2004/05年シーズンは, 多くの地域で複数のインフルエンザウイルス [B型とA (H3) 型の2種類, あるいはB型, A (H3) 型, A (H1) 型の3種類] が, 同時期に混合流行を起こしていた. そうした流行状況下では, 同じヒトが同時に複数のウイルスに重複感染を起こす可能性が考えられた.
我々は2005年2月から3月にかけて, 全国13の小児科診療施設において, インフルエンザ迅速診断キットがA型とB型の両方に陽性反応を示したことから, 2種類のインフルエンザウイルスの重複感染が疑われた15例について, RT-PCR法とウイルス分離法で重複感染の有無をウイルス学的に検討した.
RT-PCR法検査から15例中10例はB型とA (H3) 型の, また別の1例はB型とA (H1) 型の重複感染例であることが確認された. 一方, 迅速診断キットでは明らかにA型とB型の両方に陽性反応を示したにもかかわらず, RT-PCR法ではB型の遺伝子しか検出されなかった症例が2例あり, また別の2例については, いずれの型のウイルス遺伝子も検出されず, それらの4例は迅速キットの判定結果が偽陽性であった可能性が考えられた.
ウイルス分離法では, 対象とした15例中, ウイルス分離を実施しなかった4例を除き, 11例中9例からRT-PCR法の結果と一致する型のインフルエンザウイルスが分離された.
複数の型のインフルエンザウイルスが混合流行している際には, 重複感染例があることを考慮して, 検査や治療が行われる必要があると思われる.
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