原発性肝癌の病因としての肝寄生虫症の意義はいまだ充分明らかでない.我々は今回剖検によって確めた24例の日本住血吸虫症(以下日虫症と略す)に合併した肝細胞癌について,統計的調査,臨床検査,肝硬変の有無ならびにその型,癌組織型などについて検索した.
4,611剖検例中日虫症に合併した肝細胞癌は24例で,全日虫症227例中の発生頻度は10.6%で,非日虫症例中の肝癌122例の頻度2.78%と比べ有意に高かった.しかし組織学的に,過半数において日虫症の変化よりも目立って三宅の乙ないし甲'型肝硬変の所見が認められ,純粋な日虫性肝線維症に合併したものは4例にすぎなかった.また,HB抗原陽性率は27%と一般人の陽性率より高く,ウイルス性肝炎の先行の可能性が示唆され,日虫症だけの肝臓に肝癌が頻発するという結論はいまだ出せなかった.血清α-fetoproteinの量は低いものが多く,MO法による判定でも陽性率43%と一般の肝癌に比べ低かった.
肝癌の肉眼分類では,中島・奥田の寡結節硬変型が多く認められ,中に微小肝癌1例が含まれていた.その他の点では他のウイルス性慢性肝炎の終局像としての肝硬変あるいは原因不明の肝硬変に合併して来る肝細胞癌と異なる点は全くなく,この点からも,日虫症が肝癌発生に病因的に直接結びついていると結論するには至らなかった.
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