香川小児病院にてMethicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) のToxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1) により発症した36例の新生児発疹症を経験した. その内の13例について血中毒素およびサイトカイン濃度を測定し病態形成におけるそれらの役割について検討し以下の結果を得た.
1. 臍部感染症の臍部炎症性滲出液と気道感染型の胃内容液のTSST-1濃度はともに高値であった. 血中TSST-1値は大半の発疹症は測定感度以下であったが, 気道感染型の9例中1例と重症MRSA感染症 (臀部蜂窩織炎・膿瘍) に発疹症を認めた1例に血中よりTSST-1が検出された.
2. 感染病巣のサイトカイン濃度を重症MRSA感染症の膿瘍内濃汁と気道感染型の胃内容液で検討したが, TNF-α, IL-1β, IL-6, IL-8値は著しく高値であったが, IL-2, IFN-γは血中濃度と変わらなかった.
3. 患児に認められる高サイトカイン血症 (IL-1β, IL-2, IL-6, IFN-γ) の値は重症度に比例した. 同時に, この高サイトカイン血症は抑制的作用を有するsTNF-R, IL-1ra, sIL-2R, IL-10の上昇を伴い4-5日ですみやかに正常化した.
4. 臍部感染型に比べ気道感染型は血中サイトカイン値がより高値なものが多く呼吸・循環障害を認めるものも存在した. 我々の検討にて本症は一般にMRSAによる組織破壊的な感染病巣を伴わない少量の毒素血症による疾患であり, このことが自然治癒傾向を示す経過に深く関与していると考えられた.
抄録全体を表示