ヘルパーT細胞 (Th) には, これまでに少なくとも二つの亜集団Th1, Th2が存在し, それぞれ細胞性免疫反応およびIgEなどの抗体産生反応を引き起こすとされている.マイコプラズマ肺炎の病変形成におけるTh1およびTh2の寄与を検討する目的で, マウスの
Mycoplasma pulmonis (M.pulmonis) 肺炎モデルの病理像について検討した
.M.pulmonis菌液0.03mlを, C57BL/6 (Th1優位マウス), BALB/c (Th2優位マウス), およびICRマウスに経鼻投与し, 14日目に剖検し肺病理組織像を検討した.次に,
M.pulmonis経鼻接種ICRマウスに, 3-9日までTh1のサイトカインであるIL-2を連日皮下投与し, 14日目の肺病理像を比較した.ICRマウスでは, 肺胞腔内への炎症性細胞浸潤, 即ち好中球, マクロファージが浸潤した胞内炎と, リンパ球, 形質細胞の浸潤を主体とした気管支肺動脈周囲問質病変が認められた.ICRマウスと比較して, C57BL/6マウスでは胞内炎は減少しており, それに対して気管支肺動脈周囲間質病変は増強していた.一方, BALB/cマウスではICRマウスと比較して胞内炎はやや増強し, 気管支肺動脈周囲間質の炎症は減少していた.IL-2を投与したICRマウスでは, IL-2を投与してないICRマウス群と比較して, 胞内炎は減少し, 気管支肺動脈周囲問質病変は増強し, C57BL/6マウスの肺病変に類似した病理像を呈した.マウス
M.pulmonis肺炎の病変パターン形成において, ヘルパーT細胞の亜集団が重要な役割を担っている可能性が示唆された.
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