感染症学雑誌
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72 巻, 4 号
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  • 根上 泰子, 酒井 健夫, 野上 貞雄, 海保 郁男, 加藤 千晴
    1998 年 72 巻 4 号 p. 331-334
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1995年3月-12月に, 神奈川県の都市近郊地域で保護されたタヌキ (Nyctereutes procyonoides viverrinus)30頭および岩手県で保護されたニホンシカ (Cervus nippon centralis) 5頭の血清を用いて, イヌジステンパー (canine distemper;CD) ウイルス, イヌパルボ (canine parvo;CP) ウイルス, 豚繁殖・呼吸障害症候群 (porcine reproductive and respiratory syndrome;PRRS) ウイルス, オーエスキー病 (Aujeszky's disease;AD) ウイルス, Coxiella burnetii (C.burnetii), Rickettsia japonica (R.japonica), R.tsutsugamushiおよびToxoplasma gondii (T.gondii) に対する抗体保有状況を調べた.タヌキでは, T.gondiiに対す抗体が1頭 (3.3%) で, cDウイルスに対する抗体が9頭 (30%) で認められた.しかしその他の病原体に対する抗体は, タヌキでは認められなかった.シカでは, 検査したすべての病原体に対する抗体は検出されなかった.
  • 常岡 英弘, 高場 満也, 永冨 裕二, 森 健治, 松本 高明, 本田 武司
    1998 年 72 巻 4 号 p. 335-341
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriの除菌治療前後にamoxicillin (AMPC) とclarithromycin (CAM) の感受性試験を行い, 除菌治療に伴うこれら薬剤の感受性変化について検討した.その結果, 除菌治療前のH. pylori85株に対し, AMPCはMIC90が0.025μg/mlで耐性株は認められなかった.CAMはMIC90が0.05μg/mlであったが, 8.2%(7/85) に耐性株が認められた.一方, 治療後の分離株34株ではAMPCはMIC90が0.025μg/mlと治療前と同様であったが, CAMはMIC90が>50μg/mlで耐性株が73.5%(25/34) 認められた.lansoprazole+AMPC投与による除菌不成功例では, AMPCに感受性変化はなかったがlansoprazole+CAM投与による不成功例では82.6%(19/23) にCAM耐性化が認められた.またlansoprazole+AMPC+CAMの併用による不成功例でもCAM耐性株が関与していた.より効果的な除菌治療を行うために薬剤感受性試験は重要であり, ディスク法はその一助になると思われる.
  • 田中 裕士, 阿部 庄作, 田村 弘
    1998 年 72 巻 4 号 p. 342-346
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヘルパーT細胞 (Th) には, これまでに少なくとも二つの亜集団Th1, Th2が存在し, それぞれ細胞性免疫反応およびIgEなどの抗体産生反応を引き起こすとされている.マイコプラズマ肺炎の病変形成におけるTh1およびTh2の寄与を検討する目的で, マウスのMycoplasma pulmonis (M.pulmonis) 肺炎モデルの病理像について検討した.M.pulmonis菌液0.03mlを, C57BL/6 (Th1優位マウス), BALB/c (Th2優位マウス), およびICRマウスに経鼻投与し, 14日目に剖検し肺病理組織像を検討した.次に, M.pulmonis経鼻接種ICRマウスに, 3-9日までTh1のサイトカインであるIL-2を連日皮下投与し, 14日目の肺病理像を比較した.ICRマウスでは, 肺胞腔内への炎症性細胞浸潤, 即ち好中球, マクロファージが浸潤した胞内炎と, リンパ球, 形質細胞の浸潤を主体とした気管支肺動脈周囲問質病変が認められた.ICRマウスと比較して, C57BL/6マウスでは胞内炎は減少しており, それに対して気管支肺動脈周囲間質病変は増強していた.一方, BALB/cマウスではICRマウスと比較して胞内炎はやや増強し, 気管支肺動脈周囲間質の炎症は減少していた.IL-2を投与したICRマウスでは, IL-2を投与してないICRマウス群と比較して, 胞内炎は減少し, 気管支肺動脈周囲問質病変は増強し, C57BL/6マウスの肺病変に類似した病理像を呈した.マウスM.pulmonis肺炎の病変パターン形成において, ヘルパーT細胞の亜集団が重要な役割を担っている可能性が示唆された.
  • 吉野 修司, 山本 正悟, 川畑 紀彦
    1998 年 72 巻 4 号 p. 347-351
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウイルスの分離におけるヒト結腸腺癌由来細胞であるCaco-2細胞の有用性について検討した.
    1996年-1997年の流行期に宮崎県で集められたうがい液30件のうちMDCK細胞で17株 (57%), Caco-2細胞で20株 (67%) のインフルエンザウイルスが分離され, 1991年-1997年の流行期にMDCK細胞で分離されたインフルエンザウイルスA型, B型の各亜株すべてがCaco-2細胞でも分離された.また, Caco-2細胞ではトリプシンを添加しない維持培地でインフルエンザウイルスを分離できた.
    Caco-2細胞はトリプシンを添加した培地を必要とせず, エンテロウイルス等に対する感受性も高いため, インフルエンザウイルスを含むウイルス感染症の正確な流行状況の把握に有用であると思われる.
  • 倉澤 卓也, 池田 宣昭, 佐藤 敦夫, 井上 哲郎, 石田 直, 岡崎 美樹, 種田 和清, 西山 秀樹, 鈴木 雄二郎, 網谷 良一, ...
    1998 年 72 巻 4 号 p. 352-357
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肺のクリプトコッカス症 (肺ク症) の早期診断のための要点を検索するため, 肺ク症の患者32例 (男性20例, 女性12例, 平均年齢53歳) を対象に, その臨床所見および画像所見を検討した. 肺ク症の発症に影響した可能性のある各種の既往・合併症を有する症例は14例で (HIV感染例はない), 18例にはこれらの既往・合併症はない.発見動機では, 有症状受診例は18例で, その症状は概して軽度であったが, 胸痛の頻度がやや高い事が注目される. 入院時検査所見では, 重症例や合併症の病態を反映して, 一部に炎症所見や栄養状態に異常も認められたが, 異常値を呈する例は少なく, 異常所見の乏しさがむしろ注目される. 胸部単純X線所見では, 多発陰影が約2/3を占め, 多くは限局性の結節様・浸潤様陰影を呈した. 空洞は10例に, 肺門部リンパ節腫大は3例に認められた. その分布はほぼ各肺葉の容積を反映しており, 間質性肺炎像の1例と多葉に広がる区域性浸潤影の2例を除き, 病巣の広がりは軽度であった.胸部CT像では, 病巣は多く胸膜近傍部にみられ, 一部は胸膜に接する. 空洞壁は整で, その壁は厚く, 多く遍在性であった. また, 3例では陰影内に気管支透豪像も認められた.
    肺ク症は径気道的に感染し, 多く慢性的に経過する. 以上の臨床像・画像の特徴を考慮し, 本症も念頭に, 慎重に検査計画を立てる事が肝要と思われる.
  • 山腰 雅宏, 鈴木 幹三, 山本 俊信, 山本 俊幸, 後藤 則子, 中北 隆, 山田 保夫, 伊藤 誠
    1998 年 72 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高齢者のインフルエンザワクチンによる抗体産生能を調べるために成人接種例と比較し検討を行った.
    対象は名古屋市厚生院の特別養護老人ホームに入所中の高齢者31名 (男性11名, 女性20名, 平均年齢82.2歳) および健康成人23名 (女性23名, 平均年齢40.7歳) である. 方法は1995年度市販の不活化ワクチンを用い, 1995年10月下旬から12月上旬にかけて0.5mlを4週間間隔で2回皮下接種した. 血清抗体価は接種前, 2回目接種2週間後, 3カ月後でHI抗体価を測定した.
    高齢者でのHI抗体価の4倍以上の上昇率は, Aソ連型 (H1N1) 93.5%, A香港型 (H3N2) 100%, B型74.2%で, 成人例と比べ有意差はなく, 高齢者においてもワクチン接種による抗体産生能は良好であった. また128倍以上の抗体保有率もワクチン接種により著明に増加し, 接種3カ月後まで持続しており, 高齢者においてインフルエンザワクチン接種により, 感染防御が期待できることが明らかになった.
  • 大仲 賢二, 福山 正文, 田中 眞由美, 佐藤 謙一, 大西 健児, 安島 勇, 村田 三紗子
    1998 年 72 巻 4 号 p. 365-370
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1995年5月に東京都内の病院に下痢症状を示し, 入院した患者からニューキノロン剤の治療に対して, 臨床的並びに細菌学的に抵抗を示すShigella flexneri 2aがわが国で初めて分離された. この分離株のニューキノロン剤に対する薬剤耐性機序を解明するため, 初発患者ならびに二次感染者から分離した3株と基準株のShigella flexneri 2a TCC29903株 (TCC29903) を用い, 標的酵素であるDNジャイレースサブユニツトA遺伝子 (gyr) のキノロン耐性決定領域 (Quinolone resistance determiningregion, QRDR) の塩基配列の決定および能動的排出機構について比較検討を行ったところ, 患者由来の3株すべてにgyrにおいてSer (TCG)-83→Leu (TTG), sp (GC)-87→Gly (GGC) の二重変異が認められた.また, 能動的排出機構の検討では, 患者由来の3株のうち, tosufioxacinに最もMIC値の高かったtosufloxacin 5日間投与後の再排菌株において, ニューキノロン剤のみかけの菌体内蓄積量の減少が見られたが, プロトンポンプ阻害剤を添加すると回復した. 以上のことから入院患者分離菌株および二次感染者からの分離菌株の耐性はニューキノロン剤に対するgyrAの二重変異によるものと考えられ, 再排菌株はgyr の変異に加えて能動的排出機構の関与が示唆された.
  • 佐藤 勝, 竹内 秀雄, 宗像 敬一, 吉田 修
    1998 年 72 巻 4 号 p. 371-378
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cefluprenam (CFLP) の感染結石を伴う複数菌尿路感染症に対する感染治療効果をProtens mirabilis, Psendomonas aemginosa及びEntezococcns feacalisによる複数菌尿路感染モデルを用いてceftazidime (CAZ) を対照として比較検討した.
    ラットの膀胱内に減菌亜鉛リングを挿入し, 経尿道的にP.mirabilisを接種して感染結石を形成させ, その後, P.aeruginosa及びE.faecalisを同様に接種して複数菌感染を惹起させた. CFLPあるいはCAZ (20mg/kg, 1日2回, 5日間) を尾静脈内へ投与し, 尿, 腎及び結石中からの感染菌の除菌率, 感染結石重量及び血液尿素窒素 (BUN) を指標として感染治療効果を評価した. 更に, ラットでの両薬物 (20mg/kg, 静注) の尿中移行性についても検討した.尿のP.aeruginosa並びに尿及び結石中のE.faecalisに対するCFLPの除菌率はCAZ群と比較して有意に高かった (p<0.05). CAZは尿, 腎及び結石中のP.mimbilis並びにP.aemginosaに対して除菌効果を示した (p<0.05) がE.faecalisに対しては, 除菌効果は示さなかった. ラットにおけるCFLP及びCAZの投与8時間後までの尿中排泄率は, 59.3%及び59.5%と類似していた. これらのことから, CFLPは臨床における難治性複数菌尿路感染症に対してCAZより優れた有効性が期待されることが示唆された.
  • 坂川 英一郎
    1998 年 72 巻 4 号 p. 379-394
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本研究は慢性気道感染症におけるmucoid型菌の持続定着により形成される免疫複合体 (IC) の気道組織沈着とその意義について, alginateを起点とした免疫反応の面から解明することを目的とした.臨床症例に対しては抗alginate抗体IgGサブクラスを観察するとともに, 実験的にこれにかんするFcγ receptor (FcγR) について検索した.
    1) 臨床例においてmucoid型菌陽性群では血清中IgG1とIgG3およびIC値も有意に高値であった.またこれらの肺組織障害部位への沈着も顕著であった.
    2) in vivo実験としてalginate免疫マウスを用い, これらにalginate, mucoid型緑膿菌, ICを気管内注入し気管支胞肺洗浄液を観察した.好中球表面上のFcγRの表出はalginateおよびalginateを主成分とするICとの反応に対しては低下することが示された.mucoid型菌注入でのFcγRの初期表出は菌注入に伴う好中球の活性化によると考えられた.
    3) 以上の成績からmucoid型菌持続気道感染症例において, alginateの局在は好中球FcγR表出を低下させることが示された.さらに, これらにより形成されたICに対し, 肺局所に好中球は集積するものの, ICとの結合能は低く, このためICが長期に肺組織に沈着するものと考えられた.このようなalginateを介した免疫反応が症例の予後を難治化するものと強く推察された.
  • 武田 英紀
    1998 年 72 巻 4 号 p. 395-409
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性気道緑膿菌感染症におけるalginateと生体との免疫応答を明確にするため本研究を行った
    1.慢性気道感染症例37例をmucoid型緑膿菌感染群 (21例), non-mucoid型菌感染群 (16例) に分け, さらにその臨床的症状の点から活動例, 非活動例に分けて観察した.その結果, 末梢血IFNγ は他群に比しmucoid型緑膿菌感染群活動例において有意に高値であった (p<0.01).
    2.alginate免疫マウスにmucoid型緑膿菌およびalginateを気管内注入し, 30日後まで末梢血, BALF細胞上のMPO, TNFα, IFNγ をflow cytometer解析し, さらに肺組織所見を観察した.その結果, (1) mucoid型緑膿菌注入群では観察期間を通じBALF好中球上のMPO, TNFα の表出増強・初期からのリンパ球上のIFNγ の増強がみられた. (2) mucoid型alginate注入群ではやや遅延してMPO, TNFα, IFNγ の表出増強がみられた. (3) 肺組織所見では, mucoid型菌注入初期から好中球の軽度浸潤, 問質へのリンパ球浸潤, リンパ球集積がみられ, alginate注入群では好中球浸潤はなくリンパ球浸潤と集積のみであった.この組織所見はmucoid-alginateにTリンパ球が反応した結果と考えられた.
    以上の成績より慢性気道緑膿菌感染症の活動例において, 菌体周囲のmucoid-alginateに対してTh1細胞が反応しIFNγ を産生し結果的に肺組織にリンパ球浸潤を招来するなどの免疫学的機序が考えられた.
  • 横村 光司, 安田 和雅, 佐藤 雅樹, 千田 金吾, Hirotoshi NAKAMURA
    1998 年 72 巻 4 号 p. 410-413
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 56-year-old male without respiratory symptoms, past history nor familial history, was admitted to our hospital because of pulmonary solitary nodule on the chest radiograph. Computed tomograph showed a smooth surface nodule in the left lower lobe (segment 8). Bronchofiberscopy could not give any specific histological findings nor bacteriological findings, therefore the patient underwent partial pulmonary resection by videoassisted thoracoscopic surgery. Pathology of the resected specimen revealed epithelioid cell granuloma with giant cells but not any acid-fast bacilli. He was treated with rifampicin and isoniazid for “tuberculoma”. After three weeks, thirty colonies grew on an Ogawa's egg medium, which were identified as Mycobacterium avium by PCR.
    There are few reports about the solitary pulmonary nodule due to M. avium-intracellurale complex infection, however, it is supposed that there are many “tuberculoma's” without bacteriological differentiation between tuberculosis and nontuberculous mycobacterial infection.
    It is difficult to diagnose a solitary pulmonary nodule caused by nontuberculous mycobacterial infection with bronchofiberscopy, and the location of the lesion is usually subpleural, therefore it is thought that videoassisted thoracoscopic surgery is valied for the diagnosis of solitary pulmonary nodule due to nontuberculous mycobacterium.
  • 西條 政幸, 室野 晃一, 平野 至規, 藤田 晃三
    1998 年 72 巻 4 号 p. 414-417
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We report here a 2-year-old boy with a Streptococcus intermedius brain abscess and bilateral ventriculitis successfully treated with a high dose penicillin G (200, 000 U/kg/dose, 6 times a day, 1 hour continuous infusion). Although hydrocephalus residued, the high dose penicillin G therapy cured his brain abscess and bilateral ventriculitis. The minimal inhibitory concentration of penicillin G to the isolate was 0.008μg/ml. The penicillin G concentration in the cerebrospinal fluid after 2 hours from the infusion was about 5μg/ml. S. intermedius must be considered as one of the causative agents for brain abscess. High dose penicillin G therapy is one choice of treatment for brain abscess due to penicillin-susceptible streptococci.
  • 村岡 晴雄, 渡慶次 千, 安倍 弘彦, 宮原 洋一, 内村 恭代, 野口 誠司, 佐田 通夫, 谷川 久一
    1998 年 72 巻 4 号 p. 418-423
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肝機能異常を伴った成人水痘の2例を経験した. sGOT, sGPT値, 及びLDH値は共に一過性の軽度から中等度の上昇を認めた. sGPT値は2例共に発症後8週間以内に正常化した回復期の肝生検組織像では小葉中心部のfocal necrosisと好中球を主体とした炎症細胞浸潤を認め, 軽い急性肝炎の所見を呈していた.
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