型別可能となり, ペニシリン感受性肺炎球菌 (PSSP) は3型20.6%, 19型15.9%, 6型14.3%, 18型9.5%, 14型7.9%, 4型1%の順で多く, ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (PISP) およびペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) では19型60%, 18型8.6%であった. PISP/PRSPにおいては19型が過半数を占め, PSSPと明らかに分布が異なった.
    2) MPIPCディスクによるスクリーニング法とbenzylpenicillin (PCG) のminimum inhibitory concentration (MIC) を比較すると, MPIPCに耐性を示した66株のうち, PSSPが31株 (47%) 認められた.
    3) PISP/PRSPのMICはcefaclor (CCL), cefazolin (CEZ), cefotiam (CTM), cefotaxime (CTX), imipenem (IPM), minocyclin (MINO) およびerythromycin (EM) がPSSPより耐性側に傾いていたが, clindamycin (CLDM) とofloxacin (OFLX) では差は認められなかった.
    4) 3型はすべてがムコイド状集落を形成し, MINOに耐性, EM, CLDMには高度耐性を示した.
    ) NCCLSにより微量液体希釈法とディスク拡散法の薬剤感受性カテゴリーがともに定まっているCCL, EM, OFLXでの完全一致率はそれぞれ75.8%, 92.4%, 86.4%となった.
  • 葛谷 光隆, 藤井 理津志, 濱野 雅子, 森 忠繁
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1103-1109
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    野ネズミ等のRicrettsia tsutsugamushi保有調査に, ポリメラーゼ連鎖反応法 (PCR法) が応用可能か検討した.
    R.tsutsugamushiの群共通抗原をコードする遺伝子をターゲットとしたPCR法を本試験に用いた. PCR法は標準株 (Karp株, Kato株及びGilliam株) 及び組織培養馴化野外分離株 (KN-1株及びGJ-1株) のいずれをも検出でき, その検出限界はリケッチア粒子1.3個であった.また, 野外分離リケッチア株を12頭のマウスに実験感染させ, 経時的にPCR法による検出を行ったところ, 4カ月経過後でも2頭中1頭からリケッチアDNAが検出できた.
    さらに岡山県内5カ所で55頭の野ネズミ等を捕獲し, PCR法によるR.tsutsugamushi DNAの検出と, マウス接種法 (MI法) によるリケッチア分離を同時に行った.その結果, MI法でリケッチアが分離された13頭中12頭から, 分離されなかった42頭中10頭からPCR法でリケッチアDNAが検出され, 本法が野ネズミ等のR.tsutsugamushi保有調査に応用できることがわかった.またPCR法の検出結果から, 岡山県中部が他の地域に比べ, 高率 (44~81%) にリケッチアの汚染を受けていることが明らかとなった.
  • 第6報患者発生数と気象要素との関連
    粕谷 志郎
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1110-1117
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1982年から1992年までの11年間の岐阜地方の恙虫病患者発生数と気象要素の関連を回帰分析した結果, 5月11日から7月31日の各日の最低気温の算術平均値 (j) と, 11月の各日の最高気温の算術平均値 (v) がそれぞれ独立に, その年の初冬の患者発生数と高い相関を示すことが明らかになった (それぞれR2=0.689, 0.560).そこで二つのパラメーターから以下の患者発生数の予測式を考案して適用したところ, 1993年まで非常に高い確度で実際数と一致した.
    N= {e (j-17.6) +2.3 (v-13)}・j・v/156 (予測式1)
    ただし, Nは初冬の患者発生予測数, e=2.718.. (自然対数の底)
    一方, 初冬の患者発生数はjの5次函数
    N=22.524656384j5-2218.23705j4+87272.992j3-1714734.329j2+16825634.235j-65963810.254 (予測式2)
    とも高い相関があることが見出された (R2=0.930).以上より, 初夏の温度条件はその年の初冬の慈虫病の流行に大きな影響を与える気象要素であるとの結論に至った.
  • 若井 公子, 船田 一夫, 中嶋 隆, 金澤 勝次, 原 善彦, 田中 伸久, 安部 理, 大月 邦夫
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1118-1125
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年から1994年にかけて群馬県内各地で野鼠を捕獲し, Rickettsia tsutsugamushi (R. tsutsugamuski) の媒介となるツツガムシの種類, 生息状況及びR.tsutsugamushiの侵淫状況並びに患者血清抗体を調査した.その結果, R.tsutsugamushiが広範囲に存在することが明らかになった.野鼠に寄生していたツツガムシは, 4属12種に分類され, つつが虫病の媒介種とされるフトゲツツガムシLeptotrombidium pallidum及びタテツツガムシLeptotrombidium scutellareが約15%を占めていた.患者の発生は, 本県北西部で10~12月に集中していたが, 他の地域及び時期にも少なからずみられた.また, 患者から得られた血清の約半数は, Karp型抗体を有していた.
    これらの結果から, 本県におけるつつが虫病は, 血清学的にKarp型が多く, 県内の広い範囲で本疾患感染の危険性のあることが示唆された.
  • 高橋 雄彦, 蔡 哲, 戸田 眞佐子, 原 征彦, 島村 忠勝
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1126-1134
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    チャ・エキスやcatechinが, methicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対して抗菌・殺菌作用を示すことを, われわれは既に報告した.今回, 単独では抗菌・殺菌作用を示さない濃度のoxacillinが, MIC未満のcatechinとの併用により抗菌・殺菌作用を示すことを見い出した.臨床分離20株について, われわれの変法 (cup法) により抗菌テストを行ったところ, MIC未満のcatechin (25~100μg/ml) を寒天平板に添加した場合, すべてのMRSAに対してoxacillinの抗菌作用が出現し, そのMICは5~20μg/mlであった.catechin無添加では, oxacillin40μg/mlでも抗菌作用は認められなかった.次に, 生菌数カウント法で, catechinとoxacillinを同時に加えた時のMRSAに対する殺菌作用を経時的に観察した.oxacillin (5μg/ml) 単独では殺菌作用は認められず, 無添加controlと同じ増殖曲線を示したが, catechin (100μg/ml) を同時に加えると, 24時間後の生菌数は1/1000~1/10,000に減少した.
    さらに, MRSAが耐性である各種抗生物質の抗菌作用出現に及ぼすcatechinの影響についてcup法で検討した.その結果, catechin (100μg/ml) 存在下でmethicillin; 12.5μg/ml, aminobenzylpenicil-lin;32μg/ml, tetracycline; 2.5μg/ml, chloramphenicol; 12.5μg/mlで, MRSAに対する抗菌作用が出現した.
    この結果catechinとoxacillinとの組合わせで, catechinはMRSAに対するoxacillinの抗菌・殺菌作用を出現させることが判明した.
  • 要藤 裕孝, 工藤 亨, 長谷山 圭司, 千葉 峻三, 松永 泰子, 山崎 修道
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1135-1140
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトパルボウイルスB19抗体の測定は, 効率的な細胞培養系がなく血清診断用の抗原の供給が限られていることから, 普遍的には行われていないのが現状である.近年, 大腸菌発現抗原に続き, バキュロウイルス発現抗原を用いたEIAが開発されてきた.今回, バキュロウイルス発現抗原を用いたEIAと従来用いられてきたウイルス血症由来のB19抗原を用いたEIAを比較し, さらにPCR法によるDNA検出との相関について検討を行った.PCR法にてB19DNAを認めた伝染性紅斑患者37名の血清について, バキュロウイルス発現抗原を用いたEIAにて, IgMは36名陽性, 1名はIndexが0.99で判定保留であった.IgGはすべて陽性であった.遺伝性球状赤血球症および鉄欠乏性貧血のAplasticcrisis患者4名のB191gMは, すべて陽性であった.バキュロウイルス発現抗原を用いたEIAは臨床検体のB19抗体測定について, ウイルス血症由来のB19抗原を用いたEIAと感受性, 特異性ともほぼ一致しており十分に実用的であり, またPCR法との一致率も高く, B19診断に有用であると考えられた.
  • 山本 俊信, 鈴木 幹三, 山腰 雅宏, 山本 俊幸
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1141-1150
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1985年から1994年までの10年間に名古屋市厚生院で経験した70歳以上の高齢者敗血症112例, 125エピソード (平均83.8±7.5歳) について, 臨床的解析を中心に検討した.
    1) 高齢者敗血症患者の背景は, 全例が基礎疾患を有し,「寝たきり」72.8%, 尿路カテーテル留置51.2%, 中心静脈カテーテル留置48.8%, 抗菌薬の投与40.8%を認めた.
    2) 分離菌はEscherichia coli 21.2%, Staphylococcus aureus 18.4%, Coagulase-negative staphylococci (CNS) 17.4%, Candida albicans 6.1%などの順であった.年次的にはグラム陽性球菌の増加とグラム陰性桿菌の減少を認めた.加齢に伴いMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), E.coli, 複数菌感染の頻度は増加し, CNsおよびE.coliを除くグラム陰性桿菌の頻度は減少した.
    3) 原因となった原発感染巣は尿路系24.8%, 中心静脈カテーテル21.6%の順であり, 31.2%は不明であった.
    4) 主な臨床所見は38.0℃ 以上の発熱88.0%, 頻脈60-8%, 悪寒戦陳44.0%, チアノーゼ32.8%であった.
    5) 合併症としてmultiple organ failure (MOF) 33.6%, 敗血症性ショック26.4%, disseminated intravascular coagulation (DIC) 22.4%を認めた.
    6) 予後の検討では65.6%は生存し, 34.4%は死亡した.死亡群では生存群に比し, 発症時の体重, 血圧, 血清アルブミン, 総コレステロール値は有意に低く, 心拍数, GOT, LDH, BUNは有意に高値を示した.
  • 島越 由紀子
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1151-1158
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ウイルスに対する消毒薬の効果判定方法として, 乾燥固定したウイルス感染細胞を用いたMicro-Carrier-Testを考案した.ヒト免疫不全ウイルス1型に感染したMolt44を96穴平底マイクロタイタープレートのウエル底に室温で120分間乾燥固定し消毒薬を作用させた後, PBSで洗浄し, 非感染のMolt-4を加え4週間培養した.1週間毎に培養上清を回収しnon-RI RT assayで逆転写酵素活性を測定した.またcytotoxicity assayで残存する消毒薬の細胞毒性を検討した.この新しい方法を評価するため既存の消毒薬の効果を再検討した.濃度, 時間依存性の効果が認められ, 5分間での最低有効濃度は, 20%エタノール, 0.01%グルタルアルデヒド, 0.1%次亜塩素酸ナトリウムであった.これは, これまでの報告と一部違いがあったので, 今回とこれまでの方法についてその違いを検討した.このMicro-Carrier-Testは消毒薬の効果判定の一つのスクリーニング法として有効であると考える.
  • 高津 真由美, 奈田 俊, 山本 秀子, 一山 智
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1159-1161
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Acanthamoeba keratitis occurs mainly in contact lens users. We experienced a patient with Acathamoeba keratitis after operation for cataract. A 70-year-old male, who suffered from suppurative keratitis with impairment of visual acuity and eye pain in the left eye after the operation, was admitted to our hospital. After admission he received treatment with oral and topical antibiotics without any improvement. Neither bacterial or fungal pathogens was detected from corenal skrappings. Blue stained Acanthamoeba cysts were detected with the Parker ink KOH preparation from punctured fluid of the anterior chamber of the eye. Acanthamoeba cysts were also cultured on a nonnurient agar plate with Escherichia coli. Then he was treated with oral and topical miconazole and topical fluconazole. His visual acuity did not improve because of the lag of appropriate treatment. Therefore, attention must be paid for the existence of Acanthamoeba keratitis after ophthalmologic operations.
  • 沢村 治樹, 加藤 直樹, 渡辺 邦友, 沢 赫代, 木田 恆, 佐治 重豊, 上野 一恵
    1995 年 69 巻 10 号 p. 1162-1163
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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