Mycobacterium shimoidei Tsukamura 1982によるヒトの肺感染症は世界的に稀な疾患である.最近我々は本症の2例を経験したので主としてそれらの細菌学について報告する.症例1は国立病院機構宮城病院の45歳男性患者, 症例2は同東広島医療センターの75歳男性患者で, 共に肺結核様空洞を有し, 数回に亘る喀痰の抗酸菌検査で塗抹, 培養陽性で, 分離菌は以下のような
M.shimoideiに一致する諸性状を示した.即ち, 25℃では発育せず, 30, 37, 42, 45℃では2~3週で発育し, R型, 非光発色性集落を形成した.PNB培地に発育し, 食塩培地に発育せず, 鉄取り込みは陰性であった.ナイアシン蓄積, ウレアーゼ, 硝酸塩還元, 半定量カタラーゼ, 68℃カタラーゼ, アリルスルファターゼ (3日法) およびMPB64抗原産生 (キャピリアTB) 陰性, Tween 80水解, 酸性ホスファターゼおよびピラジナミダーゼは陽性であった.ミコール酸の高速液体クロマトグラフィー分析で
M.shimoideiに特徴的な“Three-peak cluster”を示した.16SrRNA遺伝子配列は
M.shimoidei基準株ATCC 27962と100%, 次いで
M.celatum基準株ATCC 51131と96.8%の相同性を示した.多重整列比較に示された分離菌と
M.celatumとの間の遺伝子配列の大きく異なったのは領域A内にある189-202領域であったが, この領域における分離菌と登録
M.shimoideiとの間の配列はすべて一致していた.
M.shimoidei分離2菌株はINH (0.2Fg/mL) およびPAS (0.5μg/mL) に耐性, RFP (40μg/mL), EB (2.5μg/mL), SM (10μg/mL), KM (20μg/mL), EVM (20μg/mL), TH (20μg/mL), CS (30μg/mL) およびLVFX (mμg/mL) に感受性であった.
抄録全体を表示