東京慈恵会医科大学内科学講座第二における1986年1月より1995年12月迄の10年間の菌血症患者のべ288件について臨床的検討を行った. 対象は, 血液培養またはカテーテル先端培養陽性の235例 (のべ288件) で, 基礎疾患, 先行感染症, 原因菌の種題を検討した. 今回検討した菌血症のうち, カテーテル感染は31.3%, 非カテーテル感染は68.8%(先行感染症あり31.3%, なし37-5%) であった. 基礎疾患別の比較では, 慢性腎不全はカテーテル感染の占める割合が多く, 先行感染がない菌血症は少なかった. 固形癌は, 先行感染症の明らかでない菌血症が多く, 糖尿病, 造血器悪性腫瘍では, 先行感染症のある菌血症の方が多かった. 先行感染症に続発した例では, 呼吸器感染症, 尿路感染症が多く, 全体の47.8%を占めていた. カテーテル感染では, methicillin resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) を中心としたグラム陽性球菌が多く, 真菌の感染も多かった. 非カテーテル感染では, MRSA, グラム陰性桿菌が増加している. 死亡群では, MRSA,
Candida sp. の検出の割合が多く, 血液疾患やステロイド長期投与等の免疫能低下例に集中して見られた.
以上の結果より, 基礎疾患の種類やカテーテルの有無により, 菌血症を起こす感染経路, 原因菌, 予後に差異があると思われ, それらを考慮した感染症への対策が必要と思われる.
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