感染症学雑誌
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74 巻, 5 号
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  • 抗菌性コーティング素材の開発
    橋本 英昭, 小野 憲昭, 門田 晃一, 公文 裕巳, 斯波 徹, 安達 俊明, 金子 佳代
    2000 年 74 巻 5 号 p. 431-440
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    新しい抗菌性カテーテルを開発するために, シリコンカテーテルにコーティングする抗菌剤および抗付着性剤を検討した. 抗菌剤として, 種々の銀化合物の抗菌作用, 化学的特性, 毒性などの有用性を評価した. クエン酸銀, リン酸銀, 酸化銀に優れた抗菌作用が認められ, 生物学的安全性, 抗菌力の強さ, 持続性よりクエン酸銀を選択した. また, いくつかの界面活性剤において, シリコンカテーテルへの細菌付着抑制効果が認められ, その中で, 大豆レシチンに濃度依存性の強い細菌付着抑制効果が認められた. 最終的に, クエン酸銀, 大豆レシチン, 液状シリコンの2: 2: 8の配合が, シリコンカテーテルへの理想的な抗菌性コーティングであると考えられた.
  • 新しい抗菌性カテーテルの抗菌力と持続性
    橋本 英昭, 小野 憲昭, 門田 晃一, 公文 裕巳, 斯波 徹, 安達 俊明, 金子 佳代
    2000 年 74 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    クエン酸銀レシチン, 液状シリコンを2: 2: 8で配合した抗菌性素材を内腔面および外表面にコーティングした抗菌性尿道カテーテルの有効性とその持続性を市販の抗菌性尿道カテーテルと比較した. この新しい抗菌カテーテルは, in vitroで強い抗菌力と優れた持続性を認めた. 臨床におけるカテーテル留置関連感染症の感染経路を再現しうる管内性感染, 管外性感染実験モデルを新たに考案し, 本抗菌カテーテルの有効性に関する総合的な評価を行った. 本抗菌カテーテルでは市販の抗菌カテーテルと比較して, 管内性, 管外性感染モデルのいずれにおいても, 抗菌効果およびその持続性において明らかに優れていた.
    以上より, カテーテル留置関連尿路感染症の予防に対する本カテーテルの有用性が示唆された.
  • 森 治代, 小島 洋子, 川畑 拓也, 大竹 徹, 大石 功
    2000 年 74 巻 5 号 p. 450-457
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    薬剤治療を受けている84名のHIV-1感染者について, 抗HIV薬に対する耐性検査を行ったところ, 43名 (51.2%) に何らかの逆転写酵素阻害剤に対する耐性獲得を示唆する遺伝子変異が検出された.また, プロテアーゼ阻害剤の投与を受けている感染者の80%以上において薬剤投与開始以前より1-3カ所の耐性に関与すると報告されている変異アミノ酸が検出されたが, その変異がプロテアーゼ阻害剤に対する耐性を誘導するという傾向は認められなかった. しかしながら, 治療開始後, 新たに3カ所以上のアミノ酸変異が蓄積された例では, 著しいHIV-1RNA量の増加が見られ, 薬剤耐性の獲得が示唆された. 遺伝子解析により推察される薬剤耐性 (genotype) と生物学的評価法による薬剤感受性 (phenotype) を比較したところ, 遺伝子レベルでは明らかな耐性変異が見られないにも関わらず薬剤感受性が低下している例が少ないながら認められた. このことから, 治療開始前やgenotype解析データと血中HIV-1 RNA量などの臨床データが一致しない場合にはphenotype耐性検査を行う必要があるものと考えられた.
  • 第1報: 臨床疫学的検討
    宇野 芳史
    2000 年 74 巻 5 号 p. 458-464
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    耳漏および鼓膜切開液から, ペニシリンGのMICが2.0g/ml以上のペニシリン耐性肺炎球菌が検出された小児急性中耳炎症例について, 急性中耳炎が難治化する要因について, 患児の患者背景因子, 臨床的背景因子および細菌学的因子について検討を行った.
    治療成績は, 通常の鼓膜切開術および抗菌薬の投与で治癒した症例を治療成功例群, 治癒せず, 鼓膜換気チューブを留置した症例あるいは留置するも耳漏が持続した症例を治療不成功例群とした.
    今回検討した患者背景因子および臨床的背景因子は, 今回の急性中耳炎に罹患した年齢, 性別, 集団保育の有無, 中耳炎の既往の有無, 兄弟の有無, 今回の中耳炎までの抗菌薬の投与の有無, 今回の中耳炎に対する治療の有無, PCGのMIC, cefditoren (以下CDTR) のMIC, 血清型である.
    検討項目の内, 両群で有意差を認めた項目は, 今回の急性中耳炎に罹患した年齢, 中耳炎の既往の有無, 抗菌薬投与の既往の有無, 今回の中耳炎に対する治療の有無, そのうちでも, 特に耳鼻咽喉科での治療の有無であった. 一方, 有意差を認めなかった項目は, 性別, 集団保育の有無, 兄弟の有無, PCGのMIC, CDTRのMIC, 血清型であった.
    今後は, 小児急性中耳炎が難治化する要因として, 患児の患者背景因子, 臨床的背景因子および細菌学的因子以外に, 患児個人の細菌感染に対する免疫力を検討する必要があると考えられた.
  • アンケート調査による
    寺田 喜平, 新妻 隆広, 大門 祐介, 片岡 直樹, 二木 芳人
    2000 年 74 巻 5 号 p. 465-469
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    医療関係者だけでなく, 臨床実習の学生も, 院内感染に関係する. 今回, 我が国医科大学の医学部学生に対する院内感染対策, 特にワクチンによって予防可能な疾患に関する現況と問題点を明らかにする目的でアンケート調査を行った. 57校 (71%) から回答を得た. 12%の大学で学生の院内感染例を経験し, 感染の内訳は麻疹, 水痘, 流行性耳下腺炎が3例ずつ, 風疹, B型肝炎, 結核が2例ずつであった. 学生から入院患者への感染例はなかった. 学生に既往歴やワクチン接種歴を報告させている大学が14%, 抗体検査実施大学が70%, 何もしていない大学が28%であった. 検査項目はB型肝炎が93%, 風疹25%, 麻疹23%, 水痘18%, 流行性耳下腺炎15%などであった. 抗体測定方法はCF法などの感度の低い方法で検査している例があった. 料金は48%が大学側の全額負担, 35%が一部補助であった. ツベルクリン反応は40%で実施され, その57%でBCGを接種していた. ワクチン接種は40%の大学で勧奨され, その85%は集団接種されていた. ワクチン料金は大学の全額負担は38%, 一部補助が15%で, 全額負担例はすべてB型肝炎ワクチンであった. その資金は81%の大学が支払っていたが, 一部で大学後援会や父兄会の補助があった. 対策はほとんどがB型肝炎に対してで, 結核や水痘や風疹などの感染に対するものは少なく, 今後の対応が待たれる.
  • 山崎 謙治, 大山 徹, 宇田川 悦子, 川本 尋義
    2000 年 74 巻 5 号 p. 470-475
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1989年から1998年の間に北海道から沖縄までの広範囲な地域で得られた検体から, さまざまなプライマーペアを用いたreverse tanscription-PCR法により902株のNorwalk-like viruses (NLVs) が検出された.そのうち塩基配列が明らかであった177株は遺伝子な多様性が認められたが, 153株 (86%) はgenogroup II (GII) に属するNLVsであった. アミノ酸配列の91%以上の相同性をもとに, GIIはG2 A-G2Eまでの5つのサブグループに分類することができた. G2C, G2D (これらをJP1と命名) およびG2E (JP2と命名) は日本でも検出される頻度は高くない (検出率17%) が, 海外諸国ではほとんど検出されないNLVsの新しいサブグループであった. これらのNLVsの多重アライメントを基にして作成した3対の新しい統一プライマーペア (P1/P2, P1/P3およびY1/Y2) はいずれもNLVsのGIおよびGIIを効率よく増幅した.
  • 池松 秀之, 鍋島 篤子, 鄭 湧, 李 文, 梶山 渉, 原 寛, 林 純, 柏木 征三郎
    2000 年 74 巻 5 号 p. 476-480
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1998/99年期のインフルエンザ流行時に, 特別養護老人ホームでのインフルエンザの治療に, アマンタジンを使用した. 福岡市内の特別養護老人ホームで, 1999年1月にA香港型インフルエンザ (H3N2) の流行が見られた. インフルエンザ様疾患を発症した入所者は, 1999年1月10日より1月31日までの期間において, 調査した264名中112名 (42.4%) であった. インフルエンザ様疾患の発生率は居住区により異なっていた. 1月21日の時点で, 発熱出現より3日以内の入所者15名 (男性2人, 女性13人, 平均年齢82.1歳) に, 1日量100mgを朝夕2回に分けて5日間投与を行った. 1月21日の発症者に対するアマンタジン投与開始後, 新規のインフルエンザ様疾患発症者数は減少し, アマンタジンを用いた発症者に対する早期治療により, 流行の拡大が抑えられたと考えられた. 治療としてアマンタジン投与を受けた15例の発熱期間の平均は3.6日で, アマンタジン投与を受けなかった97例の発熱期間の平均は4.4日であった. 発症1日目 (24時間以内) から投与が開始された5例の発熱期間の平均は2.6日と最も短く, アマンタジンの発症24時間以内の投与が, 高齢者において有効と考えられた.
    アマンタジンは, 高齢者のA型インフルエンザの治療に有用であり, 高齢者施設でのアマンタジンによる発症者に対する早期治療は, インフルエンザ流行の拡大の防止にも, 有用であると思われた.
  • 佐原 啓二, 杉枝 正明, 長岡 宏美, 三輪 好伸, 宮本 秀樹, 秋山 眞人, 中島 節子, 根路銘 令子
    2000 年 74 巻 5 号 p. 481-485
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1998年6-7月のインフルエンザ非流行期に, 静岡県内の学校でB/Victoria/2/87系統に属するB型インフルエンザウイルスによる集団発生があり, その後の流行期においても同系統のB型ウイルスによる流行が主流を占めた. この流行要因として, 学童年齢において同系統のB型ウイルスに対する抗体保有率が極めて低かったことが考えられた.
    また, 非流行期に分離されたヘラルドウイルスとそれに続く流行期に分離された流行ウイルスとの関係を調べた. 抗原解析では両者の抗原性がほとんど一致し, ヘラルド株が次シーズンの流行ウイルスの親株となったように推察された. しかし, 遺伝子解析の結果からヘラルド株は次シーズンの流行ウイルスの親株ではないことが明らかとなり, ヘラルドウイルスが必ずしも次シーズンの流行ウイルスの親ウイルスになり得ない場合もあることを示した.
  • 日吉 徹, 赤須 文人, 深澤 立, 高井 計弘, 吉次 通泰
    2000 年 74 巻 5 号 p. 486-490
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A study was made of a 55 years old male, who suffered from emphysematous cystitis with diabetes mellitus. He had multiple complications due to diabetic neuropathy such as foot ulceration, oculomotor nerve palsy, peroneal nerve palsy and a neurogenic bladder. Klebsiella pneumoniae and Pseudomonous aeruginosa were cultured from urine specimens. There have been only 19 reported cases of emphysematous cystitis since 1962. Fourteen of these cases had diabetes mellitus.
  • 齋藤 百合子, 高森 幹雄, 木村 幹男
    2000 年 74 巻 5 号 p. 491-496
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 67-year-old male was admitted with consciousness disturbance (JCS, III-200) after completing a 12-day tour to east Africa without malaria chemoprophylaxis. When he visited the hospital one day prior to the admission complaining of fever and a slightly sore throat, he did not mention the travel history. Soon after his travel history was revealed, blood films were prepared which showed abundant ring forms accompanied with a small number of trophozoites and schizonts of Plasmodium falciparum, with the parasitemia of 26%. Despite intravenous quinine infusion, first that of loading dose, his consciousness state (JCS, 111-300), renal and hepatic functions and anemia (Hb, 5.8g/dL) deteriorated progressively. Moreover, metabolic acidosis worsened with pH of 6.954, HCO3- of 3.4mEq/L, BE of-27.0mEq/L, PCO2 15.5mmHg by arterial blood gas analysis, although he received a large volume of sodium bicarbonate solution. The patient died on the 4th day of his illness.
    According to the literature, it is suggested that the treatment of metabolic acidosis in severe faciparum malaria with sodium bicarbonate is sometimes harmful, since it can result in sodium overloading, which may then precipitate pulmonary edema/ARDS. However, alternative treatment regimens have not yet been established. Future investigation on the etiology and the proper treatment of metabolic acidosis associated with severe falciparum malaria is highly needed.
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