感染症学雑誌
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79 巻, 5 号
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  • 横山 栄二, 小岩井 健司, 内村 眞佐子
    2005 年 79 巻 5 号 p. 307-313
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Vibrio cholerae O1の生物型別とPCRを用いたゲノタイプを, V. cholerae O1アジア型9株およびエルトール型81株を使用して比較した.
    V. cholerae O1の生物型別に用いられる溶血性, 鶏赤血球凝集性, VP反応, ポリミシキンB感受性およびクラシック・ファージIV感受性について調べたところ, アジア型1株が鶏赤血球凝集反応で非定型的性状を示し, エルトール型18株がポリミキシンB感受性以外の生化学性状で非定型的性状を示した.
    PCRを用いてhlyA, rtxAおよびrtxC保有状況を調べた結果, アジア型の全ての株がアジア型hlyAのみ保有し, エルトール型の全ての株がエルトール型hlyA, rtxAおよびrtxCを保有していた.一方tcpAの保有状況は, アジア型の全ての株がアジア型tcpAを保有していたが, ctxを保有しないエルトール型5株でエルトール型tcpA特有の増幅バンドが得られず, そのうち1株ではアジア型tcpA特有の増幅バンドが確認された.
    以上のことから, V. cholerae O1の生物型はPCRを用いて検査したhlyA, rtxAおよびrtxCいずれかの保有状況に基づくゲノタイプと一致しており, 生化学性状の代用としてPCRを用いてゲノタイプを調べることで生物型別を行うことの有効性が確認されたが, エルトール生物型の起源を考え合わせると, hlyA保有状況により型別することが最も適切であると思われる.
  • 中嶋 洋, 山崎 貢, 狩屋 英明, 大畠 律子
    2005 年 79 巻 5 号 p. 314-321
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2003年11月28日から12月3日にかけて, 国内15都府県 (22自治体) からカンボジアへ渡航した団体旅行者78名中24名 (31%) が下痢・腹痛等の症状を呈した.各都府県で実施された患者便計20名の検査結果の集計では, 既知病原微生物の検出率は5~15%に制上まり, 原因は特定できなかった.岡山県と愛知県は下痢原性大腸菌の一つのカテゴリーである腸管凝集性大腸菌 (enteroaggregative Escherichia coli: EAggEC) による可能性を考えて, 患者8名 (岡山7, 愛知1) の大便より分離された大腸菌について, EAggECに関連する病原因子 (aggR及びastA遺伝子) をPCR法により調べた.更に凝集付着性をclump法とHEp-2細胞を用いて検査した.その結果, 3名由来の血清型OUT: H10の大腸菌がEAggECと同定され, その検出率38% (3/8) は最も高率であった.これらのEAggECはプラスミドプロファイル, PFGEパターン及び薬剤耐性パターン (ABPC, TC, NA, ST, TMP) も一致したことから, 患者3名は同一起源のEAggEC (OUT: H10) に感染していたことが明らかとなった.また, aggR遺伝子陽性の大腸菌が必ずしも細胞に凝集付着するものではなく, aggR保有株の50%, clump陽性株の100%が凝集付着した.EAggECの同定には, 簡易迅速なPCR法によるaggR遺伝子の検出とclump形成試験で段階的にスクリーニングした後に, HEp-2細胞への凝集付着性の確認を行うことが最も効率的であるとわかった.
  • 白石 正, 中川 美貴子, 仲川 義人, 富永 真琴, 吉谷 須磨子
    2005 年 79 巻 5 号 p. 322-328
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    麻疹, 風疹, ムンプスおよび水痘・帯状庖疹ウイルスによる院内感染を防止するためには, 医療従事者自らがそれぞれに対する抗体の有無を認識し, 抗体を保有していない場合にはワクチン接種により免疫を獲得しておくことが必要と考える. 今回, 医療従事者686名 (男性240名, 女性446名) を対象に, 麻疹, 風疹, ムンプスおよび水痘・帯状庖疹ウイルスに対する抗体保有の状況を把握する目的でELISA法により血清抗体価を測定し, その動向を解析した.各抗体の非保有者の割合は, 麻疹86% (59名686名), 風疹9.9% (68名/686名), ムンプス 15.2% (104名/686名) および水痘0.7% (5名/686名) であった. 麻疹抗体非保有者は21~30歳17.5%が最も多く, 加齢に伴い減少し51歳以上では2.4%であった.風疹抗体非保有者は21~30歳82%, 31~40歳11.7%, 41~50歳の13.2%を頂点に51歳以上では4.1%と減少した. 非保有者は男性に多く認められた.ムンプス抗体非保有者は21~30歳13.6%, 31~40歳が20.7%と最も多く51歳以上では10.8%と減少し, 非保有者は男性に多く認められた. 水痘抗体非保有者は21~30歳男性4名, 31~40歳女性1名のみであった. 抗体非保有者の男女差は風疹およびムンプスに認められた.風疹はワクチン接種による影響が考えられるが, ムンプスについては不明である. 一方, 麻疹, 風疹およびムンプス抗体非保有者中ワクチン接種の既往を有するものが, それぞれ46%, 21%, 21%存在し, vaccine failureによるものと考えられた.測定結果は個々人に通知し, 非保有者にはワクチン接種を奨励した.効果的な院内感染防止のためには, 新規採用職員を含め定期的な調査およびワクチン接種の奨励が必要と考える.
  • 吉田 耕一郎, 二木 芳人, 毛利 圭二, 森 祐一朗, 尾長谷 靖, 福田 実, 宮下 修行, 小橋 吉博, 岡 三喜男
    2005 年 79 巻 5 号 p. 329-340
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    臨床検体を用いて4種の (1-3)-β-D-グルカン測定法 (希釈加熱-エンドポイント法, 希釈加熱-比濁法, アルカリ処理-カイネティック法, アルカリ処理-エンドポイント法) における非特異反応出現状況を調査し, 非特異反応相当値に由来する偽陽性が各々の感度・特異度に及ぼす影響を検討した.材料には2002年8月から9月の2カ月間に川崎医科大学附属病院で, 血中β-グルカン値測定が行われた患者174例から採取・保存されていた血漿460検体を用いた.各診断薬の添付文書に従った通常測定系と, 安息香酸4-アミジノフェニル塩酸塩を各法の反応系に添加してリムルス反応を抑制した系でβ-グルカン値を測定し, 通常測定値と非特異反応相当値を算出した.非特異反応出現頻度は希釈加熱-エンドポイント法: 2.4%, 希釈加熱-比濁法: 0%, アルカリ処理-カイネティック法: 53.3%, アルカリ処理-エンドポイント法: 99.3%であった. また, 各測定法の感度/特異度/陽性適中率/陰性適中率は, 希釈加熱-エンドポイント法: 35.7%96.0%, 45.5%94.2%, 希釈加熱-比濁法: 286%/96.0%/40.0%/93.5%, アルカリ処理-カイネティック法: 78.6%/80.1%26.8%/97.6%, アルカリ処理-エンドポイント法: 57.1%/84.1%/25.0%95.5%であった.非特異反応の認められた3法では非特異反応相当値を補正することにより, 希釈加熱エンドポイント法: 42.9%96.0%/50.0%/948%, アルカリ処理-カイネティック法: 57.1%/91.4%38.1%95.8%, アルカリ処理-エンドポイント法: 42.9%/94.0%/40.0%/94.7%と変化した. アルカリ前処理を行う2法では, 非特異反応相当値を除外することにより, 各々10%程度特異度が向上した. 非特異反応の出現はこれらのβ-グルカン測定法の特異度が低いことに大きく関与しており, 今後の改善が望まれる.
  • 井上 哲郎, 田中 栄作, 櫻本 稔, 水口 正義, 前田 勇司, 馬庭 厚, 寺田 邦彦, 後藤 俊介, 竹田 知史, 岡元 昌樹, 浅野 ...
    2005 年 79 巻 5 号 p. 341-347
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    We reported three sisters of pulmonary Mycobacterium avium complex (MAC) disease. The oldest sister was complaining of bloody sputum, and cultures were positive for M. avium. By monotherapy with clarithromycin, symptom and imaging findings had shown no progression for six years. The second sister was complaining of productive cough, and cultures were positive for M. intracellulare. Her symptom and imaging findings had shown no progression for seven years without any treatment. The third sister had rheumatoid arthritis and diabetes mellitus, and cultures were positive for M. intracellulare. Although she received chemotherapy with rifampicin, clarithromycin, ethambutol, and kanamycin, symptom and imaging findings had progressed gradually. She died of respiratory failure four. years later. Autopsy findings revealed no disseminated MAC disease. The results which three cases showed different isolate patterns and clinical courses suggest the importance of underlying anti-mycobacterial immunological impairment and defects of local host defense rather than virulence of infected strains as the pathogenesis of pulmonary MAC disease.
  • 小島原 典子, 前田 章子, 山口 直人
    2005 年 79 巻 5 号 p. 348-349
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
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