感染症学雑誌
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69 巻, 7 号
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  • とくにTNF活性との関連について
    河合 伸, 酒寄 享, 小林 宏行
    1995 年 69 巻 7 号 p. 765-771
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    SIRSにおける臓器障害におよぼすIL-10の意義を明確にする事を目的としてTNFとの関連の上で臨床的および実験的検討を行った.
    SIRS症例においては血中TNF (n=43), IL10 (n=33) とも, 健常人のTNF (n=12), IL. 10 (n=9) に比し高値が示された (p〈0.01). またSIRS症例おける臓器障害を伴う群は伴わない群に比しTNF, IL-10とも有意に増加していた (p<0.01). 病態の極期と回復期でTNF, IL-10を測定し得た7症例におけるTNFとIL-10は前者で高値を示すものが多く, またすべての症例で回復期には減少あるいは正常化が示された.
    実験的にマウスにLPS (4mg/kg) 投与した結果, 血中TNFおよびIL-10は, ともに2時間をピークとして増加した. このうち血中TNFは6時間後には検出限界以下にあったが, IL-10はこの時点でも血中に残存することが示された. LPS投与後のマウス血中およびBALF中のTNF濃度はIL-10の前処置により血中では抑制傾向 (p<0.1) が, またBALF中では有意な抑制が示された (p<0.05).さらにマウス肺胞マクロファージからのTNF産生はLPSの負荷により有意に増加したが, これらはIL-10前処置により減少することが示された (p<0.01).
    以上の結果から, IL-10はTNF産生に対して.
  • 中澤 宗生, 伊藤 健一郎
    1995 年 69 巻 7 号 p. 772-776
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ウシ由来ベロ毒素産生性大腸菌 (VTEC) の下痢原性を幼若ウサギ感染モデルを用いて検討した. VTEC4株とnon-VTEC3株の109個を生後6日齢のウサギに経口投与した. その結果, VT+, eaeA+の3株, VT+, eaeA-の1株およびVT-, eaeA+の1株は菌投与48-60時間後に下痢を惹起したが, VT-, eaeA-の2株は全く下痢をおこさなかった. 以上の成績から, 6日齢の幼若ウサギはウシ由来のVTECおよびeaeA陽性大腸菌の下痢原性を解明するための有用な感染モデルであると考えられた.
  • 吉岡 郁子, 橋本 寛子, 湯田 皓二, 根住 直史, 井上 真由美, 石井 克尚, 斎藤 隆晴, 酒井 章, 小迫 芳正
    1995 年 69 巻 7 号 p. 777-784
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁閉鎖不全症の62歳の女性が1週間の発熱, 肉眼的血尿, 貧血および結膜出血斑のため入院し, 超音波心臓図法の所見から感染性心内膜炎と診断された. この患者の抗生物質投与前に, 2種類の培地の培養瓶各1本を組み合わせて, 5組10本の血液培養瓶のすべてからグラム陰性桿菌を分離し, Haemophilus aphrophilusと同定した.
    患者はbenzylpenicillin (PCG) 1,200万単位/dayの投与で翌日には菌が検出されなくなったが, CRPの高値と僧帽弁疣贅が消失しないため, 分離菌株が感受性を示したampicillin (ABPC) を当初12g/day 3日間, その後6g/dayを4週間投与されて全身状態は軽快し入院55日後に退院した.
    患者血液由来菌は全て血液培養瓶の沈澱血球層の上に顆粒状に発育し, 分離した5菌株はX因子およびV因子を要求せず, 通常の好気環境下でドリガルスキー改良培地, ヒツジ血液寒天培地およびチョコレート寒天培地に発育し, 48時間培養ではS型で直径1.0mm程度のコロニーとR型で直径0.5mm程度のコロニーを生じ, 非運動性でオキシダーゼ反応陽性, 硝酸塩を亜酸塩に還元した. Phenol red broth (Difco) およびCystine-trypticase-agar (CTA) medium (BBL) でグルコース, ラクトース, スクロースを発酵して酸を産生したが, マンニトール, キシロースは陰性であった. コロニー性状がS型, R型と異なっても生化学性状はすべて同じであった. これらの性状より, Haemophilus aphrophilusと同定した. IDテストHN20ラピッド, VITEK® NHI Identification Cardでは同定できなかった. 感受性の結果は菌株によって相違がみられ, ABPC, セファロスポリン系薬剤には感受性であったが, PCGには9株が感受性 (S) で, 1株が中間 (I) であった.
  • 橋戸 円, 井上 栄, 川名 尚
    1995 年 69 巻 7 号 p. 785-789
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス (HSV) 感染細胞抗原を用いたELISAで, 性器ヘルペス患者血清抗体のHSVに対する型特異性を検討した. あらかじめ型特異蛋白であるgG-1とgG-2を抗原としたイムノドットにより, 1) HSV-1が分離され, かつgG-1抗体のみが単独陽性の群 (25例;1型群と呼ぶ), 2) HSV-2が分離され, gG-2抗体のみ単独陽性の群 (19例;2型群), 3) HSV-2が分離され, gG-1およびgG-2抗体とも陽性の群 (19例;両型群), の3群に分類した63例の血清について, HSV-1とHSV-2感染細胞抗原に対するIgM, IgA, IgG1, IgG3抗体の値 (吸光度) をそれぞれ比較検討した. 3群の血清のIgG抗体の反応性は2グループに大別された. すなわち, 2型群血清はHSV-1とHSV-2感染細胞抗原にほぼ同程度に反応した. それに対して, 1型群および両型群の血清はいずれもHSV-2感染細胞抗原よりもHSV-1感染細胞抗原に強く反応した. IgM抗体の型特異性は明瞭でなかった. 両型群に属する血清のIgG抗体がHSV-1感染細胞抗原の方に強く反応した理由としては, 過去に感染したHSV-1に対するメモリーB細胞が交差反応抗原であるHSV-2によって活性化されたためと考えられた (抗原原罪現象). 血清中の抗体から感染したHSVの型を推定することは, 感染細胞抗原を用いるELISAでは難しいことが確認された.
  • 第1報: 起炎菌分布について
    熊澤 浄一, 松本 哲朗
    1995 年 69 巻 7 号 p. 790-796
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1993年8月および9月に全国190施設の個人開業医院および73施設の病院泌尿器科において主治医により尿路感染症と診断された65歳以上の高齢者1,699例を対象として, その分離菌と患者背景との関係について調査した.
    ウリカルト菌数が104/ml以上を細菌尿と判定すると, 1,699例より1,233例から1,636株が分離された. 全体ではE. coliが30%と最も高頻度であったが, 男性およびより高齢となるに従いE. coliの分離率が低くなり, それに代わりP. aeruginosaをはじめとするNFGNR等の弱毒性グラム陰性桿菌の分離率が増加した. この傾向は単純性UTIs分離菌のみの集計でも同様であった. 自覚症状の程度と分離菌の関係では, 自覚症状が強いほどE. coliの分離頃度が高く, 弱いほどE. coli以外の菌種の分離頻度が高くなった.
    以上より, 高齢者UTIsの難治化要因のひとつとして, 各種抗菌薬に感受性の低い日和見病原菌の分離頻度が高いと言った菌側因子も重要であることが確認された. 従って, 高齢者尿路感染症は, 一見単純性と判断される症例でも分離菌種より判断すると, 複雑性尿路感染症に準じた抗菌薬の選択が必要である思われる. これは, より高齢患者, 初期治療無効例, 自覚症状の乏しい症例で特に重要であり, 開業医院や病院等の医療機関の規模に拘わらず考慮しなければならないと考えられた.
  • 第2報: 経口抗菌薬に対する起炎菌の感受性について
    熊澤 淨一, 松本 哲朗
    1995 年 69 巻 7 号 p. 797-810
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1993年8月および9月に全国190施設の個人開業医院および73施設の病院泌尿器科において主治医により尿路感染症と診断された65歳以上の高齢者1,699例よりの分離菌を対象に経口抗菌薬のMICを測定し, 主要分離菌の薬剤感受性および患者背景と感受性の関係等について種々の検討した.
    今回MICを測定した全菌株 (1,511株) に対して, CPFX, OFLX, NFLX, CPDX, CCLの順で抗菌力が強く, CEPsに比べNQLsが優れた抗菌力を示した. この傾向は由来患者の年齢, 尿路における基礎疾患やカテーテル留置の有無等の背景にかかわらず同様であった.
    より高齢者, 単純性に比し複雑性, カテーテル非留置例に比し留置例および前投与抗菌薬無効例由来株は低感受性を示しており, それらの背景を持った症例が難治化する要因のひとつとして低感受性株の分離頻度が高いことが重要であることが示唆された. その代表的な菌種がP. aeruginosaで, 今回検討した薬剤の中で最も優れた抗菌力を示したCPFXでも約半数の株が耐性であった. また, MRSAの分離頻度でも43.9%に認められた. これらの耐性株は, 病院だけでなく開業医院でもほぼ同様であった. 以上より, 高齢者UTIsの難治化要因のひとつとして, 原因菌の各種抗菌薬に対する感受性が低いと言った菌側因子も重要であることが確認された. また, 現状における経口抗菌薬として抗菌力の面からはCEPsよりNQLsが適していると思われる.
  • 長谷川 美幸, 小林 寅哲, 雑賀 威, 西田 実
    1995 年 69 巻 7 号 p. 811-817
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    各種の臨床材料 (血液, 尿, 膿, 喀痰, 便) より分離された59株のPseudomonas aeruginosaのlipopolysaccharide (LPS) をSDS-PAGE法で分析し, 各菌株のLPS構成と分離された臨床材料, 薬剤感受性およびserotypeとの関連性について検討した.
    試験菌株59株をLPS構成の相違により3群に分類した. 試験株のうち, 35株は長鎖 (B-band) LPS保有株, 14株は短鎖 (A-band) LPS保有株で, 残り10株はLPS欠損株であった. 血液由来株13株のうち12株 (92%) は長鎖LPS保有株であった. 尿および便由来株は長鎖LPS保有株が67%, 喀痰由来株にはLPS欠損株が42%と高率に認められた.
    長鎖LPS株35株のうちgentamicin感受性株は19株 (54%), 耐性株は12株 (34%) となった. 短鎖LPS株14株では, 感受性株, 耐性株, および中間的な感受性株が均等に検出された. しかしLPSが欠損する10株では7株は耐性であった.
    長鎖LPS保有株35株のserotypeはA, B, C, E, GおよびH型のいずれかに分類された. 短鎖LPS保有株14株のうち12株はM型, 2株はnon-typableに分類され, LPS欠損株10株ではnon-typable 8株およびM型2株であった.
    P. aeruginosa臨床分離株の長鎖LPS, 短鎖LPSおよびLPS欠損株の分離頃度は臨床材料によって異なり, 菌のLPS構成とgentamicin感受性およびserotypeとの問には関連性が認められた.
  • 隔日処方の臨床的有効性について
    吉川 博子, 青木 信樹, 薄田 芳丸, 和田 光一, 荒川 正昭
    1995 年 69 巻 7 号 p. 818-825
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Sparfloxacinは, 既存のニューキノロンの中で抗酸菌に対して, 最も強い抗菌力を有しており, 抗酸菌症の治療薬として期待されてきている. 今回, 私達は他の抗結核薬が副作用のため使用できず, SPFXを用いて治療したところ良好な治療結果が得られた2症例を経験した. その後の検討でSPFXの良好な抗菌力, 体内動態を考慮して, 高齢者の抗酸菌症の患者に対して, SPFX 200mg隔日処方により治療した. 同時に血中濃度を週1回測定したところSPFX服用12時間後, 36時間後とも, 有効かつ安全な血中濃度を示した. 治療結果も良好で, 最高4カ月にわたって治療しても副作用も認められなかった. 副作用を防ぎ, 安全かつ有効に抗酸菌症を治療するうえで, SPFX隔日処方は有効な治療法であると思われた.
  • 木田 中, 鈴木 荘介, 田口 文章
    1995 年 69 巻 7 号 p. 826-834
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    コレラ菌と大腸菌に対する金属EDTA化合物の発育抑制効果を検討した. 試験した化合物の中で, Fe-EDTAのみが大腸菌に対してpH依存の増殖抑制を示したが, コレラ菌の発育は全く抑制しなかった. 選択的抑制剤としてFe-EDTAを添加することにより, 他のグラム陰性樟菌からコレラ菌を選択的に分離培養するための新しい増菌培地VCFbrothを開発した. VCFbrothのコレラ菌に対する増菌能と大腸菌に対する選択的抑制能は, アルカリペプトン水のそれよりも顕著であった.
    VCF brothを用いて6時間の増菌とPolymerasechain reactionによって, 目的とするctxのDNA断片を増幅して, コレラ菌を迅速に検出するための簡単な方法を検討し提示した. VCFbrothは, 細菌検査におけるコレラ菌の選択的増菌のための有用な培地と考えられる.
  • 中村 敦, 山田 保夫, 児島 康浩, 山腰 雅宏, 川上 誠, 竹山 慎二, 山本 俊信, 武内 俊彦, 林 嘉光
    1995 年 69 巻 7 号 p. 835-839
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A case of myelodysplastic syndrome (MDS) complicated by septic pulmonary embolism is reported. A 61-year-old female who had been followed for refractory anemia with excess of blasts suddenly died of acute respiratory failure. An autopsy revealed massive pulmonary emboli with gram-positive cocci gathered in the emboli and alveolar spaces. Stsaphylococcus aureus was also detected through a blood culture from the right atrium.
    We speculate that pulmonary embolism was the result of septicemia induced by the immunosuppressive condition associated with MDS.
  • 山内 勇人, 曽我 進司, 河野 秀久, 近藤 俊文, 佐山 浩二, 丹下 宜紀, 藤田 繁
    1995 年 69 巻 7 号 p. 840-843
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We report a case of tsutsugamushi disease found in south western Shikoku. A 64-year-old male who lived in Towa Village in Kochi, developed a fever and headache on April 6, 1994, and was admitted to Uwajima City Hospital on April 15, with a ten-day history of illness. He had an eschar on the right anterior side of the breast and an enlargement of the right axillar lymph node, without a rash. Laboratory data showed mild liver injury and atypical lymphocytes with 6% in peripheral blood. After his blood was drawn for rickettsial isolation, the minocycline was administered. His symptoms improved rapidly and was discharged in good condition.
    We successfully isolated the causative agent, Rickettsia tsutsugamushi, and designated it as the Shiba strain. High antibody titer against the Kato, Karp and Gilliam strains was detected in serum on admission and increased during the course of the disease.
    In Shikoku, tsutsugamushi disease is rare and only 13 cases were reported during last ten years. Especially in south western district of Shikoku, there have been no case reported since 1960. This case is important epidemiologically and suggests that we should pay attention to this disease.
  • 諸岡 達也, 叉野 浩美, 山口 覚, 柴田 昌彦
    1995 年 69 巻 7 号 p. 844-845
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 多田 宜文
    1995 年 69 巻 7 号 p. 846-847
    発行日: 1995/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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