感染症学雑誌
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70 巻, 7 号
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  • 権平 文夫, 杉山 純一
    1996 年 70 巻 7 号 p. 673-680
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionella pneumophila serogroup (SG) 1はレジオネラ肺炎の最も高頻度な原因菌であるが, 本血清群の群特異抗原は, 複数の抗原因子の組合せで構成されていることが知られている. 我々は日本国内で分離されたL. pneumophila SG1の抗原因子型を調べるため, ウサギ免疫血清による交差吸収試験の成績を基に, L. pneumphilaの基準株Philadelphia1株及び環境由来株GIFU10102株を免疫抗原とする反応性の異なる5種類のL. pneumophila SG1に特異的なモノクローナル抗体 (MoAb) を作製した. MoAbをラテックス粒子に感作したスライドラテックス凝集反応用試薬を調製し, 日本国内で分離された臨床由来22株, 環境由来26株の抗原因子型を測定した. その結果, すべての株がいずれかのMoAb感作ラテックスと反応した. 抗原因子の組合せで表わされる抗原因子型は, 臨床由来株では6種類, 環境由来株では7種類, 全体で11種類に分けられ, 抗原因子型別の疫学的有用性が示唆された.
  • 大湾 知子
    1996 年 70 巻 7 号 p. 681-689
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    尿路病原菌が尿中で示す性状と分離したその菌が試験管内で示す性状とを比較検討した. 形態学的に見ると, 感染尿から直接回収した大腸菌は殆どが線毛を持たなかったがその菌を分離培養すると全ての菌が線毛を発現した. 尿中では英膜を持つ菌がしばしば見られたが, その菌を培養すると英膜は失われた. 溶血性大腸菌について見ると, 感染尿および尿中の菌から溶血素は検出されなかったが, 分離後の菌および培養上清からは溶血素が検出された. 菌体構成蛋白については外膜蛋白に著しい変化が見られた. 最も特徴的な変化は尿中の菌で見られた分子量約70kDaの蛋白が培養菌では消失していることであった. 濾過滅菌した健康人尿およびハートインフユージョンプロス (HIB) を培地として薬剤感受性を調べ, HIBにおける薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を1とした時, 尿中におけるMICはオフロキサシン=25, アンピシリン=1, エリスロマイシン=3であった.
  • 宮島 一郎, 佐田 通夫, 内村 恭代, 井出 達也, 鈴木 宏, 谷川 久一
    1996 年 70 巻 7 号 p. 690-695
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎患者において, インターフェロン (IFN)-αとβのそれぞれ単独使用例における治療効果は, 約40%である. 今回, 我々は, 25人のC型慢性肝炎患者に対し, IFN-αとβを組み合わせた治療を行なって治療効果を上げることができるかどうかを検討した. 600万単位のIFN-βを2週連日投与後, 600万単位のIFN-αを週3回, 10週から22週間投与した. IFN投与終了後6カ月の時点で, 血清ALTは, 10人 (40%) に正常化を認め, その内, 4人は, 血中HCVRNAが陰性化した. 治療効果の予測として, 血中HCVRNA, Knodellらの線維化スコアー, ICG15分停滞率が低値の例において治療効果が得られた. IFN-β投与時に血清ALT値の上昇と蛋白尿を認める例があったが, これらは軽度で, IFN-β投与終了後に改善した. IFN-αとβを組み合わせた治療を行なったが, 今回の検討ではIFN-αまたはβの単独使用における治療効果と変わらなかった.
  • 有川 圭介, 本田 順一, 杉原 栄一郎, 桑元 珠郁子, 熊谷 睦子, 秋吉 裕也, 松本 久美, 白石 恒明, 力丸 徹, 大泉 耕太郎
    1996 年 70 巻 7 号 p. 696-701
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, びまん性汎細気管支炎 (以下DPB) などの慢性下気道感染症に対するマクロライド系抗菌薬 (以下Mls) の有効性が明らかにされているが, その有効といわれている14員環Mls, 15員環Mls作用機序については未だ明らかにされていない. 我々は今回, 健常人の全血に14員環Mls (EM), 15員環Mls (AZM), 16員環Mls (RKM) をそれぞれ最終濃度0, 0.008, 0.04, 0.2, 1.0, 2.5μg/mlで投与後lipopolysaccharide (以下LPS) 刺激を加えて炎症局所のcompartmentalized spaceのexperimentalvivoモデルとして, 炎症性サイトカインIL1β, IL-8, TNF-αのmRNAの発現に対する影響をReversetranscriptional polymerase chain reaction (以下RT-PCR) 法にて調べた. 臨床的に無効と言われている16員環Mlsは有意な変化無く, 有効といわれている14員環Mls, 15員環Mlsは臨床的に到達可能な低い治療濃度レベル (0.04~0.2μg/ml) で有意なmRNAの強い抑制を示した. また, 治療濃度レベル (0.04~0.2μg/ml) より高い濃度で徐々にサイトカインmRNA発現抑制が弱まる結果を得た. 以上の結果より14, 15員環Mlsは炎症性サイトカインを遺伝子レベルで抑制することでDPBに有効に作用している可能性が示唆された.
  • 楠 淳, 甲斐 明美, 柳川 義勢, 高橋 正樹, 新垣 正夫, 尾畑 浩魅, 伊藤 武, 太田 建爾, 工藤 泰雄, 中村 明子
    1996 年 70 巻 7 号 p. 702-709
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    東京都において1989年に49事例のサルモネラ食中毒が発生し, そのうち31事例がS. Enteritidisによるものであった. S. Enteritidis食中毒31事例中21事例の原因菌が, 欧米で現在のところ報告のないファージ型34によるものであった. 1989~1991年の3年間に東京都内で発生したファージ型34によるS. Enteritidis食中毒31事例の疫学解析を行うために, 食中毒患者269株, 原因食品由来26株, 環境由来17株および食中毒原因施設の従業員由来22株の計302株を使用し疫学解析を行った. 疫学解析にはファージ型別, 薬剤感受性試験および保有ブラスミドプロファイルを疫学マーカーとして使用した. 薬剤感受性試験はCP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOMおよびNFLXを使用しK-B法で行った. 保有プラスミドプロファイル解析はKadoの方法で行った. ファージ型34の食中毒由来株の疫学マーカー解析を行った結果, 31事例中29事例がストレプトマイシンに単独耐性であり, また28事例の由来株がく250および60kbのサイズの異なる2種のプラスミドを同時に保有していた.
    また, 1989年に発生したPT34の21事例中5事例の原因食品に鶏卵が使用されており, 7事例に鶏卵の関与が疑われた. さらにPT34による食中毒に関与した鶏卵生産養鶏場から分離された菌株も食中毒由来株と同一薬剤感受性および保有プラスミドプロファイルを示した.
  • 玉造 滋, Judith WEISS, 廣田 勝太郎, 川俣 治, 白鳥 康史, 吉田 晴彦, 小俣 政男
    1996 年 70 巻 7 号 p. 710-716
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    16S-rRNA遺伝子を増幅標的とし, 胃液からH. pylori DNAを検出するPCR系を確立した. プラスミドDNAおよび精製H. pyloriゲノムDNAを用いた実, 験的感度はともに「約1コピー/PCR」であった. 75種の細菌のDNAパネルを用いた特異性検討では, ヒト以外を宿主とするHelicobacter 2種が1pgのDNAで弱く反応したのを除き, 消化器系の常在菌, 病原菌などは100pgのDNAでも反応しなかった. 一方, H. pylori臨床分離株6株は20fgのDNAでも増幅された. 臨床検体 (胃液) からの検出では, ウレアーゼ遺伝子を増幅標的とするNested-PCRと比較して, 感度93.3%, 特異性73.3%であった. 本法は簡便かつ迅速で高感度なH. pylori DNAの検出系であり, 胃組織に比べて採取が簡単で安全な胃液からも, 臨床上有益な情報が得られることが示された.
  • 李 愛麗, 小松 靖弘, 小野 裕, 中谷 文治, 中島 邦夫, 山口 宣夫
    1996 年 70 巻 7 号 p. 717-726
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    後天的免疫不全状態をがん化学療法剤によって誘導した幼若動物を中心としてに生薬製剤, 当帰六黄湯 (TRT), 補中益気湯 (HET) 及び十全大補湯 (JTT) を経口投与し, それらの有効性を比較した. C57BL/6マウスにマイトマイシンC (MMC) を投与し, 免疫機能の抑制状態を誘導して免疫力低下モデルとした. この宿主に当帰六黄湯, 補中益気湯及び十全大補湯をエキス末として500mg/kg/dayをMMC投与後, 7回経口摂取投与することによって幼若マウスに於て体重, 胸腺重量, 末梢白血球数から看た器質的回復と, 大食細胞貧食能, T細胞それにB細胞的回復を示した. 他方, 老齢マウスに於ては十全大補湯が末梢白血球数とB細胞機能に関して優位に回復させた. 即ち化学療法剤投与後の後天的免疫不全状態の治療に際し, 週齢により有効性を示す免疫調節剤が異なることが判明した. 以上の成績を総合し, がん化学療法剤投与後の後天的免疫不全状態に於ける経口免疫調節剤の有効性を考察した.
  • 冨澤 功, 滝澤 慶彦, 新田 義朗, 角田 隆文, 福田 浩之, 山口 剛, 増田 剛太, 根岸 昌功, 味沢 篤, 村田 三紗子, 大西 ...
    1996 年 70 巻 7 号 p. 727-745
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    感染性腸炎 (細菌性赤痢, サルモネラ腸炎, 病原大腸菌腸炎, コレラなど) に対するprulinoxacin (PUFX) の臨床的有効性, 安全性及び有用性を評価する目的で, 同患者・保菌者122例に本剤を投与し検討した. 同時に臨床分離株に対するPUFXの抗菌活性体 (UFX) の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, ciprofloxacin (CPFX), ofloxacin (OFLX), tosufloxacin (TFLX), nalidixicacid (NA) のそれと比較した. また, 急性腸炎患者においてPUFX投与時の糞便中薬物濃度と腸内細菌叢に及ぼす影響について検討した.
    投与方法は1日400mg (分2, 朝夕) を5日間 (サルモネラ腸炎は7日間, コレラは3日間) 経口投与とした. 有用性解析対象症例は84例であった.
    臨床効果は, サルモネラ腸炎で有効率88.9%(8/9例) であり, その他は100%(45/45例) であった. 細菌学的効果は, サルモネラ腸炎で有効率75.0%(12/16例) であった他は100%(61/61例) であった. 副作用としては109例中1例 (0.9%) に中等度の華麻疹が認められ, 臨床検査値の異常変動は100例中, 好酸球増多1例, S-GPT上昇2例の計3例 (3.0%) にみられたが, いずれも軽度であった. 有用性は「極めて有用」が65.5%(55/84例),「有用」以上が95-2%(80/84例) であった.
    UFXの赤痢菌, サルモネラ属病原大腸菌, コレラ菌の臨床分離株に対するMIC90は, それぞれ0.025, 0.05, 0.025, 0.05μg/mlであり, CPFX, TFLXとほぼ同等で, OFLX, NAより優れていた.
    急性腸炎患者3例におけるPUFX投与時の糞便中UFX濃度は赤痢菌, サルモネラ属, 病原大腸菌, コレラ菌のMIC90以上の濃度が認められた. また, 腸内細菌叢の変動については, 本剤の有効性及び安全性に影響を及ぼすと思われる変動は認められなかった.
  • 川村 純生, 安岡 千枝, 古賀 宏延, 田代 隆良, 江藤 秀顕, 芦田 倫子, 荒木 潤, 浅井 貞宏, 泉川 欣一, 綾部 公懿, 河 ...
    1996 年 70 巻 7 号 p. 746-751
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We reported two cases of pulmonary dirofilariasis in Nagasaki Prefecture. Each case was admitted to our hospitals for evaluation of an abnormal shadow on chest X-ray film taken for examination. We strongly suspected lung cancer before operation. It was resected in order to confirm the pathological diagnosis. There was a Dirofilaria immitis in the vessels surrounded by the necrotic tissues. The case of pulmonary dirofilariasis tends to increase in Japan, but the positive rate of dogs with Dirofilaria immitis tends to decrease, because of decreasing breeding places of mosquitoes by the spread of the public sewage system in Nagasaki City.
  • 古西 満, 右田 尊史, 森 啓, 井前 徳久, 山中 貴世, 前田 光一, 三笠 桂一, 澤木 政好, 吉岡 章, 佐野 麗子, 増谷 喬 ...
    1996 年 70 巻 7 号 p. 752-756
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 38-year-old hemophiliac, who had been infected with HIV by the administration of blood products and had been diagnosed as AIDS by the onset of Pneumocystis carinii pneumonia, was admitted to our hospital with the complaints of headache and vomiting. After he was diagnosed as cryptococcal menigtis using the microsopy, cryptococcal antigen detection and culture of cerebrospinal fluid, treatment with amphotericin-B and fluconazole was started. As there was no clinical improvement, spinal drainage was performed and acetazolamide administered in order to reduce the intracaranial pressure. Treatment was changed from AMPH-B and FLCZ to a combined therapy of AMPH-B and itraconazole. As his clinical features showed improvement, he was discharged home on a maintenance dose of ITCZ and acetazolamide after having been hospitalized for three months. This case-report may be of use in the management of cryptococcal menignitis in patients with AIDS.
  • 川山 智隆, 今泉 登史宏, 斎藤 聖子, 吉住 尚志, 有川 圭介, 大泉 耕太郎
    1996 年 70 巻 7 号 p. 757-760
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A case of unilateral hilar lymphadenopathy due to mycoplasmal pneumonia in an adult patient is presented. A 54-year-old female was admitted to our hospital because of high grade fever and abnormal shadows on chest roentgenograms. She did not have any respiratory symptoms before admission. Chest roentgenograms on admission revealed a tumor-like shadow in the right hilus resembling lung cancer. On the seventh day after admission, abnormal shadows on chest roentgenograms spontaneously improved without therapy. The patient was diagnosed as having mycoplasmal infection based on the serological tests.
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