感染症学雑誌
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70 巻, 12 号
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  • 1996 年 70 巻 12 号 p. 1203-1219
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 岳 漢軍, 牛島 廣治
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1220-1226
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    AV244Monと82b, AV-15GrとAV-12Gr, BegとEndの3種のプライマーセットを用いた逆転写一遺伝子増幅法により, 細胞培養由来の標準アイトロウイルス (1型から7型) および病理菌陰性・ロタウイルス陰性・腸管アデノウイルス陰性の89の下痢便からアストロウイルスの検出を試みた.AVMonと82bおよびAV-15GrとAV-12Grではすべての標準株と2下痢便でアストロウイルスが検出できた.BegとEndでは4型を除き検出可能であった.またBegとEndでは1, 2, 3, 5, 7型は同じ分子サイズであったが6型はそれより小さかった.AV244Monと82b領域, BegとEndの領域の遺伝子配列はそれぞれ型特有であった.これらのことから逆転写一遺伝子増幅法および遺伝子解析はアストロウイルスの検出と遺伝子型の決定に有用であると思われた.
  • 只野 敬子, 新垣 正夫, 斎藤 香彦, 高橋 正樹, 甲斐 明美, 柳川 義勢, 伊藤 武, 太田 建爾, 工藤 泰雄
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1227-1233
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    わが国で分離されたC.jejuniのニューキノロン薬に対する耐性頻度を明らかにするために, 1989年から1994年の6年間に, 散発下痢症患者から分離されたC.jejuniの600株を対象に薬剤感受性試, 験を行った.供試薬剤は, norfloxacin (NFLX), oHoxacin (OFLX), ciproHoxacin (CPFX) の3種のニューキノロン薬とnalidixic acid (NA), erythromycin (EM), tetracycline (TC) の計6薬剤である.薬剤感受性試験は, 寒天平板希釈法により行い, 最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した.
    その結果, ニューキノロン薬に対する耐性菌 (MICが6.25μg/ml以上) の出現状況は, NFLXでは45株 (7.5%), OFLXでは45株 (7.5%), CPFXでは44株 (7.3%) であり, 国内由来株にもニューキノロン薬に対する耐性株が認められ, 特に1993年以降, 耐性株が顕著に増加している事が明らかとなった.耐性パターンは, NFLX, OFLX, CPFX, NAの4剤耐性を示すものが最も高頻度に検出された.
    C.jejuniの同定に用いられているNAには, 耐性株の増加傾向が認められたが, 治療薬として汎用されているEMでは, 耐性株の出現率は低く, 増加の傾向も認められなかった.TCに対しては, 以前に指摘したごとく, 2峰性のパターンを示した.
    なお, 供試菌株の血清型と耐性株との間には, 関連性は認められなかった.
  • 山井 志朗, 沖津 忠行, 勝部 泰次
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1234-1241
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1987年の夏期 (7~9月) に, 任意に選択した神奈川県内の18河川20地点 (河口: 17, 中流: 1, 上流: 2) から採取した河川水について, Vibrio choleraeの検出状況をMPN法によって定量的に調査した.その結果, 全ての地点の河川水からV. cholerae non-O1が検出され, 定量値は0.9~1,400以上MPN/100mlの範囲であり, 特に河川の河口域で著しい汚染 (1, 100~1,400以上MPN/100ml: 53%) が見られた.さらに1988年8月に, 当該河川の一地点の河川水からV. cholerae O1 (コレラ菌) が検出 (150MPN/100ml) され, 翌1989年2月の冬期にも同じ地点から本菌が微量ではあるが検出 (1.5MPN/100ml) された.1989年以降, 県内の主要10河川の河口部9および中流部1地点から河川水を毎月採取し, V. choleraeの検出を定性的に実施した.1989年~1995年までの7年間のV. cholerae検出率は62.9%(528/840), その内訳はV. cholerae O1およびnon-O1が各々3.6%(30/840) および61.1%(513/840) で, 15検体からは両者が同時に検出され, V. cholerae non-O1の経常的汚染およびV. cholerae O1の散発的検出が経年的に観察された.分離株543株のうち, コレラ毒素 (CT) 産生性陽性株はV. cholerae O1の1株だけであり, V. cholerae non-O1にCT産生株は認められなかった.河川水におけるV. choleraeの検出状況を長期的に調査した結果, 以上のように汚染の実態を把握できた.また本調査の過程において, V.cholerae O1の選択分離培地の性能を比較した結果, PMT寒天培地に高い有用性のあることが示された.
  • 外山 圭助, 矢口 誠, 溝口 秀昭, 増田 道彦, 浦部 晶夫, 池田 康夫, 青木 功, 新保 卓郎, 戸川 敦, 平嶋 邦猛, 三浦 ...
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1242-1253
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    多施設試験では血液疾患を有し, 感染症を併発した好中球減少疾患患者を対象として, aztreonam, clindamycin併用療法におけるrecombinant human granulocyte colonystimulatingfactor (rhG-CSF) の効果を検討した.感染症を併発した好中球減少症患者43例にaztreonam (29) およびclindamycin (600mg) を1日2~3回投与し, 同時にrhG-CSF (LenograstimまたはFilgrastim;2~5μg/kg/day) も投与した.この療法がもたらす臨床効果を, 以前の試験で2種類の抗生物質のみによる治療を受けた血液疾患に伴う熱性好中球減少症患者44例に認められた臨床効果 (rhG-CSF非投与群) と比較した.全体としての有効率はrhG-CSF投与群が69.8%(30/43), rhG-CSF非投与群が65.9%(29/44) であった.rhG-CSF群では投与7日目に好中球数が有意に増加し, またCRPがより低い値を示す傾向が見られたものの, 平均最高体温の推移に関しては2群間でほとんど差を認めなかった.
    以上の結果から, 好中球減少症患者に発生した感染の1エピソードの治療には, rhG-CSFはそれほど有効とは言えず, 適切な抗生物質療法のほうがより重要と考えられた.
  • 間接蛍光抗体法との比較
    小出 道夫, 齋藤 厚, 山城 祐子, 草野 展周
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1254-1258
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床的にレジオネラ肺炎が疑われ間接蛍光抗体法 (IFA) による血清抗体価測定をおこなった44症例 (陽性17例, 陰性27例) および健常人 (25~30歳) 20名の合計64名の血清を用いて微量定量凝集法 (MAT) をおこなった.MAT法にはデンカ生研の凝集反応抗原を用いた.
    健常人およびレジオネラ症疑いIFA陰性の患者はすべてMATも陰性であった.IFA陽性であった17症例のうち8症例はMAT陽性であった.残りの9症例は設定した判定基準では陰性であった.発症3週以内に採取された血清のIFA値とMAT値は一致率が高かった.また, MAT陽性8症例の陽転時血清はすべて4週以内に採取されており, MAT法はIgM抗体を測定していることを裏付ける成績であった.
    これをさらに確認するためにIFA陽性17症例のうち8症例についてIgMのみに反応するFITC標識抗体を2次抗体として用いたIFA法をおこなった.その抗体価は, MAT値と近似していた.
    今回検討した症例におけるIFAの成績に対するMATの感度は47.1%(8/17) と低いものであったが, IFA陰性の27症例はMATでもすべて陰性であったので特異性は高く, MAT法はレジオネラ感染症の早期診断として臨床的に有用であると思われた.
  • 池松 秀之, 鍋島 篤子, 山家 滋, 山路 浩三郎, 角田 恭治, 上野 久美子, 林 純, 白井 洸, 原 寛, 柏木 征三郎
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1259-1265
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高齢長期入院患者における発熱や死亡のハイリスクグループのマーカーを検索するために, 観察病院において1年以上入院した患者478名を対象として, 血清アルブミン値と発熱及び死亡との関連について検討を行なった.
    対象の平均血清アルブミン値は3.79g/dlで, 加齢と共に漸減傾向を示した.延べ504,189日の発熱の調査結果より得られた各患者の平均年間発熱回数と血清アルブミン値の関連は, 血清アルブミン値4.1g/dl以上の群の平均発熱回数が最も低く1.8回/年で, 血清アルブミン値の低下に従って段階的に上昇し, 3.0g/dl以下の血清アルブミン値著明低下患者では5.3回/年であった.
    年齢補正後の死亡率は, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群が40.4%で, 他の3群の13.0%~19.8%に比し著しく高率であった.血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では死亡率はどの年齢層においても高率であったが, 他の3群においては, 80歳以上で死亡率が高かった.血清アルブミン値4.1g/dl以上の群をcontrol群として求めたrelativeriskは, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では発熱で2.9, 死亡では2.0であった.
    以上の結果より, 血清アルブミン値は, 高齢期入院患者における, 発熱や, 1年後以降に生じる死亡の予測因子として有用であり, 特に血清アルブミン値3.0g/dl以下の患者は発熱, 死亡のハイリスクブループであると考えられた.
  • 柴田 幹良, 森田 耕司, 渡辺 登, 和田 博志, 沖津 忠行, 山井 志朗, 伊藤 健一郎, 島田 俊雄, 渡辺 治雄, 金森 政人
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1266-1270
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Aeromonas sobriaの有力な病原因子の一つとしてヘモリシンがある.そこで本実験では, polymerase chainreaction (PCR) 法によってヘモリシンの遺伝子を検出するために, A.sobriaヘモリシン遺伝子 (ASA1, 及びaerAAS) の一部を標的としたプライマーを作製し, 検出を試みた.その結果供試菌株中91%がASA1ヘモリシン遺伝子を保有しており, 23.4%がaerAASヘモリシン遺伝子を保有していた.また, A.sobria以外のAeromonas属細菌, Plesiomonas属細菌, Vibrio属細菌についても同様に検出を試みた結果, いずれからもヘモリシン遺伝子が検出されなかったことから, ASA1, aerAASヘモリシン遺伝子を標的としたPCR法が, A.sobriaを同定するうえで有効であり, A.sobria感染症の迅速診断法として有用であると考えられた.
  • 中澤 靖
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1271-1278
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日和見感染症の原因菌として重要である緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) の臨床分離33株の線毛構造遺伝子pilAをPcR法にて増幅したところ約2,000bp, 1,300bp, 550bpの3種類に分類され, それぞれの頻度は16株 (48.5%), 11株 (33.3%) そして6株 (18.2%) であった.その3種類の株にてヒト肺ガン細胞由来の培養細胞calu-1に対する接着性を検討したところ, 1培養細胞あたりの接着率はそれぞれ平均39.2%, 24.8%そして22.1%であり臨床にて最も検出されやすい2,000bpの株が有意に培養細胞に接着しやすい結果となった.また33株の血清型を調べたところ約2,000bpの株ではF, G, 1型が多く1,300bp, 550bpの株ではE型が多いことがわかり, 血清型の分布に相違があることが明らかとなった.pilAの遺伝子配列が培養細胞に対する接着性や, 菌の抗原性に影響することが示唆された.これらの結果は臨床分離緑膿菌株の線毛遺伝子に3種類の変異が認められることを示す一方, 線毛が緑膿菌の人体への感染や免疫に関与していることを示唆するものであり, 緑膿菌感染症における線毛を標的とした予防法や治療法の可能性を示した.
  • 角家 明文, 飯国 弥生, 穂坂 茂, 岡田 純, 近藤 啓文
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1279-1283
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We experienced a SLE patient with TSS after delivery. A 32-year-old SLE patient was transferred to our division due to fever, diarrhea, erosive rash, pericardial effusion, myalgia, lowblood pressure, thorombocytopenia and hypoproteinemia which appeared two days after transvaginal delivery. At the time of admission, we considered these symptoms as the exacerbation of SLE, and treatment with high doses of steroid was started. It was when TSST-1-producing-MRSA was cultured from the vagina and uterus that TSS was suspected. 2 g/day of vancomycin was administered and her symptoms improved. As observed in this case, it is important to consider TSS as one of the complications seen with SLE patients after delivery.
  • 山上 由理子, 橋本 敦郎, 山形 英司, 長岡 博志, 永井 寛之, 大野 栄治, 大塚 英一, 菊池 博, 那須 勝
    1996 年 70 巻 12 号 p. 1284-1289
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We investigated the possible presence of DNA specific for Aspergillus species in seurm samples of two patients who were strongly suspected for invasive pulmonary aspergillosis (IPA) by a nested polymerase chain reaction (PCR) method.
    Both patients were diagnosed as having acute myelogenous leukemia and treated with induction chemotherapy. During chemotherapy-induced granulocytopenia, they complained of high fever, and the chest X-rays indicated infiltration shadows in their lungs. They were treated with antibiotics intravenously, but no clinical improvement was observed. As the results of the nested PCR were positive at the acute stage of infection, amphotericin B i. v. and granulocyte colony stimulating factor s.c. administrations were started in both cases.
    In case 1, the infectious disease improved and the nested PCR results turned negative after treatment. In Case 2, in spite of the progression of the disease, the nested PCR results turned negative during treatment.
    Although we consider this method very useful for the diagnosis of IPA, further prospective evaluation with a large clinical population sample is required.
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