呼吸器感染症を疑ったのべ1, 416例に経気管吸引法 (TTA) を施行した. TTAから何らかの病原体を分離した症例は97.3例 (68.7%) であった. 分離微生物の内訳は好気性グラム陰性菌が49.4%, 好気性グラム陽性菌が374%, 嫌気性菌が7.7%, 真菌が2.1%, 抗酸菌が1.4%, マイコプラズマが1.7%, ウイルスが2.4%であった.
呼吸器感染症の病態別にTTA分離微生物を集計した. 急性気管支炎では
H. influenzae,
S. pneumoniae,
M. catarrhalisなどを分離した. 院外肺炎では
s. pneumoniae, α-streptococcus属,
H. influenzaeの分離頻度が高かった. 院内肺炎ではα-
streptococcus風嫌気性菌,
P. aeruginosaなどが多かった. 肺膿瘍では分離菌の57.8%が嫌気性菌で,
Peptostreptococcus属などであった. 慢性下気道感染症持続感染では
H. influenzae,
P. aemginosaが重要な分離菌であり, 慢性下気道感染症急性増悪では
H. influenzae,
S. pneumoniaeが最も関与していた.
S. pnemoniaeは喀出痰よりTTAで分離率が高く, いわゆる上気道・口腔内常在細菌は喀出痰で高かった.
TTAで病原体を分離しなかった症例の解析をしたところ, 11.7%は他の検査で感染症, 18.1%は非感染性疾患と診断した. また18.3%はTTA検体が不良であり, 21.4%は抗菌薬の前投与が影響していた. 30.5%は原因不明であり, 検査できていない微生物が関与している可能性が推察された.
呼吸器感染症はその病態が複雑で, 病原微生物が多彩であることから, 診断には最適な方法を選択すべきで, TTAは呼吸器感染症の診断法として一つの有用な方法であろう.
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