感染症学雑誌
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73 巻, 8 号
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  • 樫山 鉄矢, 武市 朗子, 木村 仁, 布山 峰雄
    1999 年 73 巻 8 号 p. 717-721
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    路上生活者, あるいはいわゆるホームレスにおける結核症の実態については, 本邦でもいくつかの検討がなされている.しかしながら非結核性の呼吸器感染症については, 今までほとんど検討されていない.われわれは1993年8月当院開設時より1996年7月までの3年間に当院に入院した, いわゆるホームレスのうち, 臨床的に肺炎と診断された症例について検討した.患者は18例, 平均年齢51歳全例が救急車で来院し, 入院は冬季の夜間に集中していた.呼吸不全や重篤な合併症を有する例が多く, 入院後の集中的な治療にかかわらず, 1/3以上が死の転帰をとった.起炎菌が肺炎球菌と推定された例が多く, 重症の肺炎球菌肺炎が多いことが特徴的であった.
  • 佐藤 征, 三浦 富智, 斎藤 芳彦, 佐藤 勲, 大友 良光
    1999 年 73 巻 8 号 p. 722-727
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    ヒト糞便から分離したベロ毒素産生性大腸菌0157の10株を供試菌として増殖について検討した.複合培地 (TSB) の36℃ では24時間で, 25℃ では48時間でそれぞれ109CFU/mlに達した.
    合成培地 (Davis's Minimal Medium) の36℃ では接種6時間までは増殖を認めなかったが, 24時間後で106CFU/ml, 48時間後で108CFU/mlに達した.25℃ では24時間後は1.52×104CFU/ml, 48時間後は1.67×108CFU/ml, 72時間後は6.80×108CFU/mlに達した.
    複合培地と合成培地の4℃ での発育は観察した72時間までは増殖は認められなかった.
    グルコースを除いた合成培地での発育 (36℃) は供試した10菌株中, 7菌株 (70%) が増殖を認めた (接種48時問後に4菌株, 72時間後に3菌株).
    48時間後に増殖を示した4菌株の菌数は105CFU/mlであった.
    増殖を認めなかった3菌株の中, 1菌株は接種した179CFUは72時間後29CFUと残存していたが, 他の2菌株は接種した263CFU, 2, 420CFUは48時間後で完全に死滅した.
    グルコースを除いた合成培地で増殖できない菌株も所定濃度の1/10 (0.02%) 量のグルコース存在で増殖が支持され, その発育は濃度依存的であった
  • 綿貫 祐司, 小田切 繁樹, 鈴木 周雄, 高橋 宏, 高橋 健一, 吉池 保博, 小倉 高志, 庄司 晃, 西山 晴美, 戸田 万里子, ...
    1999 年 73 巻 8 号 p. 728-733
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1995年1月より1996年12月までの2年間に当科で胸部X線像で異常を認め, 喀痰検査を行うも抗酸菌塗抹・培養とも陰性で確診がつかないため気管支鏡を施行し, 気管支洗浄液の抗酸菌培養で非定型抗酸菌陽性であった14例を対象とし, 肺非定型抗酵菌症診断における気管支鏡検査の意義について検討した.性別では女子が9例と多数を占め, 受診動機は胸部異常陰影指摘が9例で, 有自覚症状は血疾3・咳嗽2の5例であった.陰影の性状は, 単純写真では主陰影が斑状・粒状影は9例と最多で, 浸潤影2例, 結節影3例であった.CTでの陰影の性状は胸膜付近の小結節影の集族が12例に認められ, このうち11例は陰影付近に気管支拡張を伴っていた.肺胞浸潤影は4例で, 空洞を認めたものは1例のみであった.気管支洗浄液の抗酸菌塗抹陽性は7例で, 培養では陽性14例中100コロニー以上は8例であった.培養でMycobacterium avium complex (MAC) は13例で同定されたが, このうち11例については同時に気管支洗浄液のPCR法によるMAC検査を行うも, MAC陽性は4例にとどまった.TBLBは11例で施行し, 抗酸菌感染による組織所見は, 肉芽腫4, 乾酪巣3など5例に認められた.
    気管支鏡検査は, 最近増加している気管支型の肺非定型抗酸菌症においても診断困難な病初期からの診断を可能とし, 本症早期の診断確定に有用である
  • 南方 良仁, 中西 大介, 宮本 和明, 寺杣 文男, 相沢 直孝, 上奥 敏司, 門内 かおり, 宮本 博行
    1999 年 73 巻 8 号 p. 734-742
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    健常人における風疹罹患の可能性について検討するため, 風疹ウイルスに対する抗体価を間接蛍光抗体法 (IF法, Capple社) により測定し, 赤血球凝集抑制試験 (HI法) による抗体価と比較検討した.
    IF法では, 90.3% (103/114) が, HI法では95.6% (109/114) が抗体陽性であった.抗体価の分布では, HI法による抗体価のピーク値がIF法による抗体価より4倍高い値であった.又, IF法による抗体価が32以下の場合, HI法による抗体価は8以下の例から1024と高い値を示す例まで広く分布した.IgM抗体は全員が陰性で, IgA抗体は1名のみが陽性であった.
    風疹の既往歴がある場合, 抗体陽性率はIF法で94.4% (51/54), HI法で96.3% (52/54) であった.ワクチン歴がある場合は, それぞれ88.5% (23/26), 100% (26/26) であった.既往歴もワクチン歴もない場合, 76.5% (13/17), 88.2% (15/17) であった.
    既往歴のある場合, ワクチン歴のある場合, 既往歴もワクチン歴もない場合, IF法又はHI法の一方で抗体陰性を示す例がみられた.しかし, 既往歴もワクチン歴もある場合, 全員が2つの方法で抗体陽性であった.
    今回の結果から, HI法では, 血清によりインヒビターの量にばらつきがあること, IF法とHI法で抗体価に差が認められる例があること, 臨床症状に基づく風疹の診断は容易でないことから, 個人において風疹を予防するためには2つ以上の方法で抗体価を測定することが重要で, いずれかの方法で問題がある場合にはワクチン接種を考慮することも1つの方法であると考えられる.
  • 川山 智隆, 大泉 耕太郎
    1999 年 73 巻 8 号 p. 743-748
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    救命救急センターにおける深部真菌感染症の実情の把握と深部真菌感染症における (1→3)-β-D-glucanの有用性について検討した.1996年7月から1997年7月の1年間にセンター入院患者で発熱を有した92例 (平均年齢54.5歳, 男/女=70/22) を対象とした.発熱時に得られた160検体について血液培養, 血中 (1→3)-β-D-glucan値およびカンジダ抗原価を測定した。
    臨床的に深部真菌感染症と診断されたのは92例中17例 (18.5%) で汎発性腹膜炎10例, 敗血症5例, 肺炎1例, 膿胸1例であった.
    深部真菌感染症群から得られた検体において血液培養, 血清 (1→3)-β-D-glucan値およびカンジダ抗原価の陽性率は, それぞれ52検体中10検体 (19.2%), 52検体中45検体 (86.5%) および40検体中6検体 (15.0%) であった.
    血清学的検査法では血清 (1→3)-β-D-glucan値の感度および特異性は86.5%および93.8%でカンジダ抗原価の15.0%と13の%に比較して優れていた.
    以上の結果から深部真菌感染症は救命救急センターにおいて比較的多くみられ, そのスクリーニング法として血清 (1→3)-β-D-glucan値測定が臨床的に有用と考えられた.
  • 篠原 美千代, 内田 和江, 島田 慎一, 後藤 敦
    1999 年 73 巻 8 号 p. 749-757
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    手足口病の主要な原因ウイルスであるコクサッキーウイルスA16型 (CA16) とエンテロウイルス71型 (Ev71) の簡便な検査方法, 特に中和反応を用いない同定方法を検討した.
    ウイルス分離では1990年にはVero細胞による分離が最も多かったが, 1994年以降は分離数が減少し, 代わってCaco-2細胞による分離が増加した.1998年はCA16の分離にMRC-5細胞も使用したが, Caco-2細胞と同等の感受性であった.細胞変性効果の出現はMRC-5細胞が最も早かった.
    CA1-10, ポリオウイルス1-3, エコーウイルス1~7, 9, 11, 14, 16, 17, 18, 24, 25, 27, 30, Ev71の各ウイルス及び分離ウイルスについてRNAを抽出し, 2種の下流プライマー (E31及びE33) を用いて2系列の逆転写反応を行った後, 同一の上流プライマー (P-2) を加えてPCRを実施した.P-2/E31の系では増幅されず, P-2/E33の系で増幅されるのはCA6, CA16, Ev71のみであった.分離ウイルスのP-2/E33系の増幅産物を制限酵素Taq I及びEcoT22Iで処理したところ, Ev71はすべて切断されなかったが, CA16はすべて切断され, その切断パターンはTaq Iでは3種類, EcoT22 Iでは1種類であった.この結果は塩基配列上の切断部位とも一致した.
    Caco-2, MRC-5細胞を使用してウイルス分離を行い, さらにRT-PCR, Taq I, EcoT22I切断を実施することにより1週間程度でCA16及びEv71を分離同定することが可能であった.
  • 山田 澄夫, 松下 秀, 工藤 泰雄
    1999 年 73 巻 8 号 p. 758-765
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1961~97年の37年間に東京都において実施した飲食物取扱業者検便からの赤痢菌およびサルモネラの検出の推移とその評価を検討した。赤痢菌は4326, 622件中2, 353件 (0.05%) から検出された.赤痢菌陽性率は1961年の0.28% (589例) から1969年の0.01% (9例) に加速度的に減少し, さらに1971-75年ではわずか7例, その後は3例を確認するのみであった。この急激な減少傾向はわが国の赤痢患者の発生状況と極めてよく一致するものであった.
    サルモネラは18年間で約9, 000例 (0.07%) 確認された。年次別陽性率は1980~88年の間は0.07%であったが89と90年に0.10%と上昇, 以後5年間は再び0.07%前後で推移, 1996年には0.05%に減少した.分離サルモネラは150種の血清型に型別され, そのうち最も高頻度に検出されたものはEnteritidis, 次いでLitchfield, Thompson, Hadar, Typhimurium, Infantis, Tennessee, Montevideo, Agona, Braenderupの順であり, Agonaを除き同期間東京都で発生したサルモネラ食中毒の大部分の原因血清型に相当した.特に, Enteritidisの検便成績および食中毒において占める割合は1989年以降著しく増加したが, その傾向はほとんど同様であった.以上の成績は, 本事業が予防衛生学的あるいは食品衛生学的に有用であったことを強く示唆するものであろう.
  • 藤井 毅, 中山 聖子, 石田 保, 門田 淳一, 朝野 和典, 河野 茂
    1999 年 73 巻 8 号 p. 766-771
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    結核菌暴露後の接触者検診におけるツベルクリン反応 (ツ反応) の解釈を困難にする要因の一つであるブースター現象が, 病院職員においてどの程度みられるかを明らかにすることを目的とした.当院職員75名に対してツ反応検査を行い, 強陽性者と発赤径30mm以上の中等度陽性者を除いた52名に対して2週間後に2回目の検査を行った.この二段階ツ反応検査の結果, 著明なブースター現象が認められ, 新たに強陽性と判定された者が16名, 1回目に陰性であった8名中6名が陽性となった.52名の発赤径の平均は1回目14.7±5.6mmであったが2回目には31.5±15.5mmと増大しており, 1回目と2回目の発赤径の差, すなわちブースター現象による発赤径の増大が20mm以上であったものが18名 (34.6%) 存在した.ブースター現象と1回目の発赤径や年齢との問には有意な相関は認められず, また, 感染を受けやすいと考えられる職種とそうでない職種との比較でもブースター現象に有意な違いはみられなかったことから, 今回予想以上に著明なブースター現象が認められた要因を明らかにすることはできなかった.しかし, 今回の成績からも結核感染源との接触があってツ反を行った場合, 真の感染者なのかどうかの判断は二段階ツ反応検査法によるデータがない場合には極めて困難であることが示唆され, 医療従事者に対する本法の普及が早急に必要であると考えられた.
  • 足立 枝里子, 吉野 健一, 竹田 多恵
    1999 年 73 巻 8 号 p. 772-777
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌 (EHEC) O157患者血清中の抗O157LPS抗体をELISA法により測定し, 病後免疫の変動を分析して, 血清学的診断における留意点を検討した.健常成人および小児のカットオフ値はIgM抗体がそれぞれ0.85, 0.40, IgG抗体が0.57, 0.39で, 年齢により大差があった.患者群においては成人は小児に比べると, 抗体価が低く陰性化するのも早いことがわかり, 成人患者においては特に採血の時期が診断上重要と考えられた.小児においては第3病日でも抗体の上昇が観察されるものもあり, また重症化している患児ほど早期からIgM抗体が高く検出されると思われた.保菌者では抗体上昇がみられず, 診断的価値はないこともわかった.血清中の抗O157 LPS抗体を測定することは, 原因菌が特定できない患者の診断に有用ではあるが, 検査の時期を考慮することが重要である.
  • 新庄 正宜, 菅谷 憲夫, 高橋 英介, 米山 浩志, 城崎 慶治
    1999 年 73 巻 8 号 p. 778-782
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A three-year old girl was hospitalized in a semi-conscious state following a febrile convulsion. She did not recover despite treatment and died 16 days after admission. Influenza A virus (H3N2) was detected from a throat swab from the patient, and serum hemagglutinin-inhibiting antibodies to the virus elevated from less than 8 to 256. Brain CT revealed bilateral thalamic hemorrhage and peripheral low density. Subarachnoid hemorrhage was also observed thereafter. Based on clinical manifestations and neuroimaging, this patient was diagnosed as an atypical case of acute necrotizing encephalopathy associated with influenza A virus infection. Such rapid progressive encephalopathies may occur due to intracranial vascular injury including vasculitis or spasms. Although it is clear that influenza A virus triggered this case, we cannot confirm that it was a pathogen. Also, it might be advisable to consider other possible contributing factors such as drugs administered before hospitalization.
  • 成田 光生
    1999 年 73 巻 8 号 p. 783-786
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    慢性肉芽腫症における真菌感染症はしばしば致命的であり, とりわけ脳膿瘍の治癒例は極めて少ない.本例は5年前のアスペルギルス脳膿瘍の旧病巣と同一部位に脳膿瘍を再発症したものの, 救命し得た1例である。
    症例は22歳男性, 左下肢の脱力・痺れ感を主訴に来診.頭部MRIにて右頭頂-側頭葉に周辺の浮腫を伴う活動性の病変を認め, 既往歴からアスペルギルス脳膿瘍の再発症と診断した.アムホテリシンB0.6mg/kg, 12時間点滴静注14日間投与にて病変は縮小傾向を示したが, 軽度ながら腎機能障害が進行した.7日間投与を中断し, 投与法を24時間点滴静注・隔日投与に変更, その後28日間の治療にて腎機能を維持しつつ, 炎症を鎮静化し得た.
  • 奥村 徹, 鈴木 幸一郎, 三井 浩, 木村 文彦, 伊藤 淳, 熊田 恵介, 小林 良三, 二木 芳人, 小濱 啓次, 藤井 千穂
    1999 年 73 巻 8 号 p. 787-791
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A previously healthy 15-year-old female was admitted to our hospital complaining of nausea and vomiting. She did not complain of diarrhea. A physical examination revealed a lower right quadrant abdominal tenderness without rebound or spontaneous pain and a knocking pain of the costovertebral angle. A high fever, knocking pain of costovertebral angle, and urinary findings including Gram's stain, lead us to suspect a urinary tract infection, cefotiam was administered intravenously. Spiking fever with shaking chills continued for three days, and three sets of blood cultures were positive for Salmonella Oranienburg, but her urine culture was negative. Her history was taken again, revealing an intake of a processed squid product. The product was confirmed by the local public health center to be Salmonella Oranienburg. Finally food poisoning by Salmonella Oranienburg with sepsis was diagnosed. With cefotiam she became better and was discharged from the hospital on the 10th hospital day. During admission to the hospital she did not experience any diarrhea, and her stool culture was negative.
    Epidemics of Salmonella Oranienburg food poisoning are relatively rare in the literature. In Japan, one has arisen as a result of contamination of a processed squid product in March 1999. However, there have been no cases without so-called gastroenteritic symptoms (abdominal pain and diarrhea) who were previously healthy and developed sepsis caused by Salmonella Oranienburg, reported in Japan. Even in previously healthy patients, with an epidemic situation of non-typhoidal salmonellosis, salmonella sepsis must be ruled out. Among such cases, those who present with spiking fever and shaking chills should be given antibiotic therapy after taking appropriate cultures.
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