2002/2003年流行期に全国多施設で迅速診断キット (Capilia FluA, B) により診断されたインフルエンザ2, 145例 (A型1, 408例, B型737例, A型はH3N2) と同キット陰性670例の計2,815例について, インフルエンザ罹病中の最高体温 (対象2, 474例) とその他の症状 (対象全2,815例) を年齢層別に検討した.
最高体温が38℃, 38.5℃, 39℃を超す症例の比率は16~64歳ではA型がB型, 陰性よりも有意に高く, B型と陰性群間に有意差はみられなかった. 一方, 小児では38.5℃, 39℃を超す症例比率はA, B型ともに陰性よりも高く, A, B型間では6歳以下の39℃超以外には有意差がみられなかった. また65歳以上ではA型, B型, 陰性群間で各発熱基準を満たす症例比率に有意差はみられなかった.
発熱以外の症状のうち, 咳はA, B型とも各年齢層で80%以上の高頻度にみられ, 64歳以下では陰性群より有意に高率にみられた (p<0.001). 鼻汁, 食欲不振も64歳以下では陰性群よりA, B型で有意に高率にみられ, また倦怠感, 頭痛, 筋肉痛も16~64歳のA型では陰性群より有意に高率にみられた. A型, B型の症状の差異は各年齢層とも比較的少なく, 特に小児ではほとんどみられなかった.
各症状の出現率を年齢層間で比較すると, A, B型とも鼻汁, 食欲不振, 嘔吐, 下痢は成人よりも小児の方が高頻度でみられた.
インフルエンザの症状診断にあたっては, 年齢やウイルス型の差異を考慮する必要があることが示唆された. なお症状的な特徴に乏しい高齢者での診断には現状では迅速診断キットの使用が有用と思われる.
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