感染症学雑誌
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72 巻, 8 号
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  • 長井 健祐, 阪田 保隆
    1998 年 72 巻 8 号 p. 781-787
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1995年12月までの11年間に, 聖マリア病院小児科に入院した起炎菌判明の細菌性髄膜炎64例 (生後1ヵ月から16歳未満) について後方視的に臨床検討を行った.
    主要起炎菌は, Haamophilus influenzae (H.influenzae) (28例;43.8%), Streptococcus pneumoniae (S.pneumoniae) (23例;35.9%) であった.また, 64例を正常群42例 (65.6%), 神経後遺症群17例 (26.6%), 死亡群5例 (7.8%) の3群に分け, 予後関連因子を検討した.入院時体温, 入院時血小板数, 初回髄液所見のうち髄液細胞数, 髄液糖, 髄液GOT, 髄液GPTが予後関連因子となる可能性が示唆された.主要起炎菌の予後の比較では, S.pneumoniaeH.influenzaeより不良であった.
  • 水兼 隆介, 中富 昌夫, 夫津木 要二, 荒木 潤, 浅井 貞宏, 猿渡 克比孔, 平潟 洋一, 前崎 繁文, 朝野 和典, 河野 茂
    1998 年 72 巻 8 号 p. 788-793
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌の産生する病原因子として, トキシックショックシンドロームトキシン-1 (TSST-1) とエンテロトキシン (SE) は重要であり, これらのトキシンが細菌性ショックやトキシックショックなどの病態に関与すると報告されている.我々は1994年から1996年までに佐世保市立総合病院で分離された全MRSA 701株について, TSST-1とSEの産生およびコアグラーゼ型を検討した.
    全MRSAの67%がTSST-1またはSE産生 (以下トキシン産生) 株であるのに対し, 血液由来MRSAの88%がトキシンを産生していた.また, 全MRSAの45%がTSST-1とSEのC型を産生していたが, 血液由来株では69%であった.血液由来株におけるトキシン産生の頻度は尿, 咽頭由来株に比べ有意に高く (p<0.05), また, TSST-1とSECの産生頻度は咽頭由来株に比べ有意に高かった (p<0.05).
    今回, MRSA病原因子を検討することによって, MRSA感染症の予防, 治療において有力な情報が得られることが示唆された.
  • CTAB法を用いたHAV遺伝子検出
    北橋 智子, 田中 俊光, 石川 洋, 長谷川 修司
    1998 年 72 巻 8 号 p. 794-800
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    懸念されている.1995年夏に千葉市の精神薄弱者更正施設で入所者7名と職員1名がA型肝炎に罹患した.当所では早期診断を目的としてIgM-HA抗体検査とELISA, PCRによる抗原検出を行い, あわせて細胞培養によるウイルスの分離を試みた.
    発症後2日から8日に採取した血清4検体と糞便5検体を対象とした.検査を行った血清は全てIgMHA抗体陽性であった.抗原検索を試みた患者糞便5件中3件がELISAでHAY抗原陽性を示した.ELISA陰性の2検体について抗原の添加回収試験を試みたが, 回収率が51~67%であり, ELISAに対する阻害物質の存在が示唆された.糞便材料からCTAB法を用いてRNAを抽出し, 1stPCRを行ったところ, 5検体中4検体からHAV遺伝子が検出され, nestedPCRでは全ての検体からHAV遺伝子が検出された.更に, 5検体のPCR産物をシークエンスすると, P1/P2のジャンクション部分のVP1/2A領域における塩基配列は全て一致し, IA型に分類された.
    ELISA法でHAV抗原を検出できなかった検体から, また発症後2日の検体からPCRでHAV遺伝子が検出されたことより, CTAB法を用いたPCRはA型肝炎の早期診断に有用なことが確認された.
  • 抗原としての単独培養B. henselaeとVero細胞共生培養菌との比較
    常岡 英弘, 藤井 玲子, 山本 きよみ, 藤沢 桂子, 飯野 英親, 松田 昌子, 塚原 正人
    1998 年 72 巻 8 号 p. 801-807
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 欧米では猫ひっかき病の血清学的診断法の一つとして間接蛍光抗体法 (IFA法) による血清Bartonella henselae抗体価測定が利用されている.我々は, 2種類の抗原, すなわち単独培養B.henselaeおよびVero細胞共生培養B.henselaeを用いて抗体価の比較検討を行った.
    血清B.henselae抗体価のカットオフ値をIgG抗体については1: 32, IgM抗体については<1: 20と 設定したところ, 健常者110例において, IgG抗体陽性率は両抗原いずれに対しても2.7%で, IgM抗体の陽性例は認められなかった.一方, 猫ひっかき病の疑われる患者33例のIgG抗体陽性率は単独培養菌に対して48.5%, 共生培養菌に対して75.8%となり, そのうち陽性例の68%は1: 256以上と高値であった.またIgM抗体は両抗原いずれに対しても24.2%の陽性率であった.しかし共生培養菌によるIgM抗体測定ではVero細胞に対する非特異的反応が見られ, 判定困難な例があった.
    以上の結果より, IFA法による血清B.henselaeの抗体価測定はIgG抗体については共生培養菌, IgM抗体については単独培養菌を抗原として測定することが望ましいと思われる.
  • 足立 枝里子, 吉野 健一, 木村 剛, 松本 洋一, 竹田 多恵
    1998 年 72 巻 8 号 p. 808-812
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    ベロ毒素産生性大腸菌 (VTEC) 感染症に対して静注用ヒトγ-グロブリン製剤はしばしば重症患者の治療に使用されているが, その有用性についての議論もある. 我々は, 既存の静注用ヒトγ-グロブリン製剤とその原料となるヒト血漿の抗VT中和活性をin vitroで測定し, 重症合併症の予防薬として期待できるか否かを検討した. VTに対する中和抗体はヒト由来腎腺ガン細胞 (ACHN細胞) を用いた細胞毒性試験で調べた. 47ロットのγ-グロブリン製剤を調べた結果, 輸入血漿由来 (29ロット) は全てが最終濃度12.5mg/mlで, ほぼ完全にVT1 (最終濃度125pg/ml) を中和し, 製造方法の違いによる中和活性の差は認められなかった. 一方, 国内献血血漿由来製剤 (18ロット) は, 輸入血漿由来に比べ平均で5分の1程度の中和能しかなかった. VT2 (最終濃度125pg/ml) を中和する製剤は存在しなかった. またグロブリン製剤の原料として使用されるヒト血漿について239サンプルを調べた. この血漿は本研究に使用したロットのグロブリン製剤とは無関係で, 無作為に選んだものである. その結果, 輪入血血漿 (188サンプル) の約1割がVT1 (最終濃度12.5pg/ml) を50%以上中和したのに対し, 国内血血漿 (51サンプル) では1検体しか中和能を示さなかった.
    輸入血血漿は国内血血漿よりVT1中和活性を有するものが多く, 原料となっている血漿の中和力価のレベルがγ-グロブリン製剤のVT1中和活性をよく反映していたと思われた. 治療においては, 中和活性の高い血漿を原料として選択することにより, 高力価のグロブリン製剤が期待でき, 患者血中でのVT1中和能も期待できると思われる.
    またγ-グロブリン製剤のVT2に対する効果は全く期待できなかったことから, VT2に対する治療法としては特異性の高い中和抗体の早期開発が望まれる.
  • 山住 俊晃, 黒田 隆也, 大畠 恒子, 尾鼻 康朗, 古田 格
    1998 年 72 巻 8 号 p. 813-819
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1995年5月から, 1996年12月までに当院臨床検査部にて分離されたCandida albicans 285株について薬剤感受性を検討した. 使用薬剤はFluconazole, Miconazole, Itraconazole, Amphotericin BおよびFlucytosineの5剤である. 薬剤感受性測定はNational Committee for Clinical Laboratory Standardsの提案するM27-Tに準拠した微量液体希釈法にて行った. 検討したC. albicans臨床分離株の多くは, 5薬剤いずれに対しても比較的低いMICを示し, MIC90値は, Fluconazole; 1μg/ml, Miconazole; 0.125μg/ml, Itraconazole; 0.06μg/ml, Amphotericin B; 1μg/ml, Flucytosine; 0.25μg/mlであった. しかし1株では, Fluconazole高度耐性が認められ, この株はMiconazoleとItraconazoleに対し交差耐性がみられた. Flucytosine耐性株は2株認められた. Amphotericin BでのMICは非常に狭い範囲に分布しており, 耐性株はみられなかった.
  • 前澤 浩美, 坂本 光男, 中澤 靖, 進藤 奈邦子, 吉川 晃司, 吉田 正樹, 柴 孝也
    1998 年 72 巻 8 号 p. 820-826
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    東京慈恵会医科大学内科学講座第二における1986年1月より1995年12月迄の10年間の菌血症患者のべ288件について臨床的検討を行った. 対象は, 血液培養またはカテーテル先端培養陽性の235例 (のべ288件) で, 基礎疾患, 先行感染症, 原因菌の種題を検討した. 今回検討した菌血症のうち, カテーテル感染は31.3%, 非カテーテル感染は68.8%(先行感染症あり31.3%, なし37-5%) であった. 基礎疾患別の比較では, 慢性腎不全はカテーテル感染の占める割合が多く, 先行感染がない菌血症は少なかった. 固形癌は, 先行感染症の明らかでない菌血症が多く, 糖尿病, 造血器悪性腫瘍では, 先行感染症のある菌血症の方が多かった. 先行感染症に続発した例では, 呼吸器感染症, 尿路感染症が多く, 全体の47.8%を占めていた. カテーテル感染では, methicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA) を中心としたグラム陽性球菌が多く, 真菌の感染も多かった. 非カテーテル感染では, MRSA, グラム陰性桿菌が増加している. 死亡群では, MRSA, Candida sp. の検出の割合が多く, 血液疾患やステロイド長期投与等の免疫能低下例に集中して見られた.
    以上の結果より, 基礎疾患の種類やカテーテルの有無により, 菌血症を起こす感染経路, 原因菌, 予後に差異があると思われ, それらを考慮した感染症への対策が必要と思われる.
  • 清水 英明, 渡辺 寿美, 川上 千春, 平位 芳江, 木村 和弘, 菅谷 憲夫, 今井 光信
    1998 年 72 巻 8 号 p. 827-833
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A型インフルエンザウイルスの迅速診断法である抗原検出キットDirectigen Flu Aについての評価を目的として, 各種検討を行なった.
    現在までにヒトで流行したA (H1N1, H2N2, H3N2) 型17株および1997年に香港でヒトから分離されたH5N1 (Hongkong/156/97) すべてに反応し, 抗原の変異, 亜型間での差は認められなかった. また, A型インフルエンザウイルス以外の呼吸器系ウイルスとの交差反応はみられなかった.
    プラーク定量したウイルス液を用いた検出限界の測定では, 2.4×103pfu/assayのウイルス量で陽性と判定することが可能であった.
    呼吸器系疾患が認められる小児から採取した臨床検体を用い, 細胞培養によるウイルス分離との比較を行なった. 咽頭ぬぐい液を検体とした場合, 感度は77.9%, 特異性は98.4%であった. 鼻汁吸引液では感度は92.1%, 特異性は100%で, 高い感度および特異性が証明された.
    この検査キットは他のインフルエンザ診断法に比べて簡便かつ迅速な検出が可能であり, 約10-15分で結果が得られることから, 様々な医療現場において有用であると考える.
  • 竹田 多恵, 山形 匡子, 吉田 祐司, 吉野 健一, 野村 稔衛
    1998 年 72 巻 8 号 p. 834-839
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    迅速に腸管出血性大腸菌 (EHEC) O157感染症の診断をするための手段として, イムノクロマトグラフィーの原理により糞便から直接大腸菌O157LPS抗原を検出するキット (QuixTM) の有効性を検討した.
    臨床分離株である大腸菌0157の純培養菌を用いて検出感度を調べた結果, 5×105CFU/ml以上で陽性を示した.また臨床検体64症例の糞便を用いて培養法と比較したところ, 陽性一致率は95.0%(19/20例), 陰性一致率は86.4%(38/44例) であり両者間の一致率は89.1%(57/64例) であった.培養法が陽性であり本法が陰性であった1例については, 検体中の菌数が本法で検出できる感度以下であった.また培養法が陰性で本法が陽性であった6症例中4症例は, 大腸菌O157LPS抗原に対するIgM抗体が陽性であったことから, 大腸菌0157感染患者であり, 既に抗生物質が投与されていたため培養法の結果と乖離したと考えられた. また1症例はSalmonella urbana (O301302) が検出された.本菌のO301抗原は大腸菌O157抗原と同一であることから本法では交差反応がおこり偽陽性となった.
    本法をELISA法による大腸菌O157LPS抗原検出キットと比較した場合, 陽性一致率は100%(11/11例), 陰性一致率は82.1%(23/28例) であり, 両者間の一致率は87.2%(34/39例) であった.
    本法は, 直接糞便検体から大腸菌O157LPS抗原を約5分で検出し, 操作も簡便であるため, 一次医療機関や外来患者またはベッドサイドにおける迅速診断法として有用であると考えられた.
  • 三浦 大, 菅谷 憲夫, 林 恵理子
    1998 年 72 巻 8 号 p. 840-844
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Recent experience in Japan has suggested that influenza A encephalopathy may occur more frequently than generally appreciated and may have a grave prognosis. Influenza A encephalopathy has been managed to date only with supportive measures, because the efficacy of anti-viral therapy for encephalopathy has not efficacy of anti-viral therapy for encephalopathyhas not yet been documented. During the period from January 1996 to February 1998, we treated two cases of influenza A encephalopathy with amantadine (6mg/kg/day, p.o., for 7 days). Both became status epileptics and had loss of consciousness within 24hours after the onset of illness. They recovered without sequelae and had no side effects from amantadine treatment. Amantadine may be useful in the treatment of influenza A encephalopathy.
  • 坂田 宏, 丸山 静男
    1998 年 72 巻 8 号 p. 845-848
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    The patient was born by emergency cesarean section forfetal distress at 35weeks gestation with a weight of 2740g. The early neonatal course was complicated by transient tachypnea and renal failure. He was receiving oxygen and diureticus in incubator for 5days and his condition was very improved on day 5. On day 7 he became lethargy and there was inability to tolerate feeding. Investigation of the cerebrospinal fluid revealed 8, 000 leukocytes/μl. S.marcescens was grown from cultures of both blood and cerebrospinal fluid. Treatment was started with cefotaxime and ampicillin every 6 hour. On day 14 the CT showed a brain abscess located parietooccipitally on the left side and diffuse infarction on the right side. On day 14 and 23 recurrence of increased leukocytes in the cerebrospinal fluid, high values of serum CRP and deteriolation of clinical symptoms were observed. It is thought that the episodes show rupture of the abscess into the lateral ventricle. On day 55 surgical drainage was performed for the hydrocephalus. On day 110 the abscess was not found in the brain CT scan. His psycomotor development 3 years later was equivalent to two years old and he had secondary epilepsy.
  • 山之内 純, 岡田 貴典, 山内 保生, 横田 英介, 松本 勲
    1998 年 72 巻 8 号 p. 849-852
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 76-year-old female was admitted to our hospital because of fever and the right pleural effusion. On the analysis of pleural effusion, the total cell count was 6720/μl with 95% lymphocytes, and ADA was 38.1U/1. The culture of pleural effusion was negative, and the smear and PCR for Mycobacterium were also negative. For examinations, we performed eterography that showed cicatricial strictures of intestine. X-ray examination of the colonated colonoscopoy showed ulcers (circular type), shortening of the colon, Bauhin's valve insufficiency and diverticulum-like deformity. Then, she was diagnosed as intestinal tuberculosis. The smear and PCR of biopsy specimens from the lesion were positive, and antituberculotic therapy was effective. Finally, the culture of pleural effusion for Mycobacterium tuberculosis was positive after 8 weeks. We thought intestinal examnaton may be useful for the diagnosis of tuberculosis, when lymphocyte-rich exudative pleural effusion of unknown etiology is seen.
  • 小崎 明子, 佐々木 富子, 小松原 彰, 木村 晋亮
    1998 年 72 巻 8 号 p. 853-854
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 林 英蔚
    1998 年 72 巻 8 号 p. 855-856
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 沖本 二郎, 藤田 和恵, 狩野 孝之, 矢野 達俊, 小橋 吉博, 中村 淳一, 松島 敏春, 副島 林造
    1998 年 72 巻 8 号 p. 857-859
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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