フットボール型の形態が特徴的な
Clostridium clostridioforme groupは, 欧米では臨床上重要な
Clostndium の菌群の一つとされている. しかしながら本邦では, この菌群に対する認識が欧米に比べて極めて低い. 今回, この菌群の本邦での感染症材料からの分離状況および薬剤感受性を検討した.
当院において2004年11月から2006年9月までの23カ月間に, 48症例の感染症からフットボール型の細胞形態を持つ
Clostndium60株を分離した. その内訳は, 一次感染症 19例 (39.6%), 術後二次感染29例 (60.4%) であった.一次感染症の臨床診断の内訳は褥瘡感染7例, 腹膜炎, 腹腔内膿瘍, 敗血症が各2例, 子宮留膿腫, バルトリン腺膿瘍, フルニエ壊疽, 肛門周囲膿瘍が各1例, その他2例であった.術後感染の内訳は, 創部感染 16例, 腹膜炎6例, 皮下膿瘍4例, 腹腔内膿瘍2例, 膿胸 1例であった. これらの感染症の治療前のCRPは, 10mg/dL以上が30例 (62.5%), 白血球数は12,000/μL以上が26例 (54.2%) であった.先行投与されていた抗菌薬は, cefotiam11例, cefozopran7例などであった. 治療に使用された抗菌薬は, imipenem/cilastatin27例 (56.3%) などであった.分離された60株は, 形態的特徴終末代謝産物分析および16S ribosomal RNA遺伝子配列に基づいて,
Clostridium hathewayi (26.7%),
Clostridium clostndioforme (16.7%),
Clostndium bolteae (18.3%),
Clostridium citroniae (10%),
clostridium aldenense (8.3%),
Clostndium symbiosum (20.0%) と同定された. 分離菌の薬剤感受性については,
C.hathewayi, C.clostndio -formeでcefotaximeに耐性を示す株が多くみられた (56.2%および30.0%). また,
C.bolteaeや
C.clostridioformeにはペニシリン系薬に高い耐性を示す株がみられ, 特に
C.bolteaeではampicillinとpiperacilinの MIC
90は, いずれも>128μg/mLであった.
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