感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
79 巻, 11 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 堤 裕幸
    2005 年 79 巻 11 号 p. 857-863
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    RSウイルス (RSV) は世界中に遍在し, 乳児の呼吸器感染症の最も頻度の高い原因ウイルスである. グループA, Bに分けられるが, その中にも様々な遺伝子型が存在し, 地理的, そして時間的な集積性を持ちながら世界的レベルで流行を繰り返している. その病態についてはRSVが感染細胞に引き起こす, 種々サイトカイン, ケモカインの遺伝子の活性化に焦点当てられ, 解明がなされようとしている. そのワクチン開発は, 副反応などのために成功していない. 抗ウイルス薬についても, 様々な物質の開発が進められているが, 未だ臨床使用されたものは無く, RSVヒ気道炎に対しては対症療法が主に行われている. 一0方, 近年, 抗RSVヒト化モノクローナル抗体が開発され, 未熟児や心肺に基礎疾患を有するハイリスク乳児に予防的に投与され, 入院率の減少という効果が確認された.
  • 久高 潤, 堀川 和美, 瓜生 佳世, 松雪 星子, 緒方 喜久代, 河野 喜美子, 山口 仁孝, 山崎 省吾, 渡辺 治雄, 岩永 正明
    2005 年 79 巻 11 号 p. 864-870
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    食中毒及び感染性胃腸炎の潜伏時間と下痢, 嘔吐, 発熱, 腹痛, 頭痛等の臨床症状を集計し検討した.特に発生頻度の高い10病原体 (Norovirus, Salmonella, Vibrio Parahaemolyticus, Campylobacter jejuni, Clostridium perfringens, 腸管出血性大腸菌 (STEC), 腸管毒素原性大腸 (ETEC), Shigella sonnei/flex-neri (Shigella), Staphylococcus aureus, 嘔吐型Bacillus cereus) について解析を行った. 対象としたのは2000年1月から2004年12月までに九州10地区の衛生研究所管内で発生した646症例である. 調査の結果, 平均潜伏時間が最も短かったのはB. cereus (0.8h) 次いでS. aureus (3.3h), C.perfringens (10.7h) とV. parahaemolyticus (164h) であった. なかでもS. aurcusおよびB. cereusは6時間以内にV. para-haemolyticus, C. perfringensは24時問以内にほぼ全例が発症していた. 血便を示す例はSTECとShig-ella以外では殆ど見られなかった. 嘔吐の発現は高頻度群と低頻度群にはっきりと区別され, 高頻度群としてはS.aureusB. cereusで, ほぼ全症例に見られNorovirusの71.5%, V.parahaemolyticusの56.1%が続いた. 低頻度群では最高でもC. perfringensの22.0%でありETEC, STECは5%前後であった. O157STECとO157以外のSTEC株を比較すると血便・腹痛・嘔吐では有意にO157に差が見られた (P-値0.01以下).
    今回の調査で各病原体による臨床症状の発現頻度を具体的な数値として示すことができたほか, 潜伏時間, 血便, 嘔吐, 発熱の4項目では病原体別に特徴的な発現頻度を有する事が判明した. 今回の結果は医療機関を受診するまでもない軽症者から入院を要した重症者, また輻広い年代が含まれることから, 保健所や衛生研究所が集団食中毒等の原因調査を行う際の有用な資料になると思われた.
  • 荻田 純子, 黒崎 知道, 藤崎 和仁, 牧野 巧, 石和田 稔彦, 河野 陽一
    2005 年 79 巻 11 号 p. 871-876
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    1995年1月から2004年12月までの10年間に千葉市立海浜病院小児科において口腔より臨床分離されたA群溶血性連鎖球菌の薬剤感受性の年次推移, 除菌失敗率について検討した.
    755株が分離され, 薬剤感受性試験ではpenicilin G (PCG), cefotaxim (CTX), cefaclar (CCL) に全株が感受性であった. erythromycin (EM) 耐性株はこの10年間で増加し, 耐性率は2001年以降各年10%を越え, 2004年は19%だった. 特にMIC 16μg/mL以上の高度耐性株が増加していた.
    ペニシリン系薬による治療後の除菌失敗は調査期間中118株 (15.6%) で, この10年間で明らかな増加傾向は認めなかった.
    近年, 細胞内侵入能を有するA群溶血性連鎖球菌の存在が明らかになり, βラクタム系抗菌薬による余菌失敗の原因のひとつとして考えられている. これらのA群溶血性連鎖球菌に対しては細胞内への移庁性の良いマクロライド系薬が選択肢となりうる. しかし, 近年マクロライド耐性株が増加しており, その使用に際しては細菌培養を行い, 感受性に注意を払うことが重要である.
  • 高尾 信一, 原 三千丸, 角田 修, 島津 幸枝, 桑山 勝, 福田 伸治, 宮崎 佳都夫
    2005 年 79 巻 11 号 p. 877-886
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2004/05年シーズンは, 多くの地域で複数のインフルエンザウイルス [B型とA (H3) 型の2種類, あるいはB型, A (H3) 型, A (H1) 型の3種類] が, 同時期に混合流行を起こしていた. そうした流行状況下では, 同じヒトが同時に複数のウイルスに重複感染を起こす可能性が考えられた.
    我々は2005年2月から3月にかけて, 全国13の小児科診療施設において, インフルエンザ迅速診断キットがA型とB型の両方に陽性反応を示したことから, 2種類のインフルエンザウイルスの重複感染が疑われた15例について, RT-PCR法とウイルス分離法で重複感染の有無をウイルス学的に検討した.
    RT-PCR法検査から15例中10例はB型とA (H3) 型の, また別の1例はB型とA (H1) 型の重複感染例であることが確認された. 一方, 迅速診断キットでは明らかにA型とB型の両方に陽性反応を示したにもかかわらず, RT-PCR法ではB型の遺伝子しか検出されなかった症例が2例あり, また別の2例については, いずれの型のウイルス遺伝子も検出されず, それらの4例は迅速キットの判定結果が偽陽性であった可能性が考えられた.
    ウイルス分離法では, 対象とした15例中, ウイルス分離を実施しなかった4例を除き, 11例中9例からRT-PCR法の結果と一致する型のインフルエンザウイルスが分離された.
    複数の型のインフルエンザウイルスが混合流行している際には, 重複感染例があることを考慮して, 検査や治療が行われる必要があると思われる.
  • 耐性株の割合および経口抗菌薬に対する薬剤感受性について
    砂川 慶介
    2005 年 79 巻 11 号 p. 887-894
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2002年11月~2003年6月の定められた4週に日本全国20施設の小児科外来を受診した, 初診小児呼吸器感染症児より分離されたStreptococcs pneumoniae 468株, Haemophilus influenzae 557株に対し, 耐性株の割合および経口抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した. S. pneumoniaeのうちPRSPは27%, H. in-fluenzaeのうちBLNARは35%であった. S.pneumoniaeに対するMIC90 (μg/mL) は, β-ラクタム系ではfaropenemが0.5と最も優れたMICを示し, cefditoren-pivoxilが続いた. マクロライド系およびケトライド系薬では, telithromycinが0.12と最も優れていた. H. influenzaeに対するMIC90 (μg/mL) は, β-ラクタムでは0.25でcefditoren-pivoxilが, マクロライド系およびケトライド系薬では, azithromycin, telithromycinの順であり, 薬剤の選択にあたってはこの成績を考慮する必要があると考えられた.
    今後, 耐性菌の動向調査および各種経口抗菌薬の臨床効果に対する調査が必要と思われる.
  • 臼井 大介, 石井 良樹, 赤池 洋人, 伊住 浩史, 古村 速, 川崎 浩三, 尾内 一信
    2005 年 79 巻 11 号 p. 895-899
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    We report a case of Yersinia pseudotuberculosis (Y. ptbc) infection complicated by disseminated intravascular coagulation (DIC) that presented as Kawasaki disease (KD).
    A 9-year-old girl had been well until two days before, when she developed a fever, exanthem, and abdominal pain. An erythematous macular rash was observed in the perineum, and she had astrawberry tongue.
    The patient was admitted to Kawasaki Medical School Hospital because the macular rashspread over her entire body, and edema of her hands and conjunctivitis subsequently developed.Echo cardiography showed dilation of the left coronary artery. Thrombocytopenia and an elevatedtotal fibrin degeneration product level were noted on the third hospital day, and the prothronmbinand partial-thromboplastin times were prolonged. Her clinical presentation was typical of KD and DIC. A stool culture and a blood culture were negative. Serologic tests were positive for antibodies to Y. ptbc. The antibody titer against Y. ptbc-derived mitogen was not elevated after her recovery.
    Y. ptbc infection should be considered in an older child whose clinical findings fulfill the criteriafor KD complicated by DIC.
feedback
Top