近年市販されている水痘ワクチンの力価(ウイルス量)は,添付文書に記載されている製剤基準(1,000PFU/dose 以上)より数十倍高い値となっている.今回,開発当初に近いウイルス量に減量された市販ワクチンを接種し,標準量投与との免疫原性の違いを調査して現状のウイルス量の必要性を検証した.
本研究は水痘既往歴のない43 名の小児を対象に非盲検試験で行われ,20 名(1 歳0 カ月~4 歳5 カ月:中央値1 歳5 カ月)に水痘ワクチンの投与量を1?5 に減量した0.1mL を接種し,23 名(1 歳2 カ月~3 歳7 カ月:中央値1歳9カ月)には通常量の0.5mLを接種した.接種前・後(4~6 週間後)のIAHA 抗体とgpELISA 抗体を測定し,IAHA 抗体価≧2 倍,gpELISA 抗体価≧50 単位を陽性と判定した.IAHA 抗体の非陽転者に水痘ワクチン0.5mL を追加接種し,追加接種後4~6 週に抗体測定を行った.
0.1mL 接種群のIAHA およびgpELISA 抗体陽転率は25.0%(5/20),55.0%(11/20)であり,0.5mL 接種群の76.2%(16/21),87.0%(20/23)より低かった(IAHA:p<0.01,gpELISA:p<0.05).0.1mL 接種群15 例と0.5mL 接種群4 例の計19 例に追加接種を行い,追加接種後の抗体陽性率は両測定法で100%であった.0.1mL 接種群の追加接種後平均抗体価(IAHA 2
6.0,gpELISA 10
3.7)は,0.5mL 初回接種で抗体陽転した児の接種後平均抗体価(IAHA 2
4.5,gpELISA 10
2.6)より両測定法で高かった(p<0.01).なお,0.1 mL 接種後に保存された残余ワクチン(n=20)の力価を測定し,0.1mL 接種群の接種ウイルス量は2,600~6,400PFU/dose と推計された. <BR> 水痘ワクチンの接種量を1/5 にすることで水痘ワクチンの免疫原性は低下しており,免疫原性の維持には製剤基準を大きく上まわる現状のウイルス量が必要と考えられた.0.1mL 接種後の抗体非陽転者に対する通常量の追加接種により,ブースター効果と思われる高い抗体価が得られた.
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