1997年7月~1998年6月の1年間に受け付けた散発下痢症患者の糞便1, 563件について, 大腸菌の検索と市販病原大腸菌免疫血清によるO抗原血清型の特定を行い, 43型中29型, 247株の0抗原血清型を確認した. O血清型で優勢であったのは01で52%, 次いで優勢なのが018, 6, 111で計24%と, 4型で4分の3を占めた. また1996年8月~1997年5月に行った健常者検便51, 893件では, ベロ毒素産生性/腸管出血性大腸菌 (VTEC/EHEC) の分離頻度が高いO26, 111, 114, 128, 157と01の6型の分離頻度を調べ, 散発下痢症患者のそれと比較したところ, O1が6型分離株に占める割合は, 患者で80%, 健常者で93%, またO26, 111, 128の3型では患者で18%健常者で6%, O114, 157の2型では患者で2%健常者で1%と, 両者の構成比は類似していた. また我々が現在常用しているBeutin血液寒天培地での溶血株のO血清型別の比較でも, O18とO6とで患者の64%, 健常者の74%を占め, 次いで患者ではO1, 26が各々7%台, O28ac, 152, 157が各々4%弱, 健常者では01が5%台, O28ac, 55, 146, 152が4%弱と, 両者間に大差はなかった. 一方, 散発下痢症の他地域での報告と比較すると, どの地域からもよく分離されるO血清型 (1, 6, 8, 18, 25, 26, 55, 86a, 111, 125, 126, 127鼠128, 146, 148, 157, 166) がある反面, O29, 44, 78, 112ac, 115, 136, 143, 152, 168, 169等は地域的な偏りがあることが伺え, 地域差があると思われる.
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