RSウイルス (RSV) 感染は, 本邦では小児例は多いが外来成人例の報告はほとんどない.今回, 2006/2007年冬季シーズンに5医療機関をインフルエンザ様疾患で受診し, インフルエンザ迅速診断キットが陰性であった77例を対象として, RSVのPCR検査を実施し, かつ新しいRSV迅速診断キットのCapilia RSV (タゥンズ) も試用した.
対象77例中, PCRによりRSVが検出されたのは10例 (小児, 成人各5例.検体は小児2例が鼻腔吸引液他8例は鼻腔拭い液) であり, 検出頻度は0~1歳27.3%, 2~3歳33.3%, 30代10%, 70代25%, 80代60%であった. また同頻度は12月 (25%) と1月 (27.3%) は2月 (4.4%) よりも有意に頻度が高かった (各々p<0.05, p<0.01).
RSV検出例の罹患中最高体温は37.2~39.7℃であった. 咳は10例全例にみられたが, 喘鳴は小児のみにみられた. また発熱が消失したのは発症後2~6 (平均48) 日目であった. RSV迅速診断キット (Capilia RSV) はPCRによるRSV検出10例中9例で陽性, 同RSV非検出67例全例で陰性であった (精度98.7%).
血液検査を実施した9例ではCRPは3例が正常, 6例が軽度増加で, 白血球数は正常8例, 減少1例であった. また白血球分画が実施された8例中4例 (いずれも成人) でリンパ球減少がみられた. 胸部X-Pは成人5例で実施され, いずれも正常であった.
本邦でもRSV感染は乳幼児のみならず成人や高齢者にもみられ, 高齢者でもPCRや迅速診断キットにより鼻腔拭い検体から検出されることが示された.
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