感染症学雑誌
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78 巻, 8 号
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  • 河合 直樹, 岩城 紀男, 川島 崇, 佐藤 家隆, 重松 武, 近藤 邦夫, 前田 哲也, 金沢 英夫, 廣津 伸夫, 宮地 清光, 国島 ...
    2004 年 78 巻 8 号 p. 681-689
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2002/2003年流行期に全国多施設で迅速診断キット (Capilia FluA, B) により診断されたインフルエンザ2, 145例 (A型1, 408例, B型737例, A型はH3N2) と同キット陰性670例の計2,815例について, インフルエンザ罹病中の最高体温 (対象2, 474例) とその他の症状 (対象全2,815例) を年齢層別に検討した.
    最高体温が38℃, 38.5℃, 39℃を超す症例の比率は16~64歳ではA型がB型, 陰性よりも有意に高く, B型と陰性群間に有意差はみられなかった. 一方, 小児では38.5℃, 39℃を超す症例比率はA, B型ともに陰性よりも高く, A, B型間では6歳以下の39℃超以外には有意差がみられなかった. また65歳以上ではA型, B型, 陰性群間で各発熱基準を満たす症例比率に有意差はみられなかった.
    発熱以外の症状のうち, 咳はA, B型とも各年齢層で80%以上の高頻度にみられ, 64歳以下では陰性群より有意に高率にみられた (p<0.001). 鼻汁, 食欲不振も64歳以下では陰性群よりA, B型で有意に高率にみられ, また倦怠感, 頭痛, 筋肉痛も16~64歳のA型では陰性群より有意に高率にみられた. A型, B型の症状の差異は各年齢層とも比較的少なく, 特に小児ではほとんどみられなかった.
    各症状の出現率を年齢層間で比較すると, A, B型とも鼻汁, 食欲不振, 嘔吐, 下痢は成人よりも小児の方が高頻度でみられた.
    インフルエンザの症状診断にあたっては, 年齢やウイルス型の差異を考慮する必要があることが示唆された. なお症状的な特徴に乏しい高齢者での診断には現状では迅速診断キットの使用が有用と思われる.
  • 板垣 道代, 白木 豊, 山田 万希子, 所 光男, 泉谷 秀昌, 渡辺 治雄
    2004 年 78 巻 8 号 p. 690-698
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2000年4月から2003年3月に岐阜県において検出されたS.Enteritidis株について, PFGEとファージ型別を行った.その結果, 岐阜県における優位なクローナルラインの存在が明らかとなった.
    ファージ型別では, 12のファージ型とRDNCに型別され, 最も優勢なファージ型はPT47 (34.4%) であり, 次いでPT1 (21.9%), PT4 (16.6%), RDNC (11.3%) であった.
    S. Enteritidis 151株はXbaIによるPFGEでは17型, BlnIでは44型 (B1-B44) に型別され, XbaIに比べ, BlnIがより詳細に供試株を識別し, 有用な情報を提供することを示した.
    ファージ型とBlnIによるPFGE型を組み合わせることにより, 53の組み合わせが同定された. PT47はPFGEにより細分されることはなく, 全てB1に型別された. B1-PT47は最も優勢な型であり, 散発事例患者, 食中毒事例, 健康保菌者から検出された.
  • 顔 海念, Tuan Anh NGUYEN, Tung Gia PHAN, 沖津 祥子, 李 燕, 牛島 廣治
    2004 年 78 巻 8 号 p. 699-709
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    ロタウイルス, アデノウイルス, ノロウイルス, サポウイルス, アストロウイルスは世界中の散発的及び集団的急性胃腸炎の発生に関わると考えられている. そのため, 下痢症患者の糞便検体からこれらのウイルスをスクリーニングする迅速かつ感度のよい検出法が求められている. 以前の研究で, 我々は糞便検体からノロウイルス (グループI, グループII), サポウイルスとアストロウイルスを同時に検出するRT-sm PCRを開発した. 最近, 我々は新たにアデノウイルス, A群とC群ロタウイルスを同時に検出するRT-multiplex PCRを開発した. 本研究ではこの方法で2001年12月から2003年4月までに中国雲南省小児下痢症患者から採取した糞便検体を用いてアデノウイルス, A群とC群ロタウイルスを検査した. 207検体のうち114検体が検出され, 検出率は, 55.1%となった. このうち, アデノウイルス, A群, C群ロタウイルスはそれぞれ11, 101, 1で, 混合感染 (アデノウイルスとA群ロタウイルス) が1検体であった. 流行は主に10月と11月であった. 以上をまとめると, 下痢症を引き起こすアデノウイルス, A群とC群ロタウイルスの流行調査にmultiplex PCRは迅速で, 便利な実験室診断法であると考えられる.
  • 古畑 勝則, 原 元宣, 吉田 真一, 福山 正文
    2004 年 78 巻 8 号 p. 710-716
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    全国各地の温泉水におけるレジオネラ属菌の生息状況を把握するために, 全国47都道府県の温泉水についてレジオネラ属菌の分離を試み, 以下のような成績を得た.
    1) 全国各地の温泉水710試料中204試料 (28.7%) からレジオネラ属菌が分離され, 47都道府県すべての温泉水から分離された. これを地域別にみると, 中国, 東北および関東地方の分離率が30.7%~31.0%とやや高く, 次に中部と四国地方が28.6%~29.2%, 北海道, 近畿および九州地方の分離率は25.0%~26.2%とやや低かった. また, これらの分離率を温泉水のpH別にみると, pH3.1~pH7.5で34.8%と最も高く, 次にpH7.6以上で24.8%であったが, pH3以下で4.9%と最も低い分離率であった.
    2) 検出された菌数は102CFU/100ml未満が98試料 (48.0%) と最も多く, 次に102CFU/100ml台が71試料 (34.8%), 103CFU/100ml台が29試料 (14.2%) と続き, 104CFU/100ml以上検出された試料が6試料 (2.9%) あった.
    3) 分離された251株について同定したところ, 菌種別では245株 (97.6%) がL.pneumophilaに該当し, 優占種であった. また, 血清群別では, 1群および5群に型別される菌株が多く認められた.
    以上のことから, 菌数は少ないものの, 日本各地の温泉水には広くレジオネラ属菌が生息していることが明らかになった.
  • CZX添加・無添加による比較
    細坂 泰子, 花木 秀明, 林 泉, 上別府 圭子, 砂川 慶介
    2004 年 78 巻 8 号 p. 717-721
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    近年, バンコマイシンとβ-ラクタム薬が拮抗を示すMRSA (β-lactam antibiotic induced vancomycinresistant MRSA; BIVR) が本邦で報告されるようになってきている. 本研究では1998年から2002年に癌専門の総合病院から分離された500株のMRSAを用いてBIVRの検出を試みた. 同時に前培養においてvancomycin (VCM) 耐性を誘導するβ-ラクタム薬としてceftizoxime (CZX) の添加と無添加の条件でBIVRの検出率を比較した. CZX添加で前培養したMRSAから検出されたBIVRは20.4% (102/500株), CZX無添加では9% (45/500株) で, 有意にCZX添加で検出率が高かった (P<0.001). また科別由来では化学療法科 (33.3%), 頭頸科 (27.0%), 泌尿器科 (20.0%) の順で検出割合が高かった. 本研究で検出されたBIVRはCZX添加で高い割合を示し, 前培養にβ-lactam薬を添加することで, よりBIVRの検出が高くなることが示唆された.
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