近年輪入事例が大半を占めるようになった細菌性赤痢の菌学的, 疫学的特徴を把握するため, 東京において1980年以降輸入及び国内事例から分離された赤痢菌を対象に, その菌種・血清型並びに薬剤耐性の面から検討し, 1980年~1989年の10年間の成績についてはすでに本誌に報告した.本報では, それ以降1990年から1994年の最近5年間の検討成績について報告する.輸入事例より分離された336株 (輸入事例由来株) と海外とは直接関連が認められていない都内での分離株110株 (国内事例由来株) における菌種別検出頻度は, 両由来株とも
Shigella sonneiが最も高く, 次いで
S. flexneriであった.
S. boydiiと
S. dysenteriaeはそれぞれ11株と5株検出されたが, 各1株を除きすべて輸入事例由来であった.各菌種における血清型は, 輸入事例由来株が国内事例由来株に比して多彩であった.この5年間には, 新血清型として提案されている赤痢菌が8例の輸入事例と2例の国内事例より分離された.
CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLXの9種薬剤について実施した耐性試験では, 輸入事例由来株で82.7%, 国内事例由来株で89.1%が耐性であった.薬剤別では, 両由来株ともSM, TC, STに対する耐性率が高かった.その耐性パターンは, 全体で21種認められたが, 両由来株ともTC・SM・STの3剤耐性を示すものが最も高頻度であった.なお, FOMとNFLXに対する耐性株は全く認められなかった.
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