妊娠末期にみられる急性妊娠脂肪肝の臨床経過および肝組織像については既に多くの報告があゐが生存例は極めて少ない.
本症患者にDICを合併したことを凝血学的に証明し,腹膜潅流を施行し生存しえた1症例を経験したので,DIC合併の面より,本症の死因並びに治療に関して文献的考察を加えて筆者らの見解を述べる.
症例:25歳,経産婦.妊娠33週で胎盤早期剥離を伴って分娩し,分娩後急激に黄疸,出血傾向,意識障害が増強し,急性腎不全を合併した.凝血学的検査値でDICの合併と診断し,新鮮血輸血と共に,腹膜潅流を9目間施行したところ,全身状態の改善,BUN値の正常化が認められ生存しえた.第30病日に施行した肝生検組織像で,本症に特徴的な脂肪沈着を認め,肝細胞壊死や炎症像はほとんどみられなかった.本症にみられる重篤な合併症状がDICに起因する可能性が示唆され,DICに対する注意と治療の重要性を強調した.
抄録全体を表示