10%ポビドンヨード製剤3種 (イソジン, ネオヨジン, J-ヨード) を, 原末を対象とし, 細胞毒性とモルモット創傷部に対する影響で比較検討し, 以下の結果を得た.
1. 用いた細胞株の中で顕著な毒性がみられたChang conjunctiva細胞において, 原末<J-ヨード<ネオヨジン<イソジンと10倍ずつ毒性の強調が認められた. また, 細胞株間でも毒性の違いが認められ, イソジン, ネオヨジンでChang conjunctiva>SIRC>FRSK>human fibroblastの順であった.
2. チオ硫酸ナトリウムで消色後の細胞に対する影響は, イソジン, J-ヨードで細胞毒性濃度の50%値 (CC
50) に変化が認められず, ネオヨジン, 原末では, Chang conjunctiva・FRSK細胞で毒性の消失が認められた.
3. コロニー形成法を用いた毒性試験において, イソジン, ネオヨジンの毒性は強く, PBS (-) による洗浄後でも, 毒性の緩和があるものの影響は0.01%まで認められた.
4. ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルNP-10は, 今回の検討で用いた界面活性剤の中で最も毒性が強く, ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムSBL-2Nと比較すると毒性は100倍異なった. 細胞株に対する感受性ではChang conjunctiva細胞で顕著に認められ, 次いでSIRC>FRSK>human fibroblastの順に毒性を示した. また, 2日より5日処理でより顕著となり, イソジンとJ-ヨードの製剤間の違いと相似していた.
5. モルモット創傷部に対する検討において, 表皮細胞間距離で原末が有意に短く, 全例でふさがっていた. また, 炎症部位面ではイソジンが有意に大きく炎症の遅延が認められた. これ以外に有意差はなかったが, 原末と比較し製剤は表皮細胞の滑走を阻害し, 炎症の遅延傾向が認められた.
以上, ポビドンヨード製剤間の毒性の相違は, 原末に添加されている界面活性剤の影響と考えられた. 今後, 本基礎検討をふまえ, 創傷・粘膜・眼等への消毒にどのような添加物を含んだ製剤がいいのか, 詳細な臨床治験が必要と考えられた.
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