目的: 一般住民への普及啓発として, 優先的にされるべき感染症は何であるのか明らかにすることを目的とした.
対象と方法: 感染症予防対策に従事している行政機関に勤務する医師・獣医師25名に対してデルファイ法によって調査を行った.
結果: 「疫学的及び臨床的特徴」「住民や医療従事者など関係者の知識の程度や意識行動」「社会的状況と対処」を選出理由として, 24疾患が挙がった.上位より, 結核, インフルエンザ, HIV/AIDS, 腸管出血性大腸菌感染症 (O157), 性器クラミジア感染症で, 上位10位以内に, 動物由来感染症が3疾患入った.
考察: 感染症全体から普及啓発の必要性に関してそれぞれの疾患の優先順位を明らかにした研究は見られなかった.今回選出された疾患について, 選出理由を裏付ける調査・研究は散見されたが, 今回の研究結果を一般化するには十分とは言えない. また, 選出された上位疾患については, これまでも普及啓発されていると考えられるものがほとんどであった. このことは, これまでの普及啓発の質が問われることを意味している. 今後, さらに効果的な普及啓発について研究を重ねなければならない.今回の調査は優先的に普及啓発すべき感染症を選択する際の根拠の一部分となり得ると考えられる.
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