感染症学雑誌
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85 巻, 1 号
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原著
  • 濵砂 良一, 川井 修一, 安藤 由起子, 伊東 健治, 倉島 雅子, 西村 敬史, 山口 隆正, 吉村 誠, 小林 とも子, 村谷 哲郎, ...
    2011 年 85 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    Real-time PCR 法を用いてChlamydia trachomatis(クラミジア)およびNeisseria gonorrhoeae(淋菌)を検出するAbbott RealTime CT/NG assay(realtime 法:アボットジャパン)の有用性を,女性子宮頸管スワブ検体,女性初尿検体,男性初尿検体を用いて検討した.対象は北九州市内の産科・婦人科施設,泌尿器科施設,皮膚泌尿器科施設を受診し,子宮頸管炎または尿道炎が疑われた患者,女性88 名,男性100 名である.これらの検体をBD プローブテックET CT/GC(プローブテック:日本べクトン・ディッキンソン)と比較した.クラミジアに対する全検体の陽性一致率は97.1%(66/68),陰性一致率は99.0%(206/208),淋菌に対する全検体の陽性一致率は100%(33/33),陰性一致率は100%(243/243)であった.女性の子宮頸管スワブでは3 検体の不一致例が,男性初尿では1 検体の不一致例があった.女性初尿においては2 検査間の不一致例はなかったが,子宮頸管スワブと初尿との間にrealtime 法で3 症例,プローブテックで4 症例の不一致があった.realtime 法とプローブテックの不一致例のうち3 検体でアプティマCombo 2 クラミジア/ゴノレア(富士レビオ)による再検査を行い,すべて陽性であった.女性では子宮頸管スワブ,初尿のいずれかのうち2 つ以上の検査で陽性の場合,男性では初尿で2 つ以上の検査で陽性の場合,「真のクラミジア陽性」症例と仮定すると,realtime 法における子宮頸管スワブ,女性初尿,男性初尿の感度はそれぞれ94.4%,77.8%,97.4%であった.これに対しプローブテックではそれぞれ88.8%,77.8%,100%であった.淋菌に対する感度はいずれの検査でも100%であり,realtime 法は女性の子宮頸管スワブ,男性の初尿を用いると,淋菌,クラミジアに対してプローブテックと同等かそれ以上の有用性を示した.
  • 菅原 民枝, 大日 康史, 川野原 弘和, 谷口 清州, 岡部 信彦
    2011 年 85 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    【目的】新型インフルエンザ(2009 インフルエンザA(H1N1))対策では,発生時の早期探知,日ごとの流行状況をモニターするリアルタイムサーベイランスが必要である.そこで本研究は調剤薬局の院外処方せんによる薬局サーベイランスを運用し評価する.抗インフルエンザウイルス剤を処方された人数より,対策に必要な推定患者数を算出しその有用性も検討する. 【方法】全国3,959 薬局から自動的に抗インフルエンザウイルス剤データを収集し,インフルエンザ推定患者数を算出した.サーベイランスの評価は,感染症発生動向調査及び感染症法上届出の新型インフルエンザの全数報告との比較とした.推定患者数の比較は,感染症発生動向調査と岐阜県の全数調査に基づいた推定患者数で行う. 【結果】2009 年4 月20 日から新型インフルエンザ対策として薬局サーベイランスを強化し,翌日7 時には協力薬局および自治体対策関係者に情報提供した.2009 年第28 週から2010 年第12 週までの推定患者数は,9,234,289 人であった.発生動向調査との相関係数は0.992 であった.薬局サーベイランスのインフルエンザ推定患者数,感染症発生動向調査と2 倍強の違いがみられ,岐阜県全数調査で調整した発生動向調査の推定患者数は近似していた. 【考察】薬局サーベイランスは,流行の立ち上がり,ピークの見極め,再度の流行への警戒と長期間にわたってのリアルタイムサーベイランスとして実用的であった.発生動向調査と高い相関関係を示しており,先行指標となった.日ごとのデータによる早期探知,報告基準をかえずに自動的にモニタリングすること,常時運用という態勢は有用であると示唆された.インフルエンザ推定患者数は,発生動向調査の推定患者数の過大推計が示唆され,今後の課題点と考えられた.次のパンデミックを含むインフルエンザ対策として利用可能な手段であり,またインフルエンザに限定せず,アシクロビル製剤による水痘や抗生剤の使用状況のモニタリングといった広い応用が期待される.
  • 中村 久子, 丸茂 健治, 岩澤 篤郎, 田澤 節子, 川野 留美子, 菊池 敏樹, 長島 梧郎, 田口 和三, 磯山 恵一
    2011 年 85 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    2003 年 9 月~2004 年 8 月(2003/2004 シーズン)より 2006 年 9 月~2007 年 8 月(2006/2007 シーズン)の 4 期間に検出された A 群ロタウイルスの G 血清型別を PCR 法で行った.調査期間を通じて,最も共通して検出された G 血清型は,G1 型 27 例と G3 型 33 例であり,残り G4 型 4 例であった.G2 型と G9 型は調査期間中,全く検出されなかった.期間別で多かったのは,2003/2004 シーズンが G1 型 50% と G3 型 38%,2004/2005 シーズンが G3 型79%,2005/2006 シーズンが G1 型 91%,2006/2007 シーズンが G1 型 37% と G3 型の 63% であった.また,患児月齢と検出された G 血清型に有意差は認められなかった.ロタウイルス感染症の三大主症状である発熱,下痢,嘔吐の有無に関して,全症状を呈した患児は 48%と最も多かったが,これらの症状は G 血清型と関連しなかった.G 血清型別は流行時期の違いや地域的流行を疫学的に理解するうえで重要である.
  • 松田 親史, 森山 英彦, 竹谷 健, 柴田 宏, 長井 篤
    2011 年 85 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    B 型肝炎ウイルス (以下 HBV) 外殻の表面抗原 (以下 HBs 抗原) は,HBV の外殻を構成する蛋白であり,HBs 抗原の存在は現在の HBV 感染を意味しているため日常的に感染の確認目的で検査が実施される.筆者らは,HBs 抗原測定方法の変更により結果の不一致症例を経験した.不一致の原因は HBs 抗原の S 領域に認められたアミノ酸変異によるものと考えて遺伝子配列を調べた.その結果,従来報告されている変異部位とは異なる新たな変異部位が認められた.一般的に使用されている 12 種類の HBs 抗原測定試薬ならびにその確認試験試薬との反応性を確認した結果,1 種類のモノクローナル抗体を使用した 1 試薬を除き,この症例の変異部位に対してすべての試薬で陽性の結果を得た.確認試験試薬はいずれの試薬においても症例の HBs 抗原と反応している結果を得た.これらの結果から今回の変異部位は,1 試薬においてのみ偽陰性を示したが他の一般的に使用される試薬の結果には,影響を与えないことが示唆された.HBV は DNA ウイルスの中では変異しやすいウイルスとされていることから,変異の部位や変異数が異なれば使用する試薬によって,HBs 抗原が偽陰性となることがあることを念頭に置き,HBs 抗原の結果を解釈する必要があることを再確認した.
  • 坂田 宏
    2011 年 85 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    2006 年から 2009 年までに侵襲性インフルエンザ菌感染症の小児から検出されたHaemophilus influenzae 21 株について最小発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)を測定した.患者の年齢分布は生後 4 カ月から 12 歳までで,1 歳以下が 18 名(85.7%)を占めていた.疾患は髄膜炎と肺炎が 7 名(33.3%)ずつ,喉頭蓋炎,蜂窩織炎,関節炎がそれぞれ 2 名(9.5%)ずつ,occult bacteremia が 1 名(4.8%)であった.21 株中 19 株 (90.5%) の莢膜型はtype b (Hib) であった.ペニシリン結合蛋白遺伝子変異による耐性分類では β-lactamase negative ampicillin resistant (BLNAR) 株 6 株 (28.6%),low-BLNAR 5 株 (23.8%),β-lactamase positive clavulanic acid/amoxicillin resistant-II 株4 株 (19.0%),β-lactamase positive ampicillin resistant 株 2 株 (9.5%),β-lactamase negative ampicillin susceptible 株 4 株 (19.0%)であった.2003 年から2005 年の調査と比較すると,感受性菌が有意に減少していた (p<0.05).MIC90/MBC90 はampicillin 64/>128μg/mL,piperacillin 16/>128μg/mL,cefotaxime 0.5/0.5μg/mL,ceftriaxone 0.12/0.12μg/mL,panipenem 0.5/0.5μg/mL,meropenem 0.12/0.12μg/mL,doripenem 0.25/0.25μg/mL,chloramphenicol 1/ 2μg/mL であった.
  • 高尾 信一, 原 三千丸, 岡崎 富男, 鈴木 和男
    2011 年 85 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    米国ルミネックス社 xTAG Respiratory Viral Panel FAST (RVP FAST) アッセイは,ヒトの主要な呼吸器系ウイルス 17 種を,一度の測定で網羅的に検出するシステムである.今回我々は,小児の急性呼吸器感染症から採取された鼻腔吸引液 67 検体を対象として,RVP により得られた成績をリアルタイム PCR などの従来から実施している 8 種類のウイルスをターゲットとした遺伝子増幅検査 (NAT) で得られた成績と比較することで,呼吸器系ウイルス検出における RVP FAST アッセイの有用性について検討した.RVP FAST アッセイでは,67 検体中 59 検体から 13 種類,98 件のウイルスが検出された.そのうち,NAT の成績と比較できたインフルエンザウイルス (Inf.V)-AH1,Inf.V-AH3,新型 Inf.V-AH1,Inf.V-B,アデノウイルス,RS ウイルス,メタニューモウイルス,ボカウイルスの 8 種のウイルスについては,NAT での成績を基準とすると,RVP FAST アッセイの感度は 83.3%~100%,特異性は 98.2%~100%であった.RVP FAST アッセイでは,それらのウイルスに加えて,コロナウイルス(CoV)229E,OC43,NL63,HKU1 の各ウイルス型が合計 10 検体から,またエンテロウイルスおよび/もしくはライノウイルスも 35 検体から検出できた.RVP FAST アッセイは,臨床上重要な呼吸器系ウイルスを,一度の測定で網羅的に検出できることから,呼吸器感染症患者の起因ウイルスの検索には有用な検査法と思われた.
  • 林 三千雄, 春田 恒和, 坂本 悦子, 立溝 江三子, 江藤 正明, 竹川 啓史, 中浴 伸二
    2011 年 85 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    我が国では新型インフルエンザ発生の初期には発熱外来,発熱相談センター,措置入院といった特殊な医療体制をとることになっていた.こういった特殊な医療体制は 2009 年 5 月に発生した神戸市における新型インフルエンザ国内発生初期において国内で初めての本格的に実施された.この時期に神戸市で行われた医療体制の問題点とその役割について検討した.その結果,国内発生が報じられると発熱相談センター,発熱外来,措置入院への負荷が急激にかかること.これらの急増に対して発熱相談センターは発熱外来に診療不可能なほどの患者や電話相談が集中することを防いでいること.これらの医療体制のなかで措置入院がもっとも早い段階でオーバーフローする可能性が高く,重症例のみの収容など早期に柔軟な対応がとれる様に準備する必要があることなどが示唆された.
  • 富樫 武弘, 岩田 敏, 丹後 俊郎, William Gruber
    2011 年 85 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    わが国の乳幼児における 7 価肺炎球菌結合型ワクチン (以後 7vPnCV と略す) 接種の免疫原性と安全性を検討することを目的として,生後 2~6 カ月の乳幼児を対象として第 2 相臨床試験を国内 30 施設の多施設共同オープン試験として実施した.2004 年 9 月 22 日から 2006 年 9 月 16 日の間に 181 例が登録され,被験者選択基準に適合した解析対象集団は 167 例であった.抗体濃度値 0.5μg/mL を上回った被験者の割合は初回接種で 94.6% 以上,追加接種で 96% 以上であった.7vPnCV 接種との因果関係の否定できない重篤な有害事象は発熱と蕁麻疹の各 1 件であった.主な副反応は接種局所の発赤,腫脹又は硬結,疼痛や発熱,易刺激性,傾眠状態であった.いずれの副反応も一過性であり全例回復した.以上の成績は海外臨床試験成績とも遜色のないものであり,わが国の乳幼児においても 7vPnCV の肺炎球菌感染症に対する有用性が示唆された.
症例
  • 乾 佐知子, 中村 竜也, 田辺 公一, 大野 秀明, 小池 千裕, 奥田 和之, 中田 千代, 藤本 弘子, 大倉 ひろ枝, 宮崎 義継, ...
    2011 年 85 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    Candida glabrata was continuously isolated in cultured urine samples from a subject with thrombotic thrombocytopenic purpura. Yeast-like fungal phagocytosis found in gram staining led to agents being tested for antifungal susceptibility, revealing hyposensitivity to micafungin (MCFG) of MIC <2mg/mL. MCFG administered for 10 days failed to cure C. glabrata infection. To clarify why hyposensitivity occurred, we analyzed the FKS gene sequence using the PCR, finding a deficit of 3 bases coding phenylalanine at FKS2 gene amino acid 659. MCFG hyposensitivity may thus occur in long-term candin-class anti-fungal agent treatment. Candin-class agents have potent anti-fungal activity with fewer adverse effects and are widely used clinically. Hyposensitivity due to resistant C. glabrata species showed thus be considered in fungal infection treatment.
  • 池崎 裕昭, 小川 栄一, 村田 昌之, 居原 毅, 豊田 一弘, 谷合 啓明, 大田黒 滋, 貝沼 茂三郎, 澤山 泰典, 古庄 憲浩, ...
    2011 年 85 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2011/01/20
    公開日: 2015/04/06
    ジャーナル フリー
    Kaposiʼs sarocoma (KS) is a well-known complication of the acquired immunodeficiency syndrome (AIDS). A 23-year-old man with AIDS complicated by multiple KS seen in January 2008 for anorexia and 10 kg weight loss had a CD4 cell count of 7/μL and a serum HIV RNA level of 29,000copies/mL. Computed tomography (CT) and endoscopy showed multiple KS lesions in both lungs, the duodenum, small intestine, colon, liver, and both kidneys but not of the skin. Despite the administration of pegylated liposomal doxorubicin (PLD) and highly active antiretroviral therapy, he died in disease progression, unable to complete PLD,KS-related respiratory failure.
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