前立腺炎症候群NIH新分類 (1999) のカテゴリーIV (無症候性前立腺炎) の病理像を明らかにする目的で, 血清前立腺特異抗原 (prostatic specific antigen;PSA) が高値のために前立腺6カ所針生検を行った検体を病理組織学的に解析し, 臨床的パラメーターとの比較検討を行った.
1996年1月より2000年12月までに血清PSAが高値のために前立腺癌が疑われ, 経直腸的前立腺6カ所針生検を施行した785症例のうち, 病理組織学的に前立腺炎と診断された88例 (11.2%) を対象とした. これらを, Trueらの病理組織分類 (1999) に準じてlocation, grade, extentの3要素からなるsubtypeに分類し, 各subtypeと臨床的パラメーター (PSA, PSA density, 膿尿の有無, 細菌尿の有無) との関連性を検討した.
病理組織学的分類では, grade別にはmild 12.5% (11/88), moderate 71.6% (63/88), severe 15.9% (14/88) とmoderateが最も多く, location別にはglandular 2.3% (2/88), periglandular 68.2% (60/88), stromal 29.5% (26/88) とperiglandularが最も多く認められた. これらの病理組織学的subtypeと臨床的パラメーターとの間には統計学的に特定な関連性を認めなかったが, その後経過観察が行われ, 再び病理組織学的検討がなされたもののうち7例 (7.95%) に前立腺癌が発見された. 膿尿は29.1% (23/79) に認められた. また, 細菌尿は14.3% (11/77) に認められ, 分離菌の内訳は
Enterococcus faecalis 4株,
Pseudomonas aeruginosa および
Staphylococcus aureusが各2株,
Escherichia coli, Klebsiella oxytoca, Enterobacter cloacae, Enterobacter aerogenes, Staphylococcus haemolyticus, Staphylococcus epidermidis, Gram positive rod, および
Candida spが各1株であり, これらと病理学的subtypeとの特定の傾向を認めなかった.
以上の結果より, 前立腺針生検の対象患者においてカテゴリーIVの頻度は低くはなく, また, 病理学的分類と臨床的パラメーターとの間に特定な関連性はないものの, その後この中の少数に前立腺癌が発見されたことから, カテゴリーIVと診断されたとしても引き続き経過観察が必要であると考えられた.
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